土地の売却方法は主に下記の3つがあります。
売却方法ごとに異なる特徴を見ていきましょう。
土地の売却で最も一般的な方法は、不動産仲介会社に委託して土地の買い手を探す方法でしょう。仲介では不動産会社に買い手を探してもらう代わりに、売主は不動産会社に対して「仲介手数料」を支払います。
仲介手数料の算出方法は、下記の通りです。
【参考】宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省
なお、物件価格が400万円を超える場合には、速算式として3%+ 6万円で計算をすると、簡単に計算することができます。
土地の売却で仲介を利用しようと考えている方は、売却時にどのくらいの仲介手数料がかかるのかを事前に計算しておきましょう。
不動産会社が直接不動産を購入する「不動産買取」で、自身の土地を売却することも可能です。不動産買取の1番のメリットは、買い手を探してから売却する仲介よりも、売却完了までの時間を短縮することができる点です。
ただし、売却までの時間を短縮できる一方で、不特定多数による買い上がりや競りなどが発生しないことから、売却価格が一般的な仲介をおこなう場合の相場価格よりも低くなるケースが多いです。メリットやデメリットを把握した上で、売却方法を検討しましょう。
仲介や不動産買取以外にも、国や地方自治体に対して土地を売却する方法もあります。しかし、どんな土地でも売却できるわけではありません。国や地方自治体が必要と認めた土地のみが売却の対象となります。例えば、公共施設の建設に必要な土地を自治体が買い取るケースがあります。
また、国よりも地方自治体の方が土地に対するニーズを多く抱えているため、行政への売却を考えているなら、国ではなく地方自治体の方が現実的といえます。土地の活用方法も踏まえて、最適な売却方法を選びましょう。
土地売却の流れは下記の通りです
以降では、上記9つの手順をそれぞれ詳しく解説します。
土地の売却を始める際に、事前準備として必要なのは、土地について調べることです。具体的には、土地の売却相場を調べたり、隣接地との境界線を確認したりします。土地の売却相場を調べる方法は、下記の4つです。
それぞれ、解説していきましょう。
実勢価格とは、売買契約を締結する段階で、実際に売り手と買い手の双方が合意した価格を指します。後述する路線価や公示地価に依らず、需要と供給によって決まる金額のため、相場よりも金額が高かったり低かったりすることがありえます。
一方で、「不動産の売買取引で実際に成約した価格」といえることから、ひとつの目安として参考にすることができます。実勢価格は以下のサイトで国土交通省が発表しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】不動産取引価格情報検索|国土交通省
公示地価は、地価公示法によって公示される価格で、国土交通省が測定・発表する「目安の価格」となるものです。基本的には公示地価や基準地価を基にして土地の価格を算出することが多いため、土地の売却を検討している方は、周辺や似た地域の公示地価や基準地価を調べることで、自分の土地の価格を見積もることができます。
【参考】土地情報総合システム|国土交通省
路線価とは、国税庁が管轄する「相続税や贈与税の算定基準となる価格」です。不動産は、売買以外でも相続や贈与の際に価格を推定しますが、その際に路線価をもとに相続税や贈与税の税額を算出しています。この路線価をもとに、不動産の価格を見積もることができるのです。
不動産の価格を算出する方法は多岐にわたりますが、土地の価格を算出する際に参考になるので、ぜひ活用しましょう。
【参考】路線価図・評価倍率表|国税庁
土地の価格は、不動産会社へ査定を依頼して、専門家の鑑定をもとに販売価格として決定することができます。最終的には売り主が売却価格を決めますが、その根拠となる参考価格は、不動産会社による査定で算出するのが一般的です。
依頼する不動産会社によって査定額は異なるため、より妥当な売買価格を知るためには、複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。複数の不動産会社に依頼するのは、手間がかかることから、一括査定サイトを活用するのも有効です。
不動産の情報を一度打ち込むだけで複数の不動産会社から見積もりを提示してもらえるため、ぜひ活用してみましょう。
また、売却予定の土地と隣接地との境界線を確認する際には、下記の書類などで確認ができます。
もし、上記の書類が見つからなかった場合には、境界線を明確にするために土地家屋調査士に依頼して現地の測量をおこなうようにしましょう。
売却予定の土地の相場と境界線などの確認ができたら、実際に不動産会社へ査定を依頼しましょう。査定方法には、下記2つの種類があります。
不動産会社へ査定の依頼をする際は、下記の書類を用意しておくとスムーズです。
