不動産売却は複数社に依頼すべき?査定・見積もりと仲介での注意点を紹介
不動産を売るとき、査定は何社に頼めばいいのか、そもそも複数の会社に同時に売却を任せてよいのか、判断に迷う方は少なくありません。
査定の段階と、実際に売却を任せる段階とでは、複数社に頼めるかどうかの考え方が変わってきます。何社に査定を出し、どの媒介契約で売るかを順に見極めていきましょう。
不動産売却は複数社に依頼していい?
査定は無料で何社にでも依頼でき、3社以上を比べるのが目安です。一方、売却を任せる媒介契約で複数社に頼めるのは、一般媒介に限られます。
迷ったら、まずは複数社に査定を出して相場感をつかむのが先決です。比べてから契約を選べば、一般か専任かで迷うことも少なくなります。
複数社への依頼の進め方と業者選びの注意点を、ここから詳しく解説します。
この記事のポイント
- 仲介手数料を払うのは成約した1社だけで、他社への支払いは不要
- 業者は大手・地元密着・独自販路を役割で組み合わせて選ぶ
- 一般媒介は業者の販売意欲が下がりやすく情報が広がりにくい
- 査定額の妥当性は国土交通省の不動産情報ライブラリで確認できる
- 2025年の制度改正で専任媒介の囲い込みリスクは抑えられた
複数社に査定の依頼をするのはOK
この見出しのポイント
不動産売却で複数の不動産会社に査定を依頼するのは問題なく、査定は無料で何社にでも頼めるため、まずは3社前後に出して比べるのが安心です。会社ごとに査定額は数百万円異なることもあり、比較して初めて適正価格が見えてきます。
査定額の見方を誤ると、高い金額に惹かれて売却を長引かせる原因にもなりかねません。
たとえば3社へ依頼して2,800万円・3,000万円・3,300万円と提示されたとき、最も高い1社だけを信じて売り出すと、買い手がつかず値下げを繰り返すおそれがあります。会社ごとに数百万円もの差が開くのは珍しくなく、背景を知らないまま金額だけを比べても適正価格のラインは見えてきません。
まずは、会社ごとに査定額の差が出る理由から確認していきましょう。

査定は無料で何社にでも頼めるんだよ。まずは気軽に3社くらい出して見比べるといいね。
会社ごとに査定額が違う理由
同じ物件でも査定額が会社ごとに数百万円違うことは珍しくありません。各社が参照する取引事例や得意とするエリアに違いがあるためです。
査定では、類似物件の過去の成約事例から価格を割り出す取引事例比較法が基本となります。ただし、その進め方に統一ルールはありません。各社が独自に算出するため、選ぶ事例や販売戦略の違いが、そのまま金額の差として表れます。
査定額の差が生まれる要因
参照する取引事例の選び方、得意とするエリア、販売戦略の違い、契約獲得をねらった高めの提示などの要素が重なって査定額の差が生まれます。
なかには、契約を取りたいがために相場より高い査定額を提示する会社もあります。複数社を比べて初めて、その金額が妥当かどうかを見極められるでしょう。
査定額と実際に売れる価格の違い
査定額は必ず売れる価格ではなく、あくまで会社が予想した売り出しの目安です。実際の成約価格とは別物だと押さえておきましょう。
査定額が示すのは、あくまで売り出しの目安にすぎません。最終的な価格は、買い手との交渉や売り出し後の市場の反応によって決まっていきます。
査定額と成約価格の関係
査定額は売り出しの目安、成約価格は買い手との交渉や市場の反応で決まる結果です。金額の高さだけで会社を選ぶと、値下げが続くこともあります。
提示された査定額が妥当かどうかは、国土交通省の不動産情報ライブラリで近隣の成約価格や地価を自分でも確認できます※4。
金額の高さだけで会社を選ぶと、値下げを重ねて売却が長引くおそれもあります。最後は、査定の根拠に納得できるかどうかで選ぶと安心でしょう。

複数社に依頼するメリット
複数社に依頼する主なメリットは、会社同士の競争で売却条件が良くなることと、一社による物件の囲い込みを避けやすくなることです。
複数の会社が同じ物件の買い手を探すと、自然に競争原理が働きます。各社が少しでも早く好条件で売ろうと動くため、買い手の幅も広がりやすくなるでしょう。
- 競争原理が働き売却条件が良くなりやすい
- 一社による囲い込みを避けやすい
- 対応や提案力を比べて会社を選べる
会社選びで迷わずに済むのもメリットです。一社に絞り込む前に複数社の対応や提案力を実際に比べられるため、相性の良い担当者を見極めたうえで本格的な売却活動へ進めます。

