不動産売却では、以下の7つのトラブルがたびたび発生します。
トラブル事例や対処法を知っておけば、回避できるものばかりです。次の章でそれぞれのトラブルについて詳しく解説するので、ぜひチェックしてください。
仲介手数料によるトラブルとは、不動産会社が買主と売主の不動産売買を仲介した場合に請求できる仲介手数料に関するトラブルです。
個人が不動産を売却したり購入したりするのは簡単なことではありません。また、売買後にトラブルに発展する可能性も考えられることから、不動産の専門家である不動産会社にサポート(仲介)を依頼します。
不動産会社は不動産売買を仲介して成約させた場合には、以下のように宅地建物取引業法に定められている上限の範囲内で買主や売主に仲介手数料を請求できます。
仲介手数料でよくあるのは、仲介手数料以外に報酬を請求されるトラブルです。
例えば、一般的な売却活動にかかる広告費は仲介手数料に含まれますが、特別な広告をしたという理由で追加料金を請求される可能性があります。また、仲介手数料とは別にコンサルティング料を請求されるトラブルも見られます。
このようなトラブルを回避するには、不動産会社に仲介を依頼する前に、報酬についてしっかり話し合うことが重要です。話し合った内容が媒介契約書にしっかり記載されているかどうかも確認しておきましょう。
媒介契約に関するトラブルとは、不動産会社に不動産売買の仲介を依頼した際に不動産会社と締結する媒介契約に関するトラブルです。
例えば、なかなか成約に至らないといった理由で不動産会社との媒介契約を解除しようとしたところ、それまでにかかった実費を請求される可能性があります。
不動産会社は依頼者に対して履行のために要した費用の償還を請求することが認められています。そのため、成約に至らない場合でも費用を請求しても問題ないのですが、無駄な支出を防ぐためにも媒介契約の内容をしっかり確認しておきましょう。
また、囲い込みにも注意が必要です。囲い込みとは、不動産会社が意図的に物件の情報を公開せずに、他社からの問い合わせなどを制限する行為のことです。囲い込みでは売却活動が遅くなったり売却価格が下がったりするため、売主にとってはデメリットです。囲い込みを回避するためにも、適切に販売活動がおこなわれているかチェックしましょう。
物件に関するトラブルとは、売却した物件に物理的な欠陥があったことで、買主との間でトラブルに発展することです。
例えば、築年数の経過した築古物件を売却した際、シロアリ被害や配管の水漏れなどの欠陥が潜んでいたということも少なくありません。買主はこのような欠陥に気付いた場合、契約不適合責任という民法で認められている買主の権利を行使して、修繕や代金の減額、損害賠償、契約解除などを請求できます。
上記のような契約不適合責任を問われないためには、告知書に欠陥を漏れなく記載する、売買契約書で契約不適合責任に対する免責事項を設けるなどの対処法が挙げられます。
また、既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば、万が一売却した不動産に欠陥があった場合でも保険金でカバーできるため、無駄な支出を抑えられるでしょう。
環境的瑕疵に関するトラブルとは、売却した物件に環境的な欠陥があり、買主との間でトラブルに発展することです。
以下に該当するような場合は環境的瑕疵に該当すると判断されて、物件に関するトラブルと同様に契約不適合責任を問われる可能性があるので注意が必要です。
環境的な欠陥は、人によって感じ方が異なるので生じやすいトラブルといえます。
契約不適合責任を回避するためにも、自分の価値観で判断せずに、上記のような懸念点がある場合には告知書に欠陥を漏れなく記載する、売買契約書で契約不適合責任に対する免責事項を設けるなどの対処しておきましょう。
管理規約の説明不足に関するトラブルとは、マンションに居住する際のルールについてまとめられている管理規約に関するトラブルです。
マンションのような集合住宅では、居住者が快適に過ごせるようにするために、管理規約というルールが定められています。居住者は規約を守らなくてはならず、売買契約前の管理規約の説明が不十分だった場合、ルールを知らなかったことでトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
例えば、管理規約には以下のような内容が記載されています。
