家の住み替えの失敗例と失敗しないための対策をわかりやすく解説

家の住み替えの失敗例と失敗しないための対策をわかりやすく解説

住み替えは、大きなお金が動くだけでなく、時間も手間もかかる大イベントであるため、失敗するわけにはいきません。とはいえ、失敗してしまうケースがあるのも事実です。

なぜ失敗してしまうのでしょうか。住み替えを成功に導くには、失敗例を把握してしっかり対策しておくことが大切です。

この記事では、住み替えの失敗例とその対策をわかりやすく解説します。これから住み替えを検討している人は、ぜひ住み替え成功の参考にしてください。

家の住み替えの失敗例

住み替えとは、今の家を売却して新しい家を購入することをいいます。引っ越しと意味合いは同じですが、住み替えの場合は「売却」「購入」という不動産取引を含むのが一般的です。

「子どもが大きくなって手狭になった」「性能の良い家に住みたい」「転勤になった」など、住み替える理由はさまざまでしょう。どのような理由にせよ、住み替えでは大きな不動産取引を伴うため、慎重におこなう必要があります。

売却・購入というそれぞれだけでも大変な取引をまとめておこなうため、手順も複雑になりやすく、加えて大きな資金も動くものです。どんなに慎重に進めてもすべてを理想通りするのは容易ではなく、「失敗した」と後悔するケースも少なくありません。

ここでは、まずどのような失敗例があるのかをみていきましょう。代表的な失敗例として、以下の5つを解説します。

  • 売却額の設定が甘く、資金計画が狂った
  • 予定した時期までに売却できなかった
  • 新居のローンが組めなかった
  • 新居が見つけられず仮住まいの期間が長くなった
  • 新居を妥協して選んでしまった

住み替えの費用について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

関連記事:住み替えとは?家を住み替える際にかかる費用や注意点を紹介

売却価格の設定が甘く、資金計画が狂った

資金計画を立てるうえで、売却価格は当初見込み額で資金計画を立てることになります。この見込みが甘く、実際の売却価格を大きく下回った場合、次のようなリスクがあるので注意が必要です。

  • 住宅ローンが完済できない
  • 新居に充てる予算が少なくなる
  • 予定通りの新居を購入すると自己資金が大きく減少する

住み替えの資金計画を立てるうえで重要になるのが、住宅ローン残債と売却価格・新居購入予算の3つの要素です。これらは売却価格に左右される可能性が高くなります。

住宅ローン残債のない家であれば、売却額をそのまま新居予算に回すことが可能です。しかし、住宅ローン残債がある場合、売却額+自己資金などでのローン完済が必須となります。残債以上の価格で売却できれば余りを新居予算に回せますが、残債以下であれば自己資金を充てる必要があり、新居予算は少なくなります。

新居を先に購入するケースの住み替えの場合、売却額が予定より大きく下回ることで資金計画が崩れる可能性もあります。自己資金を予定以上に新居やローン完済に充ててしまうと、新生活スタート後に収入減少や突発的な支出が起こった際に対応できなくなるリスクも高まってしまうのです。

売却価格の設定が甘く、予定よりも低い価格での売却となってしまうと、住み替え計画自体が大きく狂ってしまう恐れがあるので注意しましょう。

予定した時期までに売却できなかった

売却が予定通りに進まないことで、資金計画や住み替えスケジュールが大きく狂ってしまう恐れがあります。予定時期までに売却できない場合、次のような事態に陥ることが考えられます。

  • 転勤の期日までに売却できず、転勤先の遠方から売却活動が必要になった
  • つなぎ融資の返済期日に間に合わなかった
  • ダブルローンになり、経済的な負担が苦しい
  • 新居購入期日に間に合わずに住み替えが中断してしまう

転勤など引っ越ししなければならない日が決まっている場合、その日までの売却が必要です。特に、遠方に引っ越す場合、今の家が売れ残ると引っ越し先からの売却活動となり、契約時などの移動が大変になります。

また、先に新居を購入するケースでは、つなぎ融資を活用する人もいるでしょう。つなぎ融資とは、新居購入資金が売却代金の受け取りより先に来たケースで、一時的に資金を補う融資です。つなぎ融資の場合、1年未満の短期間での借入となり、売却代金で一括返済する必要があります。つなぎ融資の返済期日までに売却できない場合、返済が難しくなる恐れがあります。

つなぎ融資を使わずに新居を先に購入した場合でも、新居購入を住宅ローンでおこない、今の家の住宅ローンが残っているというケースでは、新旧2本の住宅ローンの返済が必要なダブルローン状態になります。売却が遅くなりダブルローンの期間が長くなれば、返済の負担が大きくなるので注意が必要です。

そもそも、住宅ローンの完済や新居予算を売却額で検討している場合、売却が進まないことで住み替えも進めません。新居を見つけても購入期日までに売れないことで、住み替え自体が中断して一から新居探しになる可能性もあるのです。

