マンションを売却する際は、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などの税金がかかる可能性があります。税金によっては徴収されるタイミングが異なるため、徴収のタイミングで資金が足りないといった事態を防ぐためにも、マンション売却でいくら税金がかかるのかを事前に把握しておくことが大切です。
しかし、マンションを売却する際にかかる税金は、均一というわけではありません。売却代金がいくらなのか、売却によって利益が生じたのか、マンションの所有期間といった売却時の条件によって異なるので注意してください。
マンションを売却することによって得られた売却益には、税金がかかります。
売却時に発生する利益は、マンションを取得してからの年数で税率が変わることもあるので、注意が必要です。税金の種類によっても、注目すべきポイントは異なります。
納付のトラブルを回避するためにも、納税金額の目安や納付時期をしっかりと理解しておきましょう。
印紙税とは、正しくは収入印紙税といい、不動産の売買契約書に収入印紙を貼って納める税金です。契約金額によって、以下のように収入印紙税額が異なります。
【契約金額に対する収入印紙税】
(参考:国税庁No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで)
収入印紙を契約書に貼る際、必ずはんこや署名で消印にします。仮に失念すると通常の印紙税だけでなく、過怠税も納税義務があるので注意しましょう。
2022年5月からは、不動産契約においてもオンライン契約が可能となります。オンライン契約の場合は印紙税が不要となります。
登録免許税とは、不動産の購入や売却など名義が変更されるときに納める税金です。売主・買主双方に支払義務がありますが、売主が支払う登録免許税は、住宅ローンなどを利用している際に登記されている抵当権抹消登記にかかります。
抵当権抹消登記とは、抵当権(万一返済ができなくなる場合に売却などができる権利)を外す手続きのことです。抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1つ(1筆)あたり1,000円かかります。土地、建物を別々で計算するため、マンションであれば2,000円かかるでしょう。
抵当権抹消登記には、住宅ローンの完済が必須であり、抹消手続きには抵当権設定契約書が必要となります。そのため、事前に完済日及び抵当権設定契約書の依頼を金融機関に連絡しておくことがおすすめです。
また、抹消手続きには司法書士を利用するのが一般的で、その費用もかかるので注意しておきましょう。
譲渡所得税とは、マンション売却により発生した売却益(譲渡所得)にかかる税金のことをいいます。
一言に譲渡所得税といっても複数の種類があり、納める先も異なるのです。ここでは、譲渡所得税の種類と計算方法について解説していきます。
譲渡所得税の種類には、所得税、住民税、復興特別所得税の3つがあります。
それぞれで納める先が異なるので注意が必要です。
譲渡所得は、以下のように計算されます。
譲渡所得=マンションの売却金額―取得費―売却にかかった費用
それぞれの要素について説明します。
※減価償却費
建物は年数が経過すると価値が減少していくため、購入価格から減額する必要があります。減額する費用を減価償却といい、以下のように計算されます。
減価償却費=取得価格×0.9×償却率×経過年数
このとき、償却率は建物の構造などで異なります。
(参考:国税庁「「減価償却費」の計算について」)
マンション売却により得た売却金から取得費、売却にかかった費用を控除して算出された金額が譲渡所得です。譲渡所得税額は譲渡所得に税率を掛けて譲渡所得税額を計算します。 具体的な計算式は以下の通りです。
所得税額=譲渡所得×税率
この時の税率に関しては、売却したマンションの所有期間により税率が異なります。
所有期間は売却した年の1月1日時点で計算するので、注意が必要です。
(例)
所有期間が5年を超えているにもかかわらず、売却した年の1月1日時点では5年以下であるため、税率39.63%が適用されます。(20.315%ではありません)
マンション売却にかかる税金は、印紙税、登録免許税、譲渡所得税の3つです。これらの税金を納付するタイミングは同じではありません。
印紙税は売買契約を締結する際、登録免許税は法務局で抵当権を抹消する際、譲渡所得税は不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日までに確定申告を行い納付します。税金によって異なる点に注意が必要です。
登録免許税の税額は原則2,000円です。印紙税はマンションの売却代金によって異なり、譲渡所得税はマンションの売却代金と売却までの所有期間によって異なります。
譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。
