登記事項証明書とは、登記簿の情報が記載された証明書のことです。登記簿の情報には、土地・マンション・建物・家などをはじめとする不動産の所有者情報が記載されています。また、不動産の大きさや場所、地目なども記載事項です。
登記簿は、2022年現在では登記所(法務局)に電子データとして保管されています。この登記簿の電子データを紙媒体にしたものが、登記事項証明書というわけです。
登記事項証明書は、所有者が自分以外の物件についても、取得して不動産の利害関係を把握できます。登記事項証明書を一般公開している理由は、不動産取引の公正さと安全を確保するためです。
登記事項証明書に記載されている内容ですが、主に以下の2つの構成から成り立っています。
【登記事項証明書の構成部】
まず、表題部に記載されている具体的内容は、主に以下の5項目になります。
【表題部に記載されている内容】
続いて、権利部に記載されている具体的内容は、主に以下の項目です。
【権利部に記載されている内容】
登記事項証明書を取得する方法は、法務局(登記所)に足を運ぶだけです。また、取得するときに必要になる持ち物・書類などもありません。
また、法務局は全国各地にあり、証明書を取得したい不動産がある都道府県とは管轄が違う法務局でも、登記事項証明書は問題なく取得できます。
登記事項証明書を取得したい不動産が建物の場合は家屋番号を、土地の場合は地番を事前に調べておくと、より取得時間を短縮できるでしょう。ただし、手元にある情報が住所のみでも、法務局で地番を調べれば証明書は取得できます。
注意点として、登記事項証明書は、1通発行するごとに600円の発行手数料が発生することを頭に入れておきましょう。
登記事項証明書を利用する場面は、主に不動産の売買のタイミングや、住宅ローンの取引などが挙げられます。その他にも相続のときに必要になったり、法人企業がビジネスを展開していったりする上でも、さまざまなシーンで提出を求められます。
以下は、登記事項証明書が必要になる主なタイミングです。
このように、登記事項証明書は不動産売却などの不動産取引やさまざまなビジネスシーンで必要になるのです。
登記事項証明書の有効期限は、法律上はとくに定められていません。証明書の発行ベースでの証明になるという考え方になります。そのため、決まった期日まで有効ということではないのです。
しかし、注意点として登記事項証明書を提出するシーンによっては、「発行日から3ヶ月以内」などの条件を指定されることがあります。そのため、提出先の条件を事前に細かく確認しておきましょう。
登記事項証明書には、さまざまな専門用語が使用されています。そのため、記載内容を正しく把握するためには、事前にある程度、用語について理解したり、用紙の見方を覚えたりする必要があります。
そこで今回は、以下の登記事項証明書の見本画像を参考にして、用紙の見方を説明していきます。
【登記事項証明書の見本画像】
(出典:法務省「【参考1】登記事項証明書(不動産登記)の見本(土地・PDF形式)」)
登記事項証明書は上記の見本画像を見てもらうとわかる通り、以下の4つの要素で構成されています。
「表題部」では、その不動産の概要が書かれています。たとえば、建物であれば所在地・地番・地目・地積・原因の情報です。
「権利部(甲区)」では、その不動産の所有者情報を把握することが可能です。不動産を取得した年月日を知ることもできます。
「権利部(乙区)」に記載されている内容は、抵当権や用益権などの権利です。
「共同担保目録」では、1つの債権で担保に含まれている不動産情報のリストが書かれています。共同担保目録の部分を見ることで、住宅ローンを借りた場合に「建物」と「土地」が担保になっていることを知ることが可能です。
登記事項証明書には、その使用用途によって以下の5つの種類にわかれています。ここでは、登記事項証明書の種類について説明します。
では、それぞれの登記事項証明書の詳細について、説明していきます。
全部事項証明書は、その不動産が登記されてからのすべての所有権移転の経緯、抵当権の設定の有無などのあらゆる不動産についての記録が書かれたものです。
全部事項証明書は、後述の一部事項証明書と現在事項証明書に記載されている情報を網羅しています。そのため、特にこだわりがなければ一部事項証明書や現在事項証明書ではなく、こちらの全部事項証明書を取得して問題ないでしょう。
しかし、注意点として、全部事項証明書にはすでに閉鎖済みの不動産の情報は記載されないので、気をつけるべきです。
