家の売却は、人生の中でもそう経験することではありません。大きな金額も動くため、失敗してしまうと大きな後悔につながる恐れもあります。失敗を防ぐためには、やってはいけないことを理解しておくことが重要です。
この記事では、家の売却でやってはいけないことを、「売却準備中」「売却活動中」「売買契約・引き渡し後」の3つのタイミングに分けて解説します。これから家の売却を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
家の売却を検討する際、まず不動産会社選びや情報収集などの準備が必要です。ここでは、売却準備中のやってはいけないことを解説します。
売却には入念な計画が欠かせません。下記のような行動はNGです。
家の売却は、思い立ったらすぐに売却できるものではありません。一般的には、3〜6カ月程の時間がかかるものです。さらに、家の条件によっては1年以上かかるケースも珍しくありません。
一般的な売却の流れとかかる期間は、次の通りです。
売却したい時期から逆算して売却計画を立てることが大切です。
家の売却では、売却の方法や税金など知っておきたい情報は多くあります。情報を知らないまま売却を進めてしまうと、安い売却方法だった、控除を適用できずに税額が高くなったなどと後悔してしまうケースもあります。特に、次のような情報は収集しておくようにしましょう。
不動産を売却する方法には、仲介と買取があります。一般的な売却である仲介は、不動産会社が買主との間に入る売却方法です。
仲介であれば、市場価格で売却でき高値での売却も期待できますが、仲介手数料が必要などのデメリットもあります。一方、不動産会社が不動産を直接買い取る方法が買取です。買取なら、短期間での売却が可能です。ただし、市場価格の7〜8割ほどの売却となる為、仲介よりも安値での売却となります。
このような違いがわからないまま、不動産会社の言うとおり売却を進めてしまうと、高値で売却するチャンスを逃しかねません。
また、売却には税金や費用がかかります。それらの費用を含めて資金計画を立てなければ、売却しても思ったよりお金が残らないということもあるでしょう。税金の場合は、条件によっては控除を適用でき節税が可能です。
不動産会社の査定を受ける前に、自分でも相場を調べておくことが大切です。相場を把握していないと、不動産会社の査定額の妥当性を判断できません。また、価格を付ける際にも相場からかけ離れていると、スムーズな売却ができなくなります。相場を把握するには、次のような方法があります。
過去の取引事例は、国都交通省の「土地総合情報システム」や「レインズマーケットインフォメーション」で調べられるので、チェックするようにしましょう。
ただし、相場はあくまで参考とするものです。実際の売却額は不動産の状況や売主・買主の事情にも左右されるので、価格を詳しく知りたい場合は不動産査定を受けるようにしましょう。
家を売却する場合、資金計画を立てることが大切です。下記のように、資金に対する認識があまいと、売却が失敗する恐れがあります。
売却は、売却額が手に入るだけでなく、手数料や税金の支出が伴います。主な費用・税金には次のようなものがあります。
これらの費用は、売却額の5〜8%ほどといわれています。費用についても把握したうえで、資金計画を立てることが大切です。
また、家を売却するには、住宅ローンの完済が必須です。住宅ローンが残っている場合、売却額で完済するのが一般的ですが、売却額によっては自己資金での補填などの工夫も必要になります。
とはいえ、そもそも住宅ローンの残債を正確に把握していないと、完済計画も立てられません。売却を進めていても住宅ローンが完済できないとなれば、売却は中断してしまいます。
事前にローン残債を把握したうえで、資金計画を立てるようにしましょう。
家を売るには、家の抵当権を抹消する必要があります。抵当権とは、住宅ローンが滞った場合家を売却して残債を回収する権利のことで、住宅ローンを組んだ際に金融機関を抵当権者として設定しています。
この抵当権を抹消するには、住宅ローンの完済が必須となり、さらに金融機関の手続きも必要です。住宅ローンが残っている家を売却する場合、事前に金融機関に連絡しておくようにしましょう。
また、売却額で一括返済する場合は、事前に返済額の計算や一括返済の旨を相談しておくことで、スムーズに返済できます。
不動産会社を最初から1社に絞って進めるのはおすすめしません。不動産会社によって査定額は大きく異なり、1社のみしか査定を受けないと査定額の比較ができません。提示された価格を鵜呑みにすることになり、たまたまその会社が低い査定額の場合、高値で売却するチャンスを逃してしまいます。
また、複数の不動産会社を比較することで、査定額だけでなく不動産会社の対応や担当者の質などを見極めることも可能です。不動産会社によって強みは異なり、得意分野によって売却は大きく左右します。売却は長期間にわたるため、その期間を付き合う担当者との相性も大切でしょう。
できるだけ多くの不動産会社を比較して、信頼して任せられる不動産会社を見つけることが重要です。
不動産会社の選び方については、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
築年数の古い家を売却する場合リフォームや解体したほうがいいのでは、と考える方もいるでしょう。しかし、リフォームや解体したからといって売却につながるとは限りません。
