アパートの建築費用は、「坪単価×延床面積」で求めることができます。坪単価は構造や建築会社によって異なり、オーナーが自分で決めることはできません。しかし、延床面積は建ぺい率・容積率などの条件を満たせば、自分で決めることができます。
そのため、アパートの建築費用を知りたいときは、建築予定の会社に坪単価を聞いた上で計算してみましょう。概算してみることで、予算内で建築可能かどうか判断することができます。また、予算オーバーとなってしまっても、建築前に床面積を減らしたり建築会社を変えたりといった対応が可能です。
アパートの建築費用は、構造によって坪単価が異なります。どのような構造のアパートを建てるか決めるときに参考になるのが、坪単価の相場です。
以下に構造別の坪単価の相場をまとめているので、ご確認ください。
相場では、木造が最も安く、鉄筋鉄骨コンクリートが高くなっています。昨今は、輸入木材の価格高騰の影響で、木材の坪単価が高くなっているので注意してください。
アパートの建築費用は、「坪単価×延床面積」で求めることができます。しかし、自分で計算するのが面倒だという人もいるでしょう。そのような人のために、ここではアパートの建築費用の相場を表にしてまとめていきます。
坪数別と地域別の2つに分けて紹介していくので、建築費用の相場が知りたい人はチェックしてください。
アパートを建築するときは、上記の表を参考に坪数や構造を選択しましょう。どの構造を選択したとしても、坪数が大きくなることで建築費用は増加します。
主要地域別に建築費用を見てみると、東京が最も高くなっています。特に、鉄骨構造での建築費用が高く、他の地域を大きく上回っていることがわかります。
神奈川・大阪は、東京と同じように木造と鉄骨の費用に大きな差があります。しかし、愛知・福岡・北海道ではその差は小さくなっており、建築費用も全体的に抑えることが可能です。
ここまでアパートの建築費用の相場について紹介してきましたが、ここからは具体的に建築費用を計算していきます。
2パターンに分けてアパートの建築費用の計算シミュレーションを紹介していくので、ぜひチェックしてください。
まずは、30坪の土地に3階建てのアパートを建てる場合をシミュレーションしていきます。建ぺい率60%・容積率200%とすると、30坪の敷地のうちの60%である18坪がアパートを建てるために使える面積です。1階から3階までの各階の広さを18坪とした場合、延床面積は18坪×3=54坪となります。
この土地の容積率は200%であり、坪数にすると60坪です。延床面積となる54坪は60坪を上回っていないため、建築可能となります。
「坪単価×延床面積」で計算した建築費用は、以下の通りです。
【建築費用】
続いて、60坪の土地に2階建てのアパートを建てる場合の計算シミュレーションをおこないます。建ぺい率70%・容積率300%とすると、60坪の敷地のうち42坪がアパートを建てるために利用可能です。
今回は2階建てなので、42坪×2=84坪が延床面積です。容積率は300%で180坪となるため、建築に問題はありません。建築費用の概算は、以下の通りです。
この土地は容積率が300%であり、最大床面積は180坪となります。今回は2階建てでしたが、この土地の特徴を活かすなら3階建て以上のアパートを建築するのがおすすめです。建築費用は高くなりますが、その分部屋数を増やすことができ、家賃収入も増えるでしょう。
アパートを建てるためには、建築費用以外にさまざまな諸経費が必要となります。諸経費を計算に入れずに資金計画を立てると、資金が足りなくなることもあるため注意してください。
ここからは、アパートの建築時にかかる諸経費を紹介します。それぞれの経費について詳しく紹介するので、アパート建築を考えている人は必ずチェックしてください。
【アパート建築時にかかる諸経費】
設計費とは、アパートの設計をしてもらうときに必要となる費用です。施工会社に設計から依頼する場合は、建築費用の1〜3%が設計費として必要となります。また、施工会社以外の一級建築士事務所などに依頼する場合は、5〜8%必要となるため、注意しましょう。
アパートを建築するためには設計図が必要なため、設計費は省略することができません。さらに、設計費には、確認申請費料が含まれていないケースもあるため、追加で50万円程度必要となる可能性もあります。必ず確認しておきましょう。