不動産会社へ査定を依頼して、実際に仲介を依頼する不動産会社を決定したら、その不動産会社と「媒介契約」を締結しましょう。媒介契約とは、不動産の売買や貸借などの契約を成立させるための営業活動を、不動産会社に依頼する契約のことをいいます。
媒介契約を1社のみに依頼したい場合は「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を締結します。一方で、複数の不動産会社に同時に依頼したい場合には「一般媒介契約」を締結します。それぞれの媒介契約の内容や特徴は下記の通りです。
<3つの媒介契約の特徴>
■専任媒介契約
自己発見取引は可能ですが、依頼できる不動産会社は1社のみ、という制限があります。同時進行での依頼はできず、1社に絞って依頼するため、熱心な販売活動が期待できるでしょう。指定流通機構への登録は7日以内、業務報告も2週間に1回以上と定められており、進捗状況がわかりやすいのも特徴です。
■専属専任媒介契約
自己発見取引や他社への並行依頼ができないという最も強い制約がある媒介契約です。自由度は低いものの、その分、不動産会社に課される義務も多く、指定流通機構への登録は5日以内、業務報告は1週間に1回以上という定めがあります。必然的に積極的な販売活動が期待でき、進捗についても密な連絡が受け取れるでしょう。
■一般媒介契約
複数の不動産会社に依頼でき、買い手を自分で見つけて直接取引することも可能な自由度の高い媒介契約です。複数の不動産会社を競わせることができますが、不動産会社側としては最終的な利益が他社に流れるかもしれないことから、積極的な販売活動が期待できない可能性もあります。
①で紹介した事前準備の中で、境界線が明確でない場合には、売却が始まる前に必ず測量をおこないましょう。主な測量方法は、下記の2つです。
どちらか2つで測量をおこなうことで、境界線を明確にすることができます。
査定や測量が終了したら、土地の売出し価格を設定します。売出し価格とは、不動産広告などで掲載する金額のことです。途中で値上げをしても価格交渉などを受けてしまう可能性があるため、最初から低めに設定して売り出すよりも、査定額よりも少し高めの設定で売出し価格を決めるのがおすすめです。
ただし、「金額は気にしないからとにかく早く売却したい」という場合には、低めの査定額で出した方が、売却までのスピードは早まるでしょう。
売出し価格が決まったら、次は売却と販促活動に進みます。
購入希望者が現れたら、不動産会社を通じて詳細な情報を開示していき、具体的な条件の交渉などを進めます。一般的に土地は高額な取引となります。トラブルを避けるためにも嘘や偽りは一切行わず、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
また、広告の出稿や不動産情報サイトへの登録などの販促活動も不動産会社と進めていきます。売却の準備期間よりも、売却を開始した後の方が忙しくなるかもしれません。余裕をもったスケジュールで売却を進めましょう。
土地の購入希望者が現れたら「買付証明書(購入申込書)」を不動産会社から受け取ります。買付証明書に記載されている金額や条件を確認し、問題がなければ不動産会社を通して契約日や引渡し日の調整をしましょう。
購入希望者との調整が終わると、今度は「売買契約」を締結します。売買契約は売り手と売り手側の仲介業者、買い手と買い手側の仲介業者の全員が集まった上でおこなうのが一般的です。複数の関係者が集まるので、事前に必要となる持ち物を確認し、当日は必要書類や印鑑の準備を忘れないように注意しておきましょう。
また、通常は売買契約を締結するタイミングで手付金が支払われます。手付金は、契約金額の一部を事前に受け取っておくものですが、都合により解約をする際に一定の条件でやりとりするための金額となります。金額は買い手と売り手の双方の合意で決まりますが、売却価格の10%ほどが目安となります。
売買契約が完了したら、決済と引渡しをおこないます。決済時に受け取る金額は、すでに受け取っている手付金の金額を差し引いた残りの売買代金をもとに、そこから諸費用を差し引きした金額になります。代金を受領したら決済は終了となり、売却する土地を引き渡します。
以上が、買い手や不動産会社と話を進めながら土地を売却する流れです。スムーズに手続きを進められるように、事前に確認すべき部分や必要書類などを用意してから手続きをおこないましょう。
土地の引渡しで利益が出た場合には、確定申告をおこなう必要があります。確定申告は、土地売却によって得た利益に対して税金を納付します。確定申告では、土地の売却にかかった諸費用を経費として計上することが可能です。
諸費用には、解体費用や測量費、仲介手数料などを含めることができるため、各手続きの際に受け取る領収証は必ず保管しておきましょう。