複数の会社に頼むと、自然と競い合ってくれるんだ。じっくり相性を見て選べるのもうれしいところだね。
査定は3社以上が目安
査定を依頼するなら3社以上が目安です。一社だけでは提示された金額が妥当か判断できず、複数社を見比べて初めて適正価格のラインが見えてきます。
とはいえ、依頼先を増やしすぎると比較が煩雑になり、各社への連絡も負担になりがちです。まずは無理なく見比べられる3社前後から始めるのが現実的でしょう。
| 査定の依頼先 | 3社以上が目安 |
|---|---|
| 増やしすぎた場合 | 比較が煩雑になり逆効果 |
| 売却の媒介契約 | 3社程度までが目安 |
なお、売却そのものを任せる依頼先(媒介契約)を増やしすぎるのも逆効果です。依頼が多いほど各社が「他社に先を越されるかもしれない」と考え、広告にお金をかけにくくなります。

やみくもに増やせばいいわけじゃないんだ。3社くらいに絞って、しっかり比べるのがちょうどいいよ。
どの不動産業者に任せて売却するか
売却を任せる業者は大手・地元密着・独自販路という性格の異なる会社を役割で組み合わせると、集客力や情報網の弱点を補い合えます。
大手は広告費とネットワークが大きく全国の購入希望者へ情報を届けられ、地元密着の会社は地域の顧客や相場観で近隣の需要を掘り起こせます。投資用や買い取りに強い独自販路の会社は、表に出ない投資家ともつながっています。
| 強み | 主な買い手 | |
|---|---|---|
| 大手 | 広告費と全国ネットワーク | 全国の一般購入希望者 |
| 地元密着 | 地域の顧客と相場観 | 近隣で探す購入希望者 |
| 独自販路 | 非公開の販路 | 投資家・買取業者 |
タイプの異なる会社を組み合わせて3社程度に依頼するのが目安です。大手と地元の会社を軸に、特定の物件種別や独自の販路に強い会社があれば加えると、査定額の根拠を見比べやすくなります。

同じタイプの会社ばかりだと意味が薄いんだ。大手・地元・独自販路を1社ずつ組み合わせると穴がなくなるよ。
不動産売却を複数社に依頼できるか
この見出しのポイント
不動産の売却を複数社に任せられるかは媒介契約の種類で決まり、一般媒介なら複数社に同時依頼できますが、専任媒介と専属専任媒介は1社だけに限られます。複数社に頼んでも仲介手数料を払うのは成約させた1社のみで、他社への支払いは発生しません。
査定はどの契約とも関係なく、何社にでも頼めます。一方、売却そのものを任せる段階になると、結ぶ媒介契約の種類が複数依頼の可否を左右します。
媒介契約には専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3つがあり、同時に複数社へ依頼できるのは一般媒介だけです。専任系を選ぶと依頼先は1社に絞られるため、複数社へ動いてもらいたいなら契約のしくみを先に押さえておきたいところです。
次の見出しから、契約ごとの違いを具体的に確認していきましょう。

査定と売却の契約は別物なんだ。複数社に頼めるかどうかは、結ぶ媒介契約の種類で決まるんだよ。
媒介契約の種類で決まる依頼可否
売却を任せる媒介契約には専属専任・専任・一般の3種類があり、複数社へ同時に依頼できるのは一般媒介だけです※1。
専属専任媒介と専任媒介では、依頼できる会社が1社に限られます。専任系の契約は宅地建物取引業法で有効期間が3か月以内と定められ、自動更新も認められていません。
| 依頼できる会社数 | 自己発見取引 | |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可能 |
| 一般媒介 | 複数社に同時依頼が可能 | 可能 |
自分で買い手を見つける自己発見取引ができるかも契約で異なります。複数社に頼みたい場合は、一般媒介を選ぶことになります。
一般媒介で複数依頼した場合の手数料
一般媒介で複数社に依頼しても、仲介手数料を払うのは売買契約を成立させた1社だけです。売れなかった会社への支払いは発生しません。
仲介手数料は売買が成立して初めて発生する成功報酬です。買い手を見つけて契約をまとめた会社にのみ支払い、残りの会社には広告費を含めて費用を払う義務はありません。
- 支払い対象は成約させた1社のみ
- 売れなかった会社への支払いは不要
- 上限は売買代金の3%+6万円+消費税(代金400万円超の場合)
手数料の上限は法律で決まっており、売買代金に応じて計算されます※2。複数社に頼んでも、各社から重ねて手数料を求められることはありません。ただし、売主が特別に依頼した広告の費用や遠隔地への出張旅費は実費にあたり、成約に至らなかった会社からでも請求されるケースがあります。

