切土とは?盛土との違いや見分け方を解説

「マイホーム用の土地を探しているけれど、よく耳にする切土や盛土って何が違うの?」「造成された土地って本当に安全なの?」土地探しでそんな疑問や不安をお持ちではありませんか?

この記事を読めば、以下の3つのポイントが明確になります。

  • 切土と盛土の基本的な違いと、それぞれのメリット・デメリット
  • 造成地の安全性を確認する方法と、関連する法律の基礎知識
  • 造成にかかる費用の目安や、土地選びで後悔しないための専門家の活用ポイント

専門知識がない方でも理解しやすいように、図解を交えながらわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、あなたの理想のマイホーム実現にお役立てください。

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切土と盛土とは?

【このパートをまとめると】
切土(きりど)とは、傾斜のある土地を削り平らな地盤面を造ること。一方、盛土(もりど)とは、傾斜のある土地に土を盛って、平らな地盤面を造る工事方法のことです。地盤の安定性や災害リスクに違いがあり、土地を選ぶうえで重要なポイントです。

土地を探している際、不動産会社や住宅会社の説明のなかに「切土」「盛土」という言葉を耳にすることがあります。これらは、傾斜地や凹凸のある土地を、宅地や建物を建てやすいように平坦化する造成工事の基本的な手法のことです。

どちらも土地を平らにする工事ですが、切土と盛土では、施工方法も地盤の安定性も異なります。この違いを正しく理解することが、将来も安心して生活できる土地選びの第一歩となるでしょう。

切土とは?

切土(きりど)とは、文字通り、元の地盤を削り取って平坦な土地を造成する方法です。たとえば、山の斜面や丘陵地の一部を切り崩して、宅地に整備する場合などに行われます。

切土の最大の特徴は、自然の力で長い年月をかけて圧密・安定化した地盤をそのまま利用できる点です。元々の地山であれば、地盤の締まりが良く、不同沈下や地盤沈下のリスクが比較的少ないため、宅地として安心感があります。

盛土とは?

一方、盛土(もりど)とは、低地や谷などに土砂を運び入れて積み上げ、地盤面を高くする工事です。谷間を埋めたり、低い土地を周囲と同じ高さにかさ上げしたりする場合などに盛土工事が行われます。

盛土は、切土に比べて、比較的短期間で広範囲の土地を平坦化できるメリットがあります。ただし、盛土部分は新たに人工的に積み上げられた地盤であるため、しっかりと締め固め(転圧)が行われていないと、地盤沈下や地震発生時に崩落のリスクが高まります。特に、盛土に使われた土の種類(砂質や粘土質など)や施工管理の精度によって、安全性が大きく左右されます。造成直後は問題なくても、時間の経過とともに徐々に不均衡に沈下が進むこともあるため、注意が必要です。

切土と盛土の違い

切土と盛土は、どちらも土地を平らにするための工事ですが、その性質は大きく異なります。

特徴 切土 盛土
造成方法 元の地盤を削り取る 土砂を積み上げて盛る
地盤の質 元の地山の固い地盤 人工的に作られた地盤(締め固めが重要)
安定性 比較的高い 締め固め不足・土質により不安定になる
主な用途 丘陵地や傾斜地の開発 低地のかさ上げ・谷の埋め立て・広範囲な宅地造成
留意点 法面(のりめん)の保護が必要、工事費が高め 地盤沈下、液状化・滑動崩落のリスクがあり、排水対策が重要

このように、切土と盛土では、地盤の安定性が異なり、将来の暮らしやすさに直結する可能性があります。土地を選ぶ際には、どちらの方法で造成された土地なのかを把握することが欠かせません。

切土のメリット・デメリット

【このパートをまとめると】
切土は、地盤の安定性が高く、不同沈下や液状化のリスクが低いのが最大のメリットですが、工事費用や法面処理の管理負担がデメリットになる場合もあります。

切土で造成された土地は、一般的に「地盤が安定した土地」と評価されることが多いですが、メリットばかりではありません。購入後に想定外の問題が起こらないように、デメリットや注意点も理解しておきましょう。

