相続した土地を売るタイミングはいつがベスト?3年以内の売却は税金面で本当にお得?
相続した土地は、いつ売ればいいのでしょうか。急いで売るべきなのか、もう少し待った方がいいのか、判断の根拠がわからないまま時間だけが過ぎていくケースは多いです。
相続した土地を売るベストなタイミングは、多くの人にとって「相続発生から3年10ヶ月以内」です。この期間内であれば、相続税の一部を取得費に加算できる特例の対象となり、売却時の譲渡所得税を抑えられる可能性があるためです。
ただし、市況や個々の状況によって最適な時期は異なります。本記事では、税制上の特例期限・管理コスト・所有期間・市場動向などから、相続した土地を売るベストタイミングを解説します。
相続した土地を売るベストタイミング
相続した土地を売るベストタイミングは「相続発生から3年10ヶ月以内」という税制上の目安を踏まえつつ、個別の状況に応じて判断することが大切です。
例えば、管理コストの重さや共有者との調整状況、市場環境によっては、早めに動いたほうがよい場合もあります。
この章では、売却タイミングを見極めるための5つの判断基準を解説します。
なお、本章で紹介する「取得費加算の特例」と「空き家の3,000万円特別控除」は併用できません。両方の要件を満たす場合は、どちらを利用した方が最終的な手元資金が多くなるか、事前にシミュレーションを行いましょう。
1. 相続開始後なるべく早く「固定資産税・管理負担の回避」
このタイミングの売却が向いている人
- 活用予定がなく、管理の手間や費用が負担になっている
- 建物が老朽化しており、今後の修繕・解体費用が見込まれる
- 遠方に住んでおり、定期的な管理が困難
- 共有相続人との間で保有継続の合意が得られない
古家が建つ地方の土地は、活用せず保有しているだけでも固定資産税・維持管理費が発生し続けます。特に遠方に住んでいる場合は、見回りや草刈り、近隣対応の負担も重くなるため、利用予定がない土地ほど早期売却の必要性が高まるでしょう。

また、建物が老朽化している場合は、今後さらに修繕費がかかるだけでなく、状態によっては解体費用も見込まれます
保有期間が長引くほど維持コストが積み上がり、売却によって得られる利益を圧迫する可能性もあります。
そのため、売却益よりも保有コストが上回ると判断できる場合は、市況の好転を待たずに早期売却を優先することが合理的な選択と言えるでしょう。
2. 相続開始から10ヶ月以内「相続税の申告と納税期限」
このタイミングの売却が向いている人
- 相続税の納税資金を売却益で賄う予定がある
- 延納・物納制度の活用を検討している
相続税の申告・納税は、相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が課される場合があります。相続税申告の期限や対象者は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告・納税期限 | 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 対象 | 相続財産の総額が基礎控除額を超える人 |
| 手続き先 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 |
参照元:国税庁「相続税の申告のしかた」
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。相続財産の総額が基礎控除額以下であれば、申告・納税は不要です。
土地の評価額は「路線価方式」または「倍率方式」で算定されますが、公図・測量図などの必要書類の収集や計算作業に要する日数を含めると、評価額の確定までに1〜3ヶ月程度かかることがあります。

