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セカンドハウスの売却を考えた時に、「自宅を売るのと同じように進めてよいのか」「特に税金面で損をしないか」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。
セカンドハウスの売却では、税務上の取り扱いが「別荘」とは根本的に異なります。この区別は物件の所在地ではなく「毎月1泊2日以上」といった利用実態で判断され、固定資産税などの優遇措置に影響します。
また、売却で利益が出た場合に課される譲渡所得税は、所有期間が5年を超えるかで税率が約40%から約20%へと大きく変動するため、売却のタイミングが手元に残る金額を左右する重要な要素です。相続した物件であれば、亡くなった人の所有期間を引き継げたり、支払った相続税の一部を経費にできる特例があったりします。
売却で損をしないためには、これらの税務ルールを理解した上で、計画的に売却を進めることがポイントになります。
この記事では、セカンドハウス売却で損をしないための税金の知識や節税対策、注意点を解説します。
セカンドハウスと別荘は、言葉の響きは似ていますが、税法上では明確に区別されていて、どちらに分類されるかによって税金の負担が大きく変わります。
セカンドハウスか別荘かの区別は、物件がリゾート地にあるかどうかといった所在地で決まるのではなく、「定期的な利用実態があるか」という点が判断基準です。
具体的には、通勤やテレワークの拠点として「毎月1泊2日以上」利用している実態があれば「セカンドハウス」と認定され、税法上は「居住用財産」として扱われます。その結果、固定資産税や不動産取得税などの軽減措置を受けられる可能性があります。
一方、夏休みや週末に保養目的で利用する物件は「別荘」と見なされ、税法上は生活必需品ではない「贅沢品」という扱いです。そのため、セカンドハウスのような税制上の優遇措置は適用されません。
| セカンドハウス | 別荘 | |
|---|---|---|
| 主たる利用目的 | 生活・居住用(通勤、テレワーク等) | 保養・レクリエーション・余暇 |
| 利用要件 | 毎月1泊2日以上の利用実態 | 特になし |
| 税法上の分類 | 居住用財産 | 非居住用財産・贅沢品 |
| 固定資産税の軽減 | 適用あり(住宅用地の特例) | 適用なし |
| 都市計画税の軽減 | 適用あり(住宅用地の特例) | 適用なし |
| 不動産取得税の軽減 | 適用あり | 適用なし |
| 税金の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 売却益にかかる税金(譲渡所得税) | セカンドハウスを売って利益が出たときにかかる税金。所得税、復興特別所得税、住民税の総称。 |
| 印紙税 | 売買契約書を作るときにかかる税金。 金額に応じて、決まった額の印紙を貼って払う。 |
| 登録免許税 | 所有者の変更や抵当権の抹消などの登記でかかる税金。 |
セカンドハウスを売却する場合、主に3種類の税金がかかり、それぞれ計算方法や納めるタイミングが異なります。特に譲渡所得税は、売却価格や所有期間によって納税額が大きく変動するため、正確な理解が必要です。
ここでは、それぞれの税金を詳しく解説します。
譲渡所得税とは、セカンドハウスを売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金のことで、所得税、住民税、復興特別所得税を合わせた総称を指します。
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えているかどうかで、以下のように大きく異なります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
所有期間が5年を超えるだけで、税率が約半分に下がるため、売却のタイミングを見極めることは、節税したい場合に重要なポイントです。
税額の計算は、以下の式で譲渡所得を算出することから始まります。
譲渡所得=売却価格- (取得費+譲渡費用)
| 売却価格 | 買主に物件を売却した価格。 固定資産税の清算金を受け取った場合は、それも収入金額に含まれる |
|---|---|
| 取得費 | その不動産を取得するために要した費用の合計。 セカンドハウスの購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税などが含まれる。 建物の取得費からは、所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要がある。 |
| 譲渡費用 | 不動産を売却するために直接かかった費用。 売却時の仲介手数料や、売買契約書に貼付した印紙税などが該当 |
