変形地が売れない理由とは?高く売却するための5つのポイントも合わせて解説

「親から相続したこの土地、変形地という理由で不動産会社に相談しても売却に難色を示されてしまう…
固定資産税だけが毎年かかっているから、どうにか手放したいのに買い手が見つからない…

「変形地」の売却でお悩みの方は、決して少なくありません。しかし、変形地だからといって、売却できないと諦めるのはまだ早いです。

この記事では、変形地が売れない理由から売却を成功させるための具体的なポイント、売却以外の活用法まで、一つひとつ丁寧に解説します

変形地とは?

変形地とは、正方形や長方形といった整形地以外の、いびつな形をした土地全般を指します。変形地として代表的なものは以下の通り。

種類 特徴
旗竿地(はたざおち) 道路に接する間口が細長い通路(竿)になっており、その奥にまとまった敷地(旗)が広がる土地。
三角地(さんかくち) その名の通り、三角形の形をした土地。角の部分が鋭角になっていることが多く、スペースの活用が難しい。
傾斜地(けいしゃち) 土地全体が斜面になっていたり、敷地内に高低差があったりする土地。擁壁(ようへき)が必要になる場合がある。
L字・コの字型の土地 隣地の配置などにより、L字型やコの字型になっている土地。
台形・ひし形の土地 辺の長さや角度が均等でない、四角形ではあるものの歪んだ形の土地。

変形地は、整形地に比べて住宅建築に不向きかつ設計や土地活用の自由度が低くなるため、売却が難しくなる傾向にあります。

変形地のメリット・デメリット

売却の難しさばかりが注目されがちな変形地ですが、実はデメリットだけではなく、メリットもあります。売却活動を進める上でも、メリットとデメリットの両方を客観的に知っておくことが大切です。

メリット

  • 価格が安い傾向にある: 周辺の整形地に比べて、同じ面積でも割安な価格設定になっていることが多く、購入者にとっては初期費用を抑えられる魅力があります。
  • 固定資産税が安くなる可能性がある: 土地の評価額は、その使いやすさも考慮されます。変形地は活用しにくいと判断され、固定資産税評価額が低くなるケースがあります。
  • 設計次第で個性的な家が建つ: 土地の形を活かしたユニークなデザインの住宅を建てられる可能性があります。例えば、旗竿地は奥まっているためプライバシーを確保しやすく、静かな住環境が手に入ります。

変形地の一番のメリットは、価格の安さです。建築面では制限が多いですが、制限の範囲内で土地を有効活用できれば買い手にとって大きなメリットになります。

そのため、変形地の売却を成功させるためには「変形地をどう活用できるか」を買い手にしっかりとアピールすることが重要です。

デメリット

  • 建築コストが割高になる: 土地の形に合わせて特別な設計が必要になったり、重機が入りにくく工事に手間がかかったりするため、建築費用が割高になることがあります。
  • スペースに無駄(デッドスペース)が生まれやすい: 三角地の角の部分など、どうしても有効活用しにくいスペースが生まれがちです。
  • 売却しにくい: これから詳しく見ていきますが、住宅ローンが降りにくい、活用方法が限られるといった理由から、買い手が見つかりにくい傾向があります。

メリット・デメリットを把握できたところで、次は「変形地が売れない理由」を具体的に確認しましょう。

変形地が売れないと言われる5つの根本的な理由

変形地が売れにくい背景には、単に「形が悪いから」という曖昧なものではなく、明確な5つの理由が存在します。

  • 住宅が建てにくい(建築基準法上の制限)
  • 土地の活用効率が悪い(デッドスペースの発生)
  • 日当たり・風通し・プライバシーの問題
  • 造成や外構に余分な費用がかかる
  • 担保評価が低く住宅ローンが降りにくい

ご自身の土地がどの理由に当てはまるのかを理解することが、売却への第一歩です。

ただ、

「自分で売れない理由を判断するのは難しい」

「変形地に強い不動産会社はないのかな」

と悩んでいる方は、一度一括査定で複数の不動産会社から話を聞いてみるのも有効な手段のひとつです

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理由1:住宅が建てにくい(建築基準法上の制限)

変形地が売れない最大の理由の一つが、「建築基準法」による制限です。

家を建てる際には、「幅4m以上の道路に、土地が2m以上接していなければならない」という接道義務があり、変形地の場合、再建築ができないケースが多いです。

第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

(引用元:建築基準法 | e-Gov 法令検索

接道義務とは、簡単にいうと、火事や急病の際に、消防車や救急車が家の前までスムーズに入れるように、最低限の間口を確保しましょうというルールのこと。

旗竿地の図解

例えば、旗のように道路に接する通路が補足なっている「旗竿地」の場合、この通路部分(竿)の幅が2m未満だと「再建築不可」となってしまいます。再建築が認められないと、今ある建物を壊して新しい家を建てることができません。

