住んでいない家の売却にかかる税金の計算と「特別控除」などの節税を解説

親から相続した実家や、転勤で空き家になった自宅。「誰も住んでいないから」と放置していませんか?

住んでいない家の売却でも、強力な控除制度「空き家特例」の利用で本来数百万円必要な税金を0円にできるかもしれません。ただし、控除の利用には条件があり、とくに3年という時間的制限があります。判断を先延ばしにしていると、適用条件を満たせなくなり、大きな損をしてしまう恐れがあります。

ルールは非常に厳格なので、複数ある条件をひとつでも満たさないと適用できません。とくに3年の期限は超えると取り返しがつかないので、早めの行動が重要です。

本記事では、空き家売却にかかる税金の仕組みから、手取り額を最大化するための節税対策、そして放置することの恐ろしいリスクまでを分かりやすく解説します。

空き家売却にかかる税金の種類と計算方法

まず空き家売却にかかる税金の種類を把握しましょう。住宅の売却には以下の税金が課せられます。

概要 税率
譲渡所得税 資産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金 所有期間5年以下:約39%
所有期間5年超 :約20%
消費税 マイホームの売買にはかからないが、仲介手数料などはかかる 仲介手数料などの10%
印紙税 売買契約書に貼る印紙代 1000万円~5000万円の契約で1万円ほど
登録免許税 抵当権抹消などの登記にかかる税金 不動産1件につき1,000円

そのうえで、どの税金がどれくらい控除できるかを紹介します。

関連記事:自宅売却で発生する税金は?正しい計算方法や節税方法、注意点を解説

譲渡所得税

空き家を売却して利益(売却益)が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税」がかかります。

ポイントは売却価格そのものではなく、購入費用や諸経費を差し引いた「利益」に対して課税されることです。

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得=収入金額(売却代金)− 取得費(住宅購入費用など) − 譲渡費用(仲介手数料など)

算出した譲渡所得に対して、保有期間に応じて所有期間に応じた以下の税率が適用されます。

  長期譲渡所得
(所有5年超)
短期譲渡所得
(所有5年以下)
所得税 15% 30%
復興特別所得税 0.315% 0.63%
住民税 5% 9%
合計税率 20.315% 39.63%

※所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定します。

5年を超えるか否かで、税率は2倍近く異なるので、所有年数は明確に把握しておくようにしましょう。

復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するための税金で、2037年(令和19年)まで、所得税を納めるすべての人に課せられます。

具体的には、所得税額に 2.1%をかけた金額が上乗せされます。

長期譲渡所得の場合、所得税の税率は15%ですが、これに2.1%をかけた復興特別所得税(0.315%)が上乗せされる形となります。一方で短期譲渡所得の場合は2倍の0.63%が上乗せされます。

復興特別所得税の税率は変わりませんが、所得税に掛けるため、所得税が上がると復興特別所得税の課税額も高くなっていきます。長期譲渡所得か短期譲渡所得かで大きな違いとなるため、所有年数は必ず把握しておくようにしましょう。

