2022年現在、無料の空き家は増え続けている一方、買い手が見つからずに悩んでいる人も増えています。このような状況は、人口の減少・少子高齢化・地方の過疎化などが原因となっているといわれています。
もし、地方の空き家を無料で手に入れたいと考えているのであれば、まずは空き家事情を知っておきましょう。
無料で手に入る空き家などの物件は、「無償譲渡物件」といいます。この無償譲渡物件の場合、不動産仲介業者を使わずに個人間での直接取引で譲渡されることが多いようです。金銭のやりとりがあるような不動産取引とは違い、仲介業者が手数料を受け取ることができないため、このような形態が一般的となっています。
探し方はさまざまですが、「空き家バンク」という譲渡したい人と受け取りたい人をマッチングさせるサービスを使うのがメジャーな方法です。当然、現地に訪れて直接取引するような方法もあります。
いずれにしても、個人間での取引となるので契約書を作成する必要があるなど、注意点は多々あります。具体的には次の章で解説していきます。
地方では、若年層の都心進出や少子高齢化による人口減少で過疎化が進み、空き家の割合が非常に高くなっているのが現状です。
総務省の調査によると、2018年10月時点で日本全国の13.6%ほどが空き家扱いになっています。この数字は年々増えており、この20年間で448万戸から846万戸と約1.9倍にまで増加しているという調査結果もあります。また、専門家の予測では、空き家は2033年には2100万戸にもなると予測されているのです。
ちなみに、都道府県別にみると、空き家の割合が高いのは山梨県21.3%、和歌山県20.3%、長野県19.5%、徳島県19.4%と、都心から離れている地域に多く存在していることがわかりました。この数字が表している通り、地方の空き家の割合は非常に高く、空き家対策を施策していても空き家の割合が増加の一途を辿っているのが現状です。
無料の空き家は購入費用がかからず、一見メリットばかりに見えます。しかし、実際には「無料だからこそ」確認しておかなければいけない注意点が6つあります。
【無料の空き家を入手する際に注意すべきこと】
それぞれ詳しく解説していきます。
無料とはいえ、不動産は所有や譲渡によって税金が課せられる財産です。そのため、無料だからと気軽に入手してから、支払う税金が高くて後悔する人が一定数いるのも事実です。そのような後悔をしないために、あらかじめ支払う必要のある税金について知っておきましょう。
【空き家にかかる税金】
もし使用していない不動産にそれだけの税金を払うなら、所有者はかなりの負担になります。そのため、無料だとしても節税のために不動産を手放したいのです。
無料ということは、立地が悪い可能性があります。例えば、都心からかなり離れていて通勤に支障がある区域、最寄り駅までの距離が遠いなどといった理由で、空き家になっているという物件も多いです。
しかし、今の時代テレワークやフリーランスといった場所にとらわれない働き方が世間に浸透しています。交通の便が悪く空き家になっている物件でも、ライフスタイルが自由な方にとっては、静かで住みやすい環境を無料で整えられるメリットはあるでしょう。
無料の空き家は事故物件の可能性も高くなります。事故物件とは、過去に入居者が何かしらの原因で死亡する事件が起きた物件のことです。そういった物件を所有するオーナーには、購入希望者に諸事情があることを伝える責任があります。
事故物件は、どんなに安価で売り出しても買い手がつかないどころか、不動産会社が売値をつけられないことも多々あります。そのため不動産を処理するために、無料で譲渡するオーナーも多いのです。
たとえ無料で入手できたとしても、管理費はかかります。具体的には、害虫・害獣による建物の損傷の修繕費などです。「誰も住んでいないから、無視しておけば良い」と考える人もいるかもしれませんが、以下のような理由で対処しないわけにはいきません。
【空き家を放置できない理由】
無料で手放したいと考えているオーナーの多くは、住みもしない物件に管理費がかかる状況から逃れるために、あえてお金を取らずに物件の提供を考えているというケースもあるようです。
無償譲渡の空き家の大半は、「値段のつかない空き家」になります。住宅の損傷が激しかったり、設備が故障していたり、そのままでは使えない物件が多いのが事実です。
そのような物件を居住やビジネスに活用するとなると、リフォーム・リノベーションなどをおこなう必要があります。規模や導入する設備にもよりますが、リフォーム・リノベーションの内容次第では1,000万円以上の修繕費が必要になることもあります。
できるだけ費用をかけずに物件を入手したにも関わらず、高額なコストがかかってしまっては本末転倒です。事前に物件の状態を診断し、修繕費用やリフォーム費用をある程度見積もり、購入する場合と比べてどちらがお得かを確認しておきましょう。
不動産売買においては、不動産仲介業者が取引の間に入って必要な手続きや書類作成をおこなってくれます。
しかし、個人間で空き家の無償譲渡のやりとりをおこなう場合、書類作成などをすべて自分たちでおこなわなければいけません。譲渡契約書の作成や登記関連の書類のやりとりなどを専門家のサポートなく、すべて自分たちでおこなうのはとても難しいです。書類作成の時間だけでなく、書き方や手続き方法を調べるのも簡単ではないので、時間や手間がかかることをあらかじめ知った上で作業をおこないましょう。