ペット可のマンションでも、飼育可能なペットの種類や大きさなどが制限されているケースも少なくありません。
説明不足が原因による買主からのクレームを回避するには、管理規約を不動産会社と買主に渡すという対処法があります。規約の内容が改正されている場合もあるため、最新の内容かどうか確認しておきましょう。
支払いに関するトラブルとは、契約締結後の手付金に関するトラブルです。
不動産売却では、売買契約成立時に買主から手付金を受け取るのが一般的です。売買契約成立後に買主の都合で契約を解除する場合は手付金を放棄、売主の都合で契約を解除する場合は手付金の倍を買主に渡します。
しかし、売買契約成立後、ローンの審査に落ちたことを理由に手付金返還を求める可能性があります。売主からすれば手付金を売却の機会を失ったことによる損失の補填に充当したい、買主からすれば解除理由が自己都合ではないので手付金を回収したいと考えるため、意見の相違によってトラブルに発展する可能性があるのです。
上記のようなトラブルを回避するには、買主に事前審査を受けてもらい、ローンに通りやすいかどうかを確認しておくことが
重要です。また、買主が住宅ローン審査に通らなかった場合の対応に関するローン特約を売買契約に盛り込むほか、手付金の取り扱いやキャンセル料について買主と一緒にして確認しておくのもおすすめです。
契約解除に関するトラブルとは、契約解除で損害賠償や不動産売却が速やかに成約しないトラブルです。
物件に関するトラブルや環境的瑕疵に関するトラブルの見出しでも触れましたが、売却予定の不動産に何らかの瑕疵が潜んでいた場合は、契約解除の可能性があるほか、損害賠償を請求される可能性があります。
また、支払いに関するトラブルの見出しでも触れましたが、成約したと思っていたところ買主が住宅ローン審査に通らず、契約解除に至る可能性も考えられます。
上記のようなトラブルを売主だけで回避するのは簡単なことではありません。不動産のプロである不動産会社にサポートを依頼すれば、契約解除や損害賠償のリスク軽減が期待できます。しかし、不動産会社であれば、どの不動産会社でも良いわけではありません。
実績が豊富かどうか、口コミが良いかなどをしっかり確認してから信頼できる不動産会社に不動産売却を相談しましょう。
不動産の売却で発生するトラブルは、自分で解決できないことも多いです。何事もなく手続きが終わるのが一番ですが、トラブルが発生した場合は解決する必要があります。不動産売却でトラブルが発生したときの相談先は、以下の通りです。
トラブルの内容によって相談する相手は異なります。どこに相談すればよいか迷ったときはまず、不動産会社に連絡をしましょう。不動産会社の対応が適切でない場合は、国民生活センターや住まいるダイヤルなどに連絡してみてください。
不動産売却の際にトラブルを回避するためには、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
【トラブル回避の方法】
不動産売却は、トラブルがなくても時間がかかります。できるだけスムーズに手続きを進めるためにも、トラブルを回避しましょう。
契約不適合責任とは、あらかじめ取引対象である目的物に決められていた種類や品質、数量などに関して、契約内容に適合しない引き渡しがあった場合、売主側が負担する責任です。
売却予定の不動産に何らかの欠陥が潜んでいた際、買主は契約不適合責任に基づいて以下のような権利を行使する可能性があります。
契約不適合責任についての理解を深めれば、どう対処することで責任を回避または軽減できるのか分かります。
例えば、売買契約書にあらかじめ記載された内容については、告知済で買主も納得して契約しているので契約不適合責任には当たりません。隠れた欠陥については告知することが困難ですが、既存住宅売買瑕疵保険に加入することで、契約不適合責任による負担を軽減できるでしょう。
売買契約書とは、不動産売買において買主と売主が交わす契約書のことです。売買契約書には、売買契約の締結で確認すべき事項が盛り込まれています。
もし、売買契約書の内容に不備があった場合や誤りがあった場合には、契約を締結した後にトラブルに発展するリスクが高まります。
例えば、欠陥に関する事項が盛り込まれていない、契約解除に関する事項が盛り込まれていない場合、契約締結後のトラブルに発展する可能性が高いです。売買契約書に曖昧な表現で記載されていたり、不動産会社や買主に有利な内容となっていたりする場合もあるため、必ず確認してください。