新居のローンが組めなかった

住み替えの新居は住宅ローンで購入するのが一般的です。そのため、新居でローンが組めないと住み替え自体ができなくなります。

今住んでいる家を住宅ローンで購入している場合、「前も住宅ローンが組めたから大丈夫だろう」と考える方もいるでしょう。しかし、前組めたからといって、新居でも組める保証はありません。下記のような理由で、新たなローンが組めないケースがあります。

  • 転職して収入が下がっている
  • 家族が増えて支出が増えている
  • 年齢が上がって完済年齢に引っかかった
  • 健康状態が悪化して団信に入れない

特に、住み替えの場合、最初のローン時よりも年齢が上がっていることに注意が必要です。一般的な住宅ローンや住み替えローンでは、完済年齢が70〜80歳に設定されています。年齢が上がった状態で長期ローンが組みにくいため、希望の借入額をクリアできない場合があるのです。

また、年齢が上がり、健康状態に不安が出ると、団信に加入できずに住宅ローンを組めないケースもあるので注意しましょう。

住み替えローンについて、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

関連記事:住宅ローン返済中に住み替えはできる?住み替えローンの利用の流れや注意点を解説

新居が見つからず仮住まいの期間が長くなった

仮住まいとは、新居が見つかるまでの期間、一時的に住む住宅のことです。売却してから新居を購入する場合、今の家を引き渡すまでに新居を見つける必要があります。

売買契約から引き渡しまでの期間は、1カ月程です。この期間に新居を見つけて契約しておかなければ、今の家を引き渡したのに新しく住む家がない状態となります。売却活動中から新居探しを進めておくのが一般的ですが、売却額に頼る資金計画の場合、本格的に新居のために動けるのは売買契約後です。

とはいえ、新居探しがスムーズに進むとは限りません。新居探しのこだわりが強い場合は、なかなか新居が決まらない可能性もあるでしょう。その場合は、引き渡し後一旦住む仮住まいが必要になるのです。

新居選びに時間がかかればかかるほど、仮住まい期間は伸びていきます。仮住まい中は、仮住まいの賃料が必要です。本来なら、新居の住宅ローン返済をスタートできているはずなのに、余計な賃料や敷金礼金の支出となる点には注意しましょう。

また、仮住まいが必要な場合、旧居から仮住まい、仮住まいから新居への2回の引っ越しが発生します。引っ越し代も余分に発生するので、コストが嵩んでしまう恐れがあります。

新居を妥協して選んでしまった

仮住まいを避ける場合、引き渡しまでの短い期間で新居を探す必要があります。急いで新居を探すことで、じっくりと比較検討できずに家選びに失敗してしまう恐れがあるでしょう。

  • 住んでみるとアクセスが悪くて不便
  • 間取りが使いにくい
  • 日当たりが悪かった
  • 持ち込んだ家具家電のサイズと合わない
  • 近所で騒音問題がある
  • 近所付き合いが多い地域だった

家自体の問題だけでなく、周辺環境のチェックが足りずに問題となるケースもあります。新居は購入後に簡単に引っ越しできません。しっかり内覧できない、下調べが足りないまま妥協して選んでしまうと、購入後に住みにくかったと後悔してしまうものです。

住み替えで失敗しないための対策

失敗例がわかれば、ある程度対策が可能です。ここでは、住み替えで失敗しないための対策として、下記の6つを解説します。

  • 適切な売却価格を設定する
  • 余裕をもたせたスケジュールにする
  • 資金計画を綿密に立てる
  • 「売り先行」で住み替えをおこなう
  • 新居は妥協せずに決める
  • 信頼できる不動産会社に依頼する

適切な売却価格を設定する

売却価格を設定する際には、相場に対して適切な価格をつけることが大切です。適切な価格であれば、実際の売却額との大きな差も生まれにくいため、資金計画の崩れを防ぎやすくなります。

売却価格は、高すぎても低すぎてもいけません。相場よりも高すぎる価格の場合、なかなか買い手が付かなくなります。

売却できない期間が長くなると、「売れ残っている理由ある物件では」と買い手から思われて、さらに売却が遠ざかる恐れがあります。そうなると、売却スケジュールが狂うだけでなく、値下げも必要です。値下げすることで資金計画の崩れにもつながる可能性があるでしょう。

一方、相場よりも低い価格は、買い手は付きやすいですが損失を出す恐れがあります。スムーズに売却できても、新居の予算が足りない、住宅ローンが完済できないとなれば住み替えも失敗してしまいます。新居の予算や住宅ローン残債も踏まえて、価格を設定する必要があるのです。

適切な価格を決めるには、相場の把握が欠かせません。下記のような方法で、相場をチェックしておきましょう。

また、売却価格を設定する際には、自分だけで決めるのではなく、不動産会社に相談しながら決めることをおすすめします。不動産会社の査定額はおおむね3カ月で売れる価格です。査定額や担当者のアドバイスを参考に価格を決めることで、スムーズな売却が期待できるでしょう。