切土のメリット

切土の最大の魅力は、やはりその地盤の安定性にあります。

  • 地盤の安定性が高い: 切土は、元々の自然の地盤(地山)をそのまま活用できるため、長年の地質変動や圧密作用を受けて自然に締め固まった、均質性の高い地盤です。地盤としての安定性が高いため、購入後も長期間にわたり安心して生活しやすい点がメリットです。
  • 不同沈下のリスクが低い: 均質で固い地盤が期待できる切土は、盛土と比べて、建物が不均等に沈下する「不同沈下」のリスクが低くなります。
  • 新築住宅の瑕疵保険でも、不同沈下は地盤事故の原因の一つとされており、切土の地盤では、相対的に発生リスクは低いとされています。

    • 液状化のリスクが比較的低い: 液状化は、緩く堆積した砂質地盤が地震による振動で液状化する現象ですが、締まった地山が表層にある切土の場合は、比較的発生しにくいとされています。

切土のデメリットと注意点

一方で、デメリットや注意すべき点もあります。

  • 工事費用が高くなる可能性: 切土は、地山を削る工事が必要なため、掘削作業の費用が高くなる可能性があります。特に、硬い岩盤や硬質粘土層などが現れた場合、施工難易度が上がり、工期とコストが増えやすくなります。また、削り取った土のうち、現場内で再利用できない残土の運搬・処分費用も必要です。都市部では残土処分費が高額になるケースもあり、造成費用の中でも大きなウエイトを占めます。
  • 法面(のりめん)の管理・対策が必要: 切土によって形成される斜面(人工的な法面)は、長期的に崩壊や浸食を防ぐ対策が求められます。
  • ・法面の勾配を緩く設計する

    ・コンクリート擁壁の設置

    ・植生(芝、防草シートなど)による表面保護

    これらの法面の維持管理コストは、造成後も継続的にかかる場合があります。

    • 日照や風通しへの影響: 周囲の土地よりも低い位置に造成されることがあるため、隣接する高台や建物によって日当たりや風通しが悪くなる可能性があります。特に、南側に高い擁壁や建物がある場合などは注意が必要です。
    • 排水計画の問題: 切土地形は、周辺より低い場所になりやすいため、雨水の排水処理が重要になります。排水設備(側溝・排水管・集水桝)が不十分だと、法面の浸食や小規模な土砂流出が起こる可能性があります。購入前に排水計画についても確認しましょう。

盛土のメリット・デメリット

【このパートをまとめると】
盛土は、傾斜地や低地を平坦に整備しやすい反面、地盤沈下や液状化、土砂災害のリスクがあります。特に、大規模盛土造成地では注意が必要です。

切土とは対照的に、盛土は土を積み上げて土地を平坦化する造成方法です。メリットもありますが、地盤の安定性や災害リスクについて、注意すべき点が多いのが特徴です。

盛土のメリット:どんな場合に選ばれる?

盛土のメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 広い平地を比較的効率よく造成できる: 谷や窪地を埋め立てたり、低い土地をかさ上げしたりすることで、比較的短期間で平坦な土地を作り出すことができます。そのため、特に大規模な宅地分譲地やニュータウン開発など、広い面積を整備したい場合に用いられる工法です。
  • 日当たりや眺望・通風が良好: 周囲の土地よりも高く造成されるため、日照条件や眺望、風通しが良い土地が多く、住宅地として人気エリアになることもあります。
  • 造成の自由度が高い: 盛土は、盛ることで地形の自由度が高いため、切土に比べて現地の地形の制約を受けにくい点も特徴です。

盛土のデメリットと危険性

盛土の土地には、以下のようなデメリットや危険性があるため、土地購入時には十分に確認しておく必要があります。

  • 地盤の不安定さ: 盛土は、搬入された土を層状に積み上げて造成するため、元の地盤(地山)に比べて締まりが劣ることがあります。施工時の締固め不足や土質の不均一によって、不同沈下が生じやすく、建物の傾き・ひび割れの原因となる場合もあります。時間の経過とともに自然沈下が生じるため、造成後、数か月から数年の経過観察が重要です。
  • 地震時の液状化や滑動崩落のリスク: 地震が発生した場合、液状化現象が発生しやすく、斜面が崩れ落ちる「滑動崩落」現象を引き起こす可能性もあります。特に、谷や沢を埋め立てた「谷埋め型盛土」や、既設の盛土に行う「腹付け盛土」は、リスクが高いとされています。
  • 擁壁の老朽化・安全性: 盛土を支えるために擁壁が設置されている場合、その擁壁の構造や状態を確認することが重要です。築年数が古い、構造計算が行われていない、排水穴に詰まりやひび割れが見られるといった擁壁は、倒壊するリスクがあります。
  • 排水性の問題: 盛土内部に地下水や雨水が滞留すると、地盤が軟弱化し、崩落のリスクが高まります。そのため、雨水の流れ方や盛土内部の排水構造など、排水計画の適切さが重要です。また、古い造成地では、排水設備の劣化にも注意が必要です。

