レインズとは|不動産売却で利用するメリットや個人でレインズを見る方法などを解説

レインズとは|不動産売却で利用するメリットや個人でレインズを見る方法などを解説

不動産の売却を検討していると、「レインズ」という言葉を耳にすることがあるでしょう。レインズは、不動産会社だけが利用できる不動産情報ネットワークのことです。不動産会社だけが利用するなら売主には関係ないように感じますが、レインズは不動産売却に大きく関わってくるため、どのようなものかを理解しておくことが大切です。

この記事では、レインズの基礎知識や売主にとってのメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。

レインズ(REINS)とは

レインズとは、国土交通省指定の不動産流通機構が運営している不動産取引のためのネットワークシステムです。正式名称を「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」といい、その頭文字をとってレインズ(REINS)と呼ばれています。

不動産業界全体での情報を集約して円滑で安全な取引をおこなうことを目的として運営されており、次のような情報が掲載されています。

  • 売り出し中の不動産情報
  • 過去に取引成立した不動産の売却情報

現在、売りに出されている不動産の情報がリアルタイムで掲載されており、閲覧することでどのような不動産が売りに出されているかがすぐにわかります。

また、過去に売却成立した不動産の情報も掲載されているので、相場観の把握にも役立つのです。

ただし、レインズは不動産会社しか利用できません。後述する専任媒介契約か専属専任媒介契約で契約した売主は、レインズに掲載されている自分の不動産情報だけ見せてもらうことはできますが、それ以外では閲覧できないのです。

レインズに掲載する不動産情報では、一部に個人情報を掲載しています。そのため、問題が生じた場合の責任の所在を明らかにするためにも、個人での利用を制限しているのです。

全国にある4つのレインズ

レインズでは、全国を次の4つのエリアに分けて運営しています。

名称 運営団体 管轄範囲
東日本レインズ (公財)東日本不動産流通機構 北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・山梨県・長野県
中部レインズ (公社)中部圏不動産流通機構 富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県
近畿レインズ (公社)近畿圏不動産流通機構 滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県
西日本レインズ (公社)西日本不動産流通機構 鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県

レインズマーケットインフォメーションとは

レインズに登録されている不動産情報は、不動産会社しか閲覧できません。それを、一般の人でも閲覧できるようにしたサイトが「レインズマーケットインフォメーション」です。

レインズマーケットインフォメーションでは、4つのエリアの不動産流通機構が保有する不動産成約価格などの情報を集約して公開しています。エリアの過去の取引価格を知ることができるので、相場感を把握しやすくなるでしょう。

ただし、レインズマーケットインフォメーションでは、不動産の詳細な住所情報は掲載されておらず、広い範囲での検索となります。ピンポイントで相場を調べられない点には注意しましょう。

レインズの登録が必要となる2つの媒介契約

不動産会社に不動産売却の仲介を依頼する場合、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には、「一般媒介契約」「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」の3種類がありますが、そのうちレインズへの登録を必須としているのは、次の2つだけです。

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約とは、不動産会社1社のみとしか契約できない媒介契約です。レインズへの登録義務だけでなく、売主への営業活動報告義務もあります。

項目 詳細
レインズへの登録義務 契約日から5日以内
売主への営業活動報告 1週間に1回以上
他社との契約 不可
買主の自己発見取引 不可
契約期間 最長3ヶ月

専属専任媒介契約では、買主を自分で見つけても不動産会社を介した契約が必要になります。専属専任媒介契約は、3種類の媒介契約の中でもっとも制約の厳しい契約方法です。

しかし、専属専任媒介契約であれば不動産会社は確実に仲介手数料を得られることから、優先して営業してもらいやすいというメリットもあります。

専任媒介契約

専任媒介契約も不動産会社1社のみとしか契約できない媒介契約です。レインズへの登録義務や売主への報告義務は、専属専任媒介契約同様ありますが、頻度が異なります。

項目 詳細
レインズへの登録義務 契約日から7日以内
売主への営業活動報告 2週間に1回以上
他社との契約 不可
買主の自己発見取引 可能
契約期間 最長3ヶ月

専任媒介契約では、買主を自分で見つけて契約を進める自己発見取引が可能です。専属専任媒介契約よりも、比較的制限の緩い媒介契約といえるでしょう。

基本的には不動産会社に任せたいけど、買主を自分で探せる見込みもあるという場合は、専任媒介契約がおすすめです。

専任媒介契約について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

関連記事:専任媒介契約とは?メリット・デメリットや一般媒介・専属専任媒介契約との違いを解説

不動産会社にレインズを利用してもらう売主側のメリット

ここでは、レインズを利用してもらう売主側のメリットについて見ていきましょう。メリットとしては、次の4つが挙げられます。

【不動産会社にレインズを利用してもらう売主側のメリット】

  • 多くの不動産会社に自身の物件を共有してもらえる
  • いくつかの不動産会社を回る必要がなくなる
  • 不動産取引が安全におこなわれる
  • 適正価格での売却がスピーディーに達成できる可能性が高い

