老後の生活を見据えて、住み替えを検討している方もいるでしょう。老後の住み替えは終の棲家ともなるため、失敗したくないものです。しかし、老後の住み替えは現役中の住み替えとは異なってくるため、ポイントを押さえておくことが重要です。
この記事では、老後の住み替えのタイミングや、住み替え先・失敗しないためのポイントをわかりやすく解説します。老後に向けて住み替えを検討している方や親が住み替えようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
一言に老後といっても、実はとても長い期間あります。仮に、65歳から老後生活に入れて95歳まで健全なら30年間が老後生活期間です。老後生活を見据えた住み替えなら、さらにその前段階から検討を始める方も多いでしょう。長い期間のある老後は、どのタイミングで住み替えするかも重要です。
ここでは、老後の住み替えでよくある下記3つのタイミングについて解説します。住み替え時期を検討する材料の一つにしてみてください。
子どもが独立し、夫婦2人だけの生活になるタイミングで住み替えを検討する人は多いものです。子どもと生活していたファミリータイプの住宅では、夫婦2人の生活は部屋を持て余してしまいます。使わない部屋でも掃除は必要になるので、管理が大変になるでしょう。一般的な2階建ての戸建てだと、階段の上り下りも年々しにくくなり、2階部分はまったく使わないというケースも少なくありません。
このように、家の管理が大変になるタイミングで小さい家に住み替えるという選択肢が検討できます。また、子どもが独立したのなら子どもの学区などに気兼ねなく、理想の老後生活を送れる場所を求めて住み替えもできます。
定年退職のタイミングであれば、職場の位置を気にせず好きな場所への住み替えが可能です。退職金というまとまったお金が手に入っていればいるので、住み替え資金としても条件が良いでしょう。
ただし、住宅ローンを利用して住み替える場合は年齢に注意が必要です。住宅ローンは、一般的に完済まで70~80歳という制限が設けられています。退職直後であれば借入可能ですが、借入れできた場合でも返済額と老後資金の兼ね合いには注意が必要です。
高齢になってからは、住宅ローンの返済があると生活費の大きな負担となります。退職金やそれまでの貯蓄で購入できる範囲の家を検討することをおすすめします。
家の老朽化も住み替えのタイミングの一つです。老後生活を視野に入れることには、今住んでいる家の築年数もかなり経過している頃でしょう。
一般的な木造の場合、耐用年数は22年です。また、20~30年で水回りなどの設備のほとんどが交換の時期を迎えます。30年超えても生活し続けることはできますが、快適に生活し続けるには大規模な修繕やリフォームが必要です。大規模修繕や建て替えとなると、費用が1,000万円を超えることも珍しくありません。
また、高額な費用をかけたからといって、利便性の悪い立地であれば、生活しにくいだけでなく将来的に売却も難しくなります。修繕のための費用が高額になるなら、住み替えてしまう方が経済的にも生活環境としても良くなるケースも多いのです。
住み替えのタイミングについて、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:住み替えタイミングはいつが最適?かかる費用や注意点も解説!
老後の住み替えは、住み替え先の選択肢が現役中とは異なります。夫婦2人が高齢になって生活しやすい環境の住み替え先を検討することが大切です。ここでは、老後の住み替え先の選択肢として下記5つのメリット・デメリットを併せて解説します。
老後の住み替えでは、コンパクトなマンションに住み替えるという選択肢があります。一戸建てからマンションに住み替える以外でも、ファミリータイプのマンションからコンパクトなマンションに住み替えるのも一つの選択肢です。
夫婦2人や1人になっても丁度良いサイズのマンションへ移り住むことで、管理の手間を少なくでき快適に生活できます。マンションに住み替えるメリット・デメリットは以下の通りです。
マンションは、一般的に利便性の高い場所に建設されています。高齢になってから買い物や通院などの移動は大変です。利便性のよい場所であれば、車が無くても便利に生活できるでしょう。
また、バリアフリー構造のマンションを選べば足腰が衰えても安心です。建物の修繕管理も自分でする必要がないので、管理の手間や負担がかからないのも嬉しいポイントといえるでしょう。
立地が良く資産価値の高いマンションであれば、将来介護施設に入所する際などに売却しやすいだけでなく、そのまま子どもが相続しても財産として活用できます。
