古家の解体工事の相場は、100万~300万円で、一番多い価格帯が100~200万円です。
出典:リフォーム会社探し ヌリカエ「家・住宅解体工事の平均費用・価格相場」
実は、築年数は解体費用には関係ありません。坪数・建物の構造によって値段が変動します。鉄骨の新しい住宅より、古い木造住宅のほうが、解体費用が安いケースも少なくありません。
古家の解体工事の費用は、対象となる土地の環境・家の状態によって、大きく差が出ます。
【古家の解体費用を決める3つの要素】
解体工事をする場所が、住宅が入り組んで重機が入りにくい場合は、作業に手間がかかります。空き家放置期間が長く、庭木や雑草で荒れている場合も同様です。解体したい家・土地だけでなく、その周辺の要素も費用に影響すると知っておきましょう
この章では、古家の解体費用でどのような要素が影響するのかを解説します。
解体工事は坪単価で計算されますが、単価は都道府県・地域で異なります。人気の高い東京は、特に単価が高く、地方と比較するとその差も数万円単位です。
単価だけ比べると数万円の差ですが、実際に30坪の建物の解体工事をした場合は、数十万円の差となります。
付帯工事とは、本来の解体工事にともなっておこなう工事のことです。解体工事のおまけのようにも感じますが、実際は付帯工事の多さによって、工事の総額がかなり高くなるケースもあります。
【付帯工事の例】
家本体以外に、家の中身・庭・外構・床のコンクリートや敷石などが多いほど、付帯工事として費用が跳ね上がります。また、アスベストなど、廃棄が難しい素材があると、コストが高くなります。アスベストの含有調査などの費用がかかることもあります。
家の状況だけでなく、周囲の環境によっては工事の難易度が上がり、費用が高くなるケースもあります。
【周辺環境によって費用が高くなる例】
工事車両が入りにくい・解体工事をしにくい環境は、その分、作業人員・時間がかかります。工事費用も高額になりがちです。
「古家なら解体もしやすくて費用も安いのでは?」と思われがちですが、内容によっては解体費用が高くなることもあります。
【古家の解体費用が高くなる理由】
この章では、解体工事費用が高額になる理由について、それぞれ解説します。
アスベスト建材とは、天然の鉱物繊維です。2000年以前の建物によく使われており、吸い込むと人体に害があることがわかり、「アスベスト問題」として話題になりました。現在は、アスベスト建材は使用禁止になっています。
1970~1990年代に建てられた建築物(築30年以上の物件)では、アスベスト含有吹付け材を使用していることも多く、専門の講習を受けた業者でなければ解体が許可されていません。アスベストが使用された家の解体は、追加費用が発生します。
解体したい家がアスベストを使用しているかは、家を設計・施工した業者に問い合わせか、設計図書(建築時の施工図・材料表など)で確認します。わからない場合は自治体のアスベスト相談窓口に問い合わせてみましょう。
令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事をおこなう施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿(アスベスト)含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられます。報告は、厚生労働省が所管する石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署にもおこなう必要があります。
【報告対象となる工事】
家の地中に埋まっている埋没物は、解体工事の障害です。埋没物を撤去するために、別途費用がかかります。
【埋没物の例】
更地にした土地を売却した後に埋没物が発見された場合は、「契約不適合責任」に問われるリスクもあります。新居建設工事の際に発覚すると、工事が遅れる分の責任も追及されるかもしれません。
いらぬトラブルを回避するためにも、埋没物が発見された場合は追加費用を払って撤去してもらうことになります。撤去費用は、埋没物によって別途価格が設定されています。
また、貴重な文化財や遺跡などが発掘された場合は、工事が止まり、発掘調査がおこなわれることもあります。
クレーン車やパワーショベルといった重機は、解体工事には欠かせないものです。解体したい古家の周辺環境によっては重機が入れず、解体工事が困難になります。
【重機が入りにくい場所の例】
解体作業の工期を大幅に短縮できる重機が使えない場合は、手作業での解体となります。丈夫な鉄骨の建物の解体は、手作業ではかなりの時間がかかり、その分費用も高額です。電線が近い場合も、クレーンのアームが接触する危険があり、解体工事は高額になります。
ここからは、古家を解体する際の費用を安く抑えるポイントを紹介します。
古家の解体費用を安く抑えるポイント
上記の節約ポイントをそれぞれ解説します。
更地にした後に新築住宅を建築予定の場合は、工務店やハウジングメーカーに丸投げではなく、解体工事は、別の会社に分離発注しましょう。
メーカー側も、結局は下請けとして解体業者に依頼しています。自分で解体業者に依頼したほうが、中間マージンを取られず安く抑えることが可能です。ただし、解体業者へのマネジメントは自分でしなければなりません。
分離発注するかどうかは、解体業者に自分で見積もりを取って依頼する手間と比較して検討してください。
解体工事の見積もりは一社だけでなく、複数社に見積もりを依頼したほうが得策です。重機の保有や規模によって、業者ごとに見積もり金額も大きく異なり、数十万円以上の違いが出るケースもあります。
一社だけの依頼では、悪質な業者に当たってしまう可能性も否定できません。必ず複数社見積もりを取り、比較検討して決定してください。
価格の安さだけで決めるのではなく、口コミや担当者・作業員の雰囲気も要確認です。近くに現場があれば、実際の様子を見に行くのもよいでしょう。
家財道具や大きな構造物は、解体工事の邪魔でしかありません。廃棄するために別途費用が発生し、工期も延長されます。自分で処分できるものは処分し、人に譲るなどのリサイクルに出しましょう。
最近はフリマアプリを通じて、買い手に出会うチャンスも増えてきました。可能なものは自分で処分することで、解体工事の工期も短縮でき、費用も抑えられます。
古家のある自治体によっては、解体のための補助金や助成金制度を利用できることもあります。
制度の内容は自治体によって異なり、解体費用の3分の1から2分の1の補助(上限あり)や、一律〇万円など、さまざまです。
制度利用に条件が設定されている自治体もあれば、制度がまったくない地域もあります。自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
「少しでも安く中古住宅をリノベーションして買いたい」というニーズもある中、わざわざ費用をかけて古家を解体し、更地にするメリットはあるのでしょうか?
