戸建てが売れない原因としては、主に以下の9個の要素が挙げられます。
売れない理由には、戸建てそのものの条件が悪いケースだけでなく、周辺環境に左右されるケースも存在します。さらに、売却活動の時点で販売機会を逃してしまっている可能性も考えられるのです。
対策を練るためにも、まずは戸建てが売れない理由についてしっかり把握しておきましょう。
立地や周辺環境などの条件が悪いと、どんなに戸建ての条件が良かったとしても売れづらくなってしまうでしょう。「ここに住みたい」と思ってもらえなければ、物件の需要も低くなってしまいます。
立地や周辺環境がマイナス評価となる要因は、以下の通りです。
戸建てに住む場合は「その場所で長く生活していくこと」が前提になるはずなので、周辺環境の利便性や快適性がかなり重視されます。上記の条件を含む立地は、子育てが新居探しの目的であるファミリー層から特に敬遠されてしまうでしょう。
また「嫌悪施設」とは、その土地に住むうえで不快に感じる施設の総称です。嫌悪施設には以下のようなものが該当します。
周囲に上記のような施設があり「悪影響を受ける立地」だと判断されてしまうと、どんなに良い戸建てでも購入を躊躇されてしまう傾向があります。
戸建てが売れない原因としては、売り出し価格が相場より高いことも考えられるでしょう。
売りたい物件の金額が周辺の競合物件よりも高く設定されていると、よほど気に入られない限、り候補から外れてしまいます。購入検討者は複数物件を検討して購入を決めるため、その土地の相場感を把握していることが多いのです。
売れなければ値下げすればよいと安易に考えるのはおすすめしません。売り出し期間が長い物件は「売れ残り」のイメージがつき、魅力の低い物件だと捉えられてしまうのです。
さらに、一度値下げした経歴のある物件は、値下げ交渉されやすくなるデメリットもあります。結果として、相場よりも低い金額で売却する羽目になったという人も少なくありません。物件は鮮度が大切だといっても過言ではないでしょう。
不動産で最も売れやすいのは「土地の広さや建物の大きさが一般的な物件」です。坪数の平均値については以下を目安にしてください。
都市部と郊外で多少の差はありますが、戸建てに適した平均坪数は35〜55坪程度です。これよりも大きすぎる、または小さすぎるケースだと売れづらい傾向があります。
購入検討者は、「大体このくらいの大きさの戸建てに住みたい」というマイホームへの理想を持っています。住宅展示場や内覧会などに足を運び、具体的なサイズ感を把握している人も少なくありません。
たとえば、狭い敷地にぎゅうぎゅうに建っている一戸建ての場合は、部屋が狭い・日当たりが気になるなどのデメリットが懸念されるでしょう。広い庭付きの家に住みたい人の需要からも外れてしまいます。
反対に、敷地が余りすぎていても需要は低くなるでしょう。土地の維持管理にコストがかかることや、防犯上の問題から懸念され売れづらくなってしまいます。
中古物件が売れない理由として最も多いのが「売り出す物件が古い」ことです。築年数が古い戸建ては比較的安く購入できるものですが、「住み始めてからの不具合が気になる」という理由で敬遠されてしまう傾向があります。
たとえば、キッチンやバス・トイレなどの水回り設備や、屋根・外構・外壁などの設備です。これらは経年劣化しやすく、定期的にメンテナンスが必要になるため、築年数が古いと改修費用・維持費用がかさんでしまうでしょう。
また、木造戸建ての資産価値は築20年でゼロに近くなるといわれています。もちろん、法定上の耐用年数なので、実際に住めなくなるというわけではありません。しかし、せっかく購入するなら資産価値の高いほうを選択したくなるのが買い手の心理です。
家は築年数と共に少しずつ劣化していくので、定期的なメンテナンスが必要不可欠になります。メンテナンスを怠っている物件は、実際の築年数よりも古く見えるため敬遠されやすいでしょう。
購入検討者は「適切なメンテナンスがされていない=見えない部分の劣化も進んでいる」と捉えます。目立つ傷や設備故障などが放置されたまま売りに出されている戸建てを、わざわざ購入したいと思う人は少ないでしょう。
特に、雨漏りは敬遠される傾向があります。雨漏りは木材を伝ってどんどん浸食していくため、早期対策しないと劣化が進んで、躯体の腐敗や柱の損傷・シロアリ被害などを引き起こすためです。
パッと見でわかるような問題点は、家の保存のためにも早急にメンテナンスする必要があるでしょう。ただし、そのまま売りに出す場合は、修繕費分の費用を値下げする対策を取る方法もあります。