切土と盛土の見分け方

【このパートをまとめると】
土地の見た目だけで造成方法を判断することは難しいため、ハザードマップや造成時の図面、専門家による地盤調査を通じて慎重に確認することが重要です。

購入を検討している土地が切土なのか盛土なのか、あるいは両方が混在しているのかは、購入後の安全性や地盤リスクに直結します。しかし、現地を見ただけでは判断が難しいため、この章では見分け方と確認方法について解説します。

現地でチェック!見た目でわかるヒント

まずは現地を訪れて、周囲の状況を観察してみましょう。あくまでも予測レベルですが、造成状況を推測する材料となります。

  • 周辺地形との比較: 対象の土地が、周囲より高い位置に平坦化されていれば盛土、反対に、周囲より低ければ切土の可能性が高くなります。特に、道路面よりも高い土地は、盛土の可能性が高くなります。
  • 擁壁の有無とその種類: 土地の境界に、コンクリート擁壁や石積み擁壁がある場合、何らかの造成が行われている証拠になります。古い石積みやブロック積みの擁壁は、耐久性が低い可能性があるため注意が必要です。擁壁の高さ・傾き・ひび割れ・排水穴の有無もチェックしましょう。
  • 排水溝の状態: 敷地内外の排水溝の位置や水の流れを確認します。排水性が悪そうな土地は、内部に水が滞留して盛土地盤が軟弱化している可能性が考えられます。
  • 地盤の不自然な沈下や構造物の変形: 地面や擁壁、隣地の建物の基礎などに、不自然な沈下や亀裂がないか確認しましょう。すでに不同沈下が始まっている土地では、地表面に細かいひび割れが入っていることがあります。

注意点: これらの観察ポイントはあくまで手がかりにすぎません。見た目だけでは、切土か盛土かを確実に判断することは困難です。専門家による詳細な調査が不可欠であることを念頭に置いてください。

公開情報で調べる!ハザードマップと造成履歴

現地調査と合わせて、公的な資料や不動産会社からの情報を活用しましょう。

  • 大規模盛土造成地マップの確認: 国土交通省や各自治体は、過去の地震で被害が大きかった谷埋め型や腹付け型の盛土造成地を調査し、「大規模盛土造成地マップ」として公表しています。

    参照:国土交通省|大規模盛土造成地マップの公表状況等について(R5.3.31時点)

    • 旧版地形図や航空写真の確認: 国土地理院の地形図・航空写真を活用して造成前の地形履歴を確認するのも有効です。過去に谷や沢だった土地を埋め立てた造成地であれば軟弱な地盤である可能性があります。
    • 不動産会社・行政窓口で造成時の図面や造成履歴を確認: 売主や仲介不動産会社に、造成時の開発許可図面や工事完了検査済証、地盤調査報告書があるか確認しましょう。土地の売買契約時には、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明で、造成地に関する情報や宅地造成規制区域についての説明義務があります。
    • また、ハザードマップポータルサイトでも土地の特徴・成り立ちを確認できます。他にも、各自治体の都市計画課や建築指導課では、造成許可の履歴や擁壁工事の履歴が確認できる場合があります。

専門家による調査の重要性

現地や資料で調査しても不明点がある場合には、専門家による地盤調査を検討することをおすすめします。

  • 地盤調査の種類: 代表的なものに、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)やボーリング調査があります。SWS試験は比較的簡易で安価に行えますが、詳細かつ深い震度まで地盤状況を知るにはボーリング調査が適しています。
  • 専門家への相談: 地盤調査会社や一級建築士などに相談し、土地の状況に応じた適切な調査方法を選びましょう。

