相続した不動産を売却するときの税金と注意点!計算方法や特例など解説
不動産を相続すると、名義変更や遺産分割協議といった通常の売却にはない手続きが必要となります。親から不動産を相続したものの、売却の進め方や税金の仕組みがわからず不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
一定の要件を満たすことで節税につながる特例を活用できる場合があるため、売却のタイミングは重要なポイントです。本記事では、相続した不動産の売却手順、売却で発生する費用・税金、使える特例、確定申告の要否について解説します。
相続した不動産は3年以内の売却がベスト
相続不動産の売却は、相続開始からおおむね3年以内が一つの目安です。この期間内であれば、税負担を軽減できる特例の適用期限に間に合い、相続登記の義務化にも対応できます。
主な手続きと期限は以下のとおりです。
| 手続き・特例 | 期限 |
|---|---|
| 相続税の申告・納付 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 |
| 相続登記 | 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内 |
| 取得費加算の特例 | 相続税の申告期限の翌日から3年以内 |
| 空き家の3,000万円特別控除 | 相続開始日から3年を経過する年の12月31日まで |
取得費加算の特例は、相続税を納めた方が売却時の譲渡所得から相続税額の一部を控除できる制度です。空き家特例は、一定の要件を満たす被相続人(亡くなった方)の居住用財産を売却した場合に適用されます。いずれも期限を過ぎると適用を受けられないため、売却を検討している場合は早めに準備を進めましょう。
相続した土地・不動産の売却にかかる費用と税金一覧
相続した不動産を売却する際には、登録免許税や印紙税、譲渡所得税など複数の費用・税金が発生します。特に相続物件では、相続登記の義務化(2024年4月施行)に伴う登録免許税や、所有期間の判定方法など、一般の不動産売却とは異なるポイントがあります。この章では、相続した不動産の売却で想定される費用と税金について見ていきましょう。
1. 登録免許税(相続登記)
相続登記に必要な登録免許税は、不動産の固定資産税評価額に対して0.4%の税率で計算されます。
ただし、令和7年度の税制改正により、土地価額が100万円以下の場合や、相続登記を行わないまま亡くなった被相続人名義の土地については、2027年3月31日まで免税措置が適用されます。
2. 印紙税
売買契約書には、契約金額に応じた印紙税が課されます。2027年3月31日まで軽減措置が適用されており、主な税額は以下のとおりです。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(2027年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 1万円以上〜100万円以下 | 200〜1,000円 | 200〜500円 |
| 100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
参照元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
印紙代は、売主・買主がそれぞれ自分の契約書分を負担するのが一般的となっています。ただし、電子契約を利用した場合は印紙税が不要です。
3. 譲渡所得税の計算方法と所有期間による税率の違い
譲渡所得税は、以下の計算式で算出した課税譲渡所得に税率を乗じて求めます。
課税譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
【所有期間による税率の違い】
| 所有期間 | 区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
※税率には、所得税・住民税・復興特別所得税が含まれます。
参照元:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
相続した不動産の場合、所有期間は被相続人の取得日から起算するため、相続直後の売却でも長期譲渡所得に該当するケースが多いです。
4. 仲介手数料
不動産会社に売却を依頼した場合、成約時に仲介手数料が発生します。仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法で以下のように定められています。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% |
| 200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 |
| 400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 |
| 800万円以下の低廉物件 | 上限30万円(税抜)※2024年7月改正 |
参照元:国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
例えば、売買価格が2,000万円の場合は、仲介手数料の上限は72.6万円(税込)です。
5. その他の費用
ほかにも、以下の費用が発生する可能性があります。
| 費用 | 必要なケース | 目安 |
|---|---|---|
| 測量費 | 隣地との境界が未確定の場合 | 30万〜80万円程度 |
| 解体費用 | 建物を解体して更地で売却する場合 | 建物の規模・構造による |
| 抵当権抹消費用 | 住宅ローン残債がある場合 | 登録免許税1件1,000円+司法書士報酬 |
必要に応じて見積もりを取り、想定外の出費が出ないよう確認しておきましょう。
相続不動産の売却時に使える税金の特例・控除
相続した不動産を売却する際には、一定の要件を満たせば税負担を軽減できる特例があります。代表的なものは、以下の3つです。
- 取得費加算の特例
- 空き家の3,000万円特別控除
- マイホームの3,000万円特別控除
それぞれ適用要件や併用の可否が異なるため、事前に確認しておきましょう。
1. 取得費加算の特例
相続税を納付した後に相続財産を売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例です。取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、結果として譲渡所得税の負担を軽減できます。主な適用要件は、以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 相続または遺贈により財産を取得した人 |
