家を売る機会は、人生でそう何度も経験することではありません。また、高額な取引になるものでもあるため、はじめての売却となると「何から始めればいいのか」と不安を抱える人も少なくないでしょう。家の売却は、流れやポイントを押さえれば、はじめてでもスムーズに売却できます。
そこで、この記事では家を売却する手順や必要書類・費用・注意点など、はじめての人向けにわかりやすく解説します。
まずは、家を売るときの手順を見ていきましょう。大まかな手順は次の通りです。
それぞれのステップを詳しく解説していきます。
なお、不動産売却の基本的な流れやコツについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
家の売却をスタートする前の準備として、情報収集は欠かせません。次のような情報は、必ずチェックしておくようにしましょう。
まずは、売却相場を把握することが大切です。相場を把握していないと、適切な価格設定ができずにスムーズに売却できない恐れがあります。査定時に不動産会社から提示される価格の妥当性を判断する材料としても、相場は大切です。
売却価格の相場を調べる際には、次のような情報を参考にするとよいでしょう。
国土交通省の「土地情報総合システム」や不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」では、過去に成約した不動産取引の価格を調べられます。近隣の類似物件の取引価格を参考にしてみるとよいでしょう。不動産会社やポータルサイトに掲載されている、類似物件の売り出し価格を調べるという方法もあります。
また、住宅ローン返済中の家を売却する場合、売却できるかは売却見込額とローン残債に左右されます。売却額で住宅ローンを完済できるなら、問題なく売却できるでしょう。
売却額だけでは完済できない場合、自己資金、親からの援助、住み替えローンなどを利用して完済する必要があります。それらの方法を利用しても住宅ローンを完済できない場合、抵当権を抹消できないため、家の売却ができないので注意が必要です。
ローン残高証明書や返済予定表などにローン残債が記載されているので、正確な残高を調べて売却できるかを判断するようにしましょう。
関連記事:家の売却相場はいくら?戸建ての売却相場の調べ方や築年数別の目安を紹介!
家の売却方法には、大きく次の3つがあります。
仲介とは、不動産会社に仲介依頼して買主を見つけてもらう売却方法です。一般的な不動産売却というと、仲介になります。一方、買取とは不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。仲介では不動産会社はあくまで買主との間に入るのに対し、買取は買主が不動産会社となるのです。
家を売却する場合、その家を手放すため、その家に住み続けられません。しかし、リースバックを利用すれば、売却しつつそのまま家に住み続けられます。リースバックとは、家を不動産会社などのリースバック会社に売却し、その後新たに賃貸契約を結んで家賃を払いながら家に住み続ける方法です。
どの方法で売却するかは、売却の目的やそれぞれのメリット・デメリットなどをもとに判断するようにしましょう。それぞれのメリット・デメリットは下記の通りです。
仲介は、市場価格での売却が期待でき、条件によっては高値での売却もできるでしょう。ただし、買い手に左右されるため、条件の悪い物件では売却に時間がかかったり、売れなかったりする恐れがあります。
買取の場合、不動産会社との条件に合意できればそのまま売却できるため、短期間での売却も可能です。しかし、売却額は仲介より低くなり、一般的には市場価格の7~8割ほどになるといわれています。
リースバックの魅力は、そのまま家に住み続けられることです。新しく家を探す必要がなく、住み慣れた家で生活し続けられます。ただ、家賃払いが発生するため、家賃が支払えなければ退去させられる恐れもあります。
以下では、仲介で売却する場合の売却の流れを解説します。
売却方法を決めたら、不動産会社の査定を受けます。査定には、大きく次の2種類があります。
築年数や所在地などのデータをもとに査定する方法が、机上査定です。インターネットなどで査定でき、即日や数日で査定結果がわかるというメリットがあります。しかし、家の内部などの個別の事情は反映されないので、査定額の精度は高くありません。
一方、不動産会社の担当者が実際の家を見て査定する方法が訪問査定です。個別の事情まで反映して査定してもらえるので、より精度の高い査定結果を得られます。ただし、担当者との日程調整や査定などに時間がかかる点には注意しましょう。
査定を受ける際には、机上査定でできるだけ多くの不動産会社を比較し、その中から2~3社に絞って訪問査定を受ける流れがおすすめです。
最初から1社に絞ってしまうと、査定額の妥当性の判断がつきません。できるだけ多くの不動産会社の査定額を比較することで、相場観をつかめ、適正な査定額を見極められるでしょう。このとき、査定額だけでなく不動産会社の対応や評判・実績・担当者との相性もチェックすると、信頼できる不動産会社に出会いやすくなります。
関連記事:家の査定を無料で依頼するときのポイントは?必要な準備や注意点を解説