余裕をもたせたスケジュールにする

余裕のないスケジュールを組んでしまうと、どこかでつまずくとスケジュール全体が崩れてしまう恐れがあります。思うように進まないことでストレスになるだけでなく、売り急いで安値での売却のように資金計画も狂う可能性もあるでしょう。多少のスケジュールのずれでも問題のない、余裕のあるスケジュールにしておくことが大切です。

一般的な売却は、3〜6カ月ほど時間がかかります。売りにくい物件や価格付けを間違うと、それ以上に時間がかかるケースも少なくありません。住み替えの場合は、それに加え新居の購入も進めていくものです。

また、売却・購入どちらも、買主・売主という相手がいる取引となるため、すべての過程を自分の都合だけで進められません。途中でアクシデントが発生して思うようにスケジュールが進まない可能性も頭に入れて、余裕を持ったスケジュールを組めるようにしましょう。

資金計画を綿密に立てる

大きな金額が動く住み替えでは、入念に資金計画を立てることが大切です。新居を購入する予算は、住宅ローンの借入限度額や自己資金・売却額をもとに予算を組みます。

ただし、新居購入は新居の代金だけでなく土地代や諸費用も必要です。特に、諸費用は物件価格の5〜10%ほど掛かってくるため、諸費用を含めて予算計画を立てるようにしましょう。

また、売却についても、売却代金を受け取るだけでなく売却にかかる手数料の支払いがある点には、注意が必要です。

仲介手数料など売却にかかる手数料は、売却額の5〜8%ほどが目安となります。

諸費用を忘れていると、売却金が思ったよりも手元に残らずに資金計画が狂う恐れもあります。

特に、売却額で住宅ローンの返済を検討している場合は、住宅ローン残債の正確な額を抑えたうえで、自己資金を踏まえて完済できるかを検討しなければなりません。

売却・購入にそれぞれどのような費用がかかるのかを具体的に計算しながら、資金計画を立てるようにしましょう。

住み替えにかかる税金について、こちらの記事で解説しているのでご覧ください。

関連記事:不動産売却で住み替える際にかかる税金とは?節税方法や利用できる特例を解説

「売り先行」で住み替えをおこなう

住み替えでは、よほどの理由がない限り、売り先行をおすすめします。住み替え方法は、大きく次の3つがあります。

  • 売り先行
  • 買い先行
  • 同時進行

今の住宅を売却してから新居を購入する売り先行は、売却額が分かったうえで新居選びができるので資金計画が崩れにくいというメリットがあります。一方、新居を購入してから今の住宅を売却する買い先行であれば、新居選びに時間をさけるため満足いく新居を見つけやすいというメリットがあります。

ただし、売り先行は新居選びに時間がかけられない、買い先行なら売却代金によって資金計画が大きく崩れるなどのデメリットもあります。

一般的には、買い先行は売却額に頼らず新居購入を進めなければならないため、資金に余裕がある場合に選択するほうが適しています。また、資金計画が崩れやすく、ダブルローンになるといったリスクも高いため、売り先行で住み替えを進める方が資金計画を立てるうえでは安心です。

なお、売却と購入を同時に進める同時進行は、売り先行・買い先行のデメリットを解消できるため理想的な方法といえます。しかし、スケジュールをコントロールしにくい住み替えで、購入・売却のスケジュールを合わせるのは容易なことではなく、現実的な方法ではありません。同時進行を狙うなら、売り先行になることも想定しながらスケジュールを組むようにしましょう。

新居は妥協せずに決める

新居選びに妥協してしまうと、その後の生活をしにくくなります。とはいえ、100点満点の家というのはありません。現実的な妥協ラインは確保しつつ、譲れないポイントは押さえながら新居を選ぶことで、満足いく新居を見つけやすいでしょう。

家族全員で新居の求める条件を話し合い、優先順位をつけておくと、新居選びもしやすくなります。

信頼できる不動産会社に依頼する

住み替えでは、不動産会社の力が重要になります。購入と売却でそれぞれ不動産会社を選ぶこともできますが、スムーズな住み替えなら同じ不動産会社を利用することをおすすめします。

住み替えローンを利用する場合、金融機関によっては同一の不動産会社を利用することを条件としている場合もあるので、事前に確認するようにしましょう。同一の不動産会社であれば、売却と購入のスケジュールの整合性や住宅ローンの完済・新規借り入れのための金融機関との調整もしやすくなります。

ただし、依頼する不動産会社は慎重に選ぶことが大切です。住み替えの実績が豊富であることは、欠かせない条件といえるでしょう。そのうえで、売却を依頼する不動産の売却実績や評判・担当者との相性など、総合的な視点で不動産会社を選ぶようにしましょう。

不動産会社の選び方については、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方

まとめ

住み替えの失敗と対策について、解説してきました。住み替えを失敗しないためには、資金やスケジュールの計画を入念に立てることが大切です。資金計画やスケジュールが狂う大きな要因が価格設定の甘さにあるので、適切な売り出し価格を付けることも重要です。そのうえで、信頼できる不動産会社を選ぶことで、住み替え成功につながりやすくなるでしょう。

住み替えを検討しているなら、この記事を参考に信頼できる不動産会社を見つけるところから第一歩を踏み出してみてください。