| 相続税の納付 | その財産について相続税が課税されていること |
| 売却期限 | 相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却 |
取得費に加算できる相続税額は、売却した財産に対応する部分に限られます。計算式は、以下のとおりです。
取得費に加算する相続税額 = その人の相続税額 ×(売却した財産の相続税評価額 ÷ その人の相続税の課税価格)
「取得費加算の特例」と「空き家の3,000万円特別控除」は併用できません。どちらが有利かは、相続税額や譲渡所得の金額によって異なるため、税理士への相談をおすすめします。
2. 空き家の3,000万円特別控除
被相続人が一人暮らしをしていた自宅(空き家)を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。主な適用要件は、以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 物件の種類 | 区分所有建物登記(マンション等)ではない |
| 建物の築年数 | 1981年5月31日以前に建築(旧耐震基準) |
| 被相続人の居住状況 | 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいない |
| 相続後の利用状況 | 相続から売却まで空き家のまま(居住・賃貸・事業に使用していない) |
| 売却価格 | 1億円以下 |
| 売却期限 | 相続開始日から3年を経過する年の12月31日まで |
| 売却時の建物の状態 | 耐震リフォーム済み、または解体して更地で売却など |
なお、2024年1月1日以降の譲渡については、相続人が3人以上いる場合、控除額が1人あたり2,000万円に縮小されます。
3. マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
相続した不動産であっても、相続後に自分が実際に居住していた場合は「居住用財産の3,000万円特別控除」を適用できる可能性があります。所有期間の長短を問わず利用でき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。主な要件は以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 居住の事実 | 売却する不動産に自分が実際に住んでいたこと |
| 売却期限 | 住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日まで |
| 売却相手 | 親子や夫婦など特別な関係者への売却ではないこと |
| 適用回数 | 前年・前々年にこの特例を受けていないこと |
居住用財産の3,000万円特別控除は、被相続人と同居していた相続人が相続後も引き続き居住し、その後に売却するケースで適用できます。
一方、相続後に一度も住んでいない場合は対象外となるため「空き家の3,000万円特別控除」の適用を検討しましょう。
なお、所有期間が10年を超える居住用財産であれば、軽減税率の特例(課税譲渡所得6,000万円以下の部分は税率14.21%)との併用も可能です。
4. 特例の併用可否まとめ
相続不動産の売却では適用できる特例が複数ありますが、組み合わせによっては併用できないものがあります。併用の可否は、以下のとおりです。
| 特例の組み合わせ | 併用可否 |
|---|---|
| 取得費加算の特例 + 空き家の3,000万円特別控除 | ✕ |
| 取得費加算の特例 + マイホームの3,000万円特別控除 | ◯ |
| 取得費加算の特例 + 10年超所有軽減税率 | ◯ |
| マイホームの3,000万円特別控除 + 10年超所有軽減税率 | ◯ |
| 空き家の3,000万円特別控除 + 10年超所有軽減税率 | ✕ |
相続税を多く納付している場合は、取得費加算の特例が有利になりやすい傾向があります。一方、譲渡所得が3,000万円以下であれば、空き家特例の適用で税額がゼロになる可能性が高くなります。
どちらが有利になるかは個々の状況によって異なるため、判断に迷う場合は税理士に相談すると良いでしょう。
売却後の確定申告と注意点
相続不動産を売却した後は、確定申告の要否を確認し、必要に応じて期限内に手続きを行いましょう。申告が必要かどうかは、譲渡所得の有無や特例の利用状況によって異なります。また、売却時期を逃すと特例が適用できなくなるリスクがあるため、スケジュール管理も重要です。
1. 確定申告が必要なケース・不要なケース
相続した不動産を売却した場合、譲渡所得(利益)が発生すれば翌年2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。相続人が複数いる場合は、各自の持分に応じて個別に申告します。確定申告の要否は、以下のとおりです。
| 状況 | 申告の要否 |
|---|---|
| 譲渡所得(利益)が出た | 必要 |
| 特例適用で税額0円になる | 必要 |
| 譲渡所得がマイナス | 原則不要 |
譲渡所得がマイナスの場合は、原則として申告は不要です。ただし、相続後に自分で住んでから売却するなど一定の要件を満たす場合は、損益通算や繰越控除を受けるために申告したほうが有利になることがあります。
2. 売却タイミングを逃した場合のリスク
相続不動産の売却には期限が設けられている特例が多く、タイミングを逃すと税負担が大きくなる可能性があります。例えば空き家の3,000万円特別控除は、相続開始から3年経過年の12月31日までに売却する必要があり、期限を過ぎると控除が受けられません。
さらに、売却を先延ばしにすることで以下のリスクも生じます。
- 建物の老朽化による資産価値の下落
- 固定資産税や維持管理費の継続的な負担
- 特定空き家に指定されると固定資産税の軽減措置が解除される
「固定資産税の軽減措置」とは住宅用地の税額を最大1/6に減額する制度です。特定空き家に指定された場合は、この適用が受けられなくなるため税負担が最大6倍に増加します。特例の適用期限から逆算し、余裕を持ったスケジュールで売却を進めることが重要です。
まとめ
相続した不動産の売却は、特例の適用期限や相続登記の義務化を踏まえると、相続開始から3年程度を目安に進めることが重要です。売却時には仲介手数料、譲渡所得税などの費用・税金が発生しますが、空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を活用すれば、税負担を軽減できる可能性があります。ただし特例を利用する場合は、税額が0円でも確定申告が必要な点に注意しましょう。
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