「不動産は持っていたほうがメリットもあるのでは?」と考えている方もいるでしょう。売却したい理由は人それぞれですが、不動産という資産を売却することにはメリットもデメリットもあります。メリット・デメリットを理解したうえで、不動産売却を検討することが大切です。
この記事では、不動産売却のメリット・デメリット、売った方がいい不動産・売らない方がいい不動産の特徴を詳しく解説します。
不動産売却のメリットとして、次の4つが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
不動産を売却する大きなメリットが、不動産を現金化できるという点です。売却金というまとまった資金を得られるので、生活費や事業費、新しい家の資金などの資金面でのメリットを受けられます。売却金だけでなく、火災保険料などの還付を受けられる可能性もあるでしょう。
また、住宅ローンの返済が苦しいという状況の場合も、売却額で一括返済すれば、利子負担を軽減して完済できます。完済後は返済の負担もなくなるので、精神的にも楽になるでしょう。
家は、所有している間、維持費がかかります。家は経年劣化するため、定期的なメンテナンスが必要です。外壁や屋根の張り替えともなれば、100万円以上の費用がかかることもあるでしょう。設備も、ある程度の時期で交換は必要です。
また、定期的なメンテナンスだけでなく、台風などで家に被害が出れば、修繕も必要です。仮に住んでいない空き家を所有している場合でも、適切に建物を管理するための費用はかかります。
これらの家の維持にかかるお金は、トータルではかなり高額になります。売却してしまうことで、家の維持にかかるお金が必要なくなり、その分を別の費用に回せるようになるでしょう。
不動産には、毎年固定資産税がかかります。また、市街化区域内にある不動産の場合、都市計画税も必要です。固定資産税・都市計画税は10万円以上になるケースも珍しくなく、そのうえ毎年課税されるので、家を所有する大きなコストといえます。
これらの税金は、マイホームだけでなくおおよそすべての不動産に課税され、空き家であっても対象です。特に、空き家の場合、住んでいないのに毎年税金を払うことが大きな負担になる場合もあるでしょう。
売却してしまうことで、これらの税金の負担を軽減できるのは大きなメリットとなります。
離婚時の財産分与や相続時など資産を分割する必要がある場合、不動産はトラブルになりやすい資産です。現金のようにきっちり分けられないため、平等に分割するには他の財産で補填するか、取得者が他の人に代償金を支払うなどの対応が必要になります。
その点、不動産を売却して現金化すれば平等に分割できます。余計な相続トラブルなどを避けやすくなるのもメリットといえるでしょう。
不動産売却のデメリットとしては、下記の4つが挙げられます。
以下でそれぞれ解説します。
必ずしも希望価格で売却できるわけではありません。売り出し価格自体は売主が自由に決められますが、「売り出し価格=売却額」ではないので注意しましょう。
相場よりも高い売り出し価格なら買い手から避けられるでしょう。なかなか買い手が付かないことで、値下げが必要になる可能性があります。
また、売却額は買主との合意で決まるため、値下げ交渉を持ちかけられるケースも少なくありません。そのような過程を経て売却額が決まるので、希望する価格で売れない可能性もあるのです。売却額でローン完済や何かの資金計画を立てている場合、希望額を下回ることで資金計画が崩れる恐れもあるので、注意しましょう。
売り出し価格を付ける際には、相場や査定額を参考に不動産会社と相談しながら適正価格を付けると、スムーズな売却が期待でき、資金計画も崩れにくくなります。
売却した場合、売却金を得られる一方、売却のための手数料などの支出もあります。売却では、主に次のような費用が必要です。
例えば、不動産会社への仲介手数料は上限が次のように定められています。
上限額(売却額400万円以上の場合)=売却額×3%+6万円+消費税
3,000万円で売却した場合、96万円(税抜)の仲介手数料がかかるのです。
売却にかかる費用は、売却額の5〜8%ほどが目安といわれています。費用についても考慮したうえで、売却計画を立てるようにしましょう。
不動産売却は、売りたいと思ったらすぐに売れるわけではありません。一般的な売却でも、3〜6カ月ほどの時間がかかります。売れにくい物件の場合は、1年以上かかるケースも少なくありません。
不動産売却は、買主という相手がある取引などで、自分で期間をコントロールすることが難しいのです。さらに、売却では必要書類の収集や契約手続きなど手間もかかります。
時間や手間がかかることを覚悟して、余裕を持った売却スケジュールを立てることが大切です。
不動産の所有は、節税対策としても有効です。収益物件として所有し、不動産所得を得ている場合、減価償却費や維持費・管理費などは経費計上可能です。計上した結果、不動産所得が赤字になれば給与所得との損益通算ができ、所得税・住民税の節税につながります。
相続する場合でも、不動産の評価額は時価よりも低くなるため、現金の相続よりも相続税を抑えやすいというメリットがあります。
不動産を売却した場合、これらの不動産を利用した節税対策ができなくなる点には注意しましょう。
不動産には、所有したほうがいい不動産と売った方がいい不動産があります。所有する不動産がどちらの不動産なのかを理解しておくことも大切です。まずは、売った方がいい不動産の特徴をみていきましょう。
【売った方がいい不動産の特徴】
活用する予定のない空き家は、固定資産税や修繕費などのコストばかりかかります。将来住む、誰かに貸すなど活用する予定がないのであれば、手放してしまう方が良いでしょう。
また、相続人が多い、相続人の関係性が悪いなど、相続時にトラブルになりそうな不動産も売却することで、相続トラブルを回避しやすくなります。相続税に対応する資金がない場合も、売却することで財源を確保することが可能です。
離婚時も、家が残っていると財産分与でトラブルになります。特に、ローンが残っている状態ではローンの支払いを巡って問題になりやすいので、売却してしまう方がお互いスッキリと新しい生活をスタートできるでしょう。
