【不動産を処分したい】いらない土地や空き家を手放す方法や注意点を解説

【不動産を処分したい】いらない土地や空き家を手放す方法や注意点を解説

将来的に、親・親族から相続することになりそうな田舎の土地や空き家がある場合、住むわけでもない場所に固定資産税を払い続けるのは正直嫌ですよね。不動産処分は、事前準備とスピードが大切です。

この記事では、不動産の処分にお悩みの方のために、処分方法や注意点、処分時にかかる費用までを解説します。後半では新制度「相続土地国庫帰属制度」にも触れるので、参考にしてください。

不動産を処分したい4つの理由

独立して家を持った場合、将来的に向き合わなければならないのが、老親が住んでいた土地と家の扱いです。親の死亡や老人保健施設入居後、空き家管理をしながら固定資産税を払い続けるのは、なかなかの負担です。売却益を主たる目的とせず、とにかく「早めに処分したい」と考えている方も多いでしょう。不動産処分のよくある理由には、以下の4つが挙げられます。

  • 固定資産税がかかる
  • 管理コストがかかる
  • 損害賠償のリスク
  • 被相続人(子・孫・親族)への負担

この章では、不要になった不動産の処分でよくある理由について、詳しく解説します。

固定資産税がかかる

住んでいない空き家でも、利用していない田畑でも、所有しているだけで発生するのが固定資産税です。田舎の地価の安い地域であれば負担も少ないものの、広大な農地であればそれなりの金額です。

処分という判断をせずに、税負担を軽くするための制度も利用可能です。しかし、宅地であれば建物が建っていること・適切な管理がなされていること・農地であれば耕して農地としての形を成していることなどの条件を満たしていなければ利用できません。

管理コストがかかる

土地は放置しておくと雑草・木が伸び放題となり、害虫・害獣が発生するほか、近隣の家に迷惑をかける原因になりがちです。庭の雑草の花の蜜を目当てに蜂が飛来し、軒先などに巣を作るといったことは、近隣住民にも迷惑がかかります。犬やネコなどが住みつき、その糞尿・死骸などからの異臭や伝染病などの発生も危惧されます。自治体によっては雑草除去が義務化されている地域もあるため、住んでいない場所でも定期的な管理が必要です。

また、建物が台風など自然環境にさらされることで劣化し、倒壊などの危険性が高まることもあり、空き家問題は大きな社会問題ともなっています。

定期的に足を運んで自分で管理する場合は、時間的コスト、業者に依頼すれば費用としての管理コストが発生し、期間が長いほど負担も大きくなります。

損害賠償のリスク

山林や崖付近の空き家の場合、崖崩れや台風による樹木の倒壊によって、他の人が被害を与えた場合、所有者として損害賠償責任を追うリスクがあることも知っておいてください。

建物の管理を怠っていた場合は、空き家やブロック塀が倒壊し、近隣の人や通行人が被害を受けるケースもあります。空き家を利用され、犯罪者の隠れ家などにされるほか、テロ活動の拠点やオレオレ詐欺の受け取り、不審火発生のリスクもあります。

「望んで得た土地ではないし、住んでいたわけでもないのに…」と思われるかもしれません。しかし、不動産は人にとっては理不尽なもの。所有しているだけで管理責任が発生します。

被相続人に迷惑をかけてしまう

「今は住んでいない家だが、先祖代々の家だから、なにかあっても自分で責任を負うことになる。たまに出向いて、草むしりや空気の入れ替えぐらいやり、固定資産税も払っていこう」という考え方も間違っていません。しかし、ご自身が高齢になると、そうしたことも簡単にはできなくなります。また、突然、ご自身が不慮の事故に遭遇し、その管理責任を相続者に背負わせることになってしまいかねません。

独身者に多い考えですが、「親も他界して、配偶者も子もいない自分は、誰にも迷惑をかけない」という言い分は、不動産に関しては当てはまりません。

死後、残された家は誰かが相続することになり、ときには甥・姪などの遠い親族への負担となります。相続手続きも複雑な上に、相続税や管理の負担も丸投げとなってしまいます。

