まずは2,000万円の土地を売却した際の税金の種類を知っておきましょう。それぞれ計算方法や必要書類に違いがあるため、正確に理解しておくことで申告漏れのリスクを抑えることができます。
また、特別控除という制度を活用すれば減税できる場合があるのでそちらについても把握しておきましょう。
土地を売却した際にかかる税金には、所得税と住民税・印紙税・復興特別所得税があります。
それぞれの税金の特徴は次の通りです。
所得税と復興特別所得税・住民税は、同じ譲渡所得について課税されるものです。
これに対し、印紙税は土地の売買契約書を作成する際に必要な税金となります。それぞれ国税と地方税の違いがあり、納付先(収入印紙は購入先)が異なる点に注意しましょう。
所得税は、土地や建物など不動産を売却して得られた利益である譲渡所得に対して課税される税金です。土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日までに納税する必要があります。
また、土地を売却した際の所得税は「分離課税」と呼ばれる方法で課税されます。分離課税とは、給与所得などのその他の所得と合計せずに単体で課税するものです。
【分離課税と総合課税の違い】
単体で税率をかけて算出
合計所得に累進課税をかけて算出
退職所得・雑所得など
利子所得(源泉分離課税分を除く) 雑所得ほか
土地の売却益だけにかかる税金であることを知っておきましょう。
住民税とは市区町村民税とも言われ、毎年1月1日に申告者の住所がある市区町村で課税されます。住民税は所得税の申告と連動している賦課課税方式なので、別途改めて申告書を提出する必要はありません。
住民税の納税方法は、自営業者と会社員で異なる点で注意が必要です。自営業者は、毎年5〜6月頃に自宅に届いた納付書で納税します。一方、会社員は給与から天引きされるのが一般的です。
所得税とは納付するタイミングが異なる点に注意しましょう。
印紙税とは、契約書などを作成する際に収入印紙を貼付するために必要な税金です。土地の売買契約書に必要な印紙税額は、土地の契約金額により決まります。
2,000万円で土地を売却した際に必要な印紙税額は1万円です。(軽減措置適用の場合)
参考までに以下に取引額別の印紙税の金額を一覧にしていますので、参考にしておきましょう。
(参照:nta.go.jp)
なお、2014年4月1日から2024年3月31日までの間は軽減税率が適用されるため、右欄の税率となる点に注意しましょう。
なお、契約書に貼る収入印紙は郵便局やコンビニなどで購入できます。
復興特別所得税は、2011年(平成23年)に発生した東日本大震災からの復興を目的として納めるものです。所得税を納める義務のある人は全員が復興特別所得税の対象者となります。
ただし、この税金は2037年(令和19年)までの措置であるため、将来的に売却を考えている人にとっては売却のタイミングを考える必要があるでしょう。
復興特別所得税の計算は以下の通りです。
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%
税金の申告に特に必要な手続きはなく、所得税と同時に納税します。
所得税と住民税のそれぞれの税金について理解が深まったところで、それぞれの計算方法について解説していきます。
結論から言うと、以下のように計算されます。
所得税=譲渡所得 x 所得税率 住民税=譲渡所得 x 所得税率 ※譲渡所得=不動産の売却価格 -(取得費+譲渡費用)
この計算式を理解するためのポイントは以下の通りです。
それぞれ解説していきます。
所得税も住民税もそれぞれ譲渡所得に税率をかけて算出されます。そのため、まずは譲渡所得について理解していきましょう。
譲渡所得とは、不動産売却で得た収益から物件の取得費と譲渡費用を差し引いた金額のことです。計算式は以下の通りです。
譲渡所得=不動産の売却価格 -(取得費+譲渡費用)
ここで言う取得費とは、土地を買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。譲渡費用は、土地を売却する際にかかった不動産会社への仲介手数料や建物の取り壊し費用などの合計額となります。
それぞれの主な具体例をまとめると次の通りです。
つまり、所得税も住民税も売却して得た収益に対してかかるのではない点に注意が必要です。
譲渡所得の一般的な求め方を紹介しましたが、購入金額(取得費)が分からない場合もあるでしょう。例えば、先代から土地を受け継いだり購入時の契約書や経費の領収書を紛失したりした場合などです。
このように、購入金額が分からない場合は「概算取得費」で計算することになります。概算取得費は次の計算式で求めます。
