サブリース契約とは投資用不動産の管理方法のひとつで、オーナーと不動産管理会社の間で賃貸借契約を締結します。不動産管理会社が大家の代行として入居者に部屋を貸すなど、管理をほぼすべて代行するサービスになります。
【サブリース契約の主な特徴】
契約自体は、サブリースサービスを提供している不動産管理会社との間で締結します。家賃保証についてはすべての管理会社でおこなっているわけではないので、注意しましょう。
「通常の管理会社となにが違うの?」と疑問に感じる方も多いでしょう。具体的には、以下のような違いがあります。
【一般の管理委託との違い】
特に、「空室時の家賃が保障される」という点については、後述にて詳しくご紹介しますので、チェックしてみてください。
サブリース契約は、大家としての業務をサブリース会社に委託することで簡略化が可能なことから、以下のような方を中心に近年注目されている管理サービスです。
【サブリース契約の利用層】
サブリース契約のメリットには、以下の4点が挙げられます。
【サブリース契約のメリット】
それぞれについて、詳しくご紹介します。
前述でも触れましたが、サブリース契約では大家が本来やるべき業務をサブリース会社が代理ですべて対応してくれる管理サービスです。物件の大家・オーナーがおこなうのは、基本的にはサブリース会社からの送金確認のみになります。
サブリース会社によってサービス内容に差はあるものの、一般的には以下の管理業務を代行してくれます。
【サブリース契約で代行してもらえる管理業務】
このように、時間がないからできなかったり、面倒に感じてしまったりするような大家業務をすべてやってくれるサブリース会社のおかげで、不動産投資の敷居が低くなったといえます。
サブリース契約最大のメリットは、投資物件が空室だったとしても、定額の家賃収入を得られることです。
「サブリース=家賃保証」ではないため、サブリース会社が家賃収入を保証しているか確認する必要がありますが、家賃保証型の場合にはサブリース契約を結んでいるオーナーに対して、多くの場合で家賃収入の80~90%ほどを保証してくれます。
入居者の家賃未納や滞納などが発生したとしても家賃が保証されるという点から、オーナー側はトラブルがあったとしてもお金が入るため、魅力的です。
通常はオーナーが負担しなくてはいけない入居者を募るための広告料や退去後のクリーニング費用についても、サブリース会社がある程度の金額を負担してくれます。100%保障ではないものの、オーナー側は初期投資費用を抑えられる点で魅力的といえるでしょう。
このように、資金負担をなるべく抑えて不動産投資をおこないたいという場合に向いているといえます。
不動産投資は、相続税の節税対策になると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
投資用不動産は一般的な不動産とは異なり、評価額を下げられるため、相続税の節税効果が期待できるという仕組みです。
評価額の計算式には、賃貸割合を使用します。賃貸割合とは、賃貸物件の入居率のことです。空室が少ない賃貸物件は賃貸割合が高くなるため、評価額をさらに下げられます。
しかし、評価額を計算する際に空室が多ければ、相続税対策の恩恵が小さくなる点に注意しなくてはなりません。サブリース契約の場合、転貸借契約によって賃貸割合100%を維持できるため、相続税対策の恩恵を最大限に受けられるでしょう。
サブリース契約を結ぶことによるオーナーへのメリットは多くあるようにみえますが、デメリットも存在することを忘れてはいけません。
【サブリース契約のデメリット】
サブリース契約の良い面だけをみて契約したことにより、想像もしていなかった不利益があなたの身に生じないためにも、あらかじめサブリース契約が自分に合っている管理方法かどうかを把握しましょう。
最大のデメリットと言っても過言ではないのが、保証されている家賃は満額で入らないという点です。収益のうち、10〜20%はサブリース会社の手数料となってしまいます。サブリース契約では、サブリース会社を介してさまざまな管理を代行してくれますので、手数料が発生してしまうのは致し方ないことでしょう。
しかし、利益率をできるだけ高めたいと考えている人にとっては、デメリットになってしまいます。
また、サブリース会社によっては、空室リスクを最小限にしたいという考えから、できるだけ早く入居者を呼び込めるようにその土地の相場よりやや低めの家賃を設定することもあるようです。
契約会社によっては、想定していた金額よりも賃料による収益が減ってしまうということもあることを念頭に置きながら、オーナーの利益を考慮した提案をしてくれるサブリース会社を選びましょう。
サブリース契約に限らず長期的な運用をおこなう不動産投資では、家賃の見直しがおこなわれます。一般的に2年ごとに家賃の見直しがおこなわれ、その多くは賃料が下がることを想定したうえで見直しをしないといけません。つまり、不動産投資開始時の家賃が永久に続くわけではないのです。
サブリース契約でよくあるトラブルのひとつに、賃料見直しが必須であることを知らずに契約を続けてしまったことで、見込んでいた家賃が入らなくなるといったものがあります。
サブリース契約を結び管理すべてを丸投げにして安心しきっていると、賃料見直し時期があることを見落としてしまうリスクが発生するかもしれません。それだけでなく、ローンの返済が滞ってしまったり、新しくローンを借りてしまったりするというリスクを負わないといけない可能性もあります。