現況測量費とは、アパートの設計をする前に必要となる調査の費用です。現況測量では高低差や土地の面積などを調査し、費用は20〜30万円になります。
現況測量もアパート建築のために必要な工程のため、省くことは難しいでしょう。また、隣の土地との境界の調査が必要となる場合もあり、建築時のトラブルを回避するためにも必ずおこなってください。
建物を建てる前に、その地盤がどれくらいの重さに耐えられるかを調査するのが地盤調査です。地盤が弱い場合は、建物の荷重に耐えられず地盤沈下する可能性があります。それを防ぐために、あらかじめ地盤を調査しなければいけません。
地盤調査はボーリング調査とも呼ばれており、一箇所調べるごとに30~50万円が必要です。土地が広ければ広いほど、調査するポイントは多くなります。
調査によって地盤が弱いと判明した場合は地盤改良をしなければならず、その費用も追加で必要です。地盤の状態によって必要となる費用に差が出る項目となります。
水道分担金とは、水道を引き込む際に地方公共団体に支払う費用のことです。戸数によって引き込む水道の数が異なるので、アパートの規模によって費用は異なります。一般的に1戸あたり15〜20万円程度必要といわれているため、200万円程度を予算に組み込んでおくと良いでしょう。
また、水道分担金は自治体によっても異なります。費用が安い地域もあれば高い地域もあるため、正確に計算する際は自治体に問い合わせるなどして、1戸あたりの水道分担金を調べておくのがおすすめです。
不動産取得税とはその名の通り、不動産を取得したときに納めなければならない税金です。アパートが完成して半年以上経過したら納税通知書が届きます。その通知書に従って、市町村へ1度だけ納める地方税です。
不動産取得税の税額は、不動産評価額×3%です。多くの場合、このときの不動産評価額はアパートの建築費の50%程度になります。
不動産登録免許税とは、不動産を登記するときに必要となる費用です。税金の種類としては国税となり、不動産評価額×0.4%で求めて、法務局にて納税します。例えば、評価額2500万円のアパートの場合の税額は、10万円です。
不動産登記には所有権保存登記と表示登記の2種類がありますが、不動産登録免許税がかかるのは所有権登記だけなので覚えておきましょう。
抵当権設定登録免許税とは、アパート建築のためにお金を借りた場合にかかる費用です。一般的に、銀行などの金融機関が土地と建物を担保にするために設定します。
抵当権設定登録免許税は、ローン借入額×0.4%で求めることができます。建築費用5000万円のアパートを全額ローンで購入する場合は、5000万円×0.4%=20万円となります。
ローンを組まずに現金で購入する場合には、かからない費用です。
司法書士手数料とは、不動産登記などを司法書士に依頼した場合にかかる費用のことです。費用の相場は7万円前後ですが、自分で手続きをおこなえば司法書士手数料はかかりません。
ただし、アパートの建築時はさまざまな手続きがおこなわれるので、自分で全てをおこなうのは困難です。司法書士資格を持っているなどの特別な理由がない場合は、司法書士事務所に依頼することをおすすめします。
印紙税とは、請負工事契約書に貼りつける印紙代のことです。印紙税は以下の表のように、建築費用によって変動します。
収入印紙は郵便局などで購入できますが、多くの場合で不動産会社が代理で購入してくれます。そのため、購入が必要な場合は担当者から連絡があるでしょう。
損害保険料は、建物にかける火災保険や地震保険の費用のことです。アパートを建てる際は、万が一に備えて火災保険や地震保険に加入する必要があります。
しかし、一口に損害保険と言っても、カバーできる範囲は契約によって異なります。複数社から見積もりをとって、自分に合うプランを選択してください。
融資手数料は、住宅ローンを組む際に必要になる費用のことです。融資手数料は銀行に支払います。
一般的に5〜10万円程度が必要だといわれていますが、その金額は銀行によって異なるので確認してください。ローンを組む銀行を選ぶときに、融資手数料についての説明もあるでしょう。
アパートを建築するときには、建築費用の10〜20%の自己資金が必要だといわれています。建築費用が5000万円の場合は、500〜1000万円の費用が必要となるでしょう。
