家の売却で失敗しないためには、まずはいくらで売れそうかを知ることです。安すぎては損になり、高すぎては買い手がつきません。家の査定をしてもらい、適正な価格を知ることが大切です。自宅の査定をする方法には、主に以下3つの方法があります。
順に紹介していきます。
不動産会社は、それぞれマンション・中古住宅・エリアごとに、売却実績や得意分野が異なります。査定を一社だけにした場合、他社ではもっと高い査定をしてくれる可能性もあるため、面倒がらずに必ず複数社から査定してもらいましょう。
一社ずつ依頼するよりも、不動産の一括査定サイトを利用すると効率的です。必要情報を入力するだけで、一度に複数社に査定依頼ができるので時間も手間もかかりません。不動産会社を自分で探す必要もないので、まずは一括査定サイトからのスタートがおすすめです。
不動産の一括査定サイトによっては、電話番号を入力する項目があるため、後日営業電話がかかってくることがあります。個人情報を入力せず、だいたいの価格を知っておきたいだけであれば、査定シミュレーションがおすすめです。
査定シミュレーションでは、過去の不動産売買情報をもとに、AIが簡易的な査定額を割り出してくれます。
ただし、過去の売買情報をもとにした査定なので、景気の状況によっては現状とは異なる結果になることもあります。あくまで簡易的な査定であるため、正確な結果を知るためには不動産会社に細かく見てもらうのが一番です。
ネットで入力するだけの一括査定や査定シミュレーションは、あくまで仮の査定です。正確な査定金額は、不動産会社に見てもらう必要があります。
なかには悪徳な業者に当たってしまう可能性があるほか、不動産会社によって査定金額も数百万単位で異なるため、査定は必ず複数社に依頼しましょう。実際に査定を依頼した人の間では、査定依頼先は3社が多いようです。
また、査定価格の理由・根拠も確認しておいてください。納得いくまで丁寧に説明してくれる会社であれば、「この会社なら大丈夫かも」と信頼性の確認にもなります。逆に、説明がたどたどしい、強引に話を持っていこうとする会社は要注意です。
できる限り正確な査定額を出してもらうため、またスムーズに査定を終わらせるためには、事前の準備が重要です。
【査定前に準備しておくべきこと】
ここからは、家の査定前に準備しておきたい上記5つの項目を解説します。家の売却は早いほど高く売れるチャンスは高まります。十分に準備しておけば、売却までの慌ただしさは軽減されることでしょう。
必要な書類を揃えておくと、査定とその後の売却活動がよりスムーズになります。以下の資料を揃えておきましょう。
査定のときに、上記すべての資料が必要というわけではありません。しかし、売却手続きには必要となる書類です。査定の際に相談したいことも、上記の資料があれば不動産会社側が説明しやすくなります。
実際に売却活動が始まれば、物件によってはすぐに買い手がつくこともあります。「期日までに書類を用意してください」と言われて慌ただしく探し回るよりは、時間に余裕があるうちに用意しておきましょう。
不動産会社に査定をしてもらう前に、実際にいつ頃売りたいのか・いくらで売りたいのかを決めておきましょう。そのためにも不動産の一括査定サイトや査定シミュレーションで、だいたいの相場を知っておく必要があります。
住みながら売却したい場合や転勤などで転居が決まっている場合など、具体的に売却時期が決まっていれば、それに向けて計画的に売却活動を進められます。
売却までの期間は、短くても4か月はかかります。平均的な販売期間は3か月程度です。買い手が見つかった場合、引き渡しまでの期間は契約を結んでから1か月と考えておくとよいでしょう。
住宅ローンが残っている場合は、残り金額・期間も詳しく知っておく必要があります。
家の売却金額をローン返済に充てるのであれば、売却目標金額はローンの残り金額以上にしたいところです。ローンを一括返済して、新生活の資金も残ればなお安心です。
住宅ローン残債の確認は、ローンを組んだ金融機関窓口に確認してください。ローン確認サービスのある金融機関であれば、インターネットからでも簡単に確認できます。
査定時に、徹底した片づけやハウスクリーニングをする必要はありません。しかし、目立った傷や劣化があるような築年数の長い家の場合は、次の人が暮らしやすいようにある程度修繕されていたほうが、買い手はつきやすくなります。また、査定するときの印象も良くなるので、掃除はしておきましょう。
家具をすべて撤去した状態で販売するのであれば、クリーニングは不要です。住みながら売却活動をする場合は、生活感が出過ぎない程度に整えておくと、内覧にも対応しやすくなります。
壁紙や床の汚れなど、拭いて改善できるものは綺麗にしておきましょう。内覧時に印象が良くなります。