監修者コメント

現地での見た目や営業担当者の説明だけでは地盤の深部情報や将来的なリスクを判断できないケースもあります。専門家による地盤調査は、調査費用はかかるものの、長く暮らすうえで将来の安心と資産価値を守る投資として考えることも必要です。

切土・盛土の費用相場と影響する要因

【このパートをまとめると】
切土・盛土の造成費用は、土地の状況や工事規模で大きく変動します。特に、地盤改良や擁壁工事が必要な場合は、予想以上の追加費用も考慮しておく必要があります。

土地の造成工事費は、切土・盛土のいずれの場合も、工事の規模や現地の状況によって大きく変動します。ここでは、造成工事の一般的な目安と費用を左右する要因について解説します。

切土工事にかかる費用の目安

切土工事の費用は、主に掘削する土の量や種類、掘削した土の運搬・処分費用によって決まります。

  • 掘削・土砂の運搬費用: 比較的柔らかい土砂の場合、1立方メートルあたり数千円から1万円程度が目安です。地中に硬い岩盤がある場合は、特殊な重機や工法が必要となり、費用は大幅に上昇します。
  • 残土処分費用: 掘削で出た不要な土を現場外に搬出する費用も必要です。搬出する土の量で単価は変わり、たとえば、2トンの場合、1立方メートル当たりの処分費は、9,000円~11,000円が目安です。都市部や処分場が遠い地域では、費用が高額になる傾向があります。
  • 法面保護・擁壁設置費用: 切土によって生じた斜面(法面)を安定させるために擁壁を設置する場合、その擁壁の種類(コンクリート擁壁、ブロック積み擁壁など)や規模によって費用が大きく異なりますが、1㎡あたり5万~8万円程度が目安です。

これらの費用はあくまで一般的な目安であるため、実際の工事費用は現地の状況や業者によって大きく異なる点に注意が必要です。必ず複数の業者から見積もりを取り、作業内容と費用の詳細を比較・検討するようにしましょう。

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盛土工事にかかる費用の目安

盛土工事の費用は、使用する土砂の種類や量、運搬距離、施工管理の精度によって変動します。

  • 土砂購入・運搬費用: 盛土に使用する土の購入費用は、購入する場合と、近隣の工事現場の残土を利用する場合で変わります。また、購入する土の種類によって(一般的な土砂や良質な盛土材かなど)、価格が異なるうえ、運搬距離が長くなるほど費用が加算されます。
  • 締固め(転圧)作業の費用: 盛土は、適切な厚さで土を敷き均し、ローラーなどの重機で十分に締め固める作業(転圧)を繰り返すことが必要です。この作業にも相応の費用がかかります。
  • 擁壁工事の費用(必要な場合): 盛土の高さや規模によっては、土留めのために擁壁が必要になることがあります。費用感は、切土擁壁と同様で、1㎡あたり5万~8万円程度が相場です。

盛土の場合も、費用はケースバイケースです。特に、良質な土を遠方から運搬する必要がある場合や、大規模な擁壁が必要な場合は高額になる傾向があります。

費用を左右する主な要因

切土・盛土の費用に影響を与える主な要因をまとめると以下のようになります。

  • 土地の広さ、高低差: 造成する面積が広く、高低差が大きいほど、土量が増えるため費用も高くなります。
  • 土質: 掘削しやすい土か、硬い岩盤か、あるいは軟弱な粘土質かなど、土質によって施工難易度や必要な重機が異なり、費用に影響します。
  • 土砂搬入・残土処分のしやすさ: 現地に工事車両がスムーズに進入できるかどうかや、処分場所までの距離も費用を左右します。
  • 擁壁の種類や規模: 擁壁が必要な場合、その規模や材料によって費用は大きく変動します。
  • 地盤改良工事の有無: 調査の結果、地盤が軟弱であると判断された場合、地盤改良工事が必要になることがあります。これは造成費用とは別途で発生する大きな費用項目です。

資金計画を立てる際には、これらの要因を考慮し、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

知っておきたい「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛土規制法)とは?

