市街化調整区域とは、都市計画法で定められており、過度な市街化を抑制するために設けられている区域のことです。これに対して、市街化を進めていく地域を市街化区域といい、住宅や商業施設などの建設が進められる地域となっています。
市街化調整区域は農業や林業をおこなう地域と基本的にはされており、無秩序に市街地を拡大するのを防ぎ、環境を保護する目的により設けられています。
市街化を防ぐ目的のある市街化調整区域は、建物を建てる際にさまざまな制限があります。そのため、市街化調整区域は、一般的に「売れにくい」といわれています。基本的には住宅地として使われる目的の土地ではないことから、市街化調整区域が売れにくい理由がいくつかあります。市街化調整区域がほかの土地に比べて売れにくい理由は、主に次の3つです。
この章では、市街化調整区域が売れにくい理由3つについて詳しくみていきます。
市街化調整区域は、基本的に住宅地ではないため、電気、ガス、上下水道などの生活インフラが整っていません。そのため、整備するのに時間がかかったり、費用を自費で負担したりする必要が出てきます。
すでに物件が建っている場合であっても、トイレは汲み取り式を使っていることもあり、快適な生活環境を整えるためには、時間と費用がかかってきます。
市街化調整区域以外の土地に比べてさまざまな制限があるので、市場価値が下がってしまうことは避けられません。
住宅ローンは万一返済ができなくなったときのため、土地や建物を担保にしています。市場価値の低い市街化調整区域でのマイホーム建築は、住宅ローンが通りづらかったり、融資額が減額されたりする可能性もあります。
市街化調整区域では、建物の建築が制限されています。そのため、家を建てる際には自治体に開発許可をとる必要がでてきます。また、建て方や建てられる規模にも制約があり、新築の場合だけではなく建て替えや、増改築の際にも適応されます。
建物を建設する際に制限が多い市街化調整区域ですが、手放す際にも注意しておくべき点がいくつかあります。
【市街化調整区域を売る前に確認すべき注意点】
この章では、市街化調整区域の売却前に注意するべき点について詳しく紹介していきます。
各市町村が指定した区域であれば、誰でも建築許可を得ることができる「区域指定制度」により、市街化調整区域のなかでも、住宅や店舗などの建物を建てられる区域があります。区域指定されているかどうかは、自治体のホームページで確認できるので確認しておきましょう。
その土地が区域指定されていれば、市街化調整区域であっても売却が容易になります。
土地には地目という区分があります。地目は、田・畑・宅地・山林などの23種類に区分されており、土地の売却時には、その土地の地目を登記事項証明書で確認しておくのが大切です。
地目が農地になっていれば、特に気をつけなければいけません。売却する際に農業委員会の許可を得なくてはならないうえ、買い手は農業従事者に限られます。
さらに、売った土地を農地以外の目的で利用したい場合には、「農地転用」することが必要です。農業委員会に申請し、都道府県知事の許可を得なくてはなりません。
売却したい建物が、市街化調整区域と市街化区域をわける線引き前からある建物なのか、線引き後に建てられた建物なのかを確認しておくことが必要です。
市街化調整区域と市街化区域をわけることを定めた都市計画法は、昭和43年に制定されました。そのため、市街化調整区域と市街化区域をわける線引きは、昭和45年前後に多くおこなわれました。
売れにくいとされる市街化調整区域ですが、もちろん売ることができます。市街化調整区域を売却する方法は、主に3つあります。
この章では、市街化調整区域を売却する方法について、押さえておきたいポイントをそれぞれ解説します。
市街化調整区域の土地を売却したくて不動産屋に相談しても、買い手がつかないからと断られてしまうことが少なくありません。市街化調整区域の土地の取引の数は、市街化区域にくらべると少ないため、実際に不動産会社が売買の実績が乏しい実情があります。
市街化調整区域であっても、土地に合った活用方法や売るためのアイディアを持つ経験豊富な不動産会社を見つけることは、市街化調整区域の土地を売却するうえで大切なポイントになります。
市街化調整区域の地目が田や畑となっている場合は、その土地を農地として使うことが定められています。
農地を売却する際は、買い手は農業委員会の許可を持つ農業従事者に限られます。近所の農業従事者に買い手の心当たりがあるときなど、農地としてそのまま売却するのは、買い手の見つかりやすい有効な方法です。
農業従事者は減少傾向にあり、農地はなかなか買い手がつかない現状にあります。その場合には、農地をほかの目的で使えるようにする「農地転用」という方法があります。
ただし、農地転用は、転用許可申請書を出し、都道府県知事から許可をとる必要があります。都市計画法と農地法で定められた手続きを2重にとる必要があり、農地転用の許可をとるのはかなり難しい実情です。
一般的に、不動産の売買を頻繁におこなう人は多くはありません。土地の売却について考え始めるまで、所有している土地が市街化調整区域かどうか気にしたこともなかったという方もいると思います。
この章では、土地が市街化調整区域か調べる方法を紹介していきます。
市町村のホームページなど、自治体のWebサービスを利用して調べることができます。Web上で都市計画マップを見て確認できれば最も手軽で速い方法ですが、すべての自治体がサービスを提供しているとは限りません。
Web上で調べてもサービスが見つからない場合は、役所の都市計画課に問い合わせましょう。電話での問い合わせにも対応してくれますが、実際に都市計画表を見て確認できるので、直接問い合わせに行くのが確実な方法です。
今後の都市計画が見直される可能性や時期について、有益な情報を得られることもあります。
ここまで、市街化調整区域の売却に関してさまざまな観点からみてきました。この章では、市街化調整区域の売却についてお考えの方から寄せられる「よくある質問」にお答えしていきます。
市街化調整区域に建物がある場合で、売却しやすいものには次のようなものがあります。
開発許可を得ている場合であれば、同規模で同じ用途の建物については再建設が可能となっています。60条証明とは、建物を建築する計画が都市計画法に適合していることの証明です。そのため、60条証明がある場合には新たに開発許可を取得する必要はなく、再建築可能なので売れやすくなります。
前項で説明したように、市街化調整区域にすでに建物が建っている場合は、開発許可がおりている場合になります。そのため、建物がある場合は売れやすいといえます。
反対に、売れにくいのは「建物が建っていない」「開発許可がうけられない」市街地調整区域ということができそうです。
この記事では、市街化調整区域の売却について詳しく解説しました。建物を建てるのに制限が多く、売れにくい市街化調整区域の土地ですが、工夫して活用することもできます。
また、建物が建てられる可能性が低く、売却できる可能性も低い場合には、農業従事者など、開発許可不要で建物を建てられる人を対象にすることで、売却の可能性は高まります。大切な資産なので、しっかりポイントを押さえて有効に活用しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。