住宅ローンとは、家を買ったり改築したりするときに金融機関から借りるお金のことです。家の購入には、何千万円ものお金が必要になります。そのお金を貯めるには相当な時間がかかってしまうため、現金一括で家を購入する人は、ほとんどいません。多くの人は銀行から融資を受けて住宅を購入し、ローンの返済を毎月行います。
家を購入する時にローンを組むことは一般的なことではあるため、住宅ローンは「借金」だということを認識していない人もいるのではないでしょうか。借金をする場合には当然金利がかかり、返済が滞ればせっかく購入した住宅を差し押さえられてしまいます。
住宅ローンを軽く考えず、返済計画を立ててから正しい金額で契約することが重要です。
一般的に住宅ローンは、以下の流れで手続きをおこないます。
不動産会社や住宅メーカーの担当者が、住宅ローンの手続きをサポートしてくれることもあります。しかし、借金をする(ローンを組む)のは自分自身です。全てを担当者に任せるのではなく、きちんと流れを把握し、一つ一つ理解しながら進めていきましょう。
欲しい家が見つかったら、まずは金融機関にローンの事前審査を申し込みます。事前審査に通れば、基本的には本審査で否決されることはありません。
そのため、事前審査をおこなうことで、「物件の契約後に希望金額を借り入れできなかった」という事態を回避できます。
事前審査の具体的な審査ポイントは、以下の通りです。
事前審査に通過して物件の売買契約が完了したら、本申込をおこないます。本申込といっても、事前審査の申請内容と一緒であれば落ちることはほぼありません。
本申込では、印鑑証明書・住民票・課税証明書などの書類が必要です。事前に必要書類を用意するよう銀行から連絡があるので、指定された書類を準備しましょう。
金銭消費貸借契約とは、金融機関とお金を貸し借りする時におこなう契約のことです。基本的に、決済日の10日〜1週間前までにおこないます。申込人本人が手続きをおこなう必要があるため、事前に金銭消費貸借契約をおこなう日を確認しておきましょう。
銀行で金銭消費貸借契約をおこなう場合は、営業時間内を指定されることが多いです。仕事の都合上、平日に休みを取る必要がある人もいるので、早めに確認しておきましょう。
また、契約をおこなう日までに返済用の口座をつくる必要があるため、忘れずに手続きをしてください。
手続きが完了すれば、後は融資が実行されるのを待つだけです。融資実行日には、新しく開設した口座に借入金が振り込まれます。その借入金を売主に送金し、お金が振り込まれたことが確認されれば、家の引き渡しです。
また、融資実行日には、抵当権の設定もおこなわれます。お金を借りたタイミングで家が担保となり、返済が滞る状況が続いてしまうと金融機関によって物件を差し押さえされてしまうので、注意しましょう。
住宅ローンの審査には、さまざまな書類が必要になります。以下に、必要な書類をまとめたので、確認しておきましょう。
【収入を証明する書類】
【物件に関する書類】
【本人確認書類】
収入を証明する書類と本人確認書類は、自分で用意しましょう。物件に関する書類は、住宅メーカーや不動産会社に依頼すれば用意してもらえます。
住宅ローンでは、返済比率やその他の情報をもとに、借りられる金額が人によって異なります。しかし、「借りられる金額=返済していける金額」ではありません。借入額は、返せる金額を基準に決めましょう。
ここからは、住宅ローンを借りる目安となる金額を紹介します。年収から考える方法と、今の家賃から考える方法の2パターンを紹介します。
一般的には、住宅ローンの年間返済額を、年収の25%以内にしておくと良いといわれています。年収と借入金額を以下の表にまとめたので、チェックしてください。表に記載している金額は、返済負担率25%、金利1.5%、返済期間35年を想定し、計算しています。
※金利や返済期間により、目安金額は異なります。上記の表は、あくまで参考程度にしてください。
上記の表は、あくまでも目安です。同じ年収の人でも家族の人数が多ければ普段の生活費が多くなるため、住宅ローンの返済額が家計を圧迫する可能性があります。
また、昇給・減給・転職によって、年収が変化する可能性があることも忘れてはいけません。あくまでも目安として捉え、毎月のローンの支払いが可能かどうかで判断しましょう。
現在、賃貸物件に住んでおり、毎月家賃を支払っている場合、その金額をローン返済額の基準にして借入金額を決める方法もあります。
下記に、現在の家賃とそれに2万円増減した場合の3パターンの借入額をまとめているので、チェックしてください。表に記載している金額は、金利1.5%、返済期間35年で計算しています。
物件を購入してマイホームを持つと、固定資産税の支払いや修繕費が必要になります。そのため、現在の支払い金額に余裕がある場合でも、借入金額を増やしすぎないようにしましょう。
また、分譲マンションを購入する場合は、住宅ローンの他に、駐車場代や管理費が必要となる場合があります。余裕のある返済計画を立てて、住宅ローンの金額を決めてください。
住宅を購入する場合、頭金あり・なしのどちらの場合が良いのでしょうか。住宅の購入価格が同じケースを想定し、頭金ありと頭金なしの2パターンの比較をしました。以下の表にまとめているので、チェックしてください。
