マンションの売却活動に必要な期間は、平均4か月です。ここでいう「売却活動」とは、マンションを市場に売り出してから成約までの期間のことを指します。
売り出し前の準備期間や、売却後に必要な対応までを含めると、トータルで半年程度の期間が必要です。
まずは、売却ステップごとにかかる目安期間や、地域別のマンション売却期間の平均値について見ていきましょう。
マンションの売却手順ごとの目安期間は、以下の通りです。
【売却ステップごとの目安期間】
上記をトータルすると、マンションの売却には、半年程度の期間がかかります。売り出し前の準備段階には2週間程度、売り出しから成約までは3か月程度必要です。
また、成約後は買主の引っ越しや住宅ローン審査などが必要になります。そのため、実際にマンションを引き渡して売却完了するまで1か月程度空けるのが一般的です。
以下は、東京・大坂・愛知の主要3都市における、中古マンションの売り出しから成約までの平均期間における3年間の推移を一覧にしたものです。
【主要3都市のマンション売却期間の推移】(単位:月)
(出典:三井住友トラスト不動産 不動産マーケット情報)
上記の代表的な都市では、居住用だけでなく投資用マンションの需要も高く、市場価格が高騰傾向にあります。
その影響により、一般的な給与水準の買い手にとっては厳しい価格帯のものも多く、購入者の意思決定に時間がかかってしまっているようです。以前の平均売却期間は、およそ3か月とされていましたが、ここ数年では4か月程度に延びています。
また、主要都市以外のエリアでは反響があっても即成約につながりにくく、売却までに時間がかかるケースも増えています。相場に合わせて売り出し価格を設定しても、値下げしないと売れないというケースが多いのです。
マンションの売却期間を左右する要素には、以下のようなものがあります。
【マンションの売却期間を決めるポイント】
需要が高いマンションであれば、先述した平均売却期間よりも早く成約に至る可能性も高いでしょう。
ここからは、需要が高まるマンションの特徴や、それぞれのポイントにおける売却期間への影響について詳しく解説していきます。
マンションの売却期間に大きな影響を与える要素が、「築年数」です。築年数は、マンションの価格だけでなく売却期間も左右します。
一般的に需要が高いのは、「築年数が5年以内のマンション」です。ほとんどの買主が、マンション選びの基準に「築年数〇年以内」という条件を設定しています。
そのため、条件が似ている物件同士を比較した場合は、築年数が浅い物件に問い合わせが集中するのです。反対に、築年数が古くなればなるほど売れづらくなるため、売却期間が延びる傾向があります。
築年数が浅い物件の供給は少なく、かつ税務上売り手に不利なため、需給バランスが崩れているためでもあり、売却価格は強気で良いでしょう。
最寄り駅からの所要期間によっても、売却期間が変動します。通勤や通学を考慮してマンションを購入する人は多いため、最寄り駅までのアクセスは重要なポイントです。
特に、首都圏では、最寄り駅まで徒歩6分圏内のマンションは需要が高く、問い合わせが集中する傾向があります。一般的な売却期間よりも2週間ほど早く売れているのが現状です。
一方、駅からのアクセスが悪くなると売却期間も長くなりますが、徒歩圏内でない立地にあるマンションの場合は例外も存在します。通勤手段が車やバスに変わるため、駅からの距離はそこまで重視されません。別の要素による影響のほうが大きくなるでしょう。
また、人気の学区などは、売却価格が高い傾向もあります。
マンションの売却期間には、物件の「専有面積」も影響します。専有面積とは、所有者が個人の所有物として扱える部屋の内側の面積のことです。
一般的に、「専有面積が40~70㎡であるマンション」の需要が高く、平均よりも早く成約する傾向があります。狭すぎるマンションはもちろん、広すぎるケースも売れづらいため、売却期間が長くなってしまいがちです。取引価格が高額になることと、少子化で家族構成がコンパクトになっている影響があります。
特に、80㎡以上のマンションは売却が長期化する傾向があり、100㎡以上だと平均売却期間よりも1か月ほど長い期間が必要になります。
不動産会社の販売促進力も、マンションの売却期間に影響を与える要素の1つです。
早く売れる要素が揃っているにも関わらず、なかなか成約に結びつかない場合は、仲介を担当する不動産会社に問題があるかもしれません。
不動産会社が積極的に売却活動をおこなってくれなければ、物件情報が市場に出回らなかったり、アピールポイントが買い手に伝わりづらかったりするのです。また、広告活動の方向性が的確でない可能性も考えられます。
「物件情報に対してどのくらい問い合わせがあったか」や「進捗はどうなっているか」など、こまめに確認を取るとよいでしょう。
不動産会社と締結する「媒介契約」の種類によっても、マンションの売却期間は変動します。媒介契約の種類と特徴は、以下の通りです。
【不動産会社との媒介契約の種類】
ただし、どの種類で契約するのがよいかはケースバイケースです。「どのように売却活動をおこないたいか」や「不動産会社へどんな対応を期待するか」によって、適切な契約方法も異なります。
3つの契約の違いをよく理解して、しっかり検討してから契約しましょう。
マンション売却期間は、「売り出し価格」にも影響されます。不動産の市場価格は常に変動していますが、ある程度の相場は存在しているのです。
そのため、売り出し価格を相場よりも安く設定すれば平均よりも早く売却でき、高く設定すれば通常よりも遅くなります。基本的に、「高く売る」と「早く売る」を両立するのは難しいので、どちらを優先するのかよく検討してください。