上記の計算式で算出された譲渡所得に、所有期間に応じた税率を掛けることで、最終的な納税額が確定します。
登録免許税は、不動産の権利関係を公に示す「登記」の手続きを行う時に、法務局へ納める国税です。セカンドハウスの売却では、主に2つの場面で発生します。
| 所有権移転登記 |
|
|---|---|
| 抵当権抹消登記 |
|
これらの登記手続きは、専門的な知識を要するため、司法書士に依頼するのが通常です。登録免許税は、司法書士への報酬と併せて支払うことになります。
印紙税は、経済的な取引に伴って作成される契約書や領収書など、法律で定められた特定の文書に対して課される税金です。セカンドハウスの売却では、「不動産売買契約書」が対象となります。
納税は、契約書に記載された売買金額に応じた額の「収入印紙」を購入し、契約書に貼り付けて消印(割印)をすることで完了します。印紙を貼り忘れたり、消印を怠ったりすると、過怠税として本来の税額の3倍を徴収される可能性もあるため注意してください。
なお、不動産売買契約書の印紙税には、令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書を対象とした軽減措置が設けられています。例えば、契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、本来の税額は2万円ですが、軽減措置により1万円となります。
セカンドハウスの売却で注意すべき点は、マイホーム(居住用財産)を売却する場合に利用できる、税制上の優遇措置が適用されないことです。自宅を売却した経験がある人ほど、同じように考えてしまいがちですが、違いを理解していないと、想定外の多額の税金を納めることになりかねません。
上記に挙げた控除制度は、あくまで人々が生活の主たる拠点として利用している「居住用財産」の維持や買い替えを支援することを目的としています。セカンドハウスは「第二の住居」という位置づけであるため、法律上、特例の対象外とされているのです。売却計画を立てる時は、これらの控除がない前提で資金計画を考える必要があります。
セカンドハウスを売却して、もし損失(譲渡損失)が出たとしても、損失を給与所得や事業所得など、他の所得と相殺して税金の負担を軽減する「損益通算」は原則としてできません。
マイホームの売却で損失が出た場合には、一定の要件を満たせば損益通算が認められ、確定申告をすることで納め過ぎた税金が還付されることがあります。
しかし、セカンドハウスや別荘は、所得税法において「生活に通常必要でない資産」と分類されています。そのため、セカンドハウスや別荘の売却によって生じた損失は、他の所得から差し引くことが認められていないのです。
国税庁のタックスアンサー「不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合」でも、別荘などの不動産を売却して損失が出たケースは、損益通算の対象外であることが明記されています。
購入時よりも低い価格でしか売れなかったとしても、その損失はあくまで個人の資産運用上のものとして扱われ、他の所得に対する税金が軽くなることはない、と覚えておきましょう。
親などから相続によってセカンドハウスを取得した場合の売却では、通常とは異なる特別な税務ルールが適用されます。そのため、有利な点と注意点の両方を理解しておくことが重要です。
まず、税率を決定するうえで重要な所有期間は、亡くなった人(被相続人)がその不動産を取得した日から計算されます。そのため、親が長年にわたって所有していたセカンドハウスであれば、相続後すぐに売却したとしても、税率が低い「長期譲渡所得」として申告できる可能性が高くなります。
また、セカンドハウスの相続時に相続税を納めていた場合、相続税額の一部を売却時の「取得費」に上乗せできる「取得費加算の特例」という制度があります。取得費が増えることで、課税対象となる譲渡所得を圧縮できるため、節税につながります。ただし、この特例を利用するには、相続が開始した日の翌日から3年10ヶ月以内に売却を完了させる必要があります。
さらに、相続した空き家(被相続人の自宅)の売却時に利用できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(通称:相続空き家の3,000万円特別控除)は、セカンドハウスには原則として適用できません。この特例は、あくまで被相続人が主たる住居として利用していた家屋が対象となるためです。
セカンドハウスの売却では、税金の仕組みを正しく理解して計画的に対策を取ることで、手元に残る資金を大きく増やすことが可能です。ここでは3つの節税対策を紹介します。
セカンドハウスの売却において、最も効果的で基本的な節税対策は、所有期間が5年を超えるタイミングで売却することです。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで、譲渡所得税の税率が約40%から約20%へと大きく下がります。