土地の売却では、基本的に売却によって収入が得られますが、拠出しなければならない費用もあります。スムーズな土地売却を実現するために、事前にどのくらいの費用がかかるのかを理解し資金を用意しておきましょう。なお、物件の構造や規模などによりそれぞれの費用は異なりますので、正確な費用については不動産会社に見解を聞きながら計算をしてみてください。
ここからは、土地の売却にかかる費用と税金について、それぞれ解説します。
土地の売却時にかかる税金は3種類あります。それぞれの税金の金額の目安と支払い方法を下記の表にまとめました。税金の目安となる金額は土地の価格や取引方法、所有期間などにより異なりますので、不動産会社にも確認しながら計算をしましょう。
印紙税と抵当権抹消の登録免許税は、土地を売却する際に必要となる税金です。また、売買で利益が出た場合には売却後に「譲渡所得税」を支払います。
土地を少しでも高く売るコツとして、下記の6つがおすすめです。
土地を少しでも高く売りたいと考えている方は、以降で解説する方法から取り組めそうな内容を実践してみましょう。
土地を少しでも高く売却するためには、まずは自分で売却相場を把握しておくことが重要です。手軽な方法としては、実際にポータルサイトなどで売却したい土地と同様の条件を入力して検索してみて、市場で取引されている価格を調べるのが良いでしょう。
実際に土地が売買されている相場を把握できていれば、それに合わせて売却する価格を設定しやすいです。相場の価格を押さえておくことで、少しでも手元に利益が残るように時間をかけて高めの金額で売り出すか、相場よりも安めに売り出して早く売却するかなど、売却の戦略を立てることができます。
購入希望者から値下げ交渉をされてもスムーズに対応できるので、まずは基準となる土地の相場を把握することから始めましょう。
一般的に土地の売却では不動産会社に仲介を依頼することが多いです。また、仲介の依頼の際には、事前に土地の価格を査定してもらえます。
すでに相場を把握したからといって、そのままその価格で売りに出すのではなく、不動産会社にも査定依頼をして、価格を検討するのが良いでしょう。
不動産会社に査定を依頼する際は、より妥当な売買価格を知るために複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。複数の不動産会社から査定を受けることで、査定額だけでなく各不動産会社の対応の丁寧さなども比較することができるため、その後に仲介を依頼する不動産会社を選びやすくなるでしょう。
土地を高額で売却するためには、不動産会社が保有するコネクションや販売力、集客チャネルの影響も見逃せません。あまり積極的に営業活動をしない不動産会社に依頼してしまった場合には、長期間売れず困ってしまい、やむを得ず価格を下げざるを得なくなるなどのリスクがあります。不動産会社選びが土地の売却価格や売却までの期間を左右すると言っても過言ではありません。
不動産会社に査定依頼をする際は、査定額そのものだけでなく接客やその他の部分も検討した上で、仲介を依頼する不動産会社を選びましょう。
土地を少しでも高く、スムーズに売却するためにはどの不動産会社を選ぶかが重要です。不動産会社によって、売却実績や得意分野などが異なるため、売りたいと考えている地域での査定額や売却実績などを確認した上で、土地売却を強みとしている不動産会社を選ぶようにしましょう。
また、不動産会社には仲介をする役割を担ってもらうため、細かい手続きを含め、多くのやりとりが必要になります。そのため、少しでも安心して利用できると感じる不動産会社を選びましょう。
土地を売却に出す前に、土地の「アピールポイントはどこなのか」を整理しておきましょう。
土地の売買をスムーズに進めるためには、不動産会社に正しくアピールしてもらうことが重要です。土地に関する情報を買い手に説明する際に、正確にわかりやすく説明ができるように、事前に不動産会社にアピールポイントを伝えておきましょう。
アピールするポイントは、購入を希望する側の立場で考えると分かりやすいです。実際に所有していて感じた良かった点や、周辺環境や近隣との関係などを伝えるだけでなく、今後建物を建てたり用途変更をしたりする際に、どのような工程があるのかを知っておき、現状の土地がどの状態にあたるのかを把握しておくと良いでしょう。
購入希望者から見ると、その土地について最も詳しいのは売り手です。事前に想定される質問を考えておき、アピールポイントを伝えられるように整理しておきましょう。不動産の売買は高額な取引なので、事前にしっかり情報を提供して、十分に検討してもらうことが大切です。
土地を売却する際には、事前に「整地」しておく場合があります。整地とは、土地を建築する前に平らにならすことをいいます。整地にはさまざまな方法があるため、その場所に適した整地をおこなう必要があります。
例えば土地の売却後に住宅地として利用する予定の場所であれば、粗仕上げや防草仕上げなどをしておくのがおすすめです。既に粗仕上げや防草仕上げがされている状態であれば、すぐに次の建設ができます。