デメリットとしては、修繕積立金・管理費が毎月コストとなってかかる点です。特に、築年数の古いマンションは、修繕積立金が高額になる傾向があるので注意しましょう。
マンションは上下左右を他の居室に囲まれるため、生活トラブルが起きやすくなります。それまで戸建てで音を気にせず生活していた人には、ストレスになる可能性もあるでしょう。
【老後にマンションに住むのがおすすめの人】
マンションから戸建てや、それまでの大きい戸建てから平屋などのコンパクトタイプの戸建てに住み替える方法もあります。
戸建に住み替えるメリット・デメリットは、次の通りです。
戸建ては、マンションに比べて自由に生活できます。庭があればガーデニングを楽しむことができ、ペットの制約もありません。孫が遊びに来ても、庭で思いっきり遊ばせることもできるでしょう。
また、リフォームの自由度も高いので、バリアフリーのリフォームや自分の好みにリフォームすることも可能です。自由度が高く、理想の生活スタイルを実現しやすいのは、戸建てのメリットといえるでしょう。戸建は建物だけでなく土地も所有します。将来相続や売却する際にも、土地があることで売却・活用の幅が広がるのはメリットとなるでしょう。
ただし、戸建ては修繕や管理・防犯対策・バリアフリー対策は自分でしっかりとおこなう必要があります。高齢になると、家のメンテナンスが難しくなる恐れがある点には注意が必要です。戸建は、一般的に郊外など静かな環境で建てられるため、立地によっては生活に必要な施設が遠いなど不便さもあります。
最初からバリアフリー対策されていない家の場合、マンションに比較して段差が多くなります。足腰が弱ってくると、ちょっとした段差でもつまずいてケガをするリスクが高くなるので、注意しましょう。
【老後に戸建てに住むのがおすすめの人】
シニア向け住宅とは、高齢者が安心して生活できる環境が整っている住宅です。バリアフリー構造が整っているだけでなく、生活支援サービスや介護サービスの利用などができるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)もあります。高齢者施設はまだ必要ないけど、サービスの整った住宅に住みたいという人のおすすめです。
シニア向け住宅のメリット・デメリットは、下記の通りです。
シニア向け住宅なら、シニアに必要なバリアフリー対策やサービスが整っているので、安心して老後生活を送ることができます。周りの入居者も同じ世代になるので、交流しやすいというメリットもあるでしょう。シニア向け住宅には、賃貸タイプと分譲タイプがあり、賃貸タイプなら将来介護施設に入所するなどでも簡単に住替えられます。
一方、シニア向け住宅の多くは、入居に条件が設けられています。年齢だけでなく介護状態など条件をクリアしなければ入居できない可能性があるので、注意が必要です。
シニア向け住宅は増えている傾向はありますが、まだまだ数は多くありません。希望するエリアに物件がない、あってもすぐに埋まってしまうなどで、住み替えできない可能性も高くなります。
賃料も一般的な賃貸物件よりも高くなるため、資金計画は慎重に検討するようにしましょう。また、分譲タイプの場合、利用しなくなった時に売却や相続が難しい点にも注意が必要です。年齢制限などに引っかかって、子どもが利用できない、売却しても買い手が狭まることで活用しにくくなります。
【老後にシニア向け住宅に住むのがおすすめの人】
「介護や認知症に備えたい」「子どもに迷惑をかけたくない」などの理由で、高齢者施設への住み替えを検討する人も多いものです。高齢者施設では、介護や食事・医療など専門のスタッフのサービスを受けられます。
シニア向け住宅が、比較的通常のマンション生活と同様の感覚で生活できるのに対し、高齢者施設ではより専門的なサポートを受けながらの生活となります。高齢者施設というと、要介護などの状態で入所するイメージを持っている方も多いでしょう。
しかし、自立した状態でも入居できる施設も増えているので、元気なうちから将来の介護に備えてそのような施設を選ぶのもおすすめです。
高齢者施設は、バリアフリーだけでなく介護や医療のケアも整っています。また、食事や清掃などはサービスとして受けられるので、自分で家事をする必要があります。家事の時間が大きく削減した分を自分の趣味などで充実させることもできるでしょう。
高齢者施設は、施設自体が多くなく、空きも少ない状態です。希望の立地や条件で入所できる施設の選択肢がない可能性もある点には、注意しましょう。
また、施設によってサービスの内容は異なります。サークル活動が充実している、食事が美味しい、ペットも住めるなど条件が異なるので、自分の希望の条件を明確にしたうえで選ぶとよいでしょう。
【老後に高齢者施設に住むのがおすすめの人】