「家族がいない気楽な独り身だから、住んでいる家や不動産は放置しても大丈夫!」という親族が身近にいる場合は、大変危険です。相続人や処分の準備も促しておきましょう。

いらない不動産を処分する3つの方法

使わない不動産は、持っているだけで金銭的にも管理面でも長期的な負担となります。「先祖代々の土地なので守っていかなければ…」などの理由がなければ、少しでも早く処分をしたいものです。不要な不動産を処分する手段に、以下の3つが挙げられます。

  • 寄付する
  • 相続前なら相続放棄する
  • 売却する

この章では、不動産の処分方法について、それぞれ詳しく解説します。

寄付する

使わない不動産は、できれば売却して少しでもお金に替えたいものです。しかし、場所によっては買い手がつかないこともあるでしょう。遠方の土地の場合や何度も行き来は大変なので、「売る手間をかけるより寄付して終わらせよう」という方もいます。

【寄付する先の例】

  • 自治体に寄付
  • 法人に寄付
  • 個人に寄付

ここからは、寄付・譲渡先別に、詳しく解説します。

自治体に寄付

寄付・譲渡できる個人や企業を探すよりは、まずは自治体へ寄付を考える方が多いはず。しかし、土地は固定資産税という税収源であり、管理も必要です。自治体側もどんな土地でも寄付を受けつけてくれるわけではありません。

自治体の開発計画に関連した場所であれば、受け取ってくれるので、まずは役所の担当窓口で寄付について問い合わせをしましょう。

その際は、寄付をしたい土地の情報がわかる謄本・写真・公図などを用意しておくとスムーズです。自治体側が調査・審査をおこない、寄付として受け入れてくれるかが決定されます。

法人に寄付

保養地や寮として利用できそうな不動産の場合は、法人への寄付・譲渡も検討してみてください。地域によっては、需要があるかもしれません。学校法人やNPO法人・社団法人などの公益法人のほうが、可能性が高まります。

ただし、法人への寄付の場合は、所有権移転登記の手続きのための費用が発生します。寄付側・法人側のどちらが費用負担をするかは、話し合い次第です。

また、寄付した側には所得税が発生する場合もあります。所有権移転登記で、司法書士に依頼する際に確認してください。

個人に寄付

寄付できるような個人を探すのは、なかなか難しい話ですが、隣の住人であれば、自分の土地と合わせて一つの土地となり、活用できる可能性はあります。

個人相手の寄付は、相手に「贈与」したことになるため、相手側に贈与税が発生します。贈与税は土地の評価額によって変化するため、相手側に負担が発生する点も十分考慮して相談してください。

相続前なら相続放棄する

現在は親の所有になっており、将来的に自分が相続することになる場合は、相続放棄も選択肢の一つです。両親の他界により、相続が発生したときに相続放棄で不動産の所有権も放棄可能です。その後の固定資産税の支払いもありません。(ただし、他界前に相続放棄の手続きをすることはできません)

とはいえ、相続放棄したからといって、完全に責任を放棄できるわけではないことに注意しましょう。次に相続する人が管理をするまで、管理義務はあります。

管理義務を回避したい場合は、相続放棄手続きで司法書士に依頼する際に、合わせて「相続財産管理人申し立て」も相談してください。予納金として費用が数十万円必要です。

売却する

売却のニーズがある土地であれば、不動産会社を仲介して少しでもお金に替えましょう。土地の種類にもよりますが、建物の有無で以下にわかれます。

  • そのまま売却
  • 更地にして売却

「売り出したけれど買い手がつかなかった」という場合でも、価格を下げる・更地にして価値を上げるなどの後、再度売りに出してみる価値はあります。

そのまま売却

突然の親の死去や離婚など、比較的新しい住居を手放す場合もあります。築年数が少ない場合は、そのまま売却したほうが高く売れる可能性があります。

ただし、住宅ローンが残っている場合は、残債に注意しましょう。売却した金額で残ったローンを完済できるか確認が必要です。

相続した不動産の場合は、相続税の取得費加算の特例制度利用がおすすめです。3年以内の売却で税金が安くなるかもしれません。相続登記の際の司法書士や、不動産会社に相談してみてください。