多くのサブリース会社が採用する契約のなかには、免責期間というものがあります。この免責期間をきちんと把握していないとトラブルになりやすいため、注意が必要です。
免責期間とは投資物件からの退去者が出た場合、ある一定の期間「必ず家賃が入らない」というサブリース契約特有の仕組みです。サブリース契約の免責期間は会社によって異なりますが、おおよそ1か月〜半年ほどと定められています。
以下の条件が免責期間に定められているタイミングの傾向にありますので、この機会に把握しておきましょう。
【免責期間として定められているタイミングの一例】
上記で挙げた例はほんの一例ですが、空白期間中は次の入居者が決まるまで家賃保証をしてくれない会社が大多数です。サブリース会社に限らず一般的な管理会社でも同様の免責期間が定められている場合があるため、自身が大家にならない限り避けて通れない事項だと言っても良いでしょう。
また、免責期間はオーナーごとに変えられている可能性があるため、自身の契約内容をよく注意して見なければなりません。
サブリース契約の場合、質の良い入居者をオーナー自身が決めることはできません。多くの場合、入居の可否を決定するのはサブリース会社であるためです。
入居者をオーナー自身が決定できないことによって起こり得るリスクには、以下のものが挙げられます。
【サブリース契約でオーナーが回避しにくいリスク例】
さらに、サブリース契約が終了した後は、自分がオーナーとしてサブリース会社が選定した入居者と付き合わなければなりません。サブリース会社が選定した入居者の質が悪いと、オーナー自身の精神負担も重いものとなるため、注意が必要です。
サブリース契約はオーナー側の負担を軽減できるメリットがありながらも、いくつかのデメリットもあることがわかりました。メリットを最大限に活かしてデメリットを避けるために、知っておくべき6つのポイントをまとめたので確認してみましょう。
【サブリース契約検討時に確認すべき6つのポイント】
それぞれについて詳しくみていきましょう。
サブリース会社が保証してくれる賃料はいくらなのか、保証賃料率で都度確認するようにしましょう。サブリース契約における家賃保証率の相場は、一般的に80〜90%です。サブリース契約のなかには数十年単位の長期契約商品もありますが、一定の期間が経つと賃料の見直しが発生するので、注意が必要です。
以下に、サブリース会社との保証賃料の確認時にチェックしておきたいポイントをまとめました。
【保証賃料の確認時に見ておきたいポイント】
家賃保証率だけでなく、更新後の賃料変動も考慮したうえで、サブリース契約を上手に活用しましょう。
広告費や原状回復費などの費用がどれくらい発生し、オーナー側かサブリース会社側のどちらが払うのかについてもチェックが必要です。サブリース契約のなかには、広告費や原状回復費などの諸費用をオーナーが払うケースがあるなど、契約内容やサブリース会社によって差があります。
思わぬ負担を避けるためにも、どのような費用をどこで誰が負担するのかを明確にし、どのようなケースでオーナーが費用を負担するかについて、サービス内容や契約書をしっかり確認するようにしましょう。もし、サブリース会社側の説明内容に不足があると感じた場合は、疑問を解消するまで質問して差し支えありません。
保証賃料が何年周期で見直されるのか、サブリース会社に必ず事前に確認しておきましょう。ここでの注意点は、サブリース契約の更新周期ではなく、保証賃料の更新時期を確認しておくべきということです。
サブリース契約のなかには、20〜30年といった長期の契約がありますが、多くの方がその期間の賃料が保証されていると勘違いしています。しかし、実際にはサブリースの契約期間中でも、家賃の見直しは一定期間ごとにおこなわれることがあるのです。したがって、サブリース契約当初の家賃収入を永久的に確約できるものではありません。
契約書の内容をしっかり確認しないことで自身が想像していた家賃収入を得られなくなったと嘆くことのないよう、契約期間だけでなく、賃料更新時期についても忘れずにチェックしましょう。
サブリース契約を検討する際は、免責期間についても確認が必要です。前述の通り、サブリース契約の多くは退去から新規入居までの一定期間、家賃収入を手元に保障されないという空白期間が生じます。つまり、免責期間中においてサブリース会社は賃料を契約者に対して払う必要がないのです。
そのため、サブリース契約を検討している場合は、免責期間があることを前提として収益プランを想定する必要があります。免責期間については以下を確認し、損をしない契約を結んでいきましょう。
【免責期間の確認時にチェックしておきたいポイント】
免責期間についても、不明点が生じた場合はすぐに担当者に質問し、明確にしておくことが大切です。
サブリース契約中における解約条件の確認も忘れてはいけません。契約が自動更新かどうかだけでなく、サブリース契約中の中途解約が可能かどうかも確認したいポイントです。
サブリース契約はオーナーが貸主としてサブリース会社と結ぶ契約ですが、冒頭でも触れたように結ばれる契約はあくまで賃貸借契約です。賃貸借契約においては借主が保護されるという特性があるため、サブリース会社が保護されることになります。したがって、オーナーからの正当な事情がない限り、解約できないこともあるということを覚えておかなければなりません。