それぞれ詳しくみていきましょう。

多くの不動産会社に自身の物件を共有してもらえる

レインズに登録することで、全国の不動産会社に自分の物件情報が共有されます。より多くの人の目に不動産情報が届けられれば、早期売却につながる可能性もあがります。

特に、レインズは不動産会社しか閲覧しないため、不動産情報へのアンテナが高い人に情報を届けられるというメリットがあります。

レインズに登録しない場合、自分の不動産情報を見てもらえるのは、契約した不動産会社のサイトやチラシを見た人だけです。買い手を広げてスムーズな売却を目指しやすいというのは、レインズ登録の大きなメリットいえるでしょう。

いくつかの不動産会社を回る必要がなくなる

レインズに登録せずに自分の不動産を宣伝するには、多くの不動産会社と契約する必要があります。複数の不動産会社と契約するとなると、契約だけでも相当な時間がかかります。

また、契約する不動産会社が多いと連絡窓口が複数になり、煩雑になるなどのデメリットもあるでしょう。レインズに登録することで、1社だけを窓口にしても不動産情報の宣伝力が高くなるのです。

不動産取引が安全におこなわれる

レインズに登録した自分の不動産の情報は、閲覧することが可能です。不動産会社に登録状況を見せてもらうことで、正しく登録されているかがチェックできます。

不動産会社によっては、自社が抱える不動産情報を他社に公開しない「囲い込み」をされるケースがあります。しかし、レインズをチェックすることで、希望する条件で適切に情報が公開されているかを自分でチェックできるので囲い込みのリスクを減らせられるのです。

適正価格での売却がスピーディーに達成できる可能性が高い

レインズには、過去の取引履歴も掲載されており、類似物件の取引価格から適正価格を判断しやすいというメリットがあります。

相場とかけ離れた価格で売り出しても、売れない・売れても損するなどのリスクがあります。相場に対して適正価格で売却することで、スピーディーな売却が目指せるでしょう。

不動産会社にレインズを利用してもらう売主側のデメリット

レインズを利用するデメリットとして、次の2つが挙げられます。

【不動産会社にレインズを利用してもらう売主側のデメリット】

  • 高値で売却できる機会を損失する可能性がある
  • 売りに出していることが知られてしまう

高値で売却できる機会を損失する可能性がある

レインズに登録されている物件は、「売りづらい物件」と考える不動産会社も少なくありません。専任媒介契約・専属専任媒介契約ともにレインズへの登録義務がありますが、登録まで一定の期間があります。

登録前に自社で買い手を見つけられれば、不動産会社にとって大きな利益になるため、登録日ギリギリまで自社で営業活動するケースも少なくないでしょう。

反面、レインズに登録されたということは、期間内に売却できなかった物件というイメージ持たれる恐れがあるのです。

また、全国の不動産情報が登録されるので、自分の不動産情報はすぐに埋もれてしまいます。価格が高いなど条件が悪いと売れ残りやすくなり、そのまま長期間レインズに登録されていると、「問題のある物件では?」と思われてしまう可能性もあるでしょう。

このような状況になると、値下げ交渉も多くなり高値で売りにくくなる恐れがあるのです。レインズの登録してもらう際には、売れ残りを避けるために適正価格で登録するようにしましょう。

売りに出していることが知られてしまう

レインズに登録することで、全国の不動産会社に情報が共有されるため、自分の不動産を売りに出していることが近所や知り合いにバレる恐れがあります。

もちろん、一般の人ではレインズを見ることはできませんが、不動産会社にお客として訪れた知り合いが、たまたま自分の物件を見つけるという可能性もゼロではあるません。

また、売り出し中には気づかれなくても、取引成立後に成約情報としてレインズに掲載されるため、注意が必要です。不動産の売却をできるだけ周りに知られたくないという人は、レインズに登録されない一般媒介契約を検討するとよいでしょう。

不動産売却を依頼する場合は囲い込みに注意

囲い込みとは、不動産会社が自分の不動産情報を他社に公開しない状態のことをいいます。両手仲介を狙った悪徳な不動産会社で囲い込みされるケースがあるので、注意しましょう。