売却を検討している場合は、並行して相続税申告の手続きを進めると良いでしょう
なお、納税資金が不足する場合は、延納(分割払い)や物納(不動産での納付)といった制度も設けられています。
3. 相続開始から3年10ヶ月以内「取得費加算の特例の適用期限」
このタイミングの売却が向いている人
- 相続税を納付しており、売却益にかかる譲渡所得税を抑えたい
取得費加算の特例とは、相続税として納めた金額の一部を、売却する土地の取得費に上乗せできる制度です。取得費が増えると譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)が減少するため、結果として譲渡所得税や住民税の負担を軽くできる可能性があります。取得費加算の特例に関する期限や手続き先は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売却期限 | 相続税の申告期限の翌日から3年以内(=相続開始から3年10ヶ月以内が目安) |
| 申告期限 | 売却した年の翌年2月16日〜3月15日 |
| 手続き先 | 申告者の住所地(納税地)を管轄する税務署 |
参照元:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
取得費加算の特例を適用するためには、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までの売却が必要です。この場合の「売却」とは、原則として買主へ引き渡した日を基準に考えます。ただし例外として、納税者が選択すれば売買契約の効力が発生した日(通常は契約締結日)を基準にすることも認められています。
期限ぎりぎりで進めると、契約日は間に合っても引渡日が期限を超える場合があるため、期限が近いときは契約日と引渡日のどちらを基準にするかを税理士に確認して進めましょう。
4. 相続開始から3年経過年の年末まで「空き家の3,000万円特別控除の期限」
このタイミングの売却が向いている人
- 持ち家が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)
- 被相続人が一人で居住
- 一定の耐震改修または解体が必要 など
空き家の3,000万円特別控除は、相続した空き家や敷地を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。空き家の3,000万円特別控除を適用する場合の期限は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売却期限 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 申告期限 | 売却した年の翌年2月16日〜3月15日 |
| 手続き先 | 申告者の住所地(納税地)を管轄する税務署 |
参照元:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
売却日は原則として引渡し日が基準ですが、契約締結日を基準にできる場合もあります。期限が近い場合は、どちらで判定するか事前に確認しておきましょう。更地での売却でも、被相続人居住用家屋の取壊し等に関する要件を満たせば、敷地のみの譲渡として特例を受けられる場合があります。

なお、令和6年1月1日以後の譲渡については、売却後にその年の翌年2月15日までに耐震基準への適合または家屋の取壊しを行った場合でも、要件を満たせば特例を適用できるケースがあります
事前に要件を満たすか確認したうえで、売却スケジュールを組むようにしましょう。
5. 取得から5年未満なら待つことも選択肢「長期譲渡」
このタイミングの売却が向いている人
- 被相続人の取得日から通算して所有期間が5年未満である
- 売却を急ぐ必要がなく、税負担を抑えたい
土地の売却益(譲渡所得)にかかる税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えるかどうかで大きく異なります。5年以下の「短期譲渡所得」では約40%、5年超の「長期譲渡所得」では約20%と、以下の表のとおり税率に約2倍の差が生じます。
| 区分 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
※所得税には復興特別所得税(2.1%相当)を含みます。
参照元:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
相続した土地の場合、所有期間は被相続人の取得日から引き継ぐのが原則です。そのため、被相続人がすでに5年超所有していた土地であれば、相続直後に売却しても長期譲渡所得の税率が適用されます。
相続した土地を売るタイミングに迷ったら「市場動向」と「放置リスク」で判断
相続した土地をいつ売るべきか判断に迷う場合は「市場動向」と「放置リスク」の2点から検討すると良いでしょう。地価・金利の現状を把握したうえで、放置することで生じる税・法的・管理上のリスクと照らし合わせて判断することが重要です。
地価・金利の動向から見る「今の不動産市場」
国土交通省の令和8年地価公示(2026年1月1日時点)によると、全国平均の地価は全用途・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇しており、全用途平均・商業地では上昇幅も拡大しています。三大都市圏を中心に上昇基調は続いており、売却益を得やすい状況と言えるでしょう。
ただし、地価の上昇は全国一律ではありません。令和7年都道府県地価調査(2025年7月1日時点)によると、地方圏のその他地域では住宅地が長期的な下落傾向からようやく横ばいに転じた段階にとどまっています。