例えば、譲渡所得が1,000万円だったケースで考えてみましょう。
| 所有期間 | 納税額 |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡)の場合 | 約396万円(1,000万円 × 39.63%) |
| 5年超(長期譲渡)の場合 | 約203万円(1,000万円 × 20.315%) |
上記の例では、売却のタイミングが数ヶ月違うだけで、納税額に約200万円もの差が生まれることがわかります。
不動産の所有期間は、登記簿謄本で確認できる取得日から計算しますが、税法上の判定基準は「売却した年の1月1日時点」である点に注意してください。売却を急いでいないのであれば、「5年の壁」を越えるまで待つことを検討してみましょう。
譲渡所得を計算する時に、売却価格から差し引く「取得費」と「譲渡費用」を漏れなく正確に計上することも、税金の払い過ぎを防ぐための対策です。経費をできるだけ多く計上できれば、課税対象となる譲渡所得をその分だけ圧縮できます。
| 取得費に含められる主な費用 | 物件の購入代金 購入時に支払った仲介手数料 登録免許税や不動産取得税などの税金 リフォーム費用や設備の設置費用 |
|---|---|
| 譲渡費用に含められる主な費用 | 売却時に支払った仲介手数料 売買契約書の印紙税 建物の解体費用(土地を更地にして売る場合) |
これらの費用を証明するためには、購入時の売買契約書や、各種費用の領収書といった客観的な証拠書類が必須です。特に取得費が不明な場合、売却価格の5%相当額しか経費として認められず、結果として多額の税金を納めることになりかねません。
将来の売却に備え、関連書類は大切に保管しておくことが重要です。
相続によって取得したセカンドハウスを売却する場合は、「取得費加算の特例」を活用することで、税負担を軽減できる可能性があります。取得費加算の特例は、相続時に納付した相続税額の一部を、売却時の取得費に上乗せできるというものです。
特例を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
特に重要なのが「3年10ヶ月以内」という期限で、この期間を過ぎてしまうと特例は利用できなくなります。相続が発生した時は、売却の計画を早めに立て、期限を意識して手続きを進めることが重要です。
セカンドハウスの売却は、大きく分けると4つのステップを踏んで進みます。特に遠隔地の物件を売却する場合など、特有の注意点もあるため、全体の流れを把握しておくことがスムーズな売却につながります。
まずは、売却したいセカンドハウスがいくらで売れそうか、周辺の相場を調べます。その後、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格とその根拠を比較検討します。同時に、登記済権利証(または登記識別情報)や購入時の売買契約書など、必要な書類を揃えておきましょう。
査定内容や担当者の対応などを比較し、売却を依頼する不動産会社を決定したら、「媒介契約」を締結します。契約後は、不動産会社がインターネット広告やチラシなどを活用して販売活動を開始します。購入希望者から内覧の申し込みがあれば、日程を調整して対応します。
購入希望者が見つかったら、売却価格や引き渡しの時期などの条件を交渉し、合意に至れば「売買契約」を締結します。その後、買主の住宅ローン審査などを経て、最終的な決済日を迎えます。決済日には、買主から残代金を受け取り、司法書士の立ち会いのもとで所有権移転登記の手続きを行い、物件の鍵を引き渡して完了です。
最後に、セカンドハウスを売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、管轄の税務署で確定申告を行い、税金を納めることも忘れないでください。
セカンドハウスの売却を成功させるためにも、マイホームの売却とは異なる税金のルールを正しく理解しておきましょう。
特に、売却益にかかる譲渡所得税は、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が半減するため、売却のタイミングが手残りを大きく左右します。また、マイホーム売却時に適用される「3,000万円特別控除」は利用できない点を念頭に置かなければなりません。
取得費や譲渡費用に関わる書類をしっかりと保管し、経費を漏れなく計上すること、相続物件の場合は特例の活用を検討することなど、計画的な準備が節税につながります。この記事で解説したポイントを押さえ、まずは信頼できる不動産会社に査定を依頼し、売却に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。