更地にして売却

地域によっては、築年数が長い建物は買い手がつかないこともあります。新しく建物建築ができる土地の場合は、更地にして売却がおすすめです。

更地のほうが、利用の幅が広いため、買い手としても使いやすくなり、売却価格も高くなります。不動産によっては、更地化が向かない物件もあるため、不動産会社と相談しましょう。

また、地元のハウジングメーカーなどの建売業者であれば、更地化した土地を購入してくれる可能性もあります。

いらない不動産を処分するときにかかる費用

所有してもお金がかかるものの、処分をするときもお金がかかるのが不動産というものです。どちらにしても費用が発生するのであれば、早めに手放してしまいましょう。いらない不動産を処分する際、以下で費用が発生すると知っておいてください。

  • 所有権移転登記
  • みなし譲渡所得

この章では、不動産処分の費用について解説します。

所有権移転登記

相続をした場合も、誰かに譲渡・売却した場合も、「所有権移転登記」は必ずおこなわなければなりません。所有権が移動した際、不動産の所有権・管理の責任の所在をはっきりさせ、土地トラブルを防ぐために必要です。所有権移転登記のために、以下の2つの費用が発生します。

  • 登録免許税
  • 移転登記手続きにかかる費用

登録免許税は、土地の所有権移転登記の際の税金で、国に納付します。固定資産税評価額・課税税率から算出され、評価額や不動産の内容によって異なります。

移転登記は、自分でも可能ですが、煩雑で時間がかかるため、司法書士への依頼がおすすめです。移転登記手続きにかかる費用は、司法書士への依頼料・経費に当たります。

みなし譲渡所得

個人から法人に土地を譲渡した場合や、評価額の半額未満の価格で譲渡した場合などに、譲渡所得が発生しなくても「相当する代金を受け取った」とみなして譲渡所得と扱われます。

法人への贈与は、みなし譲渡所得として贈与者に譲渡所得税が発生すると知っておきましょう。

新制度「相続土地国庫帰属制度」も頭に入れておこう

2021年に新しくできた制度「相続土地国庫帰属制度」は、相続で得た不要な土地の所有権を国に返還するという救済制度です。2023年4月27日から施行されます。

しかし、誰でもどんな土地でもこの制度が使えるわけではありません。土地は国の税収源であり、維持管理も税金負担です。かなり厳しい要件をクリアした土地が、この制度利用の対象となります。相続土地国庫帰属制度は、以下10項目のいずれにも該当しないことが条件です。

  1. 建物がある土地
  2. 担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている
  3. 通路などが他人によって使用されている
  4. 土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている
  5. 土地境界・範囲が明らかでない・所有権や帰属に争いがある
  6. 崖などがあり、土地管理に費用・労力が必要
  7. 地上に工作物・樹木・車両がある
  8. 地価に除去しなくてはならないものがある
  9. 隣接する土地所有者と係争が必要
  10. 管理・処分に過分な費用・労力が必要

また、この制度利用のためには審査手数料が必要となり、承認された場合は土地管理費用10年分に相当する負担金を納める必要もあります。要件はかなり厳しいものの、使わない土地の管理費・固定資産税を払い続けるよりは、負担は軽いといえるでしょう。

まとめ

相続・譲渡で不動産を得てしまった場合、活用する機会がないのであれば早めの処分をおすすめします。

使わない不動産に、固定資産税や管理費を何年も払い続ける負担は避けたいものです。将来的な相続がわかっている場合は、早めに処分できるように準備をしておきましょう。

売却・寄付といった手段がありますが、どちらも費用・税金が発生する可能性があります。「将来的に処分を考えている」と、不動産会社に相談しておくのも良策です。

プロフィール
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。