地方に相続した土地については、全国平均の上昇傾向をそのまま当てはめず、所在エリアの実勢価格や個別査定をもとに判断することが重要です
金利面では、2024年3月の日本銀行によるマイナス金利政策解除以降、政策金利は段階的に引き上げられ、2025年12月の金融政策決定会合以降、2026年3月時点では0.75%程度で推移しています。金利が上昇すると、買主の住宅ローン返済負担が増えるため購入判断が慎重になりやすく、成約価格や売却期間に影響を与える可能性があります。特に買い手がもともと少ない地方の住宅用地では、金利上昇の影響を受けやすい点に注意が必要です。
参照元:国土交通省「令和8年地価公示」(2026年3月17日公表)
参照元:国土交通省「令和7年都道府県地価調査」(2025年9月公表)
参照元:日本銀行「基準割引率および基準貸付利率の推移公表データ一覧」
参照元:住宅金融支援機構「“金利のある世界”でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう」
相続した土地を放置し続けるリスク
2024年4月1日より、相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記申請を行わなかった場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。経過措置はありますが、2024年4月1日以前に発生した相続も対象となるため、売却予定の有無にかかわらず早期の手続きが必要です。
なお、簡易手続きである「相続人申告登記」を活用することもできます。相続人申告登記とは、相続登記の本手続きが完了していなくても「自分が相続人である」と申告するだけで義務履行とみなされる簡易手続きです。本手続きの準備に時間がかかる場合の暫定措置として、活用すると良いでしょう。

また、相続した土地を未登記のまま放置していると、管理が行き届かなくなるにつれ、以下のようなリスクが生じやすくなります
| リスク区分 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 税負担 | 住宅用地の特例が外れると固定資産税が最大6倍になる場合がある |
| 行政措置 | 「特定空き家」に指定されると勧告・命令・代執行の対象となりうる |
| 近隣被害 | 倒壊・火災・害虫発生などにより損害賠償責任を問われる可能性がある |
| 資産価値 | 老朽化が進むほど解体費用が増加し、売却価格を圧迫する |
2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法では、著しく危険・衛生上有害と認定される「特定空き家」に加え、その前段階として「管理不全空き家」も新設されました。いずれかに指定・勧告された場合も住宅用地の固定資産税優遇が解除され、小規模住宅用地(200㎡以下)では最大6倍、超過部分では最大3倍の税負担となる場合があります。
売却の判断を先送りにするほどリスクは高まるため、管理コストと売却益のバランスを早期に試算することが重要です。
相続した土地を売るタイミングが決まったら期限から逆算して動き出そう
相続した土地の売却では、面積や隣地との境界があいまいなことが多く、測量・境界確認だけでも1〜3ヶ月程度かかる場合があります。不動産会社への査定依頼から売買契約・引き渡しまでは、通常の土地売却では3〜6ヶ月が一般的と言われていますが、相続した土地では4〜9ヶ月程度を目安としましょう。
売却のタイミングが決まったら、期限から逆算して、以下ステップのスケジュールを組んでください。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 不動産会社に査定を依頼する | 相続した土地の売却相場を把握する。複数社に依頼すると、査定額や販売方針を比較しやすい。 |
| 2. 測量・境界確認を行う | 土地の面積や隣地との境界を確認する。境界が曖昧なままだと、売却が進みにくくなったり後のトラブルにつながったりする。 |
| 3. 媒介契約を締結する | 売却を依頼する不動産会社を決め、媒介契約を結ぶ。不動産会社で正式な販売活動が始まる。 |
| 4. 売買契約を締結する | 買主と価格や引渡し条件を確定し、売買契約を結ぶ。 |
| 5. 引き渡しを完了する | 残代金の受領と名義変更を行い、土地を引き渡して売却完了となる。 |
取得費加算の特例(3年10ヶ月以内)や空き家の3,000万円特別控除(3年経過年の年末)など、期限のある制度を活用する場合は、引き渡し完了までの日数を考慮して早めに動き出すことが重要です。

なお、売却を進める際は、相場観をつかむためにも複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。査定額だけでなく、販売方針や対応の違いも比較しやすくなります
まとめ
相続した土地の売却タイミングは、税制上の特例が使える期限、固定資産税や草刈りなどの管理コスト、周辺エリアの不動産市場の動向など、複数の観点から総合的に判断することが重要です。
特に、空き地のまま維持する負担が大きい場合は、市況や特例の期限を踏まえつつも早めに売却した方が合理的な選択となることもあります。まずは所有する土地の状況と自身に該当する判断基準を整理したうえで、不動産会社に相談し、複数社へ査定を依頼して方向性を検討すると良いでしょう。