消費税

投資用の住宅などを除き、原則としてマイホームの売買には消費税がかかりません。

一方で、不動産会社などへ支払う仲介手数料には消費税が発生します。

売買価格が400万円を超える一般的な住宅の場合、不動産会社の仲介手数料の上限は宅地建物取引業法などで定められており、以下の「速算式」で計算できます。

計算式:(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税

たとえば2000万円で売れた物件の場合、660,000円とその消費税66,000円を不動産会社へ支払います。

あらかじめ仲介手数料の詳細は不動産会社に詳しく尋ねるようにしましょう。

その他の税金

不動産売却では、利益に対してかかる税金以外に、契約手続きや登記手続きそのものに課税される「印紙税」「登録免許税」が発生します。

印紙税
売買契約書に貼る印紙代です。1,000万円超〜5,000万円以下の契約なら1万円(軽減税率適用時)が目安です。

登録免許税
抵当権抹消などの登記にかかる税金です。不動産1件につき1,000円が課税されます。

金額は大きくないですが、必ず必要になる税金となります。

売却時の税額シミュレーション

ここでは、特例(控除)を一切使わずに売却した場合、実際にどれくらいの税金が手元から消えてしまうのかをシミュレーションします。

空き家の売却では、利益に対して「約20%〜40%」の税金がかかります。数値で確認してみましょう。今回は、親から相続した古い家を売却する以下のケースを想定します。

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費(購入代金など): 1,500万円
  • 譲渡費用(仲介手数料など): 150万円
  • 譲渡所得(利益): 3,000万 - (1,500万 + 150万) = 1,350万円

この場合、課税対象となるのは、売却価格の3,000万円ではなく、取得費などを差し引いた譲渡所得の1350万円となります。

①所有期間が「5年超」の場合(長期譲渡)

長期譲渡で1350万円の譲渡所得を得た場合、合計約274万円の税金が発生します。

税率 税額
所得税 15.000% 2,025,000円
復興特別所得税 0.315% 42,525円
住民税 5.000% 675,000円
合計 20.315% 2,742,525円

長年所有していた実家を売却する場合でも、特例を使わなければ、新車が一台買えるほどの金額を納税することになります。

②所有期間が「5年以下」の場合(短期譲渡)

短期譲渡で1350万円の譲渡所得を得た場合はさらに金額が大きく、約535万円もの税金が発生します。

税率 税額
所得税 30,00% 4,050,000円
復興特別所得税 0.63% 85,050円
住民税 9,00% 1,215,000円
合計 39.63% 5,350,050円

例えば、「相続してからすぐに売った」などのケースで、被相続人(親)の所有期間を引き継いでもなお5年以下の場合は注意が必要です。利益の約4割、つまり1,350万円のうち500万円以上が税金として消えてしまいます。

このシミュレーションから分かる通り、何の対策もせずに空き家を売却すると、せっかくの資産が税金によって大きく削られてしまいます。

しかし、一定の条件を満たせば、この数百万円の税金を0円にできる強力な特例が存在します。その具体的な方法について解説します。

2つの「3,000万円特別控除」

不動産売却において、最も節税効果が高いのが3,000万円特別控除です。

この控除を適用できれば、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引けるため、多くのケースで税金を0円にすることが可能です。

住んでいない家の売却においては、その家の経緯によって以下の2つの特例のいずれかを目指すことになります。

  • マイホーム3000万円特別控除
  • 親から相続した空き家の3,000万円特別控除

それぞれの特例について詳しく紹介します。

①マイホームの3,000万円特別控除

自宅住居の所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

家を空き家にしてから3年目の年の12月31日までに売却すれば、マイホームとしてこの特例を受けることができます。

現在は住んでいなくても、住まなくなってから一定期間内(3年以内)であれば「居住用」とみなされて、税制優遇を維持してくれるルールとなっています。

マイホームの3,000万円特別控除の適用条件

マイホームの3,000万円特別控除の主な適用条件は以下の通りです。

  • 現に自分が住んでいる家屋
  • 以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限る)
  • その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

転勤や住み替えなどで一時的に空き家になっている場合は、この「3年」というデッドラインを死守することが、数百万円の節税に直結します。

②親から相続した空き家の3,000万円特別控除(空き家特例)

相続した空き家を売却する際でも、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家特例」を利用できます。

空き家問題は全国的な課題となっており、古い実家の売却を後押しする目的で作られた救済措置となっています。

2023年の空き家数は約900万戸に上り、過去最多となっています。実に住宅7戸のうち1戸は空き家という水準です。管理されない空き家は、景観悪化や防犯・防災上のリスクを高めるため、国として対策に乗り出しています。

