新築マンション(75㎡)の固定資産税の相場は、10万円から30万円といわれています。同じ床面積の中古マンションだと、10万円から15万円が一般的な相場です。
マンションの固定資産額は、自治体によって算出される「固定資産評価額」を基に決定されます。固定資産評価額は3年ごとに見直されますが、金額が必ず減っていくものではありません。なぜなら、建物の資産価値は年々下がりますが、土地の価格は未知数だからです。周囲の再開発や景気の影響を受けやすく、購入時よりも価格が上昇する可能性もあります。
マンションの固定資産税は、「土地」と「建物」の両方の評価額を基にしています。そのため、年月が経ったからといってマンションの固定資産税が下がるとは限らないのです。
固定資産税の相場は参考値の1つと考え、実際の税額はマンションの実情によって変わると覚えておいてください。
マンションの固定資産額は、以下の式を使い、3つのステップに沿って計算します。
固定資産税額=固定資産評価額(課税評価額)×税率1.4%
固定資産評価額とは、市町村の固定資産課税台帳に登録された土地と建物の価格です。市区町村に申請すれば、誰でも閲覧できます。 ただし、マンションの建物の固定資産評価額は、使われている資材の種類が重要な基準となるため、個人で調べるのは不可能です。納税通知書に書かれている数値を参考にしてみてください。
固定資産評価額にかかる税率は、基本的に1.4%です。しかし、独自の税率を定めている自治体もあります。所轄の自治体に確認をするのがおすすめです。
さまざまな特例制度による軽減分を加味した金額が、マンションの固定資産額です。活用すれば効果的な節税が見込めるので、購入時や確定申告時に忘れずに申請する必要があります。
固定資産税の基となる固定資産評価額は、マンションの築年数や専有面積の影響を受けます。
一戸あたりの床面積によっては、活用できる特例に制限があるため、節税に影響を与えかねません。マンション購入の際には、築年数や建物の状態だけでなく、所有・共有する部分の面積にも気を配って検討する必要があります。
この章では、築年数や専有面積による固定資産税の違いについて説明します。
マンションの固定資産税は、築年数によって大きく変わります。8,000万円の新築マンションを例に、購入時と30年後の固定資産税額を比べてみましょう。
今回は、以下の条件で計算します。
土地の固定資産税:5,000万円×1.4%×1/6=約11万6,600円 建物の固定資産税:3,000万円×1.4%×1/2=21万円 合計:約32万6600円
土地の固定資産税:5,000万円×1.4%×1/6=約11万6,600円 建物の固定資産税:3,000万円×1.4%×0.3059=約12万8,400円 合計:約24万5000円
このように、30年後の固定資産額は8万円減額されています。築年数による減価率を乗じているため、建物の固定資産額は、築年数によって固定資産税額は大きく変わります。
専有面積も固定資産税額に影響を与えます。占有面積の範囲が広ければ税負担が増すからです。
マンションの建物の評価額は、占有面積と共用部分の面積で決まります。つまり、課税対象となる面積が広ければ固定資産税の金額も上がるのです。
例として、一般的な4,000万円の新築マンションと、ジムやプールなどの豪華な設備がついた8,000万円の新築マンションを比べてみましょう。
4,000万円の新築マンション:4,000万円×1.4%×1/6=約9万3,000円
8,000万円の新築マンション:8,000万円×1.4%×1/6=約18万6,000円
このように、課税対象となる面積の違いによって、固定資産税の金額が約2倍になっています。
固定資産税は、1年分の金額を4回にわけて納付します。各期の納付期限は、6月・9月・12月・2月の末日です。
ただし、自治体によって対応が異なり、東京都のように1年分の一括納付が可能な地域もあります。毎年4月上旬に納税通知書が届くので、所管の自治体に納付方法を確認してみてください。
窓口納付をはじめ、スマートフォン決済やクレジットカード、電子納税といったさまざまな納税方法があります。自分に合った方法で、期限を守って納税しましょう。
固定資産税を抑えるためには、特例制度の活用が欠かせません。この章では、マンションの固定資産税を安くするための以下3つの特例を紹介します。
それぞれの特例について、詳しく説明します。
固定資産税の税額を軽減する制度が、「新築住宅に係る税額の減額措置」です。3階以上ある耐火・準耐火建築物のマンションでは、軽減措置が受けられる期間は5年間です。
一定の条件をクリアすれば、購入後5年間にわたり、固定資産税が2分の1に減額されます。主な条件は、以下の通りです。
新築マンションの5年間の軽減措置は、効果的な節税対策です。忘れずに活用しましょう。
「認定長期優良住宅に関する特例措置」は、認定長期優良住宅を新築または取得すると、固定資産税が軽減される特例です。
認定長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用できる措置がされた優良住宅を指します。バリアフリー性能や省エネ性能、耐震性能など、一定の条件を満たす高性能な住宅です。
マンションの場合は7年間の優遇措置があり、固定資産税の軽減率は2分の1です。購入した際に、住宅会社の建築士の証明を受け、所管の自治体に提出すると認定が受けられます。
固定資産税の節税をする上で、認定長期優良住宅を選ぶ方が非常にお得です。マンションを購入する際には、物件を選ぶ基準や検討する材料として覚えておきましょう。
住宅用地に対する特例措置とは、一定の基準を満たした住宅用地に対して、固定資産税の軽減が受けられる制度です。住宅やアパートなどの家屋の敷地、住宅用の敷地と一体となっている庭や駐車場が住宅用地に該当します。
「住宅用地の特例措置」を適用した固定資産税の算出基準は、以下の表の通りです。
(出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局)
マンションの場合は、戸数×200㎡以下の部分が小規模住宅用地です。1戸あたりの床面積が200㎡以下であれば、固定資産評価額の6分の1に減額されます。
固定資産税の支払いは、お得に納税できるクレジットカードがおすすめです。クレジットカード会社のポイントがたまるので、買い物やレジャーに活用できます。
しかし、クレジットカード納税を取り扱っていない自治体もあるので注意してください。所管の自治体ではクレジットカードの利用が可能か確認をしておきましょう。
クレジットカードの納付手続きでの注意点は、システム利用料などの手数料です。ポイントの還元率よりシステム利用料が高いと損をします。
例えば、名古屋市のシステム利用料は以下の通りです。
(出典:名古屋市:クレジットカード納税(暮らしの情報)を参考に作成)
名古屋市の場合は、納付金額のおよそ0.7%がシステム利用料です。自治体のシステム利用料を確認し、お得にポイント還元を受けられるクレジットカードを選ぶ必要があります。
この記事では、マンションの固定資産税についての知識や計算方法、活用できる特例や制度について解説しました。マンションの固定資産税について詳しく知ると、節税対策に興味が湧いてくるのではないでしょうか。
固定資産税の仕組みや特例の条件は確かに複雑ですが、活用するのとしないのでは、納税額に大きな差が生まれます。固定資産税の負担を少しでも減らせるように、節税対策をしっかりと練っていきましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。