また、経年劣化以外のダメージが理由である場合は、ある程度値引きすることで納得してもらえることもあるようです。いずれにしても、メンテナンスが問題になっている場合は、どのように対策するのかを不動産会社とよく相談してください。
売却活動をしているのに反応が悪い場合は、物件の内容がうまくアピールできていない可能性もあるでしょう。アピール不足の例としては、以下のようなことが挙げられます。
【アピール不足の例】
購入検討者は、まず情報だけで物件を判断して興味を持ちます。内覧まで進めるのはイメージの湧きやすい物件です。そのため、広告などには売りたい戸建ての基本情報だけでなく、魅力的に感じられるようなアピールポイントもあわせて掲載するのがよいでしょう。
売り出している戸建てに問い合わせがない場合は、「仲介を依頼している不動産会社との相性が悪い」ということも考えられるでしょう。適切な売却活動をしてもらえないと、物件の魅力は伝わらないためです。
さらに、物件の情報が広く開示されなければ、購入検討者は物件があること自体気付かないかもしれません。そもそも多くの買い手に知ってもらわなければ、仲介契約の意味がないのです。
不動産会社との媒介契約を締結する方法には、以下のようなものがあります。
レインズとは「不動産流通標準情報システム」の通称です。レインズには、物件情報を効果的に拡散できるメリットがあるのですが、一般媒介契約には登録義務がありません。場合によっては催促しないと掲載されないケースもあるようです。
このように、契約形態によって不動産の対応は異なります。特に一般媒介契約は、自由度が高いぶん販売活動や進捗報告の決まりが厳しく定められていないというデメリットがあるのです。
そのため、担当者との相性が悪く思うように連携できていないケースでは、販売活動を怠り放置されている可能性も考えられます。売主への報告義務がないことを理由に、積極的に動いてくれない業者もいるのです。
仲介契約後も業者の動きが感じられないなら、こちら側からこまめに連絡を取るよう心がけ、進捗を確認するよう努めましょう。
不動産の売買をスムーズにするためには、タイミングも重要な要素です。不動産の売却には「経済」「季節」の2つのタイミングがあります。現時点で反応が鈍いと感じるなら、売却時期を見直し、需要が高まる時期にあわせて再度売り出すことも視野にいれるとよいでしょう。
不動産の価格を決定する要因として、最も大きいのが「マーケットの市場動向」です。景気の上下とマーケットの動きは密接に関係しているため、市場は常に変動しています。
マーケットの動向は、オリンピックや自然災害・流行病などに大きく影響されるため、運的要素が強いものです。そのため、自分が売りたいタイミングに合わせるのは難しいでしょう。
ただし、タイミングを調節できる要素もあります。賃貸住宅の需要が高まる時期に合わせて売却することで、多くの人に見てもらいやすくなるのです。マーケットが活発になる(需要が高まる)季節は、4月・9月のタイミングです。
マンションと比較すると、戸建ての需要は顕著ではないものの、「子どもの進学に合わせて新居に住み替えたい」という声も少なくありません。そのため、4月に入居を希望する買主の動きが出やすい1〜3月は、取引が活発になる傾向があるようです。
広告に反応がある、あるいは内覧までは問い合わせがあるのにもかかわらず、契約には至らないというケースでは、内覧時の対応に問題があるかもしれません。
家の中が散らかっている、あるいは敷地内の手入れ・掃除が行き届いていないという物件は、状態が悪いと判断されてしまいます。また、見せられない場所がある物件は、状態が正確に把握できないことへの不満・不信感が募り、契約への意欲を失う原因となるでしょう。
内覧時は、物件をくまなくチェックしてもらう気持ちで対応するよう心がけてください。
さらに、忘れがちなのが接客態度です。物件のイメージとは直接関係ないように思えるかもしれませんが、買主にとっては重視すべきポイントになります。
愛想がない・態度が悪い・子どもやペットが騒がしく集中できないなどのマイナスイメージがあると、物件よりも内覧時の印象が強くなってしまい、契約に繋がりにくいようです。
売れにくい戸建ての物件をなんとかして売りたいという場合は、どのような対策を取ったらよいのでしょうか。ここからは、戸建ての物件を売れやすくするためのポイントを6つ紹介していきます。
それぞれの原因にあった戦略について詳しくみていきましょう。
