住宅ローン返済中の家を売却する方法!注意点や失敗しないためのポイントを解説

住宅ローン返済中の家を売却する方法!注意点や失敗しないためのポイントを解説

「ローン返済中の家って売却できないの?」「できれば家を売って、ローン残債の足しにしたい」。


ローン返済中の家を売りたいと考えている人の中には、上記のような悩みや不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。結論からいうと、住宅ローンが残っていても売却することは可能です。ただし、通常の不動産売却とは異なる方法で売却しなければなりません。


この記事では、住宅ローン返済中の家を確実に売るために必要なことや、注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。

ローン返済中の家を売る前にまず確認すること

住宅ローン返済中の家を売却するためには、「抵当権」の抹消が必要になります。抵当権とは、金融機関が住宅ローンを返済してもらうために家を担保にする権利のことです。

ローン返済中の家を売る際には、以下のことを確認しておきましょう。

【ローン返済中の家を売るために必要な準備】

  1. 正確なローン残債額を調べる
  2. 不動産会社に売却額の査定依頼をする
  3. 売却額で残債を完済できるか確認する
  4. 家の名義を再確認する

まずは、ローンの残債額と家の売却相場を把握して、家を売ったお金でローンが完済できるかどうかチェックする必要があるのです。

正確なローン残債額を調べる

ローン返済中の家を売却するためには、まず「売りたい家の住宅ローンが現在どのくらい残っているのか」を正確に把握しておく必要があるでしょう。

住宅ローンの残債額を確認する方法は、以下の通りです。

  1. 郵送される「残高証明書」を確認する
  2. 「返済予定表」を再発行してもらう
  3. Webサイトを確認する
  4. 窓口で確認する

住宅ローンの残債額は、上記の4つの方法で確認できます。普通預金などの残高の確認方法とは違い少々特殊なので、しっかり覚えておきましょう。

「残高証明書」は確定申告用の書類で、毎年10月頃に郵送されるものです。紛失した場合は窓口でも発行してもらえますが、通帳・印鑑・本人確認書類などが必要になります。さらに、再発行には手数料もかかるので、注意が必要です。

「返済予定表」は、固定金利なら最初に借りたとき・変動金利なら金融機関から毎年郵送されます。どのように返済していくのかという返済計画がわかりやすく記されているため、ローンの見直しに役立つ書類です。

また、多くの金融機関では、インターネットバンキングサービスが提供されています。加入手続きを済ませれば、残債確認をWeb上でおこなうことも可能です。

ただし、インターネットバンキングの展開がない金融機関も存在しているため、一度調べてみるのがよいでしょう。

不動産会社に売却額の査定依頼をする

住んでいる家を売り、その売り上げでローンを返済しようと考えている場合は「家がいくらで売れそうなのか」も知っておかなければなりません。家の現在時点の売却相場を把握するため、不動産会社を探して査定を依頼しましょう。

不動産会社の査定は、家そのものの状態や価値だけでなく、立地や周辺環境などの要素も加味して総合的に判断されるものです。

物件に関する知識量・得意分野・査定時に重視するポイントは、不動産会社によってさまざまなので、金額にもばらつきが出ます。

そのため、複数社に査定を依頼して見積もりを比較して相場感を把握するのがよいでしょう。可能であれば2〜3社に依頼して比較検討してください。対応や金額に納得できる業者がいれば、媒介契約先の候補として考えておきましょう。

複数社の査定金額をまとめて比較できる「不動産一括査定サイト」を利用するのもおすすめです。

売却額で残債を完済できるか確認する

住宅ローンの残債額と家の売却相場が把握できたら、双方を照らし合わせて差額を確認してください。

その際は売却にかかる経費の計算も忘れずにおこないましょう。売却金額から諸経費を引いた残りが、ローン返済に充てられる「手残り金額」となるためです。

手残り金額=売却金額-諸経費

手残り金額から住宅ローンの残債額を引いた際に、プラスになることを「アンダーローン」・マイナスになることを「オーバーローン」と呼びます。

アンダーローンとなる場合は、計算上売却資金でローンが完済できることになるでしょう。ただし、「査定額で売却できることが保証されている」というわけではありません。

査定額は、あくまでもその不動産会社が予想する「売れそうな金額」なので、実際は予測と異なるケースもあるのです。また、売却時には「売却金額の5%程度の仲介手数料」がかかります。

