「不動産を相続したけどどうすればいいのだろう…」そんなお悩みを抱えている人も少なくないでしょう。相続財産に不動産が含まれる場合、相続トラブルに発展しやすくなります。不動産は相続人で分割しにくいうえに、所有するにしてもコストがかかるものです。
相続した不動産の扱いに困っている・これから相続する予定があるといった場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。とはいえ、相談する内容によって適切な専門家も異なるものです。そこで、今回は、不動産を相続する際の相談先や相談するときのポイントについて詳しく解説します。
まずは、相続の流れをみていきましょう。
相続は上記のような流れで進みます。特に、「相続放棄・限定承認」「相続税の申告・納付」には期限がある点には、注意が必要です。相続財産が借金しかない・相続したくないなどで相続放棄する場合は、相続開始から3か月以内に手続きする必要があります。
被相続人が、確定申告が必要な人の場合は、被相続人の代わりにする準確定申告を4か月以内にしなければなりません。相続財産で相続税が発生する場合は、相続開始から10か月以内に納税が必要です。それらの期限に間に合うように、相続の各段階を進めていく必要があります。
相続財産に不動産が含まれている場合、相続も複雑になる可能性があります。不動産は、現金のようにきっちり分割できないので処遇を巡って相続人同士でトラブルが発生しやすいものです。また、不動産以外に相続財産に現金がなければ、相続税の負担が難しくなる恐れもあるでしょう。
このように不動産相続では、さまざまなトラブルや悩みが発生するので、早い段階で専門家に相談することが大切です。とはいえ、不動産の相続でのお悩みはさまざまあり、悩みによって相談先やタイミングも異なります。主な相談内容とタイミングには次のようなものがあります。
このように、相談内容によって適切な相談先が異なるので、どのような相談先があるのかを把握しておくことが大切です。そもそも何もわからないという場合は、自治体の役所などで定期的に開催されている無料相談に行くとよいでしょう。自治体の無料相談では、相談内容の解決は難しいですが適切な手続きの仕方や相談先を教えてくれます。
不動産相続の相談先として、主に次の6つが挙げられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
ワンストップ窓口とは、各分野の専門家が提携し一つの窓口でさまざまな相続問題に対応してくれる相談先です。相談したいことが複数の専門家にまたがると、各相談先を探して相談しに行ってと時間も手間もかかります。
そもそも、相談したいことの適切な相談先が分からないという人もいるでしょう。ワンストップ窓口では、それぞれの専門家を探す必要なく一か所で依頼できるので、スムーズな解決が目指せるでしょう。
司法書士とは、登記など法的な手続きの専門家です。司法書士では次のようなお悩みを解決できます。
不動産を相続する場合、所有権を被相続人から相続人に移す相続登記が必要です。その相続登記の手続きを代行できるのは、司法書士だけです。
また、司法書士は不動産以外の相続財産の名義の変更手続きもできます。弁護士などでも相続財産の名義変更は可能ですが、不動産だけは司法書士しかできません。他の相続財産の名義変更は別の専門家に依頼しても、不動産を含む場合は別に司法書士に依頼することになるので、始めから司法書士に相談しておくと手間を省けるでしょう。
司法書士に相続登記を依頼する場合、5〜10万円程が費用の目安です。しかし、書類の収集や遺産分割協議書の作成・他の名義変更など依頼する内容によっては費用も高額になるので注意しましょう。
ただし、司法書士では法的なトラブルには対応できません。不動産相続をめぐってトラブルが発生している場合は、弁護士に相談することになります。相続トラブルのない通常の不動産相続であれば、司法書士の方がコストを抑えて相談できるでしょう。
不動産相続でトラブルが発生している場合は、弁護士が適任です。
相続財産に不動産が含まれると、分割しにくいため相続割合でもめやすくなります。遺産分割協議がまとまらない場合や誰かしら相続に不満を持っている場合は、調停なども必要になってくるでしょう。そのような法的トラブルは、弁護士しか対応できません。
しかし、弁護士は依頼料が他の専門家よりも高額になりがちです。相談するだけでも1回5,000円程かかり、実際に依頼すると着手金で20〜30万円程、さらに成功報酬も必要になります。
弁護士事務所によっては、初回の相談料は無料というケースもあるのでそのような相談先を見つけるのも良いでしょう。弁護士は依頼料が高額になりやすいため、トラブルのない相続であれば別の専門家を検討することをおすすめします。
お金や税金の専門家である税理士なら、相続税などの相談が可能です。
相続財産によっては、相続税が発生するので申告・納税が必要です。相続には基礎控除があるので、多くの相続では相続税が発生しませんが、相続税の計算に不安がある人も少なくないでしょう。