近年は、安い中古を購入して自分好みにリフォームしたいという買い手も増えており、リフォームしてしまうとそのような買い手のニーズにマッチしません。外壁やクロスなどをリフォームしても、買い手の好みに合わなければ避けられてしまう可能性もあるでしょう。
リフォーム費用は、基本的に売却額に上乗せできません。上乗せしても相場よりも高くなると買い手から避けられてしまうものです。高額なリフォーム費用をかけたからといってスムーズに売却できるわけではなく、むしろリフォームした分の回収が難しいケースも少なくありません。
リフォームするべきか、箇所はどうするのかは自分で判断せずに、売却のプロである不動産会社に相談して適切に判断することが大切です。
不動産会社と媒介契約を結んだ後は、家の売却が始まります。ここでは、家の売却活動中のやってはいけないことを解説します。
チラシ作成やサイトへの掲載といった売却活動は、基本的に不動産会社がおこなってくれるので売主がすることはありません。だからといって、不動産会社に任せっぱなしにするのはいけません。任せっぱなしにすると、なかなか買い手が付かないことや値下げ提案を鵜呑みにしてしまう恐れがあります。
不動産会社からは、定期的に売却報告があるので内容にはしっかりと目を通すようにしましょう。媒介契約が一般媒介契約の場合、売却報告義務がないため自分から連絡を取ることも大切です。報告書には、営業活動の内容や問い合わせ件数・内覧時の感触などが記載されています。
また、報告時に買主が見つからない場合や値下げや売却プランの変更などの提案を受けることもあるでしょう。値下げするかは、売主が判断するものです。適切に判断できるように、売却の正確な状況を掴めるようにしておきましょう。
売り出し価格の設定は、売主が自由に設定できます。しかし、相場よりも設定が高すぎても低すぎてもいけません。
愛着のある家やいくらで買った家だからと、つい高値を付けたいところですが、相場よりも高すぎる価格では、買い手から避けられてしまいます。反対に相場よりも安ければ、買い手は付きやすいですが、自分のローンが完済できないなどのトラブルになる恐れがあります。
売り出し価格を設定する際には、相場や不動産会社の査定額を参考に、不動産会社と相談しながら適切な価格を付けることが大切です。
購入希望者から値下げ交渉を受けることは珍しくありません。過度な値下げをする必要はありませんが、ある程度値下げに応じる姿勢も大切です。また、値下げ以外にも次のような交渉を持ちかけられるケースもあります。
買い手としては、できるだけ有利な条件で購入したいものです。売主側のメリットばかりを優先していると、買い手から避けられてしまう恐れがあるので注意しましょう。
ただし、すべての要求を呑む必要はありません。値下げし過ぎるとローンを完済できないなど、不利になる恐れもあるでしょう。値下げできるラインや妥協できる条件などをあらかじめ明確にしておくと、不利になり過ぎずに買主の要求にも応じやすくなります。
家の不具合など売却に関する不利な状況は、できれば買い手に伝えたくないものですが、きちんと伝える必要があります。家の不具合や隠してり偽って売却した場合、補修費用の請求や損害賠償請求を受ける恐れがあります。
不動産の売買契約では、売主は契約不適合責任を負うことになります。契約不適合責任とは、契約内容とは異なる商品を渡した際に問われる責任です。家の場合が、次のようなケースで契約不適合責任が問われる可能性があります。
これらの事実を契約書に記載せずに、契約後に発覚した場合に契約不適合責任が問われるのです。
家を売却する場合は、家の正確な状況を把握して漏れなく契約書に記載する必要があります。売却に不利な情報がある場合、まずは不動産会社に正直に相談して、状況に応じた売却プランを立てられるようにしましょう。
内見は、買い手が購入判断をつける大切な要素です。内見の準備が不足し、買い手に悪い印象を与えると売却が遠のいてしまいます。少しでも印象をよくできるように、念入りに準備して内見を迎えられるようにしましょう。
上記のような準備は欠かせません。特に水回りは買い手も必ずチェックするポイントなので、重点的に清掃しておくようにしましょう。部分だけでもハウスクリーニングするのも効果的です。
また、内見中は、売主は出しゃばり過ぎず真摯な対応で見守る姿勢が大切です。ポイントの説明や聞かれたことに応えつつも、内見者がゆっくりと見られるようにしてあげましょう。この際、買い物環境や通学路情報など、住んでいないとわからないような情報は内見者も喜ぶので、事前にアピールポイントを整理しておくのもおすすめです。
買主との交渉が合意すれば、売買契約となります。売買契約と引き渡しは、家の売却の仕上げともいえる重要な段階です。ここでは、売買契約・家の引き渡し後でやってはいけないことを解説します。
売買契約書には、売却に関する細かい規定が記載されています。また、契約を一度結ぶと変更やキャンセルはできないので、契約前に隅々までしっかりチェックすることが大切です。売買契約書には、主に次のような内容が記載されています。
これらの条件が、契約前に話していた内容と異なっていないかはチェックしましょう。契約書に不明点がある場合は、その場で確認して解消しておくことが大切です。
すべてに納得できてから、契約書に署名・押印するようにしましょう。
