はじめに、コインランドリー経営のメリット・デメリットを解説していきます。メリットのみに着目せずしっかりとデメリットも把握して、ご自身に合っているかを見定めてください。
コインランドリー経営には、大きく分けて下記の7つのメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1点目のメリットは、節税効果があることです。土地を持て余している場合には、そのまま相続するよりもコインランドリーとして相続するほうが節税につながります。
更地に建物を建てて相続すると、相続税の「小規模宅地などの特例」が適用され、相続時に発生する税金が最大で80%減額されるからです。
現在更地として土地を所有している方は、ぜひコインランドリー経営を検討してみてください。
コインランドリー経営は、料金未回収のリスクが低いというメリットも挙げられます。後払いのビジネスモデルは、滞納や料金が回収できない可能性があるので高リスクです。
その一方で、コインランドリーの大半は自動精算機にお金を支払う「先払い制度」を採用しています。そのため、相当のことがない限りは料金未回収に陥るケースは考えにくいでしょう。
次に挙げられるメリットは、土地の広さや形に影響されずに始められるという点です。賃貸経営をおこなう場合、ある程度の広さと需要のある土地が必要となります。なぜなら、立地の良さや利便性がそのまま入居率につながるからです。
一方で、コインランドリーは場所をそこまで気にする必要はありません。全く人のいない土地となると話は別ですが、駅前でない閑静な住宅街でも十分な収益が見込めるでしょう。
コインランドリー経営には、上述の「現金未回収のリスク」以外にも、他の業態の経営で発生するようなリスクが少ないというメリットがあります。もちろんリスクがゼロというわけにはいきませんが、店舗経営につきまとう在庫のリスクが存在しません。
抱える在庫は洗剤程度なので、万が一思うような収益が出なかった場合でも損害額は少ないです。このことから、低リスクで土地活用や副業をスタートしたい方にもコインランドリー経営はおすすめと言えるでしょう。
コインランドリー経営には、他の業態を経営するよりも人件費や固定費が低いという特徴があります。一度土地の購入とコインランドリーの導入さえ完了すれば、後にかかってくる月々の固定費は水道光熱費程度です。ただ、リース契約の場合は、毎月コインランドリーのリース費用が発生します。
このようなランニングコストの低さも、コインランドリー経営が人気になる理由のひとつでしょう。
続いて挙げられるメリットは、景気に左右されない点です。コインランドリーで客がおこなう洗濯や乾燥は、日々の生活にどうしても欠かせない作業です。
いくら景気が悪くてもスーパーで食材を定期的に購入するのと同様で、洗濯物が溜まったらどうしても洗濯しなくてはなりません。このように、コインランドリーの費用は節約しようがないので、景気に左右されず常に安定した収益が期待できます。
最後に挙げられるメリットは利回りの良さです。建設する土地にもよりますが、コインランドリーの利回りは一般的に8〜10%程度と言われています。
8~10%という数字は、他の土地活用や不動産投資と比較すると非常に高く、10年以内に初期費用が回収できる程の利回りです。なぜここまでの利回りが実現できるかというと、その秘密はランニングコストの低さにあります。
定期的なメンテナンスや入居者の募集が必要な他の土地活用の方法と比較すると、コインランドリーは一度導入すれば、ほとんど手入れが必要ありません。初期費用を早めに回収したい方はコインランドリー経営を検討してみてください。
多くのメリットがある一方で、コインランドリー経営には見逃せないデメリットも存在します。下記にコインランドリー経営のデメリットをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
コインランドリー経営の最大のデメリットが、初期費用の高さです。一般的には、コインランドリー経営には2,000〜5,000万円程度の初期費用が必要と言われており、最初にまとまったお金が必要になります。
リース契約を締結すれば、初期費用を多少は抑えられますが、その分ランニングコストが増えるので、注意が必要です。
現在土地を所有している場合にはその分の初期費用が軽減されますが、それでも大金を用意する必要があるので資金計画は入念におこないましょう。
2点目に挙げられるデメリットは、店舗の移転や転用が難しいことです。コインランドリーは店舗のサイズに合わせて洗濯機や乾燥機を発注するので、一度設置するとなかなか移転ができません。
さらに、コインランドリーは水回りのみの最低限の設備である場合が多いので、万が一収益が出なかった場合でも他の業種に転用が難しいです。
続いて挙げられるデメリットは、ライバル店が近隣に出現した際には競争が激化しやすいという点です。コインランドリーは洗濯・乾燥をおこなうというシンプルなサービス提供のため、「絶対にこのお店が良い」という顧客をつかみにくい業種です。
そのため、近隣に安くて新しいコインランドリーが誕生した場合、これまでの顧客を簡単に奪われてしまう可能性があります。
競争の激化と通じる点がありますが、コインランドリー経営には他社との差別化が難しいというデメリットも挙げられます。昨今では、カフェを併設するなど他社との差別化を図るコインランドリーも増加傾向にあります。