【このパートをまとめると】
盛土規制法は、宅地造成や盛土などを規制し、がけ崩れや土砂流出による災害を防ぐための法律です。自分の土地が規制区域内かを確認し、適正な許可・工事管理を行うことが必要です。

切土や盛土による宅地造成は、私たちの安全と暮らしに直結する工事です。これを適正に管理するために、国が定めた法律が「宅地造成及び特定盛土等規制法」、通称「盛土規制法」です。2021年の熱海土石流事故を機に、従来の宅地造成等規制法が抜本的に改正され、規制が大幅に強化されました。

法律の目的と概要

盛土規制法の主な目的は、宅地造成に伴うがけ崩れや土砂の流出による災害を防止し、国民の生命・財産を保護することです。具体的には、一定規模以上の切土や盛土を行う場合に、都道府県知事などの許可が必要となることや、造成地の安全性を工事計画段階から管理するための技術的な基準などが定められています。

規制対象となる区域に、「宅地造成工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」があります。

  • 宅地造成工事規制区域: 宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地やその周辺地域を都道府県知事などが指定します。区域内で一定規模以上の切土や盛土を行う場合は、事前に許可が必要です。
  • 特定盛土等規制区域: 市街地や集落などから離れている(宅地造成等規制区域以外)場所でも、盛土等によって人家等に危害を及ぼすおそれが大きいと認められる区域で、都道府県知事等が指定した区域です。この区域内での盛土等を行う場合、事前に許可あるいは届出が必要です。

自分の土地が規制区域か確認する方法

購入を検討している土地や、所有している土地がこれらの規制区域に該当するかどうかを確認することは非常に大切です。

  • 自治体の窓口やウェブサイトで確認: 市区町村の都市計画課や建築指導課、土木課などで最新の規制指定区域を確認できます。また、自治体のウェブサイトで公開されている情報(ハザードマップや宅地増税規制図など)からも確認することができます。
  • 国土交通省「の盛土規制法ポータルサイト」:盛土規制法ポータルサイトでは、全都道府県の規制区域の概要が確認できます
    参照:国土交通省|盛土規制法総合窓口(ポータルサイト)
    • 不動産取引時の重要事項説明: 不動産会社は、土地の売買契約に先立って行われる重要事項説明において、その土地が規制区域内に該当するか否か、どのような制限があるかについて説明する義務があります。

規制区域内で工事をする場合の注意点

検討している土地が規制区域内にある場合や、将来的に造成工事を計画している場合などは、以下の点に注意が必要です。

  • 許可申請の必要性: 法律で定められた規模以上の切土や盛土を行う場合は、事前に都道府県知事等の許可もしくは届出が必要です。無許可で工事を行うと罰則の対象となります。
  • 工事基準の遵守: 造成工事は、擁壁の構造や排水設備の設置など、法律で定められた技術的基準に適合した設計・施工が求められます。

盛土規制法は、一見すると複雑に感じるかもしれませんが、私たちの安全な暮らしを守るための重要な法律です。不明な点があれば、不動産会社や建築士、自治体の担当窓口に相談し、必ず確認するようにしましょう。特に、古い造成地を購入する際は、過去の造成許可履歴や安全性が確認できる書類が存在するかも重要なポイントの一つです。

安全な土地選びのポイント

【このパートをまとめると】
安全な土地選びには、地盤の種類だけでなく、ハザードマップ・過去の災害履歴の確認、専門家への相談が不可欠です。

「切土だから安心」「盛土だから危険」と単純に分類することはできません。この章では、安全な土地を選ぶためのポイントをいくつかご紹介します。

地盤の種類と特徴を再確認する

まずは、その土地が切土なのか盛土なのか、あるいは自然のままの地盤(自然地盤)なのかを把握することが大切です。

  • 切土: 一般的に安定性が高いですが、法面の状態や排水対策の確認が必要です。
  • 盛土: 造成時期、使用された土の種類、締め固めの状況によって安全性が左右されます。特に、古い盛土や大規模な盛土は慎重な確認が必要です。
  • 自然地盤: 自然地盤だから必ずしも安全とは限りません。たとえば、元々沼地や湿地だった場所は軟弱地盤である可能性が高くなります。