不動産売買の際、隣地との境界が曖昧な場所は、ご近所トラブルになりかねません。土地の境界線がはっきりしない場合は、査定価格が落ちてしまう原因になります。
住宅購入をしたときの資料が残っていれば問題ありませんが、境界がわからない・はっきりしない場合は、法務局が公開している地積測量図や公図を確認しましょう。
細かい情報を調べている時間的余裕がない方は、隣家との境界の基準になりそうなものを用意して、不動産会社に相談してください。
不動産会社の判断材料になるような情報を事前に確認・準備しておくと、査定もスムーズに進みます。
【不動産査定を依頼するときの注意点】
査定時にできるだけ多く情報交換できたほうが、不動産会社側も査定がしやすく、後の計画も立てやすくなります。ここからは、不動産査定を依頼するときの注意点について解説します。
不動産会社が出す査定額は、あくまで売却する際の予想価格にすぎず、その価格で確実に売れるという保証はありません。また、査定の基準も不動産会社ごとに異なります。査定は、できるだけ複数の不動産会社に依頼しましょう。
あるエリアで中古マンション販売実績No.1の会社もあれば、一戸建て物件の売却に強い会社もあります。査定が一社だけでは、査定金額が妥当であるかの判断も難しいため、複数で比較してください。
大手不動産会社への依頼も安心ですが、地元で歴史の長い不動産会社であれば独自のルートを持っている場合もあります。
査定を依頼した先で、運悪く悪質な業者に当たってしまう可能性も否定できません。信頼できる不動産会社を見つけることも大切です。
不動産の一括査定サイトや査定シミュレーションなどで、過去の販売実績・相場を知っておくのも自衛となります。
また、査定を出してもらったあと、「なぜこの価格になったのか」の理由・根拠も詳しく確認してください。自分が納得できるように丁寧に説明してくれれば、信頼できる不動産会社の判断基準にもなります。説明が雑な場合は、他を探したほうがよさそうです。
大切な家を手放すのですから、不安や細かい希望があるはずです。「引っ越すので〇月までに売りたい」「ローンが残っているので、できるだけ高く、この金額以上の価格で売りたい」など、売却における希望はできるだけ事前に洗い出し、査定前に伝えておくことも必要です。
不動産会社側も、「高く売りたいなら、ハイシーズンのこの時期に売り出そう」という計画も立てやすくなります。
「仕事で連絡がつきにくい」「転勤で〇月からは遠方に行く」などの情報があれば、それに合わせて前倒しで必要書類の準備などのサポートも受けられるはずです。
事前に相場を知っておけば、売却希望金額を決める基準となります。不動産ポータルサイトなどでは、エリア・沿線・物件の特徴・広さなどを入力することで、過去の取引データをチェック可能です。
査定金額が高ければ良いというわけではありません。悪質な業者のなかには、他社よりも査定価格を高くして、契約後にトラブルが発生するケースもあります。過去のデータや一括査定サイトを利用して、相場を確認しておいてください。
この際、売買での相場を調べておくことも重要ですが、この物件を貸した場合の家賃はどのくらいになるかを調べておくことも有用です。売却した自宅を自分で住むために購入する人だけでなく、他人に貸して運用する人もいる可能性があるからです。
同じような物件の家賃相場が10万円なら、年間で120万円の賃料収入が見込め、利回り10%とすれば1,200万円、利回り5%とすれば2,400万円の投資用物件としての価値があります。
「できるだけ早く家を売りたい」「1年以上に売りたい」など、目標時期が決まっている場合は、訪問査定がベストです。
ネットで必要情報を入力しても、正確な査定にはなりません。現地を訪問し、外壁や内装・設備の状態をチェックしてもらって、ようやく正確な査定金額となります。訪問査定をしたら、必ず契約しなければいけないというわけではないので、正確な金額を知るためにも依頼しましょう。
売り出し価格を決めても値引き交渉が入るので、さらに価格は下がるものです。訪問査定で、過不足なく評価してもらい、値引きを見越した売り出し価格を決定してください。
家を売る際の査定は、準備によってその後の売却活動のスピード・売れる金額も変わってきます。
相場を理解して複数社に査定を依頼することで、信頼できてより高く売ってくれる不動産会社に出会えるかもしれません。
また、必要書類を事前に揃えて備えておけば、買い手がついてからの契約・引き渡しまでの流れもスムーズです。こちらの希望を事前にまとめて伝えておくと、不動産会社からの希望に沿ったサポートが期待できます。十分に備えて、高く・スムーズに売却しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。