しかし、基本的にはコインランドリーはどこも、洗濯・乾燥することがメインの施設です。そのため、他社との差別化が難しく、立地によっては新規顧客の獲得に難航することがあるでしょう。
天気によって売上が変動するのもコインランドリー経営のデメリットです。コインランドリーを利用する顧客の中には、大きく分けて「洗濯機がない顧客」と「洗濯機はあるけれど、毛布やこたつ布団などの大物を洗濯したい顧客」そして「雨で洗濯物が乾かないから乾燥機を使用したい顧客」が存在します。
洗濯機がない・大物を洗濯したい顧客は天気に左右されず、安定した収益を生み出してくれます。しかし、雨で洗濯物が乾かないから乾燥機を使用したい顧客は、晴天の日には期待できません。
梅雨などの長雨の時期にはコインランドリー経営は有利になりますが、晴天や真夏日が続く時期には売上が変動することを加味しておきましょう。
最後に挙げられるデメリットは、完全無人経営は難しいという点です。コインランドリーは基本的には店員が必要ない無人経営です。しかし、常に無人の状態にしておくことは防犯上のリスクが付きまといます。
そのため、基本は無人経営だとしても週に何回かは巡回する・両替機の中にお金を貯めないなどの対策が必要です。
続いて、コインランドリー経営にかかる費用について解説していきます。コインランドリー経営にかかる費用は大きく分けて「初期費用」と「維持費」の2種類です。
それぞれの費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
コインランドリー経営の初期費用は店舗の大きさで変わっていきます。下記に大型店舗・小型店舗のそれぞれの初期費用をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
更地からコインランドリー経営を始める場合、合計で4,000~5,000万円もの初期費用が必要と予想されます。さらに、遠方からの顧客も集客したいと考えている場合には、駐車場に必要な土地の取得代金や舗装費用も見込んでおく必要があります。
コインランドリー経営に必要な費用は初期費用だけではありません。水道光熱費などの固定費や、賃貸で店舗を運営するためには家賃もランニングコストとして加味する必要があります。
下記にコインランドリー経営に必要な維持費をまとめました。
大半が水道光熱費になるので、コインランドリー経営にかかる維持費は売上の20~25%程度と考えておけば間違いないでしょう。
この他にも、ローンでコインランドリーを建設した場合にはローン返済費用、大手コインランドリーとフランチャイズ契約をしている場合にはフランチャイズ契約費用が加算されます。
それでは、実際にコインランドリー経営をおこなう手順を紹介していきます。コインランドリー経営の手順は非常にシンプルで、大きく分けると下記の5つの手順で進んでいきます。
コインランドリー経営を始めようと思ったら、まずは経営業態を決めましょう。経営業態には大きく分けて下記の3種類の方法があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
コインランドリー経営は、土地・建物・洗濯機などの設備を用意すれば簡単に始められるので、自分の力だけでの店舗経営も可能です。
しかし、人通りの少ない場所で開業する場合、広告宣伝活動などをおこないコインランドリーの存在を知ってもらう必要があります。自分で店舗経営する場合には、宣伝活動も自身で積極的におこなうなど精力的に動く必要があるでしょう。
コインランドリー経営には、フランチャイズ契約を締結して、店舗を経営する方法もあります。フランチャイズ経営では有名なコインランドリー業者の看板を借りて運営ができるので、集客がしやすいです。
さらに、企業のスーパーバイザーからの運営アドバイスも貰えるので、すぐに安定した収益を得やすいでしょう。しかし、その一方で個人経営にはないフランチャイズ費用や維持費用が発生するので、資金計画は入念におこなっておく必要があります。
最後に挙げられる方法は、コインランドリー事業者に土地を貸すという方法です。この方法は、コインランドリー経営というよりも不動産投資といったほうが適切でしょう。
土地を貸しているだけなので、コインランドリー経営の成否に問わず毎月安定した収益を得られます。
経営業態の方向性が定まったら、次にコインランドリー会社やフランチャイズ本部に相談していきましょう。フランチャイズ契約をおこなう場合には、1社のみではなく複数の業者に相談することがポイントです。
会社ごとのフランチャイズ費用や維持費、管理の内容などを比較検討して、自身に適した会社と契約を結びましょう。
続いて、市場調査や現地調査をおこなっていきます。ひと昔前まではコインランドリーを利用するのは単身者とされており、独身の多いエリアや大学の近辺に店を構えることが推奨されていました。
しかし、昨今ではファミリー層も多く利用するようになり、住宅街や新興住宅地の近辺にあるコインランドリーの需要が高まっています。
これらを参考に市場調査や現地調査を行い、集客のしやすい土地を見つけましょう。
集客が期待できる土地に目途をつけたら、いよいよ店舗建設の準備をしていきます。コインランドリー経営を郊外でおこなう場合には、駐車場を確保したほうが集客につながります。
店舗から少し離れた顧客も取り込めるように、入りやすい親切な設計を心がけましょう。
最後に、保健所へ必要書類を提出すれば開業準備完了です。コインランドリー経営をおこなう際には下記の書類を提出する必要があります。