次の見出しでは、マンション売却にかかる具体的な税金の計算シミュレーションを行ってみましょう。
マンションを売却する際にかかる印紙税、登録免許税、印紙税を2つの条件で計算シミュレーションを行ってみましょう。なお、減価償却費の計算は複雑であるため、計算シミュレーションでは減価償却費を考慮していません。
条件①
条件①のマンション売却でかかる税金 印紙税:2万円(令和6年3月31日までは軽減税率適用で1万円) 登録免許税:2,000円 譲渡所得税:(4,500万円-4,000万円-300万円)×39.63%=79万2,600円
条件②
条件②のマンション売却でかかる税金 印紙税:6万円(令和6年3月31日までは軽減税率適用で3万円) 登録免許税:2,000円 譲渡所得税:(6,000万円-5,000万円-400万円)×20.315%=121万8,900円
マンションを売却した際の消費税についても事前に知っておく必要があるでしょう。 ここでは、マンション売却時の消費税について解説していきます。
それぞれを解説していきます。
自宅として居住していたマンションを売却する場合、消費税はかかりません。
しかし、投資用マンションとして所有しているマンションを売却する場合には、消費税がかかるので注意しましょう。
これは、マンションの売却行為が個人目的ではなく「事業目的」とみなされるためです。
このときの税率は10%であるため、例えば5,500万円で建物売却をした場合には、550万円の消費税が課税されます。
投資用マンションの売却を考えている場合には注意が必要です。
結論から言うと、土地には消費税がかかりません。これは、消費税の性質に起因しています。
そもそも消費税は、商品の販売・サービスの提供などに対してかかる税金です。土地そのものは「消費される」という性質を持ち合わせていません。
よって、土地部分の売却に消費税はかからないわけです。
このように、マンションを売却する際には建物部分と土地部分を分けて考える必要があるでしょう。
マンション売却時の税金について解説してきましたが、これらの税金を控除できる制度も存在します。具体的には以下の通りです。
それぞれについて解説していきます。
マイホームであるマンションを売却したとき、所有期間にかかわらず譲渡所得より最高3,000万円控除される特例があり、これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
つまり、譲渡所得税額=(譲渡所得-3,000万円)×税率 となるのです。
ただし、3,000万円の特別控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
また、共有名義であれば控除は1人3,000万円であるので、夫婦の共有名義であれば、6,000万円の控除を受けることができます。ただし、各々が確定申告を行う必要があります。また、住宅ローン控除とは併用できない点に注意してください。
控除の条件などの最新の情報は、国税庁の「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を確認するようにしましょう。
物件所有期間10年超の場合の軽減税率とは、自宅のマンションの所有期間が10年を超えて売却する場合に、5年超の税率よりも低い税率で所得税額を算出できる特例です。
また、この軽減税率は3,000万円の特例控除と併用して利用できるので非常にお得です。
例えば、以下のような条件でマンションを売却したとします。
このとき、譲渡所得は「7,000万円 ― (5,000万円+500万円)=1,500万円」となり、譲渡所得が6,000万円以下なので軽減税率の特例を活用できます。
よって、一般税率との比較は以下のようになるのです。
このように、非常にお得になるため、物件所有期間が10年を超えていない場合は少し待った方が税率はやすくなるかもしれません。
ただし、物件所有期間10年超の場合の軽減税率を利用するためには以下の条件を満たす必要があります。
この特例は、特定居住用財産の買い換え特例や居住用財産の買い換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除などとは併用できないので注意が必要です。
控除の条件などの最新の情報は、国税庁の「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を確認するようにしましょう。
特定のマイホームを令和3年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。
例えば、以下のような状況で想定してみましょう。
この場合、売却後7,000万円のマイホームに買い換えると、特例によって売却した譲渡益3,000万円の課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