買い手からすれば、将来建て替えができない土地は非常にリスクが高く、購入をためらってしまうのです。

理由2:土地の活用効率が悪い(デッドスペースの発生)

土地を購入する人の多くは、その土地を最大限に有効活用したいと考えています。しかし、変形地、特に三角地やL字型の土地では、どうしても建物を建てたり庭にしたりできない「デッドスペース」が生まれやすくなります

三角地の図解

例えば、同じ50坪の土地でも、きれいな長方形の土地と、鋭角な三角形の土地とでは、建てられる家の大きさや間取りの自由度が大きく異なります。

買い手は、土地の面積(坪数)だけでなく、「実際にどれだけ有効に使えるか」という視点で土地を見ています。そのため、活用効率の悪い変形地は、同じ面積の整形地と比べて見劣りしてしまうのです。

理由3:日当たり・風通し・プライバシーの問題

住まいの快適さを左右する日当たりや風通しは、土地選びにおいて非常に重要なポイントです。しかし、変形地は周囲を他の建物に囲まれているケースが多く、これらの条件を満たしにくいことがあります

特に旗竿地は、道路から奥まった場所に家を建てるため、四方を隣家に囲まれて日当たりが悪くなりがちです。

また、通路部分が隣家と近いと、プライバシーの確保が難しいという問題も出てきます。こうした居住環境への懸念が、買い手の購入意欲を下げてしまう一因となります。

理由4:造成や外構に余分な費用がかかる

土地の状態によっては、家を建てる前に土地を整備する「造成工事」や、塀や駐車場などを作る「外構工事」が必要になります。変形地は、この費用が整形地に比べて割高になる傾向があります。

土地の形 必要な施工内容 追加費用の目安
傾斜地 土地を平らにするための擁壁(ようへき)工事などが必要なため。 +50万~数百万円以上(土地の広さと比例)
旗竿地 通路が狭く重機が入れず、手作業が増えて人件費がかさむため。 +30万~200万円程度
三角地・L字地 土地の形に合わせた特注の塀・フェンスや駐車場が必要になるため。 +20万~100万円程度

こうした「見えない追加コスト」の存在が、買い手にとって大きな負担となり、購入しづらくなっているのです。

理由5:担保評価が低く住宅ローンが降りにくい

ほとんどの人は、土地や家を購入する際に住宅ローンを利用します。金融機関は融資を行う際、その土地や建物を「担保」として評価し、その評価額に基づいて融資額を決定します。

変形地は、これまで見てきたような様々な理由から売却しにくいと判断され、金融機関による担保評価が低くなる傾向があります

もしあなたが銀行の担当者だったら、いざという時に売却しにくい土地に対して、高額の融資を承認するのは少し躊躇しますよね。

その結果、買い手は希望する額の住宅ローンを組むことができず、購入を断念せざるを得ない、というケースが多く発生するのです。

売れない変形地を売却するための5つのポイント

売れない理由を確認していると「やっぱり自分の土地は売れないのかな」と不安になってしまったかもしれません。

しかし、原因が明確になったからこそ、どんな対策をすべきか、どうすれば売れるのかが見えてきます

【変形地を売却するためのポイント】

  • 「売れる価格」の相場を正確に把握する
  • 隣地の所有者に購入を打診する
  • 「古家付き」か「更地」か、有利な方を見極める
  • 変形地の販売実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼する
  • 訳あり物件専門の買取業者に直接売却する

ここからは、あなたの変形地を売却するための具体的な5つのポイントを一緒に見ていきましょう

「売れる価格」の相場を正確に把握する

変形地の売却で最も重要なのが、適正な価格設定です。周辺の整形地の売却事例と同じように考えてしまうと、「高すぎて売れない」という状況に陥りがちです。

まずは、複数の不動産会社に査定を依頼し、ご自身の土地がいくらで売れそうなのか、客観的な相場を把握することから始めましょう。

その際、ただ査定額が高いだけでなく、「なぜその価格になるのか」という根拠を、変形地であることのデメリット(減価要因)を踏まえて明確に説明してくれる会社を選ぶことが大切です。