本格的に売却を検討する場合は、査定してくれた不動産会社は「家の売却利益でローン完済できるかどうか」をあわせて相談しておけるとよいでしょう。

家の名義を再確認する

最後に、念のため家の名義とローンの名義を確認しておきましょう。特に、住宅ローンの返済中に離婚した場合は、権利関係がややこしくなっているかもしれません。建物の所有名義は変更できるため、共同名義の場合は離婚時に財産分与が可能です。しかし、ローンの名義や連帯保証人の名義は原則変更できないので注意しましょう。

マイナスの財産となる住宅ローンは財産分与できないため、離婚後も名義人に支払い義務が生じます。夫婦連名で住宅ローンを組んでいる場合は連帯債務となり、離婚に関係なく支払い義務が継続されることになるため注意が必要です。

家の売却金額がアンダーローンとなるのであれば、家を売却してローンを完済し、残った金額を財産分与すれば解決するでしょう。しかし、オーバーローンとなる場合は、家を売却してもローン債務だけが残ってしまいます。

そのため、どちらか一方でローンを引き受けて売却せずに家に住み続けるか、あるいは後述する「任意売却」で家を手放すか、相手と協議しなければならないでしょう。

オーバーローンの家を売るときの方法と注意点

住宅ローンの残債が家の売却利益よりも高くなってしまった場合は、残念ながら家を売ったお金でローン完済はできません。このようなケースは「オーバーローン」と呼ばれます。

オーバーローンになってしまった場合は、払いきれなかった残債を何かしらの方法で補填しなければなりません。オーバーローンの家を売る方法には、以下のようなものがあります。

  1. 手持ちの資金からオーバーローン分を補填して完済する
  2. 住み替えローンを上手に活用する
  3. 完済できない場合は任意売却
  4. 無担保ローンを利用する

ここからは、上記4つの手段とその注意点について解説していきます。住宅ローンの完済に目処が立たない状態で家を売却することは簡単ではありません。それなりの覚悟が必要になるということは留意しておいてください。

手持ちの資金からオーバーローン分を補填して完済する

オーバーローンの家を売るベストな方法としては、売却代金に自己資金を上乗せしてローン残債を一括返済する方法が挙げられます。

ただし、この方法を採用するには、自己資金が潤沢である・差額が少額だったという条件に該当する必要があるでしょう。

自己資金でオーバーローン分を補填することにより、ローン中の家でもスムーズに売却できるメリットがあります。返せる資金さえ用意できれば誰でもすぐにローンを返済でき、面倒な手続きなどは必要ないためです。

自己資金で足りない場合は、両親・家族などに相談してみるのも1つの方法でしょう。

住み替えローンを上手に活用する

十分な自己資金が用意できず、売却利益と合算しても払いきれない場合は「住み替えローン」で一括返済する方法もあります。

住み替えローンとは、新居購入の際に、住んでいた家のローン残債を新居のローンと合算して支払っていく方法です。住み替えローンを利用するメリットには、以下のようなものがあります。