ただし、相場と乖離した高い金額設定はおすすめしません。一定期間売れない不動産は、値下げが必要になります。
値下げ経歴のある不動産は「売れない物件」のイメージがついてしまい、購入希望者から価格交渉されやすくなるのです。売却に時間がかかるだけでなく、最終的な売却価格が相場より安くなる可能性もあります。
周辺の競合物件の影響により、マンションの売却期間が延びるケースもあります。一般的に、周辺に競合物件が多いと、売却活動が長引く傾向です。
特に、マンションの場合は、同じ建物内で複数の部屋が売りに出されていることもあります。同物件に競合がいると、購入希望者を取り合う形になってしまうのです。
物件の条件は同じなので、部屋の専有面積や位置・売り出し価格などの条件が良い部屋が先に成約してしまうでしょう。
内見者への対応も、重要なポイントです。せっかく問い合わせがあっても、内見の印象が悪ければ成約につながりません。
成約に至るまでの内覧数は、10件前後が平均です。また、内覧の予約は土日・祝日に集中する傾向があり、希望者の中には即日内覧を希望する人もいます。
タイミングが合わないとチャンスを逃すことになってしまうほか、片付け・掃除が行き届いていない部屋は印象が良くありません。
売却活動を開始したら、いつでも対応できるように準備しておくことが大切です。
マンションを売り出すタイミングが、売却期間に影響することもあります。不動産市場にも取引が活発になる繁忙期と、低調になる閑散期が存在するためです。
売り出し直後のタイミングは「新着物件」としてプッシュされるので、買い手から注目されやすくなります。
しかし、閑散期に売り出すと反響が少なく、旬を逃してしまい、成約までに時間がかかってしまうでしょう。
最後に、マンションの売却期間を早めるコツについて解説していきます。需要が高いマンションでない場合も、以下のコツに留意することで、早く成約につなげることができるでしょう。
【マンションの売却期間を早めるコツ】
マンションの売却期間を短縮したいなら、不動産会社に任せっきりにするのはNGです。売主も積極的に売却活動をおこない、不動産会社と二人三脚で成約につなげることをイメージしてください。
マンションをなるべく早く売りたいなら、まず不動産会社選び・担当者選びがキーポイントになるでしょう。マンション売却が得意な不動産会社の特徴は、以下の通りです。
【不動産会社を見極めるポイント】
不動産会社を見極める際は、売却実績だけでなく、資金力・集客力があるかどうかもしっかりチェックしておくと安心です。
また、信頼できる営業担当者の見極め方については、以下を参考にしてください。
【営業担当者を見極めるポイント】
営業担当者に関しては、知識面や営業力だけでなく、人柄やコミュニケーション面での相性もチェックしておく必要があります。定期的に連絡を取り合うパートナーとなる人物なので、慎重に見極めるよう心掛けましょう。
適切なタイミングで売り出すことも、マンションの売買成約を早める重要なポイントになるでしょう。
売買成約数が多いのは、市場が活発になる2〜3月や9月ごろです。その時期に合わせて売却活動がスタートできるよう、1か月ほど前から準備をすすめることをおすすめします。
しかし、お盆の時期や年末年始・GWなどは、マンションの売却にあまり適していないため、注意しましょう。帰省や長期休暇のタイミングは、引っ越しを検討して動いている買い手が少ない時期のため、需要が少なくなる傾向があります。
また、競合が少ないタイミングかどうかも重要です。同じマンション内・近隣エリアで売り出されている競合物件が少なければ、エリアで物件を探している買い手を独占できます。
念のため、不動産ポータルサイトなどでエリアを絞り込み、類似条件の物件があるかどうかチェックしておけるとよいでしょう。
適正な売り出し価格を設定するため、売り出し希望価格と相場を比較検討しておくことも大切です。
売り出し当初の金額が相場よりも高い場合は、売却期間が長くなる傾向があります。平均よりも早く成約につなげたいなら、相場に合わせた適正価格で売り出すよう心掛けてください。
適正価格の把握は、国土交通省が運営する不動産情報サイト「REINS(レインズ)」をチェックするのがおすすめです。
自分が売却したいマンションと類似した条件かつ周辺地域のマンションを検索すれば、おおまかな相場感を把握できるでしょう。
また、相場価格が把握できたら「理想の売却価格」と「売却可能な最低価格」を決めておくと安心です。値下げ交渉されたときの目安になります。
売却活動を開始したら、内覧希望の連絡がいつ来てもいいように掃除を徹底しておくことをおすすめします。
内覧時の印象はそのままマンションの印象になってしまうため、可能な限り好印象となるよう心掛けてください。
不要なものを処分したり、生活感が出ないよう工夫したりして、整理整頓したきれいな部屋で内覧対応できるよう準備しましょう。特に、水回り設備は細かくチェックされるので、念入りに掃除しておいてください。
また、売主本人の印象が物件の印象に影響するケースもあるようです。清潔で明るい印象を与えられるよう、身だしなみや態度にも十分配慮してください。
マンションの売却期間は、市場価格が高騰している影響もあり、4か月ほどが平均値となりつつあります。なるべく早く成約につなげたいなら、まずは売却期間を左右するポイントをしっかり把握しておく必要があります。
また、早期成約を獲得するコツは、信頼できる不動産会社とその営業担当者を見極めることだけがすべてではありません。売り出すタイミングや相場の把握・内覧対応などもしっかりチェックし、準備万端で臨むことが大切です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。