金利や家賃にもよりますが、頭金を貯めてから購入するよりもすぐに購入した方が、住宅購入にかかる全体の費用は少なくて済むことがわかりました。頭金を貯めてから購入するのであれば、住宅ローンを支払いながら貯金をして、繰り上げ返済をすることをおすすめします。
ただし、住宅ローンの金利は変動するため、3年後に同じ金額を借りられるとは限りません。また、物件価格の相場も変動します。低金利の時に住宅ローンを組むのが良いので、住宅ローンを購入する時期を見定めていきましょう。
住宅ローンを組む時は、借りられる額と返済できる額が、同じではないことを忘れてはいけません。借りられる金額で住宅ローンを組むと、毎月の返済が苦しくなる可能性があります。自分がいくらまで借りられるのかではなく、いくらなら毎月返済できるのかを軸に、借入金額を決めることが大切です。
また、病気やケガをして職を失うリスクや減給した場合などに備えて、貯金もしていけるような余裕を持って、返済額を選択すると良いでしょう。住宅ローンは、何千万円にも及ぶ大きな借金です。慎重に検討して、お金を借りるようにしましょう。
「これから妊娠・出産して、もしかしたらそのときに会社をやめる」「子どもが進学するので、先々のお金がかかる」「いずれ転職や独立をしたい」など、ライフスタイルの変化によって、返済できる金額も毎月変わります。未来の家族計画なども考えましょう。
住宅ローンを組む人のなかには、人生で最も大きな借金となる人もいれば、初めての借り入れとなる人もいるのではないでしょうか。とくに、初めてのこととなると、分からないことが多くて不安になる人もいるでしょう。
ここからは、住宅ローンに関するよくある質問を紹介します。一つ一つを確認して、住宅ローンに関する悩みを解決していきましょう。
住宅ローンは、どんな物件であっても利用することができます。新築の物件だけでなく、中古物件や住宅を建てるための土地の購入時であっても利用可能です。ただし、居住用の土地や住宅の購入であることが、条件です。
また、物件によって借り入れ条件や利用条件は異なります。新築住宅と中古住宅では建物の耐久性が異なるため、中古だと借入期間が短くなる場合が多いです。また、店舗つき住宅では面積によって利用条件が設けられることが多いため、細かい条件については住宅ローンの担当者に確認しておきましょう。
住宅ローンの事前審査と本審査の基準は、以下の通りです。
事前審査に通っていれば、本審査に落ちることはほとんどありません。しかし、借入金額が減少したり、連帯保証人が必要になったりといった条件がつくことはあります。
住宅ローンが通りやすいと断言できる金融機関はありません。住宅ローンの審査基準は公表されていないため、金融機関によって借りられるかどうかの結果や借入金額に差が出ることがあります。「メガバンクの審査には落ちたけど、地方銀行なら通った」というケースも少なくありません。
金利の安い金融機関で借りることが理想ですが、申し込み情報は6か月保管されるので、手当たり次第に申し込むようなことは控えましょう。
頭金なしであっても、住宅ローンの審査に通ることは可能です。また、頭金なしを売りにしている住宅ローンもあります。
ただし、頭金がない分、金利が高くなったり毎月の支払いが増えたりというデメリットはあります。頭金がなくても、物件購入金額の20%程度の貯金があると安心でしょう。
このような場合、非課税範囲で親から援助をもらうなどして、頭金を入れて購入する住宅ローンを組む方が、毎月の支払いが抑えられます。
離婚をした場合でも、家のローンはなくなりません。離婚をした場合は、家を売却するか、どちらか一方が住み続けるか選択する必要があります。
売却する場合は、ローン残高よりも売却金額が高ければ問題ないですが、残債よりも低い金額でしか売れない場合は、残りの返済額を一括で支払わなくてはなりません。
どちらかが住み続ける場合は、名義人や連帯保証人などを確認しておく必要があります。また、住み続ける物件が結婚後に取得したものである場合は、財産分与の対象となる可能性があります。残りの住宅ローンの支払いは、誰がどれだけ払うのかなど、必ず話し合いをするようにしましょう。
国土交通省が発表している「令和2年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、新築一戸建ての場合は、返済期間30〜35年で住宅ローンを組む人が多いです。また、年間返済金額の平均は120万円前後となっています。中古住宅であれば、返済期間は短く、年間返済金額は安くなる場合が多いです。
ただし、地域によって土地の価格に差が出るため、平均値だけを見るのではなく、自分に見合ったローンを選択しましょう。
今回は、家のローン手続きの流れやローンを組むのに必要な書類、ローンを組む際の注意点などについて解説しました。家を購入する際に借り入れできる金額が多いと、より良い物件を求めたくなり、つい無理をして返済できる金額以上の買物をしてしまいがちです。
冷静に検討して返せる金額を把握し、余裕のある返済計画を立ててから、借り入れるようにしましょう。また、住宅ローンの知識がないから、初めてローンを組むからといって、住宅メーカーや不動産会社の意見を鵜吞みにするのは危険です。
この記事を参考に、正しい知識を身につけて、無理のない住宅ローンを組んでいきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。