トラブルが発生した場合、基本的に売買契約書に記載されている内容がすべてです。大事なことは、契約書に記載しておきましょう。
売却する不動産について知っていることを不動産会社に漏れなく伝えることも重要です。売買契約書には、契約における重要事項が盛り込まれていますが、売買契約書を作成するのは不動産会社です。売主が不動産会社に情報をしっかり共有しないと売買契約書に漏れが生じてしまいます。
この売買契約書の漏れがトラブルを発生させる原因になる可能性があるため、独断するのではなく不動産会社にきちんと情報を共有することが大切なのです。
マイナスの情報を共有することは不動産売却に不利になると考えて伝えない方もいると思いますが、故意に伝えないのは違法です。売買契約締結後に賠償請求といったトラブルに巻き込まれないためにも、些細なことでも不動産会社に伝えてください。
安心して任せられる不動産会社選びも、不動産売却でのトラブルを回避する重要なポイントです。不動産売買では、不動産のプロである不動産会社のサポートが欠かせません。
不動産会社であれば、どの不動産会社に任せても同じと考えている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。仲介をおこなう不動産会社が両社のサポートを適切におこなってくれれば、トラブル回避は可能です。
安心して取引を任せられる不動産会社を選ぶことが、トラブル回避につながります。そのため、不動産会社を選ぶときは、複数社を比較しましょう。
電柱などに「〇〇〇万円で販売中」などといったチラシを貼ることは、そもそもそのスペースで宅建業法に定められた説明情報をすべて網羅できることは難しく、大概、違法な広告です。ステ看(捨てる看板)などと呼ばれます。こうした違法行為をしている会社はおすすめしません。
実績が豊富かどうか、口コミなどから総合的に信頼できる不動産会社かどうか判断しましょう。
不動産の売却をスムーズに進めるためには、安心して任せられる不動産会社を選ぶことが最も重要です。悪質な不動産会社を選ぶと、手数料が高額になるだけでなくトラブルにも発展する可能性があります。
ここでは下記の不動産会社を選ぶポイントについてご紹介します。
【不動産会社を選ぶポイント】
不動産会社を選ぶときは、売却実績を確認しましょう。売却実績の少ない不動産会社は、何かしらの問題がある場合があります。また、実績を確認するときは、地域や物件の種類も確認するのがおすすめです。
不動産会社によって得意な物件は異なります。ホームページなどを調べて、自分が売却したい物件を得意とする不動産会社に依頼しましょう。
不動産会社の担当者との相性も、会社選びの重要なポイントです。会社の規模が大きく、実績があったとしても不動産会社との相性が悪いと不安を感じやすくなります。
親身に対応してくれる営業担当者であれば、大きな金額が動く不動産売却でも安心して任せられるでしょう。レスポンスの早さや相談に対してどのように対応してくれるかで、親身になってくれているか判断してください。
不動産会社を選ぶときは、囲い込みをしていないか確認しましょう。囲い込みとは、売主にとって売却機会の損失にもなります。売却価格が下がることもあり、売主にとって不利益な行為を取る不動産会社は信用できません。
囲い込みをしない不動産会社であるか見極めるために、物件のポータルサイト・他社のホームページ・チラシへの掲載がされているかを確認すると良いでしょう。また、業者専用のデータベースである「レインズ」に登録されているかどうかも見極めるポイントです。
不動産売却では、仲介手数料に関するトラブルや支払いに関するトラブルといったように、さまざまなトラブルを伴います。上記のようなトラブルを回避するには、対処法を理解し、事前に対策を講じておくことが重要です。
また、不動産売却におけるトラブルを売主だけで回避することは容易ではありません。不動産のプロである不動産会社のサポートが欠かせません。
不動産会社は数多くありますが、不動産売買のトラブルを回避するには信頼できる不動産会社に仲介を依頼することが大切です。実績が豊富かどうか、口コミが良いか等から総合的に信頼できる不動産会社かどうかを判断しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。