「相見積もり」が不動産売却の基本ですから、まだ査定をしたことがない、1社にしか頼んでいないという方は、この機会に一括査定をしてみましょう。

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隣地の所有者に購入を打診する

一般の買い手にとっては魅力に欠ける変形地も、隣地の所有者にとっては「喉から手が出るほど欲しい土地」である可能性があります。

なぜなら、あなたの土地と自分の土地を一体化(合筆)させることで、いびつだった土地が整形地になり、土地全体の価値を大きく高めることができるからです。

駐車場を広げたい、庭を作りたい、二世帯住宅を建てたいと考えている隣人にとって、これ以上ない魅力的な提案になるかもしれません。

個人で交渉するとトラブルになる可能性もあるため、まずは不動産会社に相談し、仲介役として打診してもらうのがスムーズでおすすめです

「古家付き」か「更地」か、有利な方を見極める

土地の上に古い家が建っている場合、「そのまま売る」か「解体して更地にしてから売る」か、どちらが有利かを見極める必要があります。これは、税金の問題も大きく関わってくるため、慎重な判断が求められます。

古家付きで売る 更地にして売る
メリット ・解体費用がかからない・固定資産税の軽減措置が続く ・買い手の層が広がる・土地の形が分かりやすい
デメリット ・買い手が限定される・内覧の印象が悪くなる可能性がある ・解体費用(100万〜)がかかる・固定資産税が最大6倍になる
おすすめな人 ・とにかく費用をかけたくない人・古家にも価値がある(古民家など)場合 ・建物の傷みが激しい場合・買い手がすぐに見つかる見込みがある場合

判断ポイントは固定資産税です。 住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。しかし、建物を解体してしまうとこの特例が適用されなくなり、税額が跳ね上がってしまいます。

解体費用をかけて更地にしても、すぐに売れなければ高い固定資産税を払い続けることになります。

不動産会社と相談し、売却の見込みが立ってから解体に着手するのが賢明な判断と言えるでしょう。

変形地の販売実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼する

不動産会社と一言で言っても、新築マンションが得意な会社、都心の物件が得意な会社など、それぞれに得意分野があります。

変形地の売却を成功させるには、変形地や訳あり物件の販売実績が豊富な不動産会社をパートナーに選ぶことが不可欠です。

実績豊富な会社は、

  • 変形地を探している買い手のリストを持っている
  • 変形地の魅力を引き出す広告のノウハウを知っている
  • 建築家と連携し、土地の活用プランを買い手に提案できる

といった、独自の強みを持っています。査定を依頼する際には、過去に変形地を扱った実績があるかどうかを必ず確認しましょう。

また、仲介での売却であれば、次に紹介する買取とは異なり「高値」で売却できる可能性が残せる点もポイントです

変形地でも予想外の値段がつくかも?

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訳あり物件専門の買取業者に直接売却する

「色々な手を尽くしたけど、どうしても買い手が見つからない」
「とにかく早く現金化して、この土地を手放したい」

このような場合は、不動産会社に直接土地を買い取ってもらう「買取」という選択肢が非常に有効です。

特に、変形地や再建築不可物件などを専門に扱う買取業者であれば、一般市場では売れにくい土地でも、適正な価格でスピーディーに買い取ってくれる可能性があります。

売却価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的ですが、買い手を探す手間や時間が一切かからず、確実に現金化できるのが最大のメリットです

変形地を売るなら「仲介」と「買取」どちらを選ぶべき?

変形地の売却では、「不動産仲介」と「専門業者による買取」という2つの選択肢があります。

どちらがご自身の状況に適しているのか、それぞれのメリット・デメリットを比較して、じっくり考えてみましょう。

時間をかけてでも高く売りたいなら「不動産仲介」

不動産会社に依頼して、一般の市場で買い手を探してもらう方法です。メリット・デメリットは以下の通り。

  • メリット: 買取に比べて、高い価格で売れる可能性がある。
  • デメリット: 買い手が見つかるまでに時間がかかる(数ヶ月〜1年以上)。売れる保証はなく、売れ残るリスクがある。内覧の対応など、売却活動に手間がかかる。

固定資産税もそこまで高くなく、今すぐに売りたいというよりは「いつか高値で売れたらいいな」と考えている方は、不動産仲介がおすすめです。

高値売却を目指すならまずは査定から!