仲介で売却する場合、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には次の3種類があるので、自分の売却にあった契約を選ぶようにしましょう。
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約できる方法です。買主を自分で見つけて契約できるなど自由度が高いですが、レインズへの登録義務や営業活動報告義務がない点には注意しましょう。
専任媒介契約は、1社のみと結ぶ契約です。レインズへの登録義務や営業活動報告義務があるので、販売状況を把握しやすいというメリットがあります。
専属専任媒介契約も1社のみと結ぶ契約です。専任媒介契約同様、レインズへの登録義務・営業活動報告義務がありますが、こちらはより制約が厳しくなります。また、専任媒介契約では自分で買主を見つけて契約できますが、専属専任媒介契約では買主を見つけても不動産会社を介さなければ契約できないという点が異なります。
それぞれの契約方法によって、以下のようにメリット・デメリットは異なるので注意しましょう。
一般媒介契約では、契約の自由度が高い反面、他社と契約されてしまう恐れがあるので不動産会社にとって優先度が下がりやすいという点に注意が必要です。自分で買主を見つける予定の人や、すぐに売れるような条件の良い物件であれば、一般媒介契約でも大丈夫でしょう。
専属専任媒介契約は、不動産会社が必ず仲介手数料を得られる契約方法なので、熱心に営業してもらいやすくなります。自分で買主を見つけるつもりはなく、すべて不動産会社に丸投げしたい人におすすめです。
中間ともいえる専任媒介契約は、基本的に不動産会社に任せるけど買主を自分で見つけられる可能性があるという人が適しているでしょう。
売却活動では、不動産ポータルサイトへの物件掲載やチラシ・ネット広告などの方法で、買い手にアプローチしていきます。興味を持った買い手から問い合わせが入ると、物件の説明や内覧がおこなわれます。
基本的な売却活動は不動産会社がおこないますが、内覧準備や対応は売主がおこなう必要があります。不動産会社と打ち合わせしながら、しっかりと準備して内覧に備えておきましょう。
すでに家に住んでいないなど、内覧に立ち会わずに不動産会社に任せることも可能です。
売却活動期間中に売主がおこなうことには、次のようなことが挙げられます。
一般媒介契約の場合、売却活動の報告義務がないため、自分から小まめに進捗を確認する必要があります。専任媒介契約・専属専任媒介契約であっても、報告されるのを待つだけでなく自分から小まめに状況確認しておくとよいでしょう。
売却活動によっては、値下げなどを判断していく必要もあります。また、内覧は買主が購入判断する大切なポイントでもあるので、念入りに準備して当日を迎えるようにしましょう。
内覧時には買主がゆっくり見られるように配慮しながらも、住んでいる人にしかわからないような情報を提供すると購入判断の後押しになります。
買主が購入を決めると、価格や売却条件などの交渉をおこないます。交渉がまとまれば、売買契約の締結です。
売買契約時は、先に重要事項説明を不動産会社の担当者から受け、問題なければ売買契約書の説明となります。契約内容にも問題がなければ、売主・買主がそれぞれ署名・押印して契約が締結されます。
重要事項説明や契約書の内容は、契約に関わる重要な項目です。細かい内容が記載されていますが、隅々までしっかりチェックし、不明点があればその場で解決するようにしましょう。
売買契約後には、買主から手付金を受け取るのが一般的です。手付金は売却代金の10%ほどが目安となります。また、このとき不動産会社への仲介手数料を支払うケースもあります。仲介手数料の支払いは、売買契約時に50%・決済時に50%支払うケースが一般的なので、事前に不動産会社に確認しておきましょう。
売買契約から1か月ほどで、決済・引き渡しとなります。決済では、買主から手付金を除いた残代金の支払いを受けます。支払の確認後、物件の鍵や関連書類を売主に引き渡して、物件引き渡しが完了です。
決済日には、住宅ローンが残っている場合は住宅ローンの完済・抵当権抹消登記手続きも同時におこなわれます。また、代金を受け取った後は不動産会社への仲介手数料残金と司法書士費用の支払いをおこなうのが一般的です。
決済・引き渡しでは、さまざまな書類が必要になります。書類に不備があると当日の手続きがストップしてしまい、後日改めて手続きが必要になる場合もあります。決済・引き渡しには多くの関係者が立ち会うので、後日となると周りに大きな迷惑をかけることになります。書類などはしっかりとチェックし、不備の内容にして当日を迎えるようにしましょう。
不動産を売却し、利益が出ると、利益に対して譲渡所得税が課せられます。税金が発生する場合、売却した年の翌年に確定申告が必要なので注意しましょう。
確定申告時期は、例年2月16日から3月15日です。この期間に申告・納税できるように、早めに準備に取り掛かることが大切です。
確定申告や税金の計算に不安がある人は、自治体の相談コーナーや税理士に相談することをおすすめします。
なお、家を売却した際の確定申告については、以下の記事でも詳しく解説しています。併せて確認してみてください。
関連記事:【家を売却した後に確定申告は必要?】具体的なやり方や必要書類について解説!