今後資産価値の下がることが予想される不動産も、価格が下がらないうちに売却しておくことをおすすめします。下記のような状態であれば、今後不動産価格がより下落する恐れがあるので、早い段階で売却を検討するとよいでしょう。
次に、売らない方がいい不動産について見ていきましょう。すでに住んでいる家以外で売らない方がいい不動産は資産として所有することにメリットのある不動産です。
【売らない方がいい不動産の特徴】
今は空き家など活用していない場合でも、将来住む、土地活用するなど利用予定があるなら所有しておくほうが良いでしょう。ただし、自分が住む以外で賃貸や土地活用を検討している場合は、不動産の需要を踏まえて将来の利用か今売却するかを決めることが大切です。将来活用しようにも活用しきれない不動産であるなら、使わない間の維持費のカットを優先したほうがメリットとなる可能性もあります。
不動産のあるエリアに開発予定があるなど、将来需要が高くなる可能性がある場合は、売却・活用したほうが良いケースもあります。ただし、将来的な不動産の価格は見通しが難しいものでもあります。いつか売ろうと長期間保有すると、その期間でも築年数が経過してしまいます。
いずれ売るつもりなら早い段階で売却するほうが良いでしょう。
不動産売却をおこなう際の注意点には、下記のようなことが挙げられます。
契約不適合責任とは、契約とは異なる商品を渡した際に売主に問われる責任です。不動産売買の場合、契約書に記載のない雨漏りや水漏れ、シロアリ被害などの瑕疵が見つかった際に契約不適合責任が問われる恐れがあります。
契約不適合責任が問われると、補修費用の請求や損害賠償請求を受けるなど売主の負担が大きくなります。売却する際には、不動産の状態を正確に把握して漏れなく契約書に記載することが大切です。
境界線を確定しないまま売却すると、売却後に買主と隣地の所有者でトラブルになる恐れがあります。また、そのことを懸念した買主から避けられやすいため、売却がスムーズに進みません。
境界線を確定するには、隣地の所有者の立会いが必要です。隣地が自治体の所有の場合、役所の担当者の立ち合いが必要になるので時間がかかる恐れがあります。境界線が確定していない不動産の場合、早い段階で境界線確定できるようにしましょう。
住宅ローンの残っている不動産を売却する場合はまず、住宅ローンの完済が必要です。一般的には、売却額で一括返済するケースが多いでしょう。しかし、売却額だけでは足りない場合、自己資金や住み替えローンを利用して完済する必要があります。なお、自己資金などの工夫でも完済できない場合は、売却できません。
住宅ローンの返済が滞って売却を検討する場合は、金融機関の合意を得て任意売却を検討するとよいでしょう。いずれにせよ、売却できるかは住宅ローン残債と売却見込み額・自己資金の3要素で決まってくるので、住宅ローン残債の正確な額を金融機関に確認することが大切です。
また、両手仲介を狙った不動産会社によって、自分の不動産情報が外に出ない状態を指す「囲い込み」にも注意が必要です。外部から問い合わせがあっても「すでに契約済み」などと理由を付けて、問い合わせを断ってしまいます。
不動産会社の仲介手数料は、買主・売主それぞれから得られるため、両方と契約していれば不動産会社に大きな利益となります。この両方と契約している状態を両手仲介といいます。
囲い込みされてしまうと、他の不動産会社からの問い合わせに答えてもらえないので、良い条件で売却できるチャンスが少なくなるので注意が必要です。
不動産会社を選ぶ際には、査定額の高さだけでなく信頼できる不動産会社かも見極めるようにしましょう。
不動産会社の選び方について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
最後に、不動産売却に関するよくある質問をみていきましょう。
不動産売却では、次のような税金がかかります。
譲渡所得税は、売却で利益が出た場合に必要な税金です。条件によっては100万円以上の税額になるケースもあるので、事前にどれくらいかかるかを把握しておくとよいでしょう。
また、譲渡所得税にはさまざまな控除の特例が用意されているので、活用することで節税も可能です。
不動産売却について、詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:【不動産売却の必要書類】それぞれの取得方法や提出時期、チェックリストをご紹介
大まかな売却の手順は、次の通りです
一般的には、売却までに3〜6カ月ほど時間がかかります。不動産会社と契約後は、売却は不動産会社でサポートしてくれるので、初めての方でも問題なく売却できるでしょう。
不動産売却の流れについて、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:不動産売却を始める前に|知っておきたい売却の流れや費用・税金について解説
売れない不動産であっても、工夫次第で売却できる可能性があります。
まずは上記のような方法を検討してみましょう。どうしても売れない場合やすぐに手放したいなら、売らずに自治体や法人・個人に寄付する方法も検討できます。
また、2023年から施行された相続土地国庫帰属制度では、一定の条件を満たせば国に返還することも可能です。
売れない不動産の処分方法について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:売れない土地を売却するために知っておくべきこと|売れない原因も解説
関連記事:【不動産を処分したい】いらない土地や空き家を手放す方法や注意点を解説
関連記事:【古い家を売る方法】売却方法や注意点を解説!
ここまで、不動産売却のメリット・デメリットや売った方がいい不動産・売らない方がいい不動産の特徴について解説してきました。不動産は売却することで、現金ができ維持管理費や税金がそれ以上かからなくなるなどのメリットがあります。
しかし、売却にも費用や税金がかかり、必ず希望価格で売れるわけではない点にも注意が必要です。メリットやデメリット、不動産の状況を考慮しながら、自身の不動産売却を検討するようにしましょう。
不動産の売却を検討しているなら、不動産会社選びが重要なポイントになります。あなたの不動産を信頼して任せられる不動産会社を選ぶことが、売却の成功につながるでしょう。