ハザードマップで災害リスクを確認

各自治体が公表しているハザードマップは、必ず確認すべきです。

  • 確認すべき情報:
    • 洪水浸水想定区域: 豪雨・大雨時に浸水する可能性のある範囲と深さ予測。
    • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域: がけ崩れ、土石流、地すべりの危険性がある区域。
    • 液状化危険度マップ: 地震による液状化の発生しやすさ。
    • 津波浸水想定区域: 海沿いの立地の場合は必ず確認。
  • 活用方法: ハザードマップは、市区町村のウェブサイトで閲覧できるほか、自治体の窓口で入手することも可能です。購入を検討している土地がどの区域に該当し、どのようなリスクが想定されるかを必ず確認しましょう。

周辺環境と過去の履歴を調査

現地周辺の状況や過去の土地利用履歴も重要な情報源です。

  • 近隣の土地の状況: 擁壁に亀裂や傾きはないか、近隣の家の不同沈下、排水溝の水はけの状況などを観察してみましょう。
  • 過去の災害履歴: その地域で過去にどのような災害があったかを調べることも大切です。自治体の資料や、地域に長く住んでいる住民、地元不動産会社に話を聞くのも有効な手段です。
  • 土地の利用履歴: 以前は何に使われていた土地なのか(田んぼ、工場、沼地など)も地盤の状況を推測する手がかりになります。旧地形図や航空写真、登記簿などで確認できる場合があります。

専門家への相談を積極的に行う

土地選びは、安全性や資産価値の面で非常に重要です。不安点や疑問点がある場合は、専門家の評価を活用しましょう。

  • 相談できる専門家:
    • 不動産会社: 造成履歴や法規制、規制区域の指定状況などを確認できます。
    • 建築士・ホームインスペクター: 現状の建物の傾きや建物の設計図面から地盤の適合性を評価してくれます。
    • 土地家屋調査士: 土地の境界や面積に関する専門家。境界トラブルの防止などについて相談できます。
    • 地盤調査会社: 詳細な地盤調査を行い、地盤の強度や地盤改良の必要性を判断してくれます。
  • 相談するタイミング: 土地の購入契約を結ぶ前、できれば購入申し込みをする段階で相談するのが理想的です。
  • 相談する内容: 造成方法(切土・盛土の状況)、擁壁の安全性、地盤調査結果の見方、地盤改良を実施する際は費用感などを確認できます。

売主の協力が必要となる場合もありますが、土地の安全性は、契約前に可能な限り確認することがポイントです。後に地盤改良工事が必要となるとしても、それを踏まえた資金計画を立てる必要があります。

まとめ

この記事では、土地選びの際に押さえておきたい「切土」と「盛土」の違いからメリット・デメリット、安全性の確認方法、費用相場、関連法規まで幅広く解説してきました。

改めてポイントを整理すると、

  • 切土は自然の地山を活かす造成方法で、比較的安定性は高いですが、法面保護や擁壁の安全管理、費用感に注意が必要です。
  • 盛土は土を盛って造成するため、地盤の安定性や土質による不同沈下、排水性液状化リスクに注意が必要です。特に古い盛土や大規模盛土造成地は慎重な確認が求められます。
  • 土地の安全性を確認するには、現地調査だけでなく、ハザードマップや造成履歴図面の確認、そして、状況に応じて専門家による地盤調査が重要です。
  • 「宅地造成及び特定盛土等規制法」により、規制区域では事前の許可や技術基準の適合、完了検査が義務付けられています。

土地選びは、家づくりの成功を左右する大切な第一歩です。「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、ご自身で情報を集め、理解を深めるとともに、不安な点や専門的な判断が必要な場合は、不動産会社や建築士などの専門家などに相談しましょう。

この記事が、あなたの理想の住まいづくりの一助となれば幸いです。

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吉満 博
吉満 博

保有資格:宅地建物取引士/2級ファイナンシャルプランニング技能士/住宅ローンアドバイザー
経歴:理工学部建築学科を卒業後、建設会社とハウスメーカーで7年間にわたり建築設計を担当し、意匠・法規への実践的理解を習得。その後、通信業界で15年間、営業・管理業務に従事し、プロジェクトマネジメントを経験。その後、自身の住宅購入をきっかけに不動産売買・コンサルティング事業で独立(8年間)。現在は、これまでの設計・不動産売買の実務経験を活かし、住宅不動産・金融・相続分野でライター・マーケターとして活動。

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