2013年に日銀金融緩和が発表されてから2022年に至るまで、中古マンションの価格相場は上昇し続けています。下記表は、国土交通省から発表されている不動産価格指数です。
引用:国土交通省「不動産価格指数」
上記を見てもわかる通り、戸建て住宅や住宅地、住宅総合と比較しても、マンションの上昇率は一目瞭然です。さらに、現在では新型コロナウイルス感染症の影響によって、売り出されている競合マンションも減少傾向となっており、売り時といえます。
投資用マンションはいつ売却すべきか、そのタイミングが大切です。上記でお伝えしたように、マンションの相場価格が上昇している今だからこそ、ここでお伝えする5つのタイミングを見極めて、損のない投資用マンションの売却にすすみましょう。
不動産の価格相場が上昇しているタイミングであれば、投資用マンションも売り時です。相場が上がっていれば、売却による利益も出しやすくなります。全国平均の路線価は、2016年から上昇しているのが特徴です。
さらに、2019年の平均路線価は前年比1.3%上昇しており、とくに観光地、繁華街などの主要都市を中心として上昇しているのが大きなポイントといえます。路線価の変動などは常にチェックし、投資用マンションの売却タイミングを見極めましょう。
とくに理想的な売却タイミングとしていわれているのが、購入金額よりも売却金額の方が上回ったタイミングです。しかし、あくまでも理想的なタイミングであるため、実際には売却金額の方が上回るのは、地価が上がっているごく一部のエリアに限定されるケースが少なくありません。
また、家賃収入と売却金額の累計が、購入金額を超えているタイミングも売り時の1つです。例えば、投資用マンションを2,000万円で購入した場合をみてみましょう。毎年100万円の家賃収入を得て、5年後に1,600万円で
売却したとすれば、1,600万円+100万円×5年=2,100万円で、購入価格を上回ります。
課税される税金なども考慮する必要がありますが、不動産の査定金額に納得できれば売却しましょう。投資用マンションは、保有期間が長ければ長いほど売却金額が下がってしまいます。タイミングを見極め、損しない売却を目指してください。
金利が低い時期は、不動産購入にとくに適したタイミングといえます。2013年以降、投資用不動産のローンや住宅ローンは、非常に低い金利が続いています。また、現在も新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、経済環境は安定していません。
こうした状況下で、金利の打ち上げをすることは考えにくいため、数年の間は大きな変化はないという専門家もいます。金利の動向は、世界的な情勢によっても変化しますが、2022年初頭は日本では極めて低い水準です。高値で投資用マンションを売却したいのであれば、金利が低い今が絶好のタイミングになります。
不動産は、所有期間によって譲渡所得税の税率が異なります。投資用マンションも例外ではありません。具体的な税率は、下記の通りです。
所有期間が5年以下の場合、5年を超えた場合と比較すると約2倍の税率となるため、投資用マンションの所有期間についてしっかりと把握しておきましょう。なお、法人として取得している場合はこの限りではありません。
大規模な修繕後に売却するのも絶好のタイミングといえます。物件が前よりも良い状態となっているため、買い手を見つけやすくなるのが特徴です。しかし、大規模な修繕を待ってしまうと、投資用マンションの築年数がどんどん古くなります。
マンションは築年数によって売却価格に変動があるため、今すぐに修繕が必要な状態でなければ、おこなう必要はありません。そのままの状態で売却した方がスムーズといえます。
最近たまたま修繕をした、近々大規模な修繕をしようと検討しているなど、タイミング的に修繕と売却が重なり、高値での売却が可能であれば、修繕完了後に売却するようにしましょう。
また、投資用マンションの区分所有の場合は、「修繕積立金〇万円あります」など、積立金の多さをアピールするという手もあります。逆に、一棟の投資用物件の場合は、そろそろ大規模修繕の投資がかかるから、その前に売ってしまったほうが、築年も浅く、かつ投資も抑えられる、という判断もありえます。