サブリース契約の裏にある賃貸借契約のからくりに気がつかなかったオーナーが、サブリース契約を解約できずにトラブルになることは良くある事例のひとつです。契約締結前に解約条件をチェックすることでトラブルは回避できますので、ぜひ以下のポイントを口頭および書面で確認するようにしましょう。
【解約条件確認時に見ておきたいポイント】
修繕費用の負担先も確認しておくと安心です。サブリース契約を結ぶ際、契約書をチェックすることで確認できます。一般的な修繕費用の振り分け例を以下に示したので、参考にしてみてください。
まれに悪質なサブリース会社と契約したことで、以下のようなトラブルが起きているので注意しましょう。
【修繕費用を巡るサブリース会社とのトラブル例】
修繕についてはあいまいな部分があるからこそ、どこまでの範囲をサブリース会社が修繕負担してくれるのか、具体的に把握しておくことが大切です。
安心できるサブリース会社を選ぶことで、さまざまなトラブルを回避しやすくなります。安心できるサブリース会社の選び方は、以下の4つを参考にしてみてください。
【安心してサブリース契約が結べる不動産管理会社の選び方】
それぞれについて詳しく解説します。
サブリース会社の持つ情報収集能力を把握しておくことは、不動産投資としてサブリースをおこなう上で重要になってきます。なぜなら、サブリースにおいては地域性や市場の動向などの最新情報が、投資のリターンを得られるかを左右しているためです。
サブリース会社に情報収集能力があるかの判断基準は、以下の通りです。
【不動産管理会社の情報収集力を測るポイント】
常に変わりゆく情報の収集を怠らず、オーナーにシェアできるサブリース会社こそ安心して管理を任せられるといえます。もちろんオーナー側も、きちんと自分でデータの調査や物件周辺の状況を調査することが求められます。
前述の情報収集能力にも関係しますが、データに基づいたリサーチ結果が現実的なものかどうかも判断材料のひとつです。多くのサブリース会社では、賃貸シミュレーションなどを用いて目で見てわかりやすく、分析結果や事業計画を提示してくれます。物件周辺環境や周辺地域の家賃相場に基づいた妥当なものなのかはもちろん、現実的で実現しやすいか確認するようにしましょう。
また、提案された事業計画と客観的データが、自身でおこなったリサーチ結果と相反していないかを比較することも求められます。
サブリース会社の経営状態についても確認しましょう。特に、十年単位の長期的なサブリース契約は、注意が必要です。
サブリース会社の利益は賃料から得た10〜20%ほどですが、入居率が低い場合でも家賃を払わないといけないというルールで経営しています。客観的に見ても少ない利益で運営していることから、サブリース会社の経営状況や資産状況が安定しているかどうかは、欠かせないチェックポイントといっても良いでしょう。
もし、サブリース会社が倒産した場合は賃料が保証されない可能性があり、債務不履行の被害に遭ってしまうこともあり得ます。候補のサブリース会社について専門家や第三者に意見を聞いたり、自身で財務状況の調査をおこなったりなどして、事前に情報を集めましょう。
上場企業の場合は決算状況が閲覧できますので、参考にしてみてください。
担当者がオーナーの希望をきちんとヒアリングし、希望とマッチした契約を実現してくれるかどうかも確認しましょう。特に、営業担当者の意見を押しつけたり、サブリース会社の有利なように話を持っていったりする担当者は要注意です。
意見を押しつけることがなく、オーナーに寄り添った経営を一緒に考えてくれるサブリース会社や担当者と出会うことで、サブリース契約の運用が成功しやすくなるでしょう。
サブリース契約は近年注目されつつある不動産管理方法のひとつですが、一方で悪質業者と契約してしまってトラブルになったという報告も増えつつあります。
消費者庁でも、サブリース会社との契約に関して注意喚起をしています。
サブリース契約に対する知見がなかったり、デメリットを把握しないまま契約を結んでしまったりなどの状態を避けるためにも、トラブルに遭ってしまった場合の相談先をあらかじめ把握しておくと安心です。
【サブリースに関するトラブル相談】
【賃貸住宅に関するトラブル相談】
【賃貸住宅管理業者に関する相談】
【消費者トラブルに関する総合案内窓口】
【法的トラブルに関する総合案内窓口】
サブリース契約は、不動産投資に必要な管理関係をすべてサブリース会社に任せられる投資家にとっては大変画期的な管理サービスです。その背景には、大家となる投資家たちの悩みどころである空室リスクから守るための仕組みが構築されています。
一方で、デメリットをきちんと把握したり、自分でも正しい情報を収集したりしないと運用が上手くいかず、サブリース契約を巡るトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあることも考慮しなければなりません。
不動産投資は急に資産を持てるわけではなく、コツコツ資産を積み上げていくタイプの資産運用方法です。この記事を参考に、不動産投資の安定的な収益確保を目指して二人三脚できるサブリース会社を探してみてください。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。