また、実際の相続税を納税するという場合は、適切な控除などを利用して対策することで節税も見込めます。そのような相続税に関する相談なら、税理士が適しています。税理士に相続税の申告を依頼する場合は、相続財産の0.5〜3%程が目安です。
ただし、依頼先によって費用は異なり、また、税理士の中には相続に不慣れな人も少なくないので注意しましょう。
相続財産の管理・運用なら、銀行でも相談できます。また、銀行では提携する専門家を紹介してくれる場合もあるので、相談先が分からないという場合で一度相談してみるのもおすすめです。
ただし、銀行への相談料は高額になりがちで、さらに依頼先の専門家で費用が発生する点には注意しましょう。
相続した不動産の活用に悩む場合は、ハウスメーカーに相談しましょう。
このような活用方法を知りたい場合は、ハウスメーカーが適しています。ハウスメーカーへの相談の場合、土地活用プランの提案であれば無料で対応してくれるメーカーがほとんどでしょう。
相続が発生したからとりあえず相談に行こうと、何も準備せずに相談に行っても説明できなかったり必要書類が足りなかったりと無駄足になってしまう恐れもあります。ここでは、不動産相続する際のポイントとして、次の5つを解説します。
相続は、遺言書が優先されます。相続が開始したら、まず遺言書の有無を確認することが大切です。遺言書がある場合、遺言書の内容に従って相続することになります。遺言書の内容とは異なる相続をしたい場合、相続人全員による遺産分割協議が必要になるのです。
基本的に、どの専門家に依頼するにしても遺言書の有無は確認されます。事前に、遺言書の確認をしておくようにしましょう。
ただし、遺言書を見つけたからといって、勝手に開封してはいけません。公正証書遺言書以外の遺言書の開封は、家庭裁判所の検認が必要です。勝手に開封すると過料が発生するだけでなく、他の相続人から遺言書の偽造を疑われるなどの恐れもあります。
遺言書を見つけたら速やかに家庭裁判所に手続きするようにしましょう。
相続が発生したら、相続財産を明確にする必要があります。何を相続するか、相続税はどれくらいになるかは、不動産だけでなくすべての相続財産によって決まるものです。
相続財産には、プラスだけでなくマイナスもあるので、マイナスも含めて財産を把握するようにしましょう。主な相続財産には、次のようなものがあります。
相続の多くのケースで、不動産単体だけでなく現預金など他の相続財産があることが多いものです。反対に、実家と借金といったように不動産とマイナス資産しかないケースもあります。相続財産によってとるべき対応も異なってくるので、早い段階で相続財産を明確にしておくようにしましょう。
相続財産の調査については、弁護士や司法書士などにも依頼できます。相続財産が多岐に渡り把握しきれないという場合は、依頼を検討するとよいでしょう。
不動産をどのように扱うか判断するには、どれくらいで売れるのかを把握しておく必要があります。相続割合や不動産の取扱いは、不動産の価値によっても判断が異なるものです。
また、不動産売却や分割になるにしても、相場を理解しておくと査定額などの妥当性も判断しやすくなるでしょう。
不動産は、相続税対策としても代表的な方法です。相続税対策になる理由もきちんと理解しておくようにしましょう。不動産を活用する相続税対策としては、次のようなものがあります。
代表的な節税対策が、不動産を所有することで相続財産を減少させる方法です。相続税を算出する際の評価額は、現金なら額面金額ですが不動産の場合は時価の7〜8割になるという特徴があります。仮に、1億円の相続なら、現金1億円は1億円に対して相続税がかかるのに対し、時価1億円の不動産なら7,000万円〜8,000万円が相続税の対象となるのです。
このように、不動産を活用することで相続財産を圧縮させ、相続税を抑えられるという仕組みがあります。さらに、マンションであれば土地の面積が少ない分評価額もより落ちます。都心など需要の高いマンションであれば、その節税効果はより大きくなるでしょう。
また、不動産の評価額は他人に貸し出すとより下げられるという特徴もあるので、マンションやアパートを建設するのも有効です。
不動産を個人ではなく法人で所有しておけば、個人の財産ではないため相続税はかかりません。ただし、法人を設立すると設立や維持にコストがかかり、事業継承の相続トラブルも発生する可能性もあるので、専門家に相談して検討することをおすすめします。
相続しないという選択肢も視野に入れておくことも大切です。次のようなケースでは、相続放棄を検討することをお勧めします。
相続財産がマイナスであっても、相続すると引き継ぐことになります。不動産を売却すれば借金を完済できるのであればよいですが、立地が悪いなど売却が難しい不動産では借金を自己資金で支払うことになるでしょう。
このような場合は、相続放棄することで借金を背負わなくてもよくなります。ただし、相続放棄すると借金だけでなく不動産も相続できないので、実家を手放したくないなど事情がある場合は限定承認など別の選択が必要になります。
また、不動産が田舎の実家というように遠方にあると、管理が大変になります。田舎の土地の場合は買い手もなかなかつかず、所有するだけで固定資産税などのコストがかかってきます。