ただし、その適用には厳格な条件が定められており、上述のマイホーム特例よりも難易度が高いです。

その条件について見ていきましょう。

「空き家特例」の適用条件

空き家特例は救済措置の面がありますが、条件が厳しく、特に「住まなくなって開始から3年後の12月31日」という時限的な制約が強いです。

空き家特例の主な条件は以下の通りです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家であること(旧耐震基準の建物)
  • 相続開始直前まで、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
  • 相続から売却まで、ずっと空き家(未使用・非賃貸)であったこと
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 空き家特例の適用期限である2027年12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、「更地にする」か、「新耐震基準を満たすリフォーム」をして引き渡すこと

空き家特例は元々の期限は23年12月31日まででしたが、2027年12月31日までに延長されました。

令和5年度税制改正要望の結果、2023年(令和5年)12月31日までとされていた本特例措置の適用期間が2027年(令和9年)12月31日までに延長されることとなり、特例の対象となる譲渡についても、これまでは当該家屋(耐震性のない場合は耐震改修工事をしたものに限り、その敷地を含む。)又は取壊し後の土地を譲渡した場合が対象でしたが、譲渡後、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに当該建物の耐震改修工事又は取壊しを行った場合であっても、適用対象に加わることとなりました。この拡充については令和6年1月1日以降の譲渡が対象です。

さらに、耐震性のない家屋は事前に耐震改修工事をした上で売却するか、家屋を取り壊して更地にした上で土地を売却する場合に限られていました。しかし制度の見直しで、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、譲渡する建物の耐震改修工事または取り壊しをしたときも含むように緩和されました。つまり売却時点ではリフォームまたは取り壊しする必要がなくなりました。

制度見直しによって、利用しやすくなりましたが、譲渡時に「解体するかリフォームするか」して引き渡すのは、どちらにしても費用がかかることです。控除額によっては、工事費用の方が高くなってしまうケースもあります。

「空き家特例」は、少しでも条件から外れると適用されません。自分がどの特例を使えるのか、あるいは今の状況で適用可能かを判断するために、早めに専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

住んでいない家の売却時にできる節税対策

特例が使えない場合や、特例の適用を確実にするため、売却時にできる節税対策を紹介します。

  • 「概算取得費」を活用する
  • 空き家特例の期限を意識して売却計画を立てる
  • 契約書に「特例適用」の条件を明記する

それぞれ詳しく解説します。

「概算取得費」を活用する

親から相続した古い実家など、購入当時の契約書を紛失して「いくらで買ったか分からない」場合は、「概算取得費」を活用しましょう。

「当時の購入価格」が不明な場合、「売却価格の5%」を概算取得費として計算することが認められています。

例えば、3,000万円で売却した場合、150万円(5%)を取得費として差し引くことができます。

実際の購入価格が、売却金額の5%よりも低い場合は、課税対象となる譲渡所得が少なくなるため、概算取得費で計上したほうが節税になります。

ただし、概算取得費はあくまで「証拠がない場合の最終手段」として考え、まずは当時の資料を徹底的に探すことが先決です。

空き家特例の期限を意識して売却計画を立てる

空き家特例の期限である「相続開始から3年後の12月31日」かつ「空き家特例の適用期限である2027年12月31日まで」の期限から逆算して、少なくとも期限の1年前には売却活動を開始しましょう。

空き家特例を適用するには、単に売るだけでなく、売却までに「建物の解体」や「耐震リフォーム」を完了させ、自治体から「被相続人居住用家屋等確認書」を取得する必要があるからです。

遅くとも「相続開始から3年後の12月31日」または「空き家特例の適用期限である2027年12月31日まで」の早く期限を迎える日の1年前までには、査定会社に依頼をするようにしましょう。