現在事項証明書とは、その不動産の登記記録から現在でも効力が続いている事項だけを抜粋して書かれたものになります。過去の所有者情報や抹消済みの抵当権は、書かれない点が特徴です。
現在事項証明書のメリットは、過去に効力のあった事項が書いていないので、情報量がシンプルで把握しやすいことです。また、その不動産が過去に差し押さえなどのネガティブな情報を抱えている場合に、証明書にその事実が記載されずに済みます。
一部事項証明書は、全部事項証明書からある一部分の不動産情報のみを切り取って書かれたものです。
一部事項証明書が役に立つケースを具体的に説明します。部屋数が膨大な分譲マンションなどの不動産の場合に、全部事項証明書ではすべての部屋の所有者情報が書かれてしまいます。そうなると、部屋数が相当数ある場合だと、証明書の枚数が膨大になってしまう恐れがあるのです。
枚数が膨大になってしまうと、本当に必要な情報が見づらくなってしまいます。そこで、一部事項証明書にすることで、不要な要素を削って本当に必要な情報のみを抽出することが可能になるのです。
閉鎖事項証明書とは、すでに過去に閉鎖済みの不動産の情報が書かれたものになります。閉鎖事項証明書のメリットは、全部事項証明書ではカバーしていない閉鎖済みの不動産の情報を記載できる点です。
不動産が閉鎖するケースとしては、その建物自体が取り壊されたり、複数の土地を1つにまとめたりしたときにあります。
注意点としては、閉鎖済みの不動産情報が書かれた閉鎖登記簿の記載内容は、建物登記の場合は30年、土地登記の場合は50年という保存期間が決まっているので、認識しておきましょう。
登記事項要約書は、現在でも効力のある事項だけが書かれているものになります。記載内容自体は現在事項証明書と近いです。ただし、登記事項要約書は、あくまで「要約書」であり、請求書としての効力はありません。
登記事項要約書は、登記情報がデータ化される以前の、紙媒体の登記簿を閲覧したときのメモ代わりの役目があります。
登記事項証明書の取得の仕方は、現在では以下の3パターンがあります。
自分の状況によって、どの方法で登記事項証明書を取得するのが良いのかは変わってきます。そこで、上記それぞれの取得方法の特徴を押さえて、自分に合った方法で取得しましょう。
登記所(法務局)の窓口で登記事項証明書を取得する方法は、以下の通りになります。
登記所(法務局)から郵送で登記事項証明書を取得する流れは、以下の通りです。
ポストに投函してから証明書が自宅に返送されるまでの期間は、登記所の混雑具合にも左右されますが1週間程度は見ておいたほうが良いでしょう。
オンラインで登記事項証明書を取得する流れは、以下の通りです。
まずは、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスします。
最後に、登記情報提供サービスについてご紹介します。登記情報提供サービスとは、登記所(法務局)がデータとして保管している登記情報をスマートフォンやパソコン端末から確認できる仕組みです。
利用時間は、平日の8時30分~21時と指定されています。しかし、利用時間内に登記情報提供サービスのサイトにアクセスすれば、わざわざ登記所(法務局)に行かなくても、場所を選ばずに登記情報をチェックできるので非常に便利です。
「登記情報提供サービス」のウェブサイトから確認をしましょう。
登記情報提供サービスで登記情報を確認するには、料金がかかります。確認する情報の項目ごとの料金は、以下の表の通りです。
登記情報提供サービスを使用しても無料で登記情報が手に入るわけではないので、注意しましょう。
登記情報を変更するとは、主に不動産の所有者の名義変更をおこなうことを指します。名義変更の手続きは、法務局に申請しておこなう必要があるのです。ただし、申請書類の作成は専門的な知識が必要になるので、自分でおこなうのが難しいと感じる人も多いです。
そのため、不動産の名義変更の手続きは、法務局への提出書類作成のプロである司法書士に依頼したほうが面倒な手間がかからずに完了できます。司法書士に依頼する費用も数万円程度と比較的リーズナブルなので、ぜひ検討してみましょう。
今回は、登記事項証明書の概要・種類・取得方法・登記情報提供サービスについて説明してきました。登記事項証明書についてほとんど知識がなかった人でも、本記事でかなりの知識をつけられたのではないでしょうか。
現在では、オンラインでの申請や、WEBサイト上で登記情報が確認できる登記情報提供サービスなどの便利なツールが揃っていますので、積極的に活用していきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。