過疎地や周辺環境に問題がある戸建ての場合は、地域密着型の不動産会社に依頼するのがおすすめです。地域に精通した地元の業者なら、そのエリアならではの特性や長所を把握しているため、的確な売却戦略を立ててくれるメリットがあります。
たとえば、賃貸に適していない物件でも、投資目的の不動産として売り出すことで成約につながるケースもあるのです。
さらに、地域密着型の業者は、地元での人脈を駆使して買主になってくれそうな顧客を探します。なかには、既に多くの顧客を抱えている業者も存在するため、通常よりもスムーズに売却できる可能性があるのです。
住宅診断を受けて物件の状況を正しく把握し、対策を練る方法もあります。
「住宅診断(ホームインスペクション)」とは、専門家による建物状況調査のことです。住宅診断士が、第三者の立場から住宅の劣化状態・欠陥の有無を確認します。
住宅診断を受けることにより、売りたい戸建ての現状が把握できるのがメリットです。さらに、今後どんなメンテナンスをする必要があるのか、リフォームするコストはどのくらいかなどのアドバイスももらえます。
また、住宅診断を受けていることは「問題ない物件」という買い手へのアピールにもなるのです。中古住宅の購入においては「品質や劣化状態が気になる」という声が多いものですが、住宅診断は購入検討者を安心させる要素になります。
つまり、住宅診断をしておくことで、同じ状態や築年数の物件と比較したときに有利になるのです。住宅診断の費用は業者によって変動しますが、目安相場については以下を参考にしてください。
機材を使用した診断の場合は耐震性のチェックもできるため、やや金額が高くなります。
不動産の相場は常に変動しているため、売り出し当初の相場と現在の相場が異なっている可能性も考えられます。再度正しい相場を算出する際には、「一括査定」を利用するのがよいでしょう。
不動産会社の査定は、基本的に、「3か月程度で売れそうな金額」に設定されています。そのため、すでに売り出してから3か月以上経過している場合は、再度査定が必要です。
一括査定は、複数の不動産会社から見積もりを取れるため、相場感を把握しやすいメリットがあります。不動産会社には取り扱い分野に得手不得手があり、金額がばらつく傾向があるので、1社に絞らず複数社に依頼するのがよいでしょう。
また、なかには媒介契約を取りたいがために、わざと高く見積もっている悪徳業者も存在します。一括査定を利用すれば、明らかに的外れな見積額を除外できるため、正しい相場に近い金額を把握できるでしょう。
広告は、購入を検討している人にとって「最初に目にする物件情報」です。いかに興味を引き、目を留めてもらえるかが重要になるため、基本的な内容だけでは不十分でしょう。
売りたい戸建ての魅力が伝わるよう、購入検討者が気になっている情報を漏れなく記載するよう心がけてください。物件の広告には、以下のような内容を盛り込むことをおすすめします。
【物件の広告に必要な内容】
広告に掲載する写真は、鮮明で見やすく明るい印象のものを選びましょう。掲載数が少ないと雰囲気が伝わりづらいため、可能な限りたくさん掲載するようにしてください。
購入希望者が問い合わせる物件を選ぶ際に重視するのは、「写真の多さ」だといわれています。外観・内観だけでなく、周辺環境の写真なども掲載できるとよいでしょう。
また、物件でアピールしたいポイントをキャッチコピーにしてもらうのもおすすめです。眺望や日当たりの良さ・静かで過ごしやすいなど、住んだことがある人でないとわからない魅力があれば、積極的に発信し盛り込んでもらいましょう。
内覧の印象を良くするためには、ハウスクリーニングを利用するのも1つの方法です。自分でも丁寧に掃除すれば対応できないことはないのですが、手間暇かけられない・綺麗にできる自信がない場合は、プロに依頼するのがよいでしょう。
以下は、ハウスクリーニングを依頼した際の費用目安です。
購入検討者の多くは、水回り設備の汚れや老朽化を気にする傾向があります。そのため、水回り設備を清潔にするだけでかなり印象が良くなり、成約につながりやすくなるのです。
不動産会社に販促を促しても改善されない、または囲い込みをされているというケースでは、思い切って不動産会社を変更することをおすすめします。契約している間にも物件の価値は下がっていくため、時間を浪費していることになりかねません。
先述したように、不動産会社ごとに得意とする分野は異なります。そのため、売りたい一戸建てと同条件の物件の取引が得意な不動産会社に変えた途端、とんとん拍子で売却が決まることもあるのです。