【古家を解体するメリット】
この章では、古家を解体するメリットについて解説します。
中古一戸建てや建売住宅を探している人もいれば、真っ新な更地に新築を建て、自分の暮らしを描きたいという人もいます。
住宅以外にも、マンション・アパートや駐車場など、自由に活用できるのが更地の良いところ。自由度が高い分、解体したほうが、買い手がつきやすいといえます。
古家を中古一戸建てとして解体せずに売る場合の不安として、売却後に住宅に欠陥が発覚して「契約不適合責任」を問われるケースがあります。
排水トラブル・雨漏り・シロアリなど、売却前に十分に確認したつもりでも、古家である以上、不具合はあるかもしれません。解体して更地として売れば、家の欠陥についての責任問題は避けられます。
しかし、更地にしても、土地の地下に何かが埋まっている・地盤に問題があったというケースもあります。土地自体に問題がないか、念のため不動産会社などの専門業者に確認してもらうと安心です。
解体工事で更地にすると、買い手がつきやすい・家の責任問題になりにくいというメリットがある反面、当然デメリットもあります。
【古家を解体するデメリット】
不動産は動く金額だけでなく、管理の負担も大きいものです。メリットだけでなく、デメリットも十分に知った上で、解体するかどうかを決定してください。
再建築不可物件に該当する土地は、解体後に居住用物件の建築ができません。建築基準法の改正によって、接道義務(幅員4m以上である建築基準法上の道路に、建物の敷地が2m以上接すること)を満たしていない土地が、「再建築不可物件」です。
町の安全上、緊急車両が通れる幅を確保するために新しく作られた法律で、これ以前に建てられたものは、住んでいる分には問題ありません。しかし、解体すると新しい建物の建設はできず、居住用物件としての土地活用ができなくなってしまいます。
そうなると買い手がつきにくくなるため、解体工事前には、必ず再建築不可物件ではないか・市街化調整区域に該当しないかを確認してください。市街化調整区域も、都市計画法上、それまで暮らしていた人の家族しか建築ができません。
建ぺい率と容積率が法律で定められる以前の古家を解体した場合は、次に建てる建物は以前より小さなものになってしまう可能性もあります。
土地面積が120m²・建ぺい率50%・容積率80%の場合は、建物として使えるのは120×50=60m²です。延べ床面積は120×80=96m²となります。
建ぺい率・容積率は地域によって異なり、決定される以前に建設された建物は容認されています。しかし、更地後に建設する建物は建ぺい率・容積率を遵守しなければなりません。
「古いから解体して建て直したいが、そうなると今より小さくなる」なら、現在の古い建物を利用したほうがよいという判断もありえます。
実際に解体工事がどのような流れになるかを知って準備しておくと、よりスムーズに進められるので安心です。
【古家を解体する具体的な流れ】
解体作業中に水道が必要な場合もあるため、停止するライフラインは、業者からの説明を受けてからにします。ライフライン停止を工事の何日前に終わらせておくか、期限の確認も必要です。
また、解体工事によって建物がなくなったので、法務局に「建物滅失登記」を申請し、国の登記簿に繁栄させる必要があります。期間は滅失から1ヶ月以内です。解体業者が発行する解体証明書(または取毀証明書)が必要となります。申請作業は煩雑なので、土地家屋調査士に依頼するとスピーディです。
古家の解体工事は、土地の価値を上げる手段でもありますが、家の状態や場所によってはかなり高額になるケースもあります。解体で損をしないためにも、必ず複数社の解体業者から見積もりをとって検討してください。
業者ごとに見積もりの項目に違いがあるため、解体作業の見積もり金額だけで決定するのは危険です。項目の内容や、解体作業後にどんな費用が発生するのかも確認し、工事費用総額での判断が大切です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。