2022年時点での不動産価格の指数について紹介します。2010年を基準の100とした場合、2022年の不動産価格指数は、毎年少しずつ上昇傾向となっています。
引用:国土交通省「不動産価格指数(令和4年4月・令和4年第1四半期分)」
上記グラフを見てもわかる通り、全体的な上昇がみられている不動産価格指数ですが、なかでも最も上昇傾向が強いのがマンション、次いで住宅総合となっています。
とくに都心部の新築マンションの上昇率は著しく、1990年代の不動産バブル時期と比較しても2022年にはその平均価格を超えているのが現状で、かなりの価格上昇となっています。
さらに、2020年以降では住宅総合の価格指数も伸びてきており、大きな理由としては世界的に大流行となった新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢も影響しているとされています。
テレワークが進み自宅での仕事が主流となったため、部屋数が多くゆとりのある住宅に対するニーズが増えたことも一因ですが、円安や世界的なインフレ、原材料費の高騰、低金利などさまざまな要因があってのことです。こうした状況を総合的にみると、今後の不動産価格指数も上昇していくと予想されているのがポイントです。
地価変動率とは、基準値、もしくは標準値における価格変動率の単純平均を指します。地価変動率には、そのエリアの公示地価を知る必要があります。公示地価とは、国土交通省が毎年公表している価格で、土地の取引の際に参考となる金額です。
主要都市圏の地価変動率は、下記の表のように毎年上昇傾向となっています。
2021年には一度全体の価格が下がりましたが、翌年2022年には持ち直し徐々に上昇しています。地方四市とは、札幌、仙台、広島、福岡の4都市で、連続して上がっており、上昇率が大きいのも特徴です。
その他のエリアであっても地価変動率は高く、全国的に見ても上昇傾向が強いのがポイントといえます。
不動産価格の変動には、さまざまな項目が影響を与えています。主な項目としては「世界情勢」「経済的な要因」「国内イベント」の3つがあります。そこで、ここ数年の不動産価格の推移に大きな影響を与えた要因について紹介します。どれもニュースで騒がれている誰もが知るような内容となっていますが、それがどう不動産価格に影響しているのかについて詳しく把握できている方は少ないのが現状です。
こうした要因について、何がどう不動産価格に影響を与えているのかを知り、不動産価格についての理解をさらに深めていきましょう。
経済的な問題は、不動産価格に大きな影響を与えるため、常に最新の状況を把握しておく必要があります。経済活動が活発なタイミングであれば、不動産価格は上昇傾向となるのが特徴です。つまり、景気が良ければ不動産の需要も高まってくるため、結果として価格の推移は上昇します。
こうした景気の良し悪しを判断するのに適しているのが株価や長期金利です。株価が高い場合は企業の業績が良く、景気の良い状況となっています。その結果、不動産価格の上昇しやすい状況です。
長期金利は需要と供給の関係に応じて変動するため、経済状況を見極めるためには欠かせない1つの指標といえます。株価とは違い低いほど資金調達しやすいのが長期金利で、不動産を購入することで市場が活発化することから価格上昇に繋がるケースも少なくありません。
景気が良ければ不動産価格が上昇傾向となりますが、現代はグローバルな社会となっているため、国外情勢についてもよく把握しておく必要があります。国際情勢が不安定な状態であれば、外国資本が流れにくくなるため、価格の下落が起こりやすくなります。
現在では、ウクライナ情勢による金融マーケットへの影響がとても大きく、現在でも変動が続いている点に注意しておかなければいけません。
不動産価格は、金利が低いほど高くなります。2022年後半は、日本は低金利での施策を推進しており、結果的に円安基調です。海外の投資家からすれば割安に日本の不動産投資が可能ということになります。
しかし、いつまで続けられるかわからないのが現状となり、金利をあげた際に不動産価格への悪影響が出る危険性もあります。
また、長期円安やウッドショック、ウクライナ危機によるエネルギー価格の上昇は、建築材料費の高騰も招いており、結果的に不動産価格の新築価格が上がっています。
日本国内のみならず、世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症は、不動産の価格に大きな影響を与えています。金利が低下すれば不動産の購買意欲が高まりますが、景気が悪くなりすぎると購入するための現金が消費者の手元からなくなってしまいます。
新型コロナウイルス感染拡大による自粛要請で、飲食業界は大きな打撃を受けました。テナントの不動産需要は特に商店街などでは低調となりました。一方で、郊外のロードサイドではドライブスルーなどの需要で活況です。
また、新型コロナウイルス感染拡大にともないテレワークが推進され、転勤の抑制や自宅勤務なども増え、オフィスの統廃合や減床も心配されています。円安基調で輸出企業は好調で、増員している工場周辺では賃貸物件は満室。その一方で、輸入国内出荷する企業は苦戦しており、その周辺は賃貸は空室が目立つという二極化も進んでいます。
大学生はオンライン授業が増え、自宅から通える大学に進学をする人も増えました。海外からの留学生の入国も禁止されていたため、学生賃貸物件では入居に大きな影響が出ました。
国内で大きなイベントがあれば、観光客の増加、周辺ホテルや旅館、飲食店の需要が高まることで不動産価格の上昇が見込めます。現在では、日本において大阪万博開催が予定されていますが、それが今後の不動産価格にどう影響するのかはぜひ注目すべきポイントといえます。
さらに、再開発により新しい人を呼び込むことで、古くなった街並みが新しくオシャレに生まれ変わり、利便性も向上するために不動産価格は上昇するとされています。街並みが古ければ、経済の悪化や治安に対する不安が高まり、さらに不動産価格は下落していきますが、再開発することで、こうした問題を取り除きながら価格の上昇が見込まれるのが大きな特徴といえます。