【住み替えローンのメリット】

  • 融資条件によっては金利が低くなる可能性がある
  • 完済できる手持ち資金がなくても住み替えできる

ただし、以下のデメリットにも留意しなければなりません。

【住み替えローンのデメリット】

  • 借入金額が大きくなる
  • 審査が厳しい

借入金額が大きくなる分、通常の住宅ローンと比べると当然審査も厳しくなるでしょう。支払える見込みがあるだけの収入があることが大前提です。

さらに、審査では過去の借入金・返済状況などもチェックされるため、信用情報がクリアな人でないと難しいかもしれません。

審査に通らなかったときにかなりのリスクを追う可能性が高いため、住み替えローンに期待して、安易に現在の家を売り新居を買ってしまうのは危険です。

資金計画・返済計画に余裕がありそうか、貯蓄と平行できそうかなど、十分な検討が必要になるでしょう。住み替えローンを利用したい場合は、まず取り扱いのある金融機関に相談してみることをおすすめします。

完済できない場合は任意売却する

半年以上住宅ローンを滞納してしまっている人は、「任意売却」することも可能です。

通常は住宅ローンを完済し、抵当権を抹消しなければその家は売却できません。ただし、自己資金や家の売却利益を使っても完済できない場合は、抵当権を抹消して売却できるケースもあります。

任意売却が利用できるのは、金融機関が承諾してくれた場合のみです。そのため、認めてもらえなければ売却できません。

任意売却をする流れは以下の通りです。

  1. 金融機関から督促状が届く
  2. 不動産会社に任意売却の相談をする
  3. 不動産会社に査定してもらい、家の売却価格を把握する
  4. 金融機関と交渉する
  5. 不動産の売却活動を開始する
  6. 買主と売買契約を結び、引き渡す
  7. 債務整理をおこなう

返済が1〜2か月遅れると支払いを促す通知が届き、その後も改善がみられない場合は督促状や催告書が届きます。書類が届いたら、任意売却の実績が豊富な不動産会社を探して見積もりを依頼しましょう。

原則、金融機関との交渉は不動産会社が対応してくれます。金融機関に承諾してもらえなければ任意売却できないため、金融機関が得られるメリットが大きくなるよう交渉しなければなりません。

交渉が成立したら不動産会社に仲介を依頼して家を売却します。家を売却する手順は一般の不動産売却と同じです。家の売却が完了したら、残りの返済額を整理するために債務整理をおこないましょう。

無担保ローンを利用する

オーバーローンの家を売却する手段として「無担保ローン」を利用するという方法もあります。

無担保ローンは、借入時に担保が必要なく、使い道に制限のない「フリーローン」と呼ばれるものです。金融機関によっては家に抵当権を設定しないローン商品を用意しているところもあります。

無担保ローンを借り入れることにより、住宅ローン残債を一括返済できるのがメリットです。自己資金がない人でもローン中の家を売ることができるので、先述したどの方法でもローンが返せない場合には、利用を検討してみてもよいでしょう。

ただし、無担保ローンの借り入れはデメリットが多いため、よく検討してから利用することをおすすめします。デメリットは以下の通りです。

【無担保ローンを借り入れするデメリット】

  • 借り入れ可能額が低い(300~700万円程度が上限)
  • 金利が高い(4.5~15%)
  • 審査が厳しい(貸し倒れ防止)
  • 取り扱っている金融機関が少ない

無担保ローンはその名の通り「担保が必要ない」という特徴があります。これは一見メリットのように感じられますが、デメリットにもなるのです。

担保を設定しない分、返済不可となった際のリスク管理がしっかりと設定されているため、借り入れ上限が低く金利がかなり高い傾向があります。商品によっては通常の10倍以上の金利が設定されているものもあるため、利用時は注意が必要です。

住み替えるなら「売り先行」がおすすめ

住宅ローンが残っている場合は、「売り先行」の売却方法がおすすめです。

売り先行とは、今住んでいる家を売ったのちに新居を購入する買い替え方法のことを指します。一方で、先に住み替え先の新居を購入してしまってから今の家を売る方法が「買い先行」です。

売り先行と買い先行のメリット・デメリットについては、以下の表をご覧ください。

売り先行 買い先行
メリット 前の家の売却金額を買い替え資金にできる 買い替え先の家を確保できる
デメリット 買い替え先を購入するまで仮住まいが必要 家が売れない場合は2重ローンになる
また買い替え特約が解除される