家の売却にかかる期間は、一般的には3か月から半年ほどが目安です。
売却計画を立てる際には、売りたい時期から逆算して売却を進めていくことが大切です。たとえば、4月に売却を完了したいなら、3月には売買契約、2月に内覧、1月に媒介契約が必要になるため、前年の年末頃には動き出す必要があります。
ただし、売却にかかる期間はあくまで目安であり、物件によってはより時間がかかる可能性もあります。ギリギリのスケジュールで動いていると計画が狂いやすいため、余裕を持った売却計画を立てて売却に臨むようにしましょう。
家の売却では、さまざまな書類が必要です。書類によっては取得に日数がかかるものもあるので、どのような書類が必要なのか事前に把握して、早めに用意することが大切です。
主な必要書類は、下記の通りです。
必要書類は、売却する物件などによっても異なります。すべての書類を揃えることに不安がある人もいるかもしれませんが、基本的に必要なタイミングで不動産会社から指示されるので、すべてを覚える必要はありません。
しかし、取得に時間がかかるものもあるので、売却活動をスタートしたら少しずつ用意しておくと、慌てて入手せずに済みます。
家を売るときには、売却代金を受け取るだけでなく、さまざまな費用・税金の支出もあります。売却にかかる諸費用は、売却額の5~10%ほどが目安といわれています。
諸費用について把握せず、思ったより手元にお金が残らないことになると、資金計画が狂う恐れもあるので、諸費用を含めて資金計画を立てることが大切です。
売却の主な諸費用には、次のようなものがあります。
家を売るときの注意点としては、次のようなことが挙げられます。
住宅ローンが残っている家を売却する場合は、住宅ローンの完済が必須です。住宅ローンが残っている家には抵当権が設定されており、そのままでは売却できません。売却するには抵当権の抹消が必要となるため、抵当権が設定されたままでは売却できないのです。一般的には、売却額で住宅ローンを完済することになりますが、売却額で足りない場合は、自己資金や住み替えローン、親などからの援助で足りない分を補填できれば売却できます。
不動産会社の査定額は、売れる見込みの価格ではありますが、必ずしもその価格で売れるわけではありません。不動産の売却額は、最終的に売主と買主の合意で決まるものです。査定額で売り出してもなかなか買い手が見つからない場合は、値下げを検討する必要もあります。このように、査定額で売り出しても最終的な価格は異なってくることを理解したうえで、資金計画を立てるようにしましょう。
また、築年数の古い家を売却する場合、「リフォームや解体しなければ売れないのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、近年は築年数の古い家を購入して自分の好きなようにリフォームしたい買主も増えています。リフォームや解体したから売れやすいとは限らず、反対に、かけた費用分損失が出てしまう可能性もあります。リフォームや解体は、不動産会社に相談したうえで検討するようにしましょう。
自分の家を高値でスムーズに売却できるかは、不動産会社の力量にもかかっています。実績もあり信頼できる不動産会社であれば、満足いく売却をしやすくなるでしょう。不動産会社を選ぶ際には、できるだけ複数の会社を比較して慎重に判断することが大切です。
今回は、家を売る手順や必要書類・費用などについて、詳しく解説してきました。家の売却を成功させるには、売却の基礎知識や注意点を抑えてしっかりと準備しておくことが大切です。はじめて家を売るとなると不安に感じやすいですが、信頼できる不動産会社であればしっかりとサポートしてくれるので、初めてでも安心して売却に臨めます。
この記事を参考に、売却の基礎知識を身につけて満足のいく売却をおこなってください。
関連記事:【不動産売買の流れ】必要な物や注意点は?手数料についても詳しく解説!