2023年以降、不動産価格はどのような変化があるのか気になる方は多くいるのではないでしょうか。
2022年時点では、不動産価格は全体的に上昇傾向となっています。しかし、その後の推移はどのように変化するのかをここで詳しくみていきましょう。首都圏の不動産価格、地方の主要都市とその他のエリアについて、それぞれ予想される推移をお伝えします。
まず、首都圏の不動産価格です。2023年以降、首都圏の価格は上昇傾向が続き、更なる価格の高騰が予想されています。2013年以降上がり続けている不動産価格ですが、こうした上昇傾向を牽引しているのはまぎれもなく首都圏の不動産価格です。
これは、首都圏の一都三県の人口が増え続けているのが1つの要因といえます。ウィズコロナの思考が定着し始めている昨今では、インフラや医療機関が充実している都市部に人が集まっており、高い利便性などから今後もさらに人が集まると予想されています。
さらに、2022年には記録的な円安が続いたことから、海外の投資家が日本の不動産を購入しやすい状況となっており、もともと人気が高かった首都圏の不動産がさらに注目を集めていました。こうした結果、首都圏の不動産価格は今後も上昇が予想されています。
ただし、これを支えているのは国内の低金利施策です。仮に金利が上昇局面となれば、一転バブル崩壊の二の舞にもなりかねませんので、冷静に金融施策は注視しましょう。
首都圏から少し距離のある地方の主要都市では、不動産価格の大きな変動はあまりおこらず、ほぼ横ばい、もしくは多少の上昇がある程度と予想されています。
先ほどお伝えしたように、新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、首都圏に対する需要が高まっているため、郊外の需要はそこまでの上昇傾向とはならないのが現状です。また、以前問題視されていた「生産緑地問題」がクリアされたために、大幅な価格の下落は起こらなくなっています。
郊外の主要都市は、近隣の地方都市からの流入+首都圏からのUターン・Iターンで世帯数が増加傾向にあるところもあり、堅調な価格推移は期待できます。もちろん金利施策は注視が必要です。
首都圏、地方の主要都市とは違い、そのほかの地方エリアにおける不動産価格は下落することが予想されています。近年は首都圏や地方主要都市に人口が流れ続けているため、地方エリアは今後ますます人口の減少が起こります。
さらに、高齢化社会が問題となっている日本では、空き家問題も多く、地方での不動産における供給過多が生じているのが現状です。価格が上がることよりも、今後もさらに下落が進み続けていくほうが、可能性としては大きくなります。
今後、不動産の購入を検討している方は、実際にどのように動いていくのかを見ていきましょう。購入者の動きが把握できれば、不動産の売却のタイミングや土地価格の変動などについても深く理解することが可能です。
戸建て住宅とマンションの比較、郊外の需要などについて、ここで詳しく紹介します。
コロナ禍でマンション用地交渉が滞り、首都圏の分譲マンション供給がここ数年減少しました。一方で、新型コロナウイルス感染症の蔓延で、当初厳しかった戸建て需要は、感染拡大が拡がるにつれ、「エレベーターや手すりなど共用部が少ないので感染リスクが低い」「テレワークやオンライン授業で静か」といった志向の変化で好調に販売が伸びました。都市部より郊外部に立地が多いことも好調の要因でした。
しかし、今後、感染が緩やかに収束し、アフターコロナ基調となれば、マンションの建設も復調し、マンション需要は伸びていくことが予測されます。これには「家族」のあり方が変わってきたという影響もあります。
一昔前までは、「いつかは一軒家を購入する」「将来子どもに残す資産として家を買う」といった考えの方が多くいました。しかし、現在は核家族が増え、子ども自身が持ち家を持っているケースや、持ち家は持たないといった主義の方も増加傾向となっています。
その要因の1つが管理費や維持費です。一軒家の場合、税金や維持管理費がかかります。マンションにおいてもこうした支出はありますが、一軒家のほうが、金額が大きいのが特徴です。
さらに、マンションは駅近や周辺環境が充実したエリアに多くあり、さらにオートロックなどのセキュリティ面でも安心感が強いのが特徴です。そろって収入があるパワーカップルがマンション購入する傾向も高まっているのも、需要が高まっている要因の1つです。
また、子どもが独立し、高齢者夫婦や単身高齢者の世帯が増えていることも要因です。一戸建ては階段など段差があり、庭の手入れなども大変です。人生は永くなっており、子どもが巣立ってからは、マンション生活のほうがバリアフリーで、病院・買い物などへの利便性が高い事も要因です。
新型コロナウイルス感染症の影響によって、多くの企業ではテレワークを導入し、自宅業務への切替がすすみました。そのため、当面の間は一軒家や郊外の物件需要は高まり続けるとされています。
さらに、2021年では、部屋数が多い一軒家のほうが、マンションよりもテレワークする方のニーズに合っており、通勤の心配がないため郊外で安く不動産を購入する方も増加してきました。
また、都内ではなく千葉や埼玉など、部屋数が多く広々としたマンションであれば、テレワークのための部屋も確保しやすいため、需要が高い傾向となっています。
経済の動きを深く把握することで、土地の価格推移や今後の不動産の動向が見えてきます。不動産価格はさまざまな要因により大きく変動するため、世界で何が起こっているか、国内におけるニュース、再開発がおこなわれているエリアなどについて、しっかりと把握しておくことが重要です。
今の日本経済、景気はどうなのか、世界情勢など、幅広い視野を持つことで、より不動産価格についてはっきりと見えてくるものがあります。今後の土地活用はどうなっていくのか、そもそも現在の不動産価格はどういった状況となっているのかを把握するためにも、ぜひ本記事でお伝えした情報を参考にしてください。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。