マンション売却・査定

マンション価格の推移と購入すべきタイミングについて詳しく解説

マンション価格の推移と購入すべきタイミングについて詳しく解説

直近50年のマンション価格の推移

直近50年のマンション価格の推移

直近50年でマンション価格はどのように変動したのでしょうか。

2つの時代、特に不動産価格が大きく変動したといわれている1990年前後の不動産バブル、2008年前後のミニバブル、そして現在について見ていきましょう。

1990年前後の不動産バブル

1990年前後の不動産バブルは直近50年の中でも特に不動産価格が動いた時代といっても過言ではないでしょう。

1985年当時、ドル高不況であったアメリカは、ニューヨークのプラザホテルで先進5か国(日本、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス)の大蔵大臣を集め秘密裏に会談を行い、ドル高からドル安に各国が為替相場に協調介入することで合意しました(プラザ合意)。

プラザ合意後、円高が進行し、日本は円高不況になります。そのため日銀は低金利政策を実行し、結果「カネ余り」現象が生じました。余った資金は株式市場に向かい、1989年12月29日には日経平均株価は史上最高値である38,915円となったのです。

余剰資金は不動産市場にも流れ、また、銀行など金融機関も低金利であることを謳い文句にして積極的に融資を行って不動産購入を推進しました。その結果、地価高騰を招くという結果になったのです。1990年に入り、株価は下がり始め、ほどなくして不動産価格も下落に転じていきます。

不動産融資を積極的に行っていた銀行など金融機関に対し、監督官庁であった大蔵省は1990年4月に不動産関連融資を規制していきました。(総量規制)。こうした規制に加え、急激な上昇の反動もあり、その後、株価も不動産価格も下落していきました。これがいわゆるバブルの崩壊となるわけです。

2008年前後のミニバブル

1990年代のバブル崩壊後はマンションを含め不動産価格は低水準で推移していました。

2005〜2008年頃に法律の改正などで不動産投資信託(J-REIT)が日本でも認められるようになり、外資系や国内の不動産ファンドが、不動産を購入できる機会が増えたため価格が高騰し始めます。

新築、既存の物件建物問わず収益性の高い、または見込まれる物件にニーズが集まり、大都市圏で価格の上昇が進んだのです。1990年代の不動産バブルに対しミニバブルと呼ばれ、利益を得るため新しく立ち上げる不動産会社が増えました。

しかしながら、ミニバブルも2008年、アメリカの投資銀行であったリーマン・ブラザーズの経営破綻、いわゆる「リーマンショック」によって終わりを告げることになります。

株価の暴落など世界経済の先行きの不透明感から外資系ファンドや日本の不動産ファンドは市場から手を引くこととなりました。経済の急激な冷え込みにより、仕入れていた不動産に買手がつかなくなるなり、破綻する不動産会社もあらわれました。その結果、新築・中古マンション価格は下落し始めます。

現在

2013年に政権が変わり、政府が打ち出したアベノミクスや、日銀がとった2016年からのマイナス金利政策などの金融緩和政策、2020年に開催が決まった東京オリンピックなどを受け、海外からも日本の不動産投資が再び盛んになりました。

その結果、一時期低迷していた不動産価格も2019年にはバブル期に迫る水準にまで上昇することになるのです。

特に、円安による輸入建築資材の高騰を背景に、建築コストがあがります。2010年を1とすると2022年には1.3倍に上昇します。((一社)建設物価調査会「建築費指数、建設物価指数月報」より)。こうした背景で特に分譲マンションの価格は地価の高騰も含めて高騰。2010年を1とすると2022年には1.7倍に上昇します。(国交省「不動産価格指数」)。

一方で、日銀主導の低金利施策により、住宅ローンの金利は低位安定。つまり物件価格はあがっても、住宅ローン金利が低いため、月々の返済金額はリーズナブルになっており、「価格は高いのに、月々の返済が軽いから買い時」という現象が起っています。

中古マンションや戸建て住宅も分譲マンション価格の高騰に牽引される形で、上昇。また新築の賃貸物件の建築費もあがったため、利回り確保のため強気の家賃設定の物件が増え、新築の家賃は上昇。一方で築古は世帯数減少と供給過剰で家賃下落という格差状態となっています。

ここに新型コロナ禍で、分譲マンションのモデルルーム来訪がはばかられる事態や、地主への土地活用や売却の商談がしにくくなるという環境変化が起り、分譲マンションの供給戸数が激減。ようやく回復基調になったところで、ウッドショック(木材価格の高騰)やウクライナ紛争による設備資材の調達難がさらに建築費高騰に勢いを付けているという状況です。