居住用の一戸建て住宅を建てるときは、全額ローンも可能です。しかし、アパートローンを組むときは、最低でも建築費用の1割を頭金として用意することを銀行から求められます。自己資金ゼロでアパートの建築をすることは難しいため、注意しましょう。
アパート建築の際は住宅ローンではなくアパートローンで申し込みを行います。初めてアパートを建築する場合は、まずはアパートローンの基礎知識を身につけておきましょう。
ここからは、アパートローンの基本情報として、以下の2つについて紹介します。
アパートローンを組むときに重要な情報なので、チェックして正しくローンを組みましょう。
アパートローンと住宅ローンの違いは、物件が居住用であるか投資用であるかという点です。アパートローンは、投資用もしくは商業用の不動産に必要となる資金を借り入れるものとなります。
一方の住宅ローンは、居住用の住宅にのみに利用できるローンです。そのため、アパートの建築費用として住宅ローンを利用することは原則できません。利用目的が異なるため、アパート建築の際にはアパートローンを利用することになるでしょう。
アパートローンの金利は2%が相場となっています。銀行や申請方法によって金利に差はあるものの、住宅ローンと比べるとその差が小さいのが特徴です。
日本政策金融公庫から借り入れる場合は金利が1%台となることもあり、より安く借り入れることができます。アパートローンは長期に渡って返済することが多いため、金利は重要なポイントです。できるだけ安い金利で借り入れをするためにも、相場を参考に銀行を選びましょう。
アパートの建築費用は安くありません。アパートのオーナーとなり生計を立てるなら、初期投資となる建築費用を安くすることが大切です。
ここからは、アパートの建築費用を安くする方法を詳しく解説します。安くするポイントは、以下の2つです。
ポイントを参考に、より低い価格でアパートを建築していきましょう。
アパートの建築費用を安くしたいなら、複数社から見積もりを取るようにしましょう。ハウスメーカーによって建築費用は異なりますが、1社でしか見積もりを取っていない場合、高く請求される可能性があります。
高すぎる建築費用を支払わないためにも、複数社で見積もりを取ることは重要です。また、他社の見積もりを見せて値下げ交渉をすることもできるので、複数社で見積もりを取って損はありません。
建物の建築費用は、形状が複雑になるほど高額になる傾向にあります。デザイン性の高い建物はどうしても複雑な形状となってしまうため、建築費用も高額になるでしょう。
建築費用を安く抑えたいなら、四角い形を選ぶのがおすすめです。また、各階の床面積を揃えることで、シンプルな形状にすることもできます。建築時のコストを抑えられるだけでなく、今後訪れるメンテナンスの際の費用も安くできるので、メリットが大きいです。
ここまでアパートの建築費用について詳しく紹介してきましたが、初めて建築する人は不安に感じる要素も多いでしょう。
そのような方に向けて、ここからはアパートの建築費用に関するよくある質問を2つ紹介します。
以降で詳しく解説していきます。
アパートの建築期間は一般的に、8〜10ヶ月となっています。これは、契約から完成までのトータルの期間です。
ただし、地盤改良が必要な場合は、さらに時間がかかることもあります。なるべく早く完成させたい方は、契約の際に施工会社にその旨を伝えましょう。
アパートの建築費用は、着工金・上棟金・完成金の3回に分けて支払います。どのタイミングでいくら支払うかは、施工会社と決めるのが一般的です。
現金で支払いをする場合はタイミングが大切になるため、資金繰りに困らないよう、早めに支払条件を決めておきましょう。
今回は、アパートの建築費用について紹介しました。アパート建築にはさまざまな諸経費がかかり、戸建て住宅よりも高額な費用が必要になるため、資金計画をきちんとおこなう必要があります。
建築費用を抑えたいときは、複数の会社に見積もり出してもらい、比較するようにしてください。また、アパートの形状をシンプルにするのも効果があります。
土地活用や土地査定、アパートの経営をお考えの方は、この記事を参考に、建築費用をなるべく安く抑えて、理想のアパート経営をしていきましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。