投資用マンションの売却は、正しい手順で進めていかなければいけません。しかし、どのようおこなうべきかわからない方は多くいます。投資用マンションの売却手順について、ここで具体的な流れを把握しておきましょう。
まずは、不動産会社にマンション価格の査定を依頼します。査定依頼するのは、投資用マンションを購入した不動産会社だけに限らず、複数の会社に査定を依頼してください。その場合、投資用マンションの売却実績が豊富な不動産会社を選択しましょう。
通常のマンションと同様に、投資用マンションの価格査定も不動産会社によって差が生じます。価格査定だけでなく、実績が豊富な不動産会社であれば、売却による利益をさらに生み出すためのタイミングなども相談可能です。
不動産会社へ査定依頼をする前に、まずは一括査定サイトなどを利用して、およその目安を把握しておくのもおすすめです。相場を事前に知っておくことで、不動産会社の査定額を正しく比較することが可能になります。
不動産会社との契約は、主に3つの種類があります。それぞれの違いは、下記の通りです。
また、築年数が古い投資用マンションは、なかなか買い手がつかずに売れ残ってしまうケースも少なくありません。そういった場合は、通常不動産の方法と同じように買取してもらうのも1つの手段になります。しかし、通常よりも10%から30%ほど安くなるのがデメリットです。
購入を希望する方からの内覧受付がスタートします。内覧は、不動産会社の担当者とともに対応し、物件の魅力をしっかりアピールしてください。内覧は購入希望者にとって非常に重要です。
また、もしも投資用マンションに入居者がいる場合は、内覧を受けつけることはできませんので注意しておきましょう。
投資用マンションの場合は、内覧なしに物件の売買がおこなわれることはよくあります。
投資用マンションの購入希望者と条件のすり合わせが進み、お互いに合意が得られたら無事に売買契約が成立となります。この際、不動産会社からもらう書類に必要事項の記入、署名、捺印して契約書を作成します。
また、売主は売買契約の締結の際に、下記のものを準備しておきましょう。
認印・実印 身分証明書(顔写真がついているもの) 印鑑証明書 収入印紙
収入印紙は、売主と買主の双方で負担するのが通常です。収入印紙代は契約金額により異なるため、事前にチェックしておきましょう。電子契約であれば、不要になります。
手付金以外の残りを受領し、投資用マンションのカギ、その他の関係書類などを買い手に渡します。法務局にて、所有権の移転登記をして、手続きは一通り完了となります。
引き渡しはこうした手続きなどをスムーズに進めるために、一般的には平日おこないます。あらかじめスケジュールを調整しておきましょう。
投資用マンションを売却するためには、必ず事前に準備しておくべきポイントがあります。スムーズに売却を進めていくためにも、事前準備は欠かせません。ここでは、とくに大切な3つの項目をお伝えします。内容を正しく把握し、投資用マンションの売却準備をおこないましょう。
投資用マンションを売却したい場合、必要な書類をまずは揃えておきましょう。なかには入手するまでに時間がかかることもあります。売却する際に間に合わないといったことがないように、必要書類は早めに準備しておきましょう。
もしも所有権移転の際に、購入時の住所と今の住所が異なる場合や、結婚などによって姓名が変わったなどの場合は、戸籍謄本などが必要となります。本籍が遠い場合は郵送などで時間がかかってしまうため、覚えておきましょう。投資用マンションの売却には、下記の書類が必要です。
身分証明書 実印 住民票 印鑑証明書 登記簿謄本 固定資産税納税通知書 建築確認済証および検査済証 マンション購入時の売買契約書などの書類
管理会社へ連絡するのは、資格喪失届の提出と、マンションの管理費や修繕積立金の清算となり、売却が決まってから連絡すると認識している方も少なくありません。もちろん、売却が決まってからでも問題はありませんが、事前に管理会社に連絡することで、その後のやり取りがスムーズになります。
また、書類の提出タイミングなども教えてもらえ、その他わからないことがあれば管理会社に相談することも可能です。
売却するうえで気になるのは、やはり相場です。不動産ポータルサイトを利用すると、今現在販売中の物件相場を把握しやすくなります。売却したい投資用マンションと同じエリアにある物件、築年数や面積など、似た情報を探してみてください。