この状況は「低金利」の恩恵を受けている事が重要で、今後、金利が高くなれば「購入出来ない」というバブル崩壊もありえるという予断を許さない状況です。

主要都市のマンション価格の推移

主要都市のマンション価格の推移
マンションの価格は都市によっても大きく変わります。
ここでは、以下の主要都市に目を向けて考えていきましょう。

  • 東京都
  • 北海道
  • 大阪府
  • 名古屋市
  • 福岡県
  • 仙台市

東京都

2017年1月には「196.1万円」だった平均坪単価が、2021年11月には「268.8万円」にまで上昇しました。約5年間で、137%の高騰となります。2021年1月と比較しても104%と言う結果です。

東京オリンピック閉幕後に下落するという識者もいましたが、前述した建築費の高騰と低金利を背景に、価格は上昇しています。

売出し数について、新型コロナウイルス感染拡大による最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月、5月には急激な減少があり、また2021年上半期まで継続的に売出し数が減少しました。しかし、2021年10月から売出し数は反転しコロナ禍前の2019年同月比でプラスに転じています。

北海道

北海道の中心都市の札幌市でも、マンション価格が上昇する傾向となっています。

2007年にマンション価格は下落するものの、2013年頃から新築・中古マンションの価格が上昇傾向に転じているようです。

中央区を中心とした都市開発が活発に行われていることや、観光地としてニーズが高いことから、道外・海外の投資家たちによるマンション購入が増加しています。2020年はコロナ禍の影響などで景気が落ち込み、最新の第3四半期までの平均では、前を下回っている傾向です。

大阪府

コロナ禍により、大阪市ではインバウンド需要の消失に伴い実需及び投資ニーズの減退感を受け、2020年の上昇率はやや鈍化していました。

しかし、2021年には+4.1%から+6.3%と再び拡大しているようです。

一方、今後については拡大傾向になるだろうと予測されています。理由としては2025年に国際博覧会開催が決定しているため、インフラの整備が整うとの予測がなされているためです。大阪府は今後の伸びに期待できるでしょう。

名古屋市

中部圏の中心都市である名古屋市は、2011年ごろからマンション価格が下落傾向にあったものの、2013年1月に日銀の金融緩和が発表されてからは徐々に価格が回復しています。それから8年半の時間をかけて価格が57%も上昇しました。

2020年4月にコロナウイルスの影響による買い控えなどで下落しています。しかし6月以降は前年並みの価格帯に回復し、売り出し戸数は減少しているものの、マンションを購入する人が増え、マンション価格は上昇する見通しです。

福岡県

九州一の都市と言われる福岡市でも、直近の10年でマンション価格の上昇傾向が見られました。リーマンショック後の2008年から2011年まではマンション価格の下落は福岡市でもみられ、新築マンションの価格は低下が続きました。しかし、翌2012年から2019年までは右肩上がりの上昇が続いています。

特に、中心部の中央区では主要地下鉄の地下鉄七隈線の延伸工事中により不動産価格も安定した価格を維持しているようです。2020年は第3四半期までの平均で前年より下降していますが、さらなる物価上昇に期待がかかっています。

仙台市

仙台における2021年の中古マンション価格は前年度比3.4%と小幅に上昇しています。近年の取引物件の特徴として、築40年を超える高経年物件数が上昇しているという傾向が特徴的な仙台市です。

また、仙台市の中でも仙台市青葉区のマンション価格の上昇率が最も高く、エリアによって上昇率のばらつきがあることも特徴として挙げられるでしょう。

新築分譲に関しては、地下鉄の延伸の影響で高騰が見られています。

マンション価格の推移の要因

マンション価格の推移の要因

マンションの価格に直結する要因として、以下のものがあります。

  • 建築にかかるコスト
  • マンション内の設備にかかるコスト
  • 金利や経済動向
  • 投資・利回り動向
  • 国際情勢

それぞれについて見ていきます。

建築にかかるコスト

マンションを建築するのに際し、建築面積や建設会社が求める耐久性などに見合った材料を調達しなければなりません。品質を重視すれば必然的にコストは上昇し、調達が厳しい場合は代替を検討し直さなければならず、工期が延びる恐れもあります。

また、最近では、人手不足による人件費の高騰が起きており、マンションを建築するコストの上昇の要因となっています。

マンション内の設備にかかるコスト

建物以外にもコストがかかります。例えばマンション内の敷地内の附属設備や住人が利用できる施設、また子どもたちが遊べるスペースなどです。

住まわれる人に充実した住環境を供給するために、建設会社は住まい以外の周囲の環境にも行き届いた設計をもってマンション建設に取り組む必要が出てきています。

その影響で、相対的にマンションの価格が上昇する要因の一つとなっているようです。

金利や経済動向

金利や経済動向もマンション価格の要因として考えられます。

金利が低いということは建設会社にとって資金調達が容易であることを意味します。

しかし一方で、低金利であるということは、景気がよくないことをも意味することであり、そのため先行きの経済動向を予測してマンション建設にとりかからなければなりません。

