固定資産税評価額とは、固定資産税を課税する際の基準となる価格のことです。この評価額は、全国の市区町村(東京23区の場合は都)が算定し、3年に1度の頻度で評価が見直されます。
土地の価格には4つの種類がありますが、固定資産税評価額は公示価格の約70%の水準になるように調整されているのが特徴です。これは、3年に1回しか評価替えをしないので、弾力性を持たせているためといわれています。 土地に関する4つの価格は、次の通りです。
固定資産税評価額は、固定資産税を課税する際の基準となるのはもちろんのこと、都市計画税や登録免許税、不動産取得税の算出にも使われます。また、土地査定の際など、保有している不動産の資産価値や売却価格を知りたいときにも、活用できます。
では、固定資産税評価額はどうすればわかるでしょうか。3つの調べ方について、それぞれ解説していきます。
固定資産税の納税義務者には、毎年4~6月頃に固定資産税(都市計画税)の納税通知書が届きます。納税通知書に同封されている課税明細書には、納税者が保有する土地や家屋ごとの固定資産税評価額が記載されています。
なお、課税明細書は再発行できないので、大切に保管しておきましょう。
市区町村の固定資産税担当課では、固定資産課税台帳(名寄帳)の閲覧ができます「固定資産課税台帳」とは、課税対象となる土地や家屋などに関して、以下の情報が記載されている台帳です。
【固定資産課税台帳に記載されている内容】
この台帳は課税明細書とほぼ同じ内容のもので、いつでも閲覧可能です。また実費を払えばコピーもしてもらえますが、証明書としては使用できません。
課税明細書を紛失した場合には、固定資産評価証明書を発行してもらうことができます。手数料は1通あたり300円~400円ですが、発行する自治体により異なるので、確認が必要です。
証明書の請求には、市区町村の窓口へ直接出向くか、郵送で申請する必要があります。取得できる人は不動産の所有者とその家族などに限られているため、第三者が取得する場合には委任状が必要です。手続きの細かい内容は、事前に不動産のある市区町村役場に問い合わせましょう。
なお、証明書の取得には、次のような注意点があります。
固定資産評価額は、さまざまな税を計算する基礎となるものです。例えば、固定資産税額は固定資産税評価額に税率をかけて算出します。
なお、課税明細書には「固定自然税評価額」のほかに、「課税標準額」という項目があります。通常、家屋の課税標準額は固定資産税評価額と同じですが、土地の場合はさまざまな特例が加味されるため、課税標準額は固定資産税評価額よりも小さくなるのです。税金を計算する際は、課税標準額にも注意しましょう。
ここからは、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税、相続税について、税率と計算方法を確認しましょう。
固定資産税は、土地や家屋・償却資産(事業用で減価償却をおこなっている資産)を持っていると課税される税金です。固定資産税の標準税率は1.4%ですが、自治体により税率が異なります。標準税率は1.4%とした場合、固定資産税は「課税標準額×1.4%」で算出できます。
例えば、以下のような状況を想定して、固定資産税を計算してみましょう。
この場合、以下のような計算式となります。
固定資産税額合計=(土地の課税標準額500万円×税率1.4%)+(家の評価額2,000万円×税率1.4%)=35万円
固定資産税額の合計は35万円となります。ここから、新築の場合などには減税措置があり、状況に合わせて減額がされていきます。
都市計画税は、保有する不動産が市区町村の「市街化調整区域」にある場合に課税されます。都市計画税の制限(最高)税率は0.3%ですが、こちらの自治体によって異なる場合があるので、確認しておきましょう。都市計画税の計算式は、「課税標準額×0.3%」です。
ただし、固定資産税と一体で徴収されるため、「固定資産税×1.7%」と考えるとわかりやすいです。
不動産取得税は、取得した不動産の価格である課税標準額に税率を乗じて求めます。計算式は、「取得した不動産の価格(課税標準額)×税率」です。取得した不動産価格(課税標準額)とは、新増改築家屋を除き、固定資産税評価額のことを指します。税率は以下の通りです。
登録免許税は、土地や家屋を登記するときに払う税金のことです。所有権や抵当権に関する登記の種類により、計算方法が異なります。
登録免許税=課税標準額×4%(住宅用家屋の軽減税率など別途特例措置あり)