概算取得費=不動産の売却価格×5%
取得費が分からない場合はこちらを元に計算しましょう。
ここまでで譲渡所得の計算式はわかりました。この金額に対して所得税と住民税のそれぞれの税率を掛け合わせることで税額が判明します。
しかし、所得税と住民税の税率は土地の所有期間によって変動するため、注意しなければいけません。
結論から言うとそれぞれの税率は、土地を売却した日の属する年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えるかどうかによって決まります。
例えば、令和4年10月1日に売却した場合は、令和4年1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判定するので、売却日で判断するのではありません。
税率をまとめると次のようになります。
所得税
5年以下の場合
5年超の場合
土地売却時には、所得金額から差し引ける「特別控除」が適用される場合があります。この特別控除を活用すれば、納税額をゼロにしたり減額したりすることが可能です。
特別控除制度にはいくつか種類がありますが、ここでは代表的な2種類の特別控除を紹介します。
1,000万円の特別控除は、平成21年〜22年に購入した土地を5年以上保有して売却する場合に適用される特例です。
購入した年が限定されている理由は、平成20年に発生したリーマンショックにあります。景気悪化による不動産取引の先行き不安などから、景気対策として導入された背景があるのです。
なお、この控除は全ての土地に適用されるわけではありません。以下のような条件があることに注意しましょう。
該当の期間に購入している場合には、利用するようにしましょう。
土地を売却した際の特別控除の代表的なものとしては「3,000万円の特別控除」があります。この控除は、最大3,000万円までの譲渡所得には課税されないという制度で、土地の所有期間の長短に関係なく適用できるのが特徴です。
3,000万円の特別控除には、以下の条件などを満たす必要があります。
事前に譲渡所得を計算して3,000万円以下であるかは必ず事前に確認しておきましょう。
ここからは、実際に2,000万円の土地を売却した際にかかる税額を計算してみましょう。
【税額シミュレーションの仮定条件】
土地の保有期間によって税率が変わるため、それぞれの条件に合わせて計算していきます。
税額(相当額)の計算は次のステップですすめます。
それでは、個別のケースを見てみましょう。
今回は土地の所有期間が5年以下なので、短期譲渡所得の税率が適用されます。
最初に譲渡所得を求めます。
2,000万円-(200万円+1,200万円+80万円)=520万円
譲渡所得は520万円となるので、次に、算出した5年以下の「短期」譲渡所得の税率をかけます。
520万円×39.63%=206万円(便宜上、千円未満切り捨て)
計算によって導かれる税額は、206万円となります。
次は、土地の所有期間が5年以上の場合です。
譲渡所得は同じく520万円となるので、次に算出した5年以下の「長期」譲渡所得の税率をかけます。
520万円×20.315%=105万6千円(便宜上、千円未満切り捨て)
導かれる税額は、105万6千円となります。
1,000万円特別控除を適用できる場合を考えてみましょう。
まず譲渡所得を求めます。
これも算出金額は520万円となりますが、特別控除額が1,000万円あるので差し引くと、分離課税の譲渡所得は0円となります。
520万円-520万円(特別控除額1,000万円以内) = 0円
譲渡所得が0円となるので、税額も0円となります。
3,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得を求めます。
先ほど同様、譲渡所得は520万円です。これに特別控除額が3,000万円あるので差し引くと、分離課税の譲渡所得は0円となります。
この場合も譲渡所得が0円となるので、税額は0円となります。
今回は、2,000万円の土地を売却した際にかかる税金について解説しました。
土地を売却する際の主な税金には、「所得税」「住民税」「印紙税」「復興特別所得税」がありますが、特別控除を適用すれば、節税することもできます。
しかし、取得費や特別控除額の計上や特別控除が適用できるかは、実際にはもっと複雑なケースもあるでしょう。そのときは最寄りの税務署か税理士に相談することとなりますが、自分で基本的な考え方を把握しておくことは大切です。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。