売買契約を一度結んだら、基本的に内容の変更やキャンセルはできません。手付金解除やローン特約での解除はできますが、期間を超えて解除すると違約金が発生します。
売却額や条件などの変更も、買主が合意するか違約金を払うなどで対応できる可能性もありますが、不利になる恐れがあります。契約までに内容をしっかり確認し、契約後に変更・キャンセルが無いようにしましょう。
売買契約時には、家の引き渡し期日も決められます。売主は、引き渡し日までの引っ越しや清掃、ライフラインの変更手続きを終えておくようにしましょう。もし、引き渡し日の家を引き渡せない状況になると、遅延損害金を請求される恐れがあります。
また、買主も引き渡し日に合わせて引越しなどのスケジュールを組んでいるので、迷惑をかけることになります。自然災害などやむを得ない状況を除いて、確実に引き渡し日に間に合うように準備を進めておきましょう。
家を売却して利益が出た場合、確定申告で納税することが必要です。確定申告時期は、売却した年の翌年2月16日から3月15日の間です。忘れずに確定申告できるように準備を進めておきましょう。
確定申告が必要にもかかわらず申告を忘れると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが科せられます。
なお、家の売却で利益が出ない場合は税金が発生しないため確定申告は不要です。ただし、各種控除を適用して税金が発生しない場合は、控除の適用に確定申告が必要となります。
利益の計算や確定申告に不安がある場合は、確定申告時期の前に自治体や税理士の無料相談会が設置されるところも多いので、活用するとよいでしょう。
最後に、家の売却に関するよくある質問をみていきましょう。
大まかな手順は次の通りです。
売却期間の目安は3〜6カ月程です。まずは、不動産会社の査定を比較して不動産会社を選ぶことから始めましょう。契約する不動産会社が決まれば、基本的な売却手順は不動産会社がサポートしてくれます。
不動産売却の流れについて、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却を始める前に|知っておきたい売却の流れや費用・税金について解説
家の売却では、主に下記のような書類が必要です。
基本的には、不動産会社で指示されたタイミングで用意すればよいのですべて覚える必要はありません。しかし、書類によっては取得に時間がかかるものもあるため、早めに用意しておくとよいでしょう。
不動産売却時に必要な書類について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:【不動産売却の必要書類】それぞれの取得方法や提出時期、チェックリストをご紹介
売却では、主に下記のような税金がかかります。
上記のうち印紙税と登録免許税は、基本的に必ずかかります。譲渡所得税は利益が発生した時のみかかる税金です。
家の売却でかかる税金について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却にかかる税金は?売却益の計算方法や節税対策を解説
ローン返済中の家でも、売却額でローンを返済できるなら売却可能です。売却額だけでは完済できない場合も、自己資金や住み替えローンの利用で対応できるなら売却できます。
しかし、これらの対策でもローンを完済できない場合は、売却できないので注意しましょう。ローンの返済が滞っている状態であれば、金融機関の承諾を得て売却する任意売却という選択も可能です。
ローン返済中の家の売却について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:住宅ローンがあるけど引っ越したい場合はどうする?2つの方法や注意点を解説
古い家であっても、立地が良い・古民家としての価値があるなら、そのままの状態でも売却できる可能性があります。
また、リフォームや解体などを検討することで売却できるケースもあるでしょう。ただし、リフォーム・解体は不動産会社に相談したうえで実施することが大切です。
また、古い家を売却する場合は、古い家の売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶことで売却しやすくなります。
古い家の売却について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:【古い家を売る方法】売却方法や注意点を解説!
家の売却代金は、決済時に受け取れます。決済は、売買契約から1カ月してから行われるのが一般的です。買主からの支払い方法は、現金一括や振込・インターネットバンクなどがあり、事前に話し合って決めることになります。
また、売却代金の一部を手付金として売買契約時に受け取ります。ただし、手付金は特約での解約時などで返金しなければならない可能性もあるので、決済を終えるまで手を付けない方が良いでしょう。
ここまで、家の売却でやってはいけないことを解説してきました。家の売却で後悔しないためには、準備・売却中・契約後のそれぞれの段階で、やってはいけないことがいくつかあります。
家の売却を成功させるには、これらのポイントを押さえつつ信頼できる不動産会社を見つけることが何より大切です。複数の不動産会社を比較しながら、あなたの家を安心して任せられる不動産会社を選ぶようにしましょう。