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早く・確実に現金化したいなら「専門業者による買取」

不動産会社や専門の買取業者に、直接物件を買い取ってもらう方法です。メリット・デメリットは以下の通り。

  • メリット: 最短数週間で現金化が可能。売れ残る心配がない。近所に知られずに売却できる。契約不適合責任(売却後の欠陥に対する責任)が免除されることが多い。
  • デメリット: 仲介で売る場合に比べて、売却価格が市場価格の7〜8割程度になる。

税金が気になっており、一刻も早く売却したいという方は「買取」がおすすめです。

あなたの状況に合うのはどっち?ケース別おすすめ診断

どちらの方法が良いか迷う方のために、簡単な診断リストを用意しました。ご自身の希望や状況に当てはまる項目が多い方法はどっちなのかチェックしてみましょう。

【少しでも高く売りたい、時間に余裕がある → 不動産仲介】

  • 相続などで売却を急いでいない。
  • 土地の立地条件が良い。
  • 複数の不動産会社とじっくり話を進めたい。

【とにかく早く手放したい、手間をかけたくない】 → 【専門業者による買取】

  • 固定資産税の負担からすぐに解放されたい。
  • 遠方に住んでいて、土地の管理が難しい。
  • 仲介で長期間売れ残ってしまっている。
  • 再建築不可など、特に条件の悪い土地である。

最終的にどちらを選ぶにせよ、まずは複数の会社に査定を依頼し、両方の選択肢の具体的な価格や条件を提示してもらうことが、後悔しないための重要なステップです

どうしても売れない場合の変形地活用法3選

様々な手を尽くしても売却が難しい…という状況も、残念ながらあるかもしれません。

しかし、所有し続ける限り固定資産税の負担は続きます。そんな時は、視点を変えて「売らずに活用する」という選択肢も検討してみましょう。

活用法1:駐車場・駐輪場として貸し出す

もし、あなたの土地が駅の近くや住宅密集地にあるなら、駐車場や駐輪場として活用できる可能性があります。

大規模な設備投資が不要な月極駐車場であれば、初期費用を抑えて始めることができます。アスファルト舗装をしなくても、砂利を敷いてロープで区画を区切るだけでも運営は可能です。

活用法2:トランクルーム・コンテナハウスを設置する

郊外の土地であれば、トランクルームやコンテナハウスの設置も有効な活用法です。

特に、周辺にマンションが多いエリアでは、収納スペースへの需要が見込めます。専門の運営会社に土地を貸し出す「一括借り上げ方式」を選べば、管理の手間なく安定した収入を得ることも可能です。

活用法3:資材置き場として近隣の法人に貸し出す

住宅を建てるには不向きな土地でも、近隣の工務店や建設会社にとっては、資材置き場として非常に価値がある場合があります。

住宅地としての需要が見込めないエリアでも、法人向けの需要がないか、不動産会社を通じて探ってみる価値はあるでしょう。

まとめ

ここまで、変形地が売れない理由から、具体的な売却のポイント、そして活用法までを一緒に見てきました。

変形地の売却は、整形地に比べて乗り越えるべきハードルが多いのは事実です。

しかし、大切なのは、ご自身の土地が持つメリット・デメリットを理解し、それに合った売却戦略を立ててくれる信頼できるパートナー(不動産会社)を見つけることです。

この記事を読んで、「少しだけ行動してみようかな」と感じたのであれば、まずは複数の不動産会社に「話を聞いてもらうだけ」という気軽な気持ちで査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

その小さな一歩が、長年の悩みを解決する大きな前進につながるはずです。

変形地の売却に関するよくある質問

最後に、変形地の売却に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 変形地の固定資産税は安くなりますか?

A1. はい、安くなる可能性があります。固定資産税の評価額は、土地の形状や使いやすさも考慮して算出されます。

三角地や旗竿地など、利用価値が低いと判断される変形地は、整形地に比べて評価額が低く設定される「不整形地補正」という減額措置が適用されることがあります。

気になる方は、市町村役場の資産税課でご自身の土地の評価額を確認してみることをお勧めします。

Q2. 査定だけでも依頼できますか?費用はかかりますか?

A2. はい、査定だけの依頼も全く問題ありません。

また、不動産会社が行う売却査定は、基本的に無料です。売却を本格的に決めていなくても、「まずは価値だけ知りたい」という段階で気軽に相談できます。

複数の会社に査定を依頼して、対応や査定の根拠を比較検討することが、良い不動産会社を見つけるコツです。


Q3. 相続した変形地ですが、何から始めればいいですか?

A3. まずは、相続登記(名義変更)を済ませることが第一歩です。

土地の所有者が亡くなった方のままでは、売却活動を進めることはできません。相続登記が完了したら、次にこの記事で解説したように、複数の不動産会社に査定を依頼し、売却の相談を始めるのが一般的な流れです。

何から手をつけていいか分からないという方も、まずは不動産会社に相談すれば、必要な手続きを丁寧に教えてくれます。

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