しかし、相続放棄したとしても土地の管理責任が残る点には注意が必要です。立地によっては固定資産税もほとんどかからないケースもあるので、その土地の不動産会社に相談して売却・所有・相続放棄かを選択するとよいでしょう。
不動産相続では、さまざまな税金が発生します。ここでは、相続でかかる主な税金として、次の4つを解説していきます。
登録免許税とは、登記の作成・変更などにかかる税金です。不動産は、その所有者や権利関係を登記することで、公に所有権を主張できます。売買などがあり所有者が変わる場合は、その旨を登記する必要があるのです。
不動産の相続でも、被相続人から相続人に所有者を変更する「相続登記」が必要になります。この相続登記にかかる費用が登録免許税なのです。
相続登記での登録免許税は、次の通りです。
登録免許税=不動産の固定資産評価額×0.4%
ただし、相続人以外が遺贈で所有する場合は、税率が2%となります。
相続登記は自分でも手続きできますが、仕事で時間が取れない・手続きに不安があるといった場合は、司法書士に依頼することも可能です。
不動産を含む相続財産に対しては、相続税がかかります。ただし、相続税には次のような基礎控除があり、基礎控除を超えた部分が相続税の対象となります。
基礎控除=3,000万円+相続人数×600万円
仮に、相続人が配偶者と子2人の3人なら、基礎控除は4,800万円です。この場合、相続財産が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除を超えると、相続税の対象です。相続税は、相続財産に応じて税率が異なり、次のようになります。
基礎控除分を差し引いた課税対象の相続財産を、法定相続分通りに分割した額に税率をかけることで、それぞれの相続税を算出します。
分割方法が法定相続分以外という場合は、それぞれの相続税を合算して分割割合で案分することになるので注意しましょう。
固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課せられる税金のことをいいます。また、都市計画区域内にある不動産には、都市計画税もかかります。相続後不動産を所有する場合、毎年これらの税金が発生する点には注意しましょう。
固定資産税・都市計画税の税率は次の通りです。
固定資産税の税率は、自治体によって異なりますが、多くの自治体で1.4%設定されています。都市計画税は、0.3%が上限です。
これらの税金が毎年発生するので、活用しない不動産では無駄に毎年税金を支払うことになります。固定資産税の負担についても理解したうえで、所有するかを検討するようにしましょう。
不動産を売却する場合、売却した利益に対して譲渡所得税が発生します。譲渡所得税は、次の計算で求められます。
売却額から購入した費用と売却にかかった費用を差し引いた額が、譲渡所得です。この譲渡所得に譲渡所得の税率を乗じることで、譲渡所得税が算出できます。譲渡所得税の税率は、所有期間に応じて異なり次の通りです。
相続の場合、被相続人が所有開始した期間から所有期間が算出されます。また、相続では、売却する物件を購入した時の金額やかかった費用が分からないというケースもあるでしょう。この場合は、概算取得費として売却額×5%を取得費として計上することになります。
概算取得費として計上すると、本来の取得費よりも費用が少なくなり、その分税金が大きくなってしまう点には注意しましょう。
不動産売却を検討している場合、できるだけ多くの不動産会社に査定依頼して相場をチェックするようにしましょう。一社のみの査定では、査定額が妥当かどうかは判断できません。複数社依頼することで、査定額にも一定の価格帯に収まりそれが相場といえるのです。
相場より極端な高値で査定する会社は、あまりおすすめできません。相場より高値の場合、契約欲しさに高値を提示している可能性があり、その場合買い手が付かないことなどで値下げする羽目になる可能性があるのでしょう。相場より高値であっても、その根拠・リスクなどもしっかり説明できるかまでチェックすることが大切です。
このように、査定時には査定額だけでなく不動産会社の対応やサービス・実績・担当者との相性など、総合的に判断する必要があります。信頼できる不動産会社を選べれば、相続した不動産を満足いく売却ができるでしょう。
不動産売却の基礎知識や不動産会社選びに関して詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
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不動産相続時の相談先や、相談前に確認すべきことについてお伝えしました。不動産相続の相談は、相談内容によって適切な相談先が異なります。法トラブルなら弁護士・相続登記なら司法書士・相続税なら税理士など適切な相談先を選べるように相談先を把握しておくようにしましょう。
また、相談する場合も事前に準備しておくことで、効率よく相談できます。この記事を参考に、相談前に確認すべきことを押さえて相談し、スムーズな不動産相続が目指せるようにしましょう。