苦労して不動産を売却しても、その後に頭を悩ませるのが税金問題。不動産売却時の節税としておすすめされているのが、ふるさと納税です。
「ふるさと納税って聞いたことあるけど良く知らない」「なんで不動産売却の税金対策になるの?」と疑問に思う方もいることでしょう。この章では、不動産売却とふるさと納税の関係について、解説します。
ふるさと納税とは、自分のふるさとや応援したい自治体に対して寄付ができる制度です。寄付によって、所得税の還付や住民税が控除される仕組みです。
寄付した先の自治体ごとに、返礼品として地元の特産物・名産品が貰えます。返礼品は、飲食物や家電・伝統工芸品・サービスなど、自治体によってさまざまです。返礼品を楽しみにふるさと納税をする方も増えています。
近年、不動産売却をした方の税金対策として、ふるさと納税の制度の利用が増えてきました。しかし、返礼品などとてもお得に見えるふるさと納税ですが、税金の控除額には上限があることを覚えておきましょう。
不動産売却で得た利益は、課税対象となる所得です。所得が多いほど、ふるさと納税の上限額も増え、税金の控除額も増えます。
ただし、この方法が利用できるのは、不動産売却によって譲渡所得を得た場合に限るので要注意です。
不動産売却後の節税で、必ずしもふるさと納税が有効というわけではありません。ふるさと納税を利用しないほうが良いケースもあります。
例として、マイホームを売却した場合です。マイホーム売却では、特例を利用すれば、譲渡所得から最大3,000万円までが控除対象となります。
不動産売却で利益が出たとしても、3,000万円以下であれば、特例で譲渡所得は0円となり、ふるさと納税を利用しないほうがお得となります。不動産が高く売れず、譲渡所得が発生しなかった場合も、ふるさと納税利用は不向きとなります。
ふるさと納税を利用して、どれくらい節税ができるのか、控除上限額を計算しておきたいものです。
ざっくり計算したい方は、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」を利用すると良いでしょう。この章では、ふるさと納税で控除上限額の計算をするためのポイントを解説します。
ふるさと納税の控除上限額の計算には、個人住民税所得割額の情報が必要です。以下の計算式で、算出します。
個人住民税所得割額=「①不動産売却以外の所得にかかる住民税」+「②不動産売却時の譲渡所得にかかる住民税」
「①不動産売却以外の所得にかかる住民税」の計算は、以下の式で計算します。
①不動産売却以外の所得にかかる住民税(住民税所得割)=課税対象となる所得金額×10%
課税対象となる所得金額は、その年は未確定です。前年の所得を参考にすると良いでしょう。給与収入がある場合は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額-所得控除合計額」が「課税対象となる所得金額」になります。
「②不動産売却時の譲渡所得にかかる住民税」は、下記の税率で計算してください。
出典:国税庁ホームページ「土地や建物の譲渡所得に対する税金」
譲渡所得の金額に税率をかけた値が、不動産売却時の譲渡所得にかかる住民税となります。
控除上限額は、以下の式で計算します。
控除上限額=個人住民税所得割額×20%/{100%-住民税税率-(所得税率×復興税率)}+2,000円(自己負担金)
控除上限額の計算に必要な「復興税率」は10.21%です。(2022年11月現在)
出典:国税庁「復興特別所得税の源泉徴収」
また、「所得税率」は、課税対象となる所得金額に応じて異なります。下記の表で自分の所得金額から、所得税率を確認し、控除上限額を算出してみましょう。
出典:国税庁「所得税の税率」
不動産売却によって発生する所得税は、ふるさと納税を利用して節税できます。ここからは、実際にふるさと納税を使って税金の控除を受けるための流れについて説明します。
ただし、「ふるさと納税で寄付=即節税」というわけではありません。ふるさと納税をおこなった後、翌年の確定申告が必須です。
ここからは、税金控除までの流れについて解説します。実際の手続きの流れを知っておきましょう。
ふるさと納税は、不動産売却した年の12月末までに終わらせなければ、譲渡所得控除の対象になりません。
節税に使える期限が決まっているので、不動産売却後、利益が出た場合はふるさと納税を忘れないように準備しておきましょう。ふるさと納税のポータルサイトなどをチェックして、どの自治体を選ぶのか検討するのも楽しみの一つです。
また、控除上限額を超えない程度に納めるのもポイントです。控除上限額をオーバーしてしまうと、控除の対象外になってしまいます。以下に、控除上限額の大体の目安をまとめました。参考にしてください。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
ふるさと納税後、自治体から返礼品が届きます。しかし、返礼品を受け取れば、自動的に節税になるわけではありません。返礼品とは別に届く「寄附金受領証明書(寄附金控除に関する証明書)」が重要です。
税金の控除には、翌年の確定申告での寄附金受領証明書の提出が必須となります。紛失しないよう、確定申告まで大切に保管してください。
また、確定申告は不動産売却をした翌年の2月16日から3月15日までが期限です。「後回しにして間に合わなかった」とならないよう、以下の必要書類も揃えておきましょう。
【確定申告時に必要な準備】
確定申告後の税金の控除は、その税金の種類によってタイミングや受領方法が変わります。
所得税の控除がある場合・住民税の控除がある場合によって、それぞれ控除・還付の時期が異なるため、だいたいの時期を把握しておきましょう。
土地売却の税金をふるさと納税で節税したいなら、必ず知っておきたいポイント3つをご紹介します。
それぞれのポイントについて、詳しくチェックしていきましょう。
節税のためのふるさと納税には、期限があります。不動産を売却した年の12月までに、ふるさと納税をしておかなくては控除対象になりません。
例として、令和4年8月に不動産売却をした場合、ふるさと納税をするリミットは、令和4年12月までです。売却時期が令和4年12月であっても、ふるさと納税の期限は令和4年12月となります。
ふるさと納税が売却より先になっても問題はありません。不動産売却を考えている場合は、先行してふるさと納税をおこなっても良いでしょう。
ふるさと納税をして、「節税のための手続きが終わった」つもりになってしまうのは、よくある失敗です。確定申告をしなければ、控除は受けられません。忘れないようにしましょう。
確定申告の期限は、不動産売却した翌年の2月16日から3月15日までです。不動産売却の譲渡所得の申告も忘れないようにしてください。
確定申告時は、ふるさと納税後に郵送される「寄附金受領証明書」が必要です。
節税をしようとしてよくある失敗として、不動産売却とふるさと納税の名義人が異なっているパターンがあります。
ふるさと納税サイトを利用する場合、クレジットカード決済をする方も多いはず。ポイント狙いで、普段買い物で使っているカードで決済して、後から「クレジットカードの名義人が違った」とならないように注意しましょう。
不動産売却時に発生する税金対策として、ふるさと納税を使った税金控除が有効です。
ただし、ふるさと納税には控除上限額があるため、自分の収入と合わせて計算しておきましょう。ご紹介した計算式のほか、ふるさと納税サイトでも簡単なシミュレーションが可能です。
ふるさと納税・確定申告のタイミングとポイントを理解し、賢く節税しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。