条件を絞り込んで検索すると、より詳しい相場を調べることが可能です。いくつかの不動産ポータルサイトで情報を調査したり、一括査定サイトを利用したりするなどして相場を調べておきましょう。
また、投資用物件の場合は、利回りが重要となります。現在の家賃収入の一年分を売却価格で割る「表面利回り」、あるいは全部屋が満室となった場合を想定して、想定した年間の家賃収入を売却価格で割る「満室時表面利回り」が一般的に問われます。利回りが高ければ、当然次に購入する人は購入意欲が高くなります。そのため、「満室にしてから売却する」というのは、投資用マンションを売却する際の一般的な手法です。
投資用マンションを売却する場合、当然ながら必要な費用があります。主な種類は、下記の通りです。
仲介手数料 印紙税 抵当権抹消手数料 税金各種 ローン一括返済の手数料
仲介手数料は、「(投資用マンションの売却額×3%)+6万円×消費税」で計算します。ローンがある場合、返済するための手数料がかかるため、必要な費用として計算に入れておきましょう。
また、税金は住民税や所得税などさまざまあります。売却損の場合は不要となりますが、利益が出る際には必ずかかるため、注意してください。これらの売却にかかる費用は、売却金額のおよそ5%から7%ほどです。
投資用マンションは、売却するために注意すべきポイント、押さえておくべきコツがあります。売却をスムーズにすすめるだけではなく、より利益を大きく損しないためにも、ここでお伝えする3つの項目について正しく把握しておきましょう。
「事業用の資産を買い替えたときの特例」を活用することで、譲渡所得税を繰り延べることが可能になります。しかし、非課税となるわけではないため、注意しておきましょう。
売却金額が取得金額よりも多くなった場合、売った金額に20%をかけた額を収入金額にし、譲渡所得の計算をします。特例を受けるための要件は、主に下記の通りです。
譲渡資産・買い替え資産どちらも事業用の場合のみ 令和5年3月31日までの譲渡 取得する土地の面積が譲渡する土地の面積の5倍以内 買い替え資産取得から1年以内に事業に使用する
その他にも特例を受けるための要件はありますので、国税庁の「事業用の資産を買い替えたときの特例」をチェックしてください。
本記事でもお伝えしたように、査定は必ず複数の不動産会社へ依頼しましょう。不動産会社は、得意なエリアや物件の種類などが異なります。1社のみに絞って査定を受けても、その会社が投資用マンションの売却実績が少ない不動産会社である可能性もあります。
複数の不動産会社への査定は手間に感じてしまうかもしれませんが、損せず納得のいく投資用マンションの売却をするためにも、いくつかの不動産会社へ依頼し、適切な査定価格か、どの査定が最も高いのかを比較できるようにしておきましょう。
内覧は、購入希望者の購買意欲をさらに高めるためにも重要となります。少しでも綺麗に状態良くみせるためにも、内覧前にハウスクリーニングをおこないましょう。できる限り美しい状態にするのも、希望の条件で売却するために必要なポイントです。
しかし、自費でリフォームやリノベーションをする必要はありません。購入希望者のなかには、DIYで部屋を作りたい方、お部屋のインテリアなどを自分の好きに決めたい方も少なくありません。
売却するための投資用マンションにお金をかけすぎると、せっかく売却できても支出が多く、利益が減ってしまいます。最低限必要なハウスクリーニングだけでも大きな意味はあるため、内覧前におこなっておきましょう。
投資用マンションの価格は、タイミングで大きく変わるのがポイントです。2023年もマンション価格は大きく上がるとされており、今が大きな売り時といえます。そのなかで、売却する投資用マンションの所有期間や低い金利など、より利益が大きくなるタイミングを見極めましょう。
また、スムーズかつ希望の条件で売却するためにも、徹底した事前準備は欠かせません。早めに必要書類を揃えたり、ハウスクリーニングで内覧者への印象を良くしたりするなど、小さなことでもしっかりとおこなうことが重要です。
タイミングの見極め、売却のための準備、さらに売却するための手順について、ぜひ本記事でお伝えした情報を参考に、効率良く売却を進めていきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。