特例の適用を受ける要件としては以下の通りです。
この特例は、3,000万円の特例控除の特例や住宅ローン控除などとは併用できない点に注意してください。
最新の条件に関しては、国税庁の「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」に記載されていますので確認をしましょう。
売却価格が購入価格を下回る譲渡損失が発生した場合には、その年の他の所得(給与所得や事業所得など)を相殺して所得税や住民税を減額することができ、これを「損益通算」といいます。
他の所得と相殺できないくらいに損が大きい場合は、「繰越控除」といって翌年以降も所得から繰り越して差し引くことが可能です。
繰越控除は最大3年間利用できるため、その期間、所得税や住民税が0または軽減されます。特例の適用を受ける要件としては以下の通りです。
この特例は、3,000万円の特例控除の特例や物件所有期間10年超の場合の軽減税率とは併用できないので注意してください。最新の条件に関しては、国税庁の「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」に記載されていますので確認をしましょう。
相続したマンションの売却にかかる税金についても知っておくべきことがあります。具体的には以下の通りです。
相続により取得したマンションを売却する場合においても、通常の売却同様、譲渡所得税はかかります。譲渡所得を算出するには取得費が必要ですが、取得費については親がその住宅を購入したときの購入代金や購入手数料などから求められるのです。
その場合、相続したときの相続税のうち一定額を取得費に加算できる特例があり、これを「取得費加算の特例」と呼びます。
取得費加算の特例を利用できる要件は、以下の通りです。
また、取得費加算の特例を適用したときの譲渡所得の計算方法は、以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額-取得費-取得費に加算する相続税額-譲渡費用
このときの取得費に加算する相続税額は、以下の計算式で求められます。
=(その者の相続税額)×(その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額)÷{(その者の相続税の課税価格)+(その者の債務控除額)}
事前に相続税を取得費に加算する方法を知っておけば、税金を想定した上での売却が可能になるでしょう。
相続したマンションの購入価格がわかっていれば、相続税を取得費に加算できますが、購入価格が不明な場合はどのように取得費を計算するのでしょうか。
結論から言うと、この場合はマンションを売却したことで得たお金の5%相当額を、取得費とすることができます。例えば、3,000万円で売却した場合は5%なので、取得費は150万円です。
もし、相続などで受け継いだマンションで取得費が不明な場合でも、上記の計算であらかじめ計画を立てておきましょう。
マンション売却にかかる税金を正しく納める、税負担を少しでも軽減するには、正しい知識を身につけることが重要です。最後にマンション売却にかかる税金に関するよくある質問と回答を見ていきましょう。
マンションの売却で確定申告が必要になるのは、基本的にマンションを売却して利益が生じた場合のみです。そのため、売却によって損失が発生した場合は確定申告が必要ありません。
しかし、損をしても確定申告をすればマンション売却で損をした場合の控除を利用できるため、どのような場合でも確定申告することをおすすめします。
印紙税は売買契約を締結する際、登録免許税は抵当権を抹消する際に課される税金なので、基本的にかかるものと言えます。
しかし、譲渡所得税はマンション売却で利益が発生した場合のみに課される税金です。そのため、マンションの売却で損失が発生した場合は課されません。
印紙税は売買契約を締結する際、登録免許税は抵当権を抹消する際に支払います。譲渡所得税はマンション売却で利益が発生した場合、売却した翌年の2月16日~3月15日までに確定申告を行って支払います。
マンション売却では、各種税金が課されるため、正しく納める、控除や特例を利用して税負担を少しでも抑えるためにも税金の知識を身につけておくことが大切です。
マンション売却でかかる印紙税は売買契約時、登録免許税は抵当権抹消時、譲渡所得税はマンション売却で利益が発生した場合に課されます。
譲渡所得税は特例や控除を利用することで税負担を軽減できますが、必ず利用できるとは限りません。一定の条件を満たす場合にしか利用できず、利用するには確定申告が必要です。条件を満たしているか確認するほか、確定申告を忘れずに行いましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。