一般媒介で複数社に依頼する注意点
この見出しのポイント
複数社に同時依頼できる一般媒介には、業者の販売意欲が下がりやすく売却状況も見えにくくなるという見過ごせない注意点があります。報酬が成約した1社にしか入らない仕組みが背景にあり、依頼先は3社程度に絞るのが無難です。
メリットの裏側にある弱点を理解したうえで、依頼先を選ぶことが大切です。
代表的な注意点を、ここから一つずつ確認していきましょう。

複数社に頼めば安心、とは限らないんだ。仕組みのうえで業者が動きにくくなる点には気をつけたいね。
業者が販売活動に消極的になる理由
一般媒介では業者が広告にお金をかけにくく、販売活動が消極的になりがちです。原因は報酬が成約した1社にしか入らない仕組みにあります。
自社が費用をかけて買い手を探しても、他社が先に契約をまとめれば、かけた広告費や手間がすべて無駄になります。そのため各社は採算が読めず、積極的な営業を控えがちです。
- 消極的になる背景
-
報酬は成約した1社だけが受け取れるため、他社に先を越されると広告費も手間も回収できなくなります。
- 起こりやすいこと
-
費用のかかる広告や積極的な営業を各社が控え、結果として売却が長引きやすくなります。
複数社に任せれば必ず熱心に動いてもらえる、とは限らない点に注意が必要です。
両手仲介で値引きを促されるリスク
業者が売主と買主の双方から手数料を得る両手仲介をねらうと、売主が値引きを促される場合があります。
両手仲介を成立させたいあまり、自社で見つけた買い手から値引きを求められると、売主を説得して値下げに応じさせようとすることがあります。
- 両手仲介とは
-
1社が売主と買主の双方から手数料を受け取る取引で、業者の利益は大きくなります。
- 売主側のリスク
-
契約をまとめたいあまり、自社の買い手に有利な値引きを売主が促されることがあります。
担当者の言葉をうのみにせず、複数社の意見を比べる姿勢が欠かせません。
レインズ未登録で買主が見つかりにくい
一般媒介はレインズへの登録義務がなく、登録されないと物件情報が広がらず買い手と出会いにくくなります※1。
レインズは全国の不動産会社が物件情報を共有する仕組みです。専任系で登録が義務となる一方、一般媒介に登録義務はなく、依頼した数社の外へ情報が届きません。
- レインズとは
-
全国の不動産会社が物件情報を共有する仕組みで、専任系は登録が義務、一般媒介は義務がありません。
- 2025年の制度改正
- 取引状況の登録が義務化され、売主が登録証明書のIDとパスワードで取引状況を確認できるようになり、囲い込みは抑えられています。
専任系で心配された囲い込みは、2025年1月施行の制度改正で規制が強化されました※3。囲い込みを避けたいという理由だけで一般媒介を選ぶ必要性は薄れています。
まとめ
不動産売却で適正な価格を知るには、まず複数社に査定を依頼して査定額を比べることが、遠回りに見えて最も確実な進め方です。査定は無料で何社にでも頼めます。
- 査定は3社以上を目安に大手・地元・独自販路を比較する
- 複数社に売却を任せられるのは一般媒介のみ
- 一般媒介は業者の意欲低下や情報拡散の弱さに注意する
実際の売却を複数社に任せられるかどうかは、媒介契約の種類で決まります。複数依頼ができるのは一般媒介だけで、専任媒介と専属専任媒介は依頼先を1社に絞る契約です。
2025年の制度改正により、専任系で心配された囲い込みのリスクも大きく抑えられるでしょう。査定額は幅広く比べたうえで、最終的には信頼できる会社を見極めて売却の契約を結ぶことが、後悔しない売却につながります。