これは購入希望者も同様で、住宅ローン金利が低いためマンション購入しやすい状況ではありますが、変動金利を選んだ場合は、景気が回復し、金利が上昇することも加味してマンション購入を検討する必要があります。

投資・利回り動向

マンションは住むために購入を検討している人ばかりではありません。投資信託や株・債券などで運用するように、物件を購入して、賃貸収益を金利のように運用するという人もいます。

例えば10万円の家賃が獲得出来ることが見込める物件であれば、年間10×12ヶ月=120万円の収益。
これを例えば1200万円で購入すれば、金利10%の投資と考えるわけです(実際には経費などもかかります)。

家賃相場やマンション価格相場より高い利回りが確保できる物件であるのかもチェックしているのです。賃貸のニーズが高くなれば、必然的にマンション価格も上昇する傾向にあります。

そのため、投資や利回りの動向もマンションの価格に影響を与える要因となっているようです。

人口動態・世帯数動勢

マンション価格は、建築コストなどの原価だけでなく、どれだけの人が購入するのかという需要と供給によっても変動します。

人口・世帯数が増え、供給が少なければ価格は上昇しますし、人口・世帯数が減少し、供給が過多となれば、価格は下降していきます。

国際情勢

マンション価格は基本的に需給バランスによって価格が決まります。

しかしながら、需給バランス以外の要因でマンション価格が決まるケースがこの「国際情勢」です。国際情勢で価格が変動したことも過去にはありました。リーマンショックなどはその代表です。

世界経済がダメージを受けると我が国にも派生するのでは、しいては日々の生活にも影響が出るのでは、といった懸念が景気を冷え込ませるため消費者は買い控える行動を取ります。また、土地価格などは景気動向や社会情勢の影響を受けやすく、今後も変動要素としては大きい要素です。

マンション価格にも土地価格は含まれますし、景気動向による消費意欲も影響します。

そのため、マンション価格の動向は検索サイトよりリサーチすることもできますが、世界の経済情勢にも目を配っておくことも重要です。

2022年はマンションを購入するべきか?

2022年はマンションを購入するべきか?

さまざまな要因を踏まえて、2022年にマンションを購入するべきなのでしょうか。
買い控えた方が良いという意見の方の意見を紹介すると、以下の要因が言及されます。

  • 新型コロナウイルス感染拡大の影響
  • 2022年問題について

それぞれについて解説していきます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響について

2020年に起こった新型コロナウイルス感染症が現在においても終息に向かっているとは言い難いのが現状です。

その影響で経済の低迷を心配している方の意見です。ご自身の収入や雇用の先行きが見えない中、ローン返済に困窮した未来を考えると購入をためらうという考え方です。
また、現在は分譲マンションを中心に物件価格が高く、もうしばらく世界情勢の混迷が続けば、価格の安い物件も出るのではないかという考え方です。

ただし、この際、金利が上昇する可能性が高くなります。そうなると住宅ローンを組んで支払う際には、月々の返済金額が高くなってしまうかもしれません。また、「購入をしない」という判断では「賃貸で家賃を払い続ける」という判断になり、その分の出費が続きます。

ご自身の経済環境や見通しとともに、検討した方が良いでしょう。

2022年問題について

不動産業界では、「2022年問題」といわれている問題があります。

大都市圏にある宅地が供給される可能性があるとされる問題です。大都市圏のどこにマンション建設に供する土地があるのか、と思われるかもしれません。

実は現状生産緑地とされている農地のことです。1992年に生産緑地法の制定があり、生産緑地と指定された農地が解除の条件の1つに「指定から30年経過」というものがあります。1992年の施行から30年経過するのは、2022年です。生産緑地から宅地に変更が可能であるというわけです。

不動産市場に生産緑地であった農地が流通しだすと、供給過多の恐れがあり、不動産価格の下落につながると危惧されているのが2022年問題となります。

しかしながら、不動産市場においてそれほど大きな影響はないものという意見もあります。

なぜなら、政府は2022年問題の対策として特定生産緑地制度を導入しており、実質的に生産緑地指定の10年延長が可能になっているからです。

まとめ

マンション価格の歴史や各都市でのマンション価格の動き、そしてマンション価格を決定している要因などについて説明しました。

2022年以降は、新型コロナウイルスの感染リスクや生産緑地問題、在宅勤務などテレワークの発達による住環境の変化などさまざまな事象や景気及び住宅ローン金利動向など購入に際して注意すべき点がたくさんあります。

不動産購入は一生の間でそう多くない大きな買い物です。このような情勢、動向による影響なども含めて総合的に購入を判断していきたいものです。

上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。
現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。
全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。

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