登録免許税=債権金額×4%(新築マイホーム軽減特例の場合は1%)
登録免許税は、状況により税率が変わるほか、軽減特例があることもあります。 税率について詳しくは、国税庁No.7191 登録免許税の税額表を確認するようにしましょう。
固定資産税評価額は、相続税の計算でも利用します。相続税の課税基礎となる財産は土地や家屋だけではないため、直接税率を掛けるわけではありませんが、土地や家屋の財産の評価をする際に使います。
土地の評価は、路線価方式と倍率方式に分かれます。路線価で定められていない地域の評価は、倍率方式で評価することになるからです。ここで使用する路線価や倍率は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価とは、特定の道路に面する土地1㎡あたりの評価額のことです。計算式は次の通りです。
路線価×各種補正率×土地面積
路線価は、国税庁により毎年1月1日に定められています。
路線価が定めされていない地域にある土地は、倍率方式で評価します。計算式は、以下の通りです。
固定資産税評価額×倍率
相続税での家屋の評価額は固定資産税評価額と同じで、計算式は「固定資産税評価額×1.0」となります。ただし、以下のような税率が変わる状況もあるため、注意が必要です。
【家屋の相続税の税率が変わる状況】
(引用:国税庁 No.4602 土地家屋の評価 )
固定資産評価額の算出方法は、細かな補正があるため納税者が厳密に計算するのは難しいですが、それぞれ目安となる基準があるので、建物と土地に分けて押さえておきましょう。 まず、建物の評価額の計算方法から確認していきましょう。
建物の評価額は、再建築価格(評価時点に同一の建物を再建築したとしたらかかる費用)の50〜70%が目安です。 具体的に基本となる計算式は、「家屋の評価額=評点数×評点一点当たりの価額」となります。さらに評点数の算出式は、「再建築費評点数×損耗の状況による減点補正率×需給事情による減点補正率」をおこなうこととされています。
土地の評価額に関しては、公示価格の約70%をもとに、個々の宅地に対して奥行価格補正等の計算をおこないます。おおむね70%が目安と覚えておきましょう。詳細は、総務省固定資産税の概要をご覧ください。
納税者が直接、固定資産税を抑える方法はありません。固定資産税の仕組みや特例を正しく理解し、評価が適正かどうか毎年見直すなど、常に評価額を確認することが必要です。
住宅特例制度の代表例に、「住宅用地の課税標準の特例」や「新築住宅に係る固定資産税の減額制度」があります。なお、新築住宅が省エネルギー対策住宅または認定長期優良住宅である場合は、申告が必要です。
住宅用地の特例では、200㎡までを小規模住宅用地、200㎡以上を一般住宅用地として、それぞれ税率が軽減されます。
新築住宅の特例では、3年にわたって床面積120㎡の部分の固定資産税が、2分の1に減額されます。
また、性能住宅については細かな減額制度があります。以下に、横浜市の減税制度一例をまとめたので、参考にしてみてください。
固定資産税額は再建築価格をもとに評価されます。再建築価格とは、評価時点で該当する建物を再建築したとしたらかかる費用のことです。つまり、同じ床面積であっても、構造や部材・設備によって、評価が異なるのです。
構造や部材では、木造よりも鉄筋コンクリートの方が評価が高くなり、トイレやキッチンなど設備の品質が良かったり数が多かったりすると、評価が高くなります。木造住宅よりも鉄骨マンションの方が固定資産税評価額が高くなるのはそのためです。
評価額が適正かどうか確かめるために、固定資産台帳の縦覧制度があります。原則として毎年4月から固定資産税の第一期納税期限までに、納税市区町村のすべての土地・家屋の台帳を見ることができます。縦覧制度は固定資産評価額が適当か、他と比べて高くないか比較確認するための制度です。
固定資産税評価額は、固定資産税や登録免許税、不動産取得税、相続税などの税金の課税基礎となる数字です。また実際の土地・家屋の売買においても、評価の参考になります。その仕組みは厳密には難しいですが、目安を把握することは可能です。正しく理解して、適正に課税されているか確認しましょう。
この記事を読んで、固定資産税評価額について少しでも理解を深め、保有する固定資産にかかる税金を正しく把握できるようにしましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。