フランチャイズ経営の場合には本部が提出してくれるケースもあるので、事前に問い合わせておきましょう。
コインランドリー経営は利回りの良い副業ですが、儲けるためにはいくつかのコツを押さえておく必要があります。具体的には以下の4つです。
上記のコツを確認して、ぜひコインランドリー経営を成功させてください。
1点目の成功のコツは、キャッシュフローを綿密に計算することです。コインランドリー経営の収入の平均は一般的に40〜80万円程度と言われています。利回りの平均値はおよそ8%程度であり、それを下回る利益率では経営に踏み切るべきではありません。
大繁盛しているコインランドリーでは15〜20%もの利益率を期待できるので、しっかりと計算しておきましょう。
下記に利回りの計算方法をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
【利回りの計算方法】
利回り(%)=(年間収入-ランニングコスト)÷(購入価格+購入経費)×100
コインランドリー経営で成功するためには、需要の高い土地で経営を始めることが一番の近道です。下記に需要の高い土地の特徴をまとめました。
【コインランドリーの需要が高い土地】
上記のような土地は、利用者が多く十分な収益を見込めるでしょう。
初期費用は高くなりますが、コストパフォーマンスに優れた機器を導入しておくことで、後々のランニングコストの削減につながります。
優れた機器を導入すれば回転率の向上につながるうえに、定期的なメンテナンス費用の削減、人件費の削減にもつながるでしょう。
最後に挙げられる成功のコツは、店舗に付加価値をつけることです。昨今では、他社との差別化を図るために店舗に付加価値を付ける企業が増加してきました。
洗濯中の待ち時間を有意義に使えるような付加価値があれば、競合店と差をつけられます。ぜひ革新的なアイデアで、他社と差をつけたコインランドリー経営をおこなってください。
コインランドリー経営は、賃貸経営と比較するとそこまで場所を選びません。しかし、駅前や人気のエリアに建設する必要はないものの、立地の良し悪しが収益にダイレクトに影響していくことは否めません。
コインランドリー経営におすすめの場所は、以下の3つです。
アパートやマンションの多いエリアはそれだけで集客を期待できます。昨今ではコインランドリーは単身者のみではなくファミリー層も利用するので、大型のファミリー物件の近くでも十分な収益を期待できるでしょう。
アパートやマンションは多ければ多いほど、売り上げが増加しやすくなります。
収益が出やすい立地として意外と見落とされがちなのが、時間を潰せる施設が近いエリアです。コインランドリーは住宅街のみではなく、人が集まりやすい大型ショッピングモールの近くでも収益を得やすいという特徴があります。
大型ショッピングモールでなくとも、書店やレンタルビデオ屋など時間を潰せる店舗が近隣にあれば、十分に集客を見込める立地と言えるでしょう。
駐車場を確保できる立地であることも、コインランドリー経営成功の秘訣です。昨今では、コインランドリーを使用する利用者の多くが車を利用します。
なぜなら、家庭の洗濯機では洗濯できない布団やカーペットなどをコインランドリーに持ち込むことが多いからです。これらのユーザーを取り込むためにも駐車場の確保は欠かせないと言えるでしょう。
最後に、コインランドリー経営に関するよくある質問をまとめました。
【コインランドリー経営に関するよくある質問】
現在疑問に思うことがなくとも、後々困ることがあるかもしれません。後から困ることのないよう、ぜひよくある質問に目を通しておいてください。
コインランドリー経営は儲かる?
コインランドリー経営は、十分に収益が期待できる立地と導入する機器を見極めれば儲けられる経営方法と言えるでしょう。個人経営では心許ない方は、フランチャイズ経営も視野に入れてみてください。
コインランドリー経営は田舎では厳しい?
コインランドリー経営は、一概に田舎であるから経営が難しくなることはありません。むしろ、土地の多い郊外エリアのほうが駐車場などの設備をとれるので経営には有利と言えるでしょう。
基本的には、都会であっても田舎であっても経営の難しさはかわりません。それよりも重要なのは、集客を見込める立地であるかどうかです。
集客が見込める立地であるか判断するためには、現地調査を入念におこなう必要があります。
コインランドリー経営の年収はどれくらい?
コインランドリー経営者の年収は一般的に300〜360万円程度と言われています。下記に年収の内訳を記載したのでぜひ参考にしてください。
上記の表からもわかるように、コインランドリー経営1年間の総利益は540万円です。そこから運営資金25%を差し引くと405万円になり、さらに家賃がある場合には家賃も差し引きます。こうして算出された純利益(年収)は300〜360万円程度になるでしょう。
当記事では、コインランドリー経営のメリットやデメリットについて解説していきました。
コインランドリー経営には、初期費用が高額であるというデメリットが付きまといますが、それ以上にメリットが大きく開業から10年以内に初期費用を回収できることもあります。
リスクをできる限り抑えて土地活用や不動産投資をおこないたい方は、利回りの良いコインランドリー経営を検討してみてください。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。