不動産会社は、仲介で不動産を売却した場合、契約者から仲介手数料を得られます。仲介手数料は、売主・買主両方から得られるものです。

例えば、売主と媒介契約を結び、自社で買主を見つけられれば売主・買主それぞれから仲介手数料を得られます。この状態を両手仲介と呼び、不動産会社にとって最も利益が大きくなるのです。

この両手仲介を狙っておこなわれるのが「囲い込み」です。囲い込みされた状態になると、不動産会社はほかの不動産会社へ物件情報を流しません。他の不動産会社から物件の問い合わせがあっても「契約がきまった」などと、勝手に断ってしまうのです。他社に情報を流さず、自社だけで買い手を見つけるようにして両手仲介を狙います。

囲い込みされると、他社からの問い合わせに応えてもらえないため、好条件の買い手を逃す恐れがあります。自社で買い手を見つけるために、値下げなど買主に有利な条件を持ち出される可能性もあるでしょう。

このように、囲い込みは売主にとってデメリットとなるので、売却時には注意が必要です。

囲い込みされていないかをチェックするには、レインズへの登録状況をチェックする方法があります。レインズの登録状況が「停止中」や「申込あり」なのに、実際には問い合わせも何もないという状況は囲い込みされている可能性があるでしょう。

また、悪徳な不動産会社は、そもそもレインズに登録させないように一般媒介契約にする手法をとることもあります。

安心して自分の不動産を売却するには、不動産会社選びが重要になります。信頼して売却を任せられる不動産会社を選べるようにしましょう。

不動産会社選びについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方

自身の物件がレインズに登録されているかを確認する方法

レインズは個人では閲覧できないため、登録状況を確認するには契約している不動産会社に見せてもらう必要があります。不動産会社の担当者に画面を見せてもらう以外にも、「登録証明書」を発行してもらい自分でサイトにアクセスする方法もあります。自分でレインズを確認する際の大まかな手順を次の通りです。

  • 不動産会社から登録証明書を入手する
  • レインズのサイトにアクセス
  • 「売主依頼用」に登録証明書のIDとパスワードでログイン
  • 物件情報の確認

また、別の不動産会社に依頼して自分の物件をレインズで探してもらう方法もあります。レインズで自分の物件を探したら、次のような情報に誤りがないかチェックしておくとよいでしょう。

  • 築年数や間取りなどの物件情報の誤りや不足
  • 図面の登録
  • 取引状況

取引状況は「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一時紹介停止中」のいずれか表示されます。

実際の取引状況と表示がことなると、囲い込みの恐れがあるので不動産会社に確認するようにしましょう。

レインズに登録してもらうまでの流れ

ここでは、レインズに登録してもらうまでの流れを見ていきましょう。大まかな流れは次の通りです。

【レインズに登録してもらうまでの流れ】

1.不動産会社に売却相談

売却を検討したら、査定を受けて不動産会社に売却相談をします。相談先の不動産会社を探す際には、査定時にできるだけ多くの不動産会社を比較するようにしましょう。

2.不動産会社と媒介契約

仲介を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。この際、レインズ登録の義務があるのは「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」のみなので、注意しましょう。
一般媒介契約の場合、レインズへの登録義務はありませんが、依頼すれば登録してもらえる場合もあります。

3.レインズへの登録

専任媒介契約・専属専任媒介契約であれば、契約後不動産会社がレインズへ不動産情報を登録してくれます。登録までの日数は契約種類によって異なり、次の通りです

  • 専任媒介契約:契約日から7日以内
  • 専属専任媒介契約:契約日から5日以内

4.情報公開

情報登録後、レインズで情報が公開されます。レインズはリアルタイムで情報が公開されるため、登録完了後すぐに情報が公開されます。

レインズに登録完了すると、全国に不動産情報が共有するので売却活動が本格的にスタートします。

まとめ

レインズに自分の物件情報を登録することで、全国の不動産会社に物件情報が届き、スピーディーな売却が目指せます。レインズに確実に登録してもらうなら、媒介契約を「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」にしてもらう必要があるので、契約時には注意が必要です。

ただし、レインズの登録することで他の人に売却が知られてしまう恐れがあるなどデメリットもある点は、忘れずに登録してもらうかは判断することが大切です。

不動産売却では、レインズへの登録も重要なポイントとなるので、この記事を参考にレインズについて理解を深めて不動産売却に臨むとよいでしょう。