上記のどちらが適しているかはその人の状況にもよりますが、買い替えの資金源が必要な経済状況なら、売り先行で家を売却するほうが安全でしょう。

ただし、売り先行の場合は、内覧対応などの売却活動をその家に住みながらおこなわなければなりません。

ローン返済中の家の売却を失敗しないためのポイント

最後に、住宅ローン返済中の家を確実に売却するために押さえておくべきポイントについて紹介します。

【失敗しないためのポイント】

  1. 家を売ると決めたら早い段階で不動産会社に相談する
  2. 税金特例を活用し売却にかかる税金を抑える
  3. 家の売却時期を見極める

ローン完済のためには、補填する金額が少しでも多いほうが好ましいものです。そのため、可能な限り経費を削り、家をなるべく高く売却することが重要になります。

売却やローン返済に失敗しないためにも、上記のポイントを押さえて売却活動をおこないましょう。

家を売ると決めたら早い段階で不動産会社に相談する

ローン中の家を売ると決めたら、なるべく早い段階で不動産会社に相談することが大切です。

ローンが残っている住宅を手放す際には、さまざまな準備や対策が必要になります。早い段階で依頼すれば、その分色々な対策を一緒に考えてもらえるので、早ければ早いほど選択肢は広がるでしょう。

不動産会社には、住宅ローンアドバイザーやファイナンシャルプランナーなど、住宅ローンに詳しい専門スタッフが在籍しているところもあります。そのため、物件の価格を把握した上で相談に乗ってもらえるメリットがあるのです。

間違った選択をして取り返しがつかなくなる前に、売却を意識し出したタイミングで相談するのがベストでしょう。

税金特例を活用し売却にかかる税金を抑える

家の売却後は、売却益に応じて譲渡所得税を支払わなければなりません。売却に関わる税金をいかに抑えるかも重要なポイントです。

家の売却時に利用できる特例には以下のようなものがあります。

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年以上の軽減税率特例
  • 損益通算の特例
  • 特定の住居用財産の買い替え特例
  • 買い替えで損失が出た場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

上記の税金特例は、適用条件をクリアしていれば、税金の一部または全額が控除されるメリットがあります。

特に、マイホームを売却したときに利用できる「3,000万円特別控除」の特例は、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金が全額控除されるので、積極的に利用しましょう。

また、売却金額から諸経費を引いたときにマイナスになってしまう「譲渡損失」が出てしまった場合は、その赤字を他の所得と合算して減税できる「損益通算の特例」が利用できます。

詳しくは国税庁のホームページを確認してみてください。

家の売却時期を見極める

ローン返済中の家を確実に売却するためには、家の売却時期を見極めるテクニックも必要になるでしょう。なるべく手元にお金が残るように工夫するためには、タイミングを図ることも大切です。

ローン中の家を売却する際には、以下のタイミングに留意しましょう。

  • 築20年以内(資産価値がプラスのうちに売る)
  • 税金が抑えられるタイミング(控除の条件に該当するように工夫)
  • 不動産取引の繁忙期(3月と9月)

家の状態や販売目的によって、的確な販売時期も左右されるものです。

不動産の繁忙期にアピールする・特例の適用条件に該当するまで待ってから売るなど、不動産会社とよく相談して戦略を練り、タイミングを狙いましょう。

まとめ

ローン返済中の家を売却する方法は1つではありません。自分の経済状況や将来設計などをよく考慮して慎重に選びましょう。

また、確実に売却するためには、住宅ローンの知識が豊富な不動産会社になるべく早く相談することが大切です。

ただし、どの方法を選択したとしても、原則ローンの支払い義務が免除されることはないため注意してください。

プロフィール
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
関西学院大学法学部法律学科卒。

宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。
数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。