現在の不動産会社との契約が「一般媒介契約」である場合は、重複契約が可能な契約形態なので、すぐに新しいところを探しても問題ないでしょう。
ただし、専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合は、重複契約ができない決まりになっているため、注意が必要です。原則3か月の契約期間が終了するまで待たなければなりません。
ただし、以下のような「不当行為」をおこなった場合は、期間内に解除することが認められています。
「囲い込み」とは、不動産会社が故意に情報を隠し独占することです。仲介手数料を確実に得るため、他社には紹介せず売却物件を抱え込むことを指します。
上記に該当する場合は、その事実を不動産会社に告知し、契約解除をおこなうべきでしょう。
最後に、戸建てが売れないときにやってしまいがちなNG行動を3つ紹介していきます。
【一戸建てが売れないときにやってはいけないこと】
上記の行動はどれも高額なコストがかかるものです。そのため、いざ物件が売れたとしても、手元に残るお金が減ってしまうかもしれません。最悪損失が出てしまう可能性もあるでしょう。
検討している場合は決して自己判断でおこなったりせず、しっかり不動産会社に相談してから実行するようにしてください。
リフォームは、本当に必要なときのみおこなうようにしてください。不動産会社や住宅診断士によく相談し、プラスになるのか検討したうえで実行しましょう。特に、おおがかりな修繕や改修はマイナスに作用する可能性が高いので、自己判断は危険です。
もちろん、明らかな損傷や強い汚れがある場合は、そのままでは売れません。改修工事は必要になりますが、するとしても部分リフォームに留めるべきです。
安易にフルリフォームするのはコストがかかりすぎてしまい、売却後の利益がほとんど出ない・マイナスになる可能性が高いでしょう。
また、老朽化が激しい戸建ては、フルリフォームより解体したほうが良いケースもあります。さらに、売主の感覚でリフォームした物件は、購入者のニーズと合致しづらい可能性もあるのです。
「一戸建てを売るなら空き家にしておいた方がいいのではないか」と考える人も少なくないでしょう。空き家にするメリットには、以下のようなものがあります。
主に、「内覧時の印象を良くできる」ことがメリットです。購入検討者が隅々まで遠慮なくチェックでき、すぐに入居できるイメージがつくため、売れやすくなる傾向があります。
一方、空き家にするデメリットは、以下の通りです。
空き家にするために引っ越すと、金銭的負担や空き家の管理労力などの高額なコストが発生します。いつ売却が成立するか不明瞭なので、両方の支払いがいつまで続くか見通しが立たないのがデメリットです。
物件が売れる前に引っ越すのは、資金に余裕がある場合でないとおすすめできません。
建物が老朽化して価値がないように思えるケースでも、安易に解体してしまうのは避けたほうがよいでしょう。本当に解体が必要かどうかは、不動産会社とよく相談してから決めることをおすすめします。
解体すると得られるメリットは、以下の通りです。
戸建てを解体して更地にすることで、新築を建てる土地を探している人の目に留まりやすくなります。しかし、解体して更地にすることにより、以下のようなデメリットも発生するのです。
木造の戸建てにかかる解体費用は、100万円前後です。さらに、更地にすると「住宅用地の軽減措置」が適用されなくなるため、固定資産税が上がるというデメリットがあります。
もし解体をおこなう場合は、不動産会社とよく協議したうえで実行しましょう。解体費用を上乗せした金額で売却することを前提に、「更地渡し応相談」として売り出すこともできるためです。
さらに、売主・買主のどちらの負担で解体するのか、相談して決めることもできます。そのため、安易に解体してしまうのはNGです。
戸建てを売りに出しているのになかなか売れないという際には、まず原因を解明するよう努めてください。中古不動産は、基本的に整理整頓して清潔感を保つように管理していれば、それ以上することはないはずなのです。
売れない原因が明確になったら、適切な対処方法を講じましょう。マイナスポイントを1つずつ取り除くことで、多くの買い手に見てもらえたり、物件に興味を持ってもらえたりします。ぜひ自身の売却活動に役立ててください。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。