空き家は、住む以外にもさまざまな活用方法があります。なかには無料で手に入れた物件でビジネスをおこない、収益を出しているケースも存在します。 この章では、無料の空き家を活用した、以下のようなビジネス例を紹介していきます。
【無料の空き家を活用したビジネス例】
初期投資がかからない0円空き家を利用して、地域の交流を深めるためのスペースを運営する「コミュニティハウスビジネス」は近年よく見かけるモデルのひとつです。
主に高齢者や子どもをターゲットに設定し、コミュニティハウスでイベントをおこなうことで収益を上げています。シルバーセンターや子ども会、民間学童施設など、その地域の人が集える場所にすれば地域の活性化にもつながります。
無料の空き家をリフォーム・リノベーションして民泊や宿泊施設として経営することも、収益の期待できるビジネスです。
通常の住宅をリフォームして近代的な民泊をすることもできますし、古民家の良さを活かした趣のある宿泊施設にして、農業体験や田舎暮らし体験が満喫できる宿を経営することもできます。その他にも、広さを活かした一棟貸しなどで、企業の研修合宿に使う施設として展開することも可能です。
ただし、空き家をホテル・旅館業や簡易宿泊所にする場合には、営業許可が必要になります。ホテル・旅館業や簡易宿所は旅館業法、民泊は民泊新法に基づき許可を得る必要があるので、調べておきましょう。
近年、レンタルオフィスやコワーキングスペースの需要はかなり上がっています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、会社に出社しなくても良いテレワークや場所を選ばないフリーランスでのワークスタイルが普及してきたのが主な要因です。そのような層をターゲットとしたコワーキングスペースのビジネスも収益化しやすいでしょう。
特に、海や山の近くであれば、「ワーケーション」をおこないたい客層のニーズにも当てはまります。ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を掛け合わせた造語で、旅行などで訪れるような場所で休暇中に働くというワークスタイルです。観光地として人気のエリアで空き家を手に入れたのであれば、ワーケーションを前面に押し出したコワーキングスペースを展開できるでしょう。
近年、自然との触れ合いや環境保全への関心が高まり、キャンプの需要が増えています。
そのようなターゲットに対して、グランピング施設を運営するのもおすすめの空き家活用方法といえます。グランピング施設として活用するためには、内装などをリノベーションする必要があるため、資金はかかってしまいます。しかし、高単価なビジネスであるため、収益化も難しい話ではないでしょう。
ここまで無料の空き家について解説してきましたが、では実際にどのようにして物件を見つければ良いのでしょうか。大きく分けて、以下の2通りが考えられます。
【無料の空き家の見つけ方】
それぞれ解説していきます。
アナログな方法ではありますが、住んでみたい土地へ出向き、空き家を持っている人を探して譲ってもらう方法です。労力をかなり使いますが、実際に土地に出向くことで周辺環境やその土地の雰囲気がわかるため、確実な見つけ方といえます。
また、現地に行けば地元民との交流を作ることもでき、良い物件と巡り会える可能性もあります。移住者を誘致している団体や地方自治体に相談すれば、空き家情報を聞くことも可能です。
地道ではありますが、地方などではインターネットを使って募集できない人もいます。そのような方に出会えるという意味ではおすすめの方法です。
最近では、インターネットを駆使した空き家専用のマッチングサイトが数多く存在します。最も有名なものでは、「空き家バンク」というサイトが挙げられます。
「空き家バンク」とは、地方自治体が運営しているサービスです。例えば、東京都では「東京都空き家情報サイト」というマッチングサービスを提供しています。手数料をかけずに気軽に見つけることができるため、おすすめの検索方法です。住みたい地域が決まっていれば、住みたい自治体のホームページに「空き家バンク」のページがないか調べてみましょう。
また、空き家バンクは、不動産会社などの民間企業が運営しているサイトもあります。民間企業の空き家バンクでは、全国の無料の空き家を検索することがでるため、住みたい地域がまだ決まっていない方におすすめの検索方法です。 いずれにしても、上記のようなマッチングサービスを活用することで、効率的に無料の空き家を見つけられるでしょう。
今回は、無料の空き家について解説してきました。購入費用をかけず、0円で物件を入手できる無償譲渡という仕組みは一見魅力的です。しかし、無償譲渡では手続きに手間や時間がかかるだけでなく、「0円でも良いから空き家を手放したい」という訳あり物件である可能性が高いのが現状です。無償譲渡を検討する際は、「0円でも良いから空き家を処理したい理由」を確認した上で、注意して空き家を手に入れましょう。
また、手に入れた空き家をビジネスに活用するなど、手に入れた後のこともしっかり検討してから、譲渡してもらうようにしましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。