二世帯住宅への建て替えや、子どもの希望するエリアに住み替えるという方法もあります。子どもと同居するメリット・デメリットは下記の通りです。
今の家を二世帯住宅に立て直して子どもと同居すれば、住み慣れた地域でそのまま生活できます。土地や建物を一から探す必要もないので、住み替えの手間を大きく減らせられるでしょう。
また、同居の大きなメリットは近くに家族のいる安心感です。いつでも家族が駆け付けられる距離なら、老後生活の不安を減少できます。子どもの方でも、親の状況を把握しやすいというメリットもあります。
ただし、子どもとの同居は必ずしもうまくいくとは限りません。家族であっても世帯が異なれば生活リズムや価値観が異なります。お互い別の世帯であることは忘れずに、干渉し過ぎず、思いやりを持って生活することが大切です。
二世帯住宅は、買い手が限定されるので売却しにくい物件でもあります。将来、子世帯が扱いに困る恐れもあるので、注意しましょう。孫と生活できる楽しさもありますが、なかには孫育てが必要で、体力・時間がとられて自分の好きなことができないケースもあるので、気を付けましょう。
同居する場合は、将来の介護のことまで視野に入れて子世帯と十分に話し合い、お互いに納得してからスタートすることが大切です。
【老後に子どもと同居で住むのがおすすめの人】
ここでは、老後の住み替え先で失敗しないためのポイントとして、下記の3つを解説します。
老後の住み替えといっても、老後に入ってから考えるのではなく、40~50代で考えても早すぎることはありません。住み替えは、資金力だけでなく体力・気力も必要です。家探しや今の家の売却活動・引っ越し準備に新生活での役所手続きなど、やらなければならないことはたくさんあります。60代・70代と体力が衰えてからこれらのことをすべてこなすのは、大変になります。
また、住宅ローンの利用を検討している場合、年齢が上がるほど借入が難しくなります。下記のような理由で、住宅ローンが難しくなるので注意しましょう。
今の家を売却するにしても、築年数が経過するほど、売却も難しくなっていくものです。50代のうちから老後の住み替えを考えておき、タイミングが来たらすぐに動けるようにしておくと老後の住み替えもスムーズにできるでしょう。
住み替えは大きな金額が動くので、入念な資金計画が必要です。住み替えで新居を購入する際の予算は、住宅ローン」「売却額」「預貯金や退職金」がメインになります。
年齢が上がった状態では、住宅ローンの審査が厳しくなります。一般的には、完済時に80歳、申込時に70歳未満というケースが多く、60代であっても健康状態や収入に問題がなければ借入可能です。
しかし、60歳で借入すると返済期間が長くできないので、借入額は少なくなります。そのため、新居に充てる資金では、売却額と預貯金・退職金が重要です。
預貯金と退職金はある程度額の見込みが立ちますが、売却額は実際の売却に左右されます。売却額の見込みが甘いと、予定よりも価格が下回った際に予算計画が大きく崩れてしまう恐れがあるので、慎重に売却額を設定するようにしましょう。
住み替えの費用や税金について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:住み替えとは?家を住み替える際にかかる費用や注意点を紹介
関連記事:不動産売却で住み替える際にかかる税金とは?節税方法や利用できる特例を解説
老後の住み替えを成功させるには、新居選びが重要です。一度住み替えすると、簡単には引っ越しできません。老後の住み替えとなると、より老後の生活をできるだけ具体的にイメージし、必要な施設や交通の利便性・周辺環境などをしっかりチェックしていきましょう。
下記のようなポイントを押さえつつ、自分の理想の老後生活に必要な条件を洗い出して住み替え先を検討していくとよいでしょう。
また、納得いく住み替えのためには、不動産会社選びが重要になります。信頼して任せられる不動産会社を選べれば、スムーズな売却が期待でき住み替えも成功しやすくなるでしょう。
不動産会社の選び方については、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
老後の住み替えのタイミングや住み替え先の選択肢、失敗しないポイントをお伝えしました。老後の住み替えは、できるだけ早い段階から計画を立てておくことが大切です。
子どもが独立した50代くらいから老後を視野に入れた住み替えを検討すると、資金や体力・気力の面でも住み替えを成功しやすくなります。
住み替え先には、マンションや戸建て、シニア向け住宅などの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットや希望する老後生活の条件・資金などを踏まえて、納得できる住み替え先を選ぶことが大切です。