また、防草仕上げなら雑草が生えづらいので、土地を管理する手間を軽減できるでしょう。住宅地の土地であれば、これらの整地方法を選択することをおすすめします。
土地が既に手間のかからない状況になっているのであれば、購入希望者にとってはその後にかかる金銭や時間の負担が少なくなるため、高値で取引をするためのアピールポイントになります。
土地を売買する際には、購入希望者が購入を決める前に土地を見学しに来ます。購入希望者がいつ来ても良いように、常に土地を綺麗にしておき、見栄えを良くしておきましょう。土地の管理がずさんで見栄えが悪いと、減額交渉をされる可能性もあります。
また、まだ土地に建物が建っている場合には、解体して更地にする前に、建物を解体しても問題ないかどうかを確認しましょう。特に売却しようとしている土地が、建築基準法の「再建築不可物件」に該当すると土地の使い道が限られてしまうため注意しましょう。
土地の売却では、高く売ることや売却にかかる費用を考える以外にも、それぞれの土地の状況に応じて注意が必要な場合があります。今回は以下の6つについて解説します。
さまざまな条件により事前の対策は異なりますが、自分の土地が該当していないかを確認しておきましょう。
売却する土地に建物が建っている場合でも、古家付きの土地として売却する場合には、解体費用をかけずに売却することが可能です。費用をかけずに売却できることはメリットとなりますが、一方で建物まで購入してくれる人が現れなければ売却ができないこととなります。
古家付きの土地を売却する際には、メリットとデメリットがありますが、建物をそのまま使用するか、解体して更地に戻すかは、購入者側で判断しますが、買い手が建物の価値をどのように判断するかによっては高く売れる可能性があります。
田舎や地方で土地を売却しようとする場合には、都心部に比べて需要が少ないことから、土地が売りづらい可能性があります。しかし、田舎や地方だからといって、土地が売却できないわけではありません。最近では、下記のような方が増えてきており、田舎や地方でも土地の売却がしやすくなっています。
地元の関係者ではなく、移住やその他の目的で土地を購入する方も増えています。そのため、地域の特性が強みとなることで、より売却しやすくなる可能性があります。
ローンの返済が残っている抵当権付きの土地では、売却と同時に抵当権を抹消しない場合には、買い手が見つかりづらいことに注意しましょう。抵当権とは、債務の担保とした物に関して、ほかの債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のことです。
そのため、第三者の抵当権が残っている土地については、売却と同時にローンの支払いを終え、抵当権を抹消するようにしましょう。
相続した土地を売却する場合には、必ず事前に相続登記をおこなっておきましょう。相続登記とは、不動産や土地の所有者が亡くなった場合に、名義を相続人に変更することです。相続登記をするための手順は、下記の6つです。
相続登記をせずに売却することはできないため、売却に必要な相続登記の手続きをしていない方は、必ず事前に確認しておきましょう。
賃貸中の土地の売却はオーナーチェンジの扱いになります。借地権を設定している状態の土地の売却は、通常の土地と比較して購入者のニーズが少ないことから、売却しづらい傾向にあるといえます。
借地権に関しては、毎月の地代のみでなく、譲渡承諾や建替承諾などの条件が複雑な場合があるため、できる限り借地の売却を得意とする不動産会社に相談するのが理想です。
売却する土地に空き家がある場合には、不動産会社に相談するよりも先に市区町村へ相談してみるのも一つの手です。
空き家の売却では市区町村によっては独自の制度や補助金を設けている場合があります。そのため、まずは市区町村に相談してみることがおすすめです。
また、売却しようと考えている土地が地方にある場合には、移住希望者のユーザー数が多い「空き家バンク」への登録もおすすめです。空き家バンクへ登録すれば、購入希望者を探しやすくなります。
今回は、土地の売却で高く売却するコツや、かかる費用や税金などについても詳しく解説しました。少しの工夫を加えることは、少しでも高く売却できるだけでなく、スムーズに取引を進めることに繋がります。
不動産の売買は非常に高額な取引です。後悔をしないように、あらかじめトラブルを防ぐ対策をしておくことが重要です。売却の手続きや費用や税金、注意点などを十分に理解した上で売却活動に進みましょう。
大学卒業後、2011年に大手不動産会社に入社し現在まで不動産メディアづくりや組織づくりに従事。 不動産に興味を持ち個人でも戸建てや区分マンション、商業ビルなどの売買を経験。 会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて現在は株式会社を2社経営。投資家として若手実業家の支援なども手がけている。