スケジュール例
期限の1年前: 不動産会社に査定依頼。

期限の10ヶ月前: 媒介契約・売り出し開始。

期限の6ヶ月前: 売買契約の締結。

期限の2ヶ月前: 解体工事またはリフォーム、確認書の申請。

「まだ3年ある」と余裕を持っていても、解体業者の手配がつかなかったり、買い手が見つからず期限を過ぎてしまうと、数百万円の控除を失うことになります。

契約書に「特例適用」の条件を明記する

空き家特例を適用して売る際は、「売主の負担でリフォームまたは更地にして引き渡す」旨を売買契約書に必ず明記しましょう。

引き渡しの時点で適用条件を満たす必要があるからです。例えば、建物がある状態で売却し、売却後に買主が解体した場合は、原則として特例が適用されません。

買主との契約内容そのものが節税の鍵を握るため、最初から「特例を使いたい」という意思を不動産会社に伝え、税制に詳しいプロのサポートを受けることが不可欠です。

不動産の売却はプロの専門家と一緒に進めるのがおすすめです。要望をしっかり伝えるようにしましょう。

住んでいない家を売却しないリスク

「まだ急いで売らなくてもいいか」と空き家を放置してしまうと、目に見えないところで大きなリスクが膨らんでいきます。

特に税制面と維持管理面では、時間の経過とともに「損」が確定していくことになります。

判断を先延ばしにしていくと主に以下のようなリスクが大きくなってきます。

  • 特例の期限切れ
  • 固定資産税・都市計画税の負担増
  • 老朽化・管理コストの増大と資産価値の下落

それぞれ詳しく解説します。

特例の期限切れ

売却を先延ばしにする最大のリスクは、「3,000万円特別控除」の期限を過ぎてしまうことです。

マイホーム特例も空き家特例も「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」、または「空き家特例の適用期限である2027年12月31日まで」という絶対的な期限があります。どちらかの期限を1日でも過ぎてしまうと、本来なら払わなくて済んだ数百万円の税金がそのまま重くのしかかります。

相続から時間が経てば経つほど、「あの時売っておけばよかった」と後悔する可能性が高まります。

相続が決まった瞬間から売却の検討をはじめ、早めの行動に移りましょう。

固定資産税・都市計画税の負担増

空き家を放置して自治体から「特定空き家等」に指定されると、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクがあります。

通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の軽減措置」が適用され、固定資産税が最大6分の1に減額されています。しかし、管理不足で倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家は、この優遇措置が解除されてしまうからです。

一度指定されると、売却しようにも多額の延滞金や高い税負担が足かせとなり、さらに売りにくくなるという悪循環に陥ります。

国も対策に乗り出しているため、空き家を放置しておくと金銭的なデメリットが非常に大きくなります。放置してもメリットはないため、「特定空き家等」に指定されるよりも前に早めの売却手続きを行うようにしましょう

老朽化・管理コストの増大と資産価値の下落

建物は「人が住まなくなった瞬間から劣化が加速する」と言われ、放置するほど売却価格が下がり、手出しの費用が増えていきます。

  • 管理コスト:庭木の剪定、不法投棄の対応、定期的な清掃代などがかかり続ける。
  • 老朽化の進行:換気が行われないことでカビやシロアリが発生し、建物としての価値がゼロ(もしくは解体費用分でマイナス)になる。
  • 近隣トラブル:放火の危険性や害虫の発生、外壁の剥落などで近隣からクレームが入り、最悪の場合は損害賠償責任を問われる。

住んでいない家を持ち続けることは、負債を抱え続けるのと同じです。

「維持費+将来払うはずのなかった税金」を合わせれば、今すぐ売却に向けて動き出すことが、結果として最も資産を守る賢い選択となります。

まとめ

ここまで、住んでいない家の売却にかかる税金と、それを大幅に軽減できる「3,000万円特別控除」について解説してきました。

「今売ったらいくら手元に残るのか」という疑問は、資料や情報を集め、条件等を付け合わせることでおおよその金額を推定できます。まずは材料の一つとして、今の家の価値がいくらかなのかを正しく知ることが、材料集めの第一歩となります。

査定したからといって、すぐに売却を決断する必要はありません。まずは「判断するための材料」を揃えるために、プロの力を借りてみましょう。

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