1000万円で土地を売却したら税金はいくらかかる?シミュレーションや節税方法も - GMO不動産査定

1000万円で土地を売却したら税金はいくらかかる?シミュレーションや節税方法も

1000万円で土地を売却したとき、税金がいくらかかるのか不安に感じていませんか?

譲渡所得の仕組みや特例制度が複雑で、損をしてしまわないか心配な方は多いはずです。
この記事では、土地売却にかかる税金の計算方法や特例による節税策、確定申告の手続きまでをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 譲渡所得税のしくみと、所有期間による税率の違いがわかる
  • 取得費や各種特例を使った節税のポイントが理解できる
  • 確定申告に必要な書類や準備の流れが把握できる

土地を1000万円で売却した時にかかる税金

土地を売却して得た1,000万円の全額がそのまま課税対象となるわけではありません。実際には、「譲渡所得」と呼ばれる利益部分に対して課税されます。この譲渡所得は、売却価格から取得費や売却にかかった諸費用を差し引いて計算されるため、税金の実額は条件によって大きく変わります。加えて、所有期間の長短や物件の用途によって、適用される税率や制度も異なります。

土地売却に関係する主な税金は以下の3種類です:

  • 譲渡所得税(所得税・住民税):売却益に対する課税
  • 印紙税:売買契約書に課される税金
  • 登録免許税:抵当権抹消時などに発生する登記関連の税金

これらの税金はそれぞれ異なるタイミングで発生し、納税義務者や負担方法も異なります。とくに譲渡所得税は売却によって得た実質的な利益に対して課されるため、取得費や譲渡費用の把握が税負担を大きく左右する要因になります。どの税がどの段階で発生するかを整理しておかないと、想定以上の出費になることがあります。正確な納税額を知るためには、それぞれの税の仕組みと計算方法を理解することが不可欠です。

譲渡所得税(住民税・所得税)

土地を売却して得た利益には、「譲渡所得税」が課されます。譲渡所得税はさらに、「所得税」と「住民税」の2種類に分かれ、それぞれ異なる税率で計算されます。売却による所得は給与などとは別で課税される「分離課税」となっており、所有期間によって税率が大きく変わるのが特徴です。

短期・長期による税率の違い

所有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計税率
5年以下(短期) 30% 9% 0.63% 39.63%
5年超(長期) 15% 5% 0.315% 20.315%

このように、税率は所有期間が5年を超えるかどうかで約2倍の差があります。売却のタイミングを1年遅らせることで、税率が下がるケースもあるため、所有期間の確認は節税の第一歩です。

印紙税

印紙税は、土地売買における契約書を作成する際に課される税金です。売却によって生じる利益に課される譲渡所得税とは異なり、契約書という「文書」に対して一律で発生する点が特徴です。契約書の記載金額に応じて課税額が変動し、所定の額面の「収入印紙」を契約書に貼付して納税するのが基本的な流れです。なお、売買契約書が電子契約の場合は印紙税はかかりません。

印紙税額の一例(1,000万円の売却契約書)

契約金額の範囲 通常税率 軽減措置適用時(〜令和6年3月31日)
1,000万円超〜5,000万円以下 10,000円 5,000円

令和6年3月31日までの軽減措置については、国税庁の案内を参照(No.7125 営業に関しない受取書|国税庁

印紙税は小さな金額ながらも、正しく対応しないと過少申告と見なされることがあるため、実務上の注意が求められます。

登録免許税

登録免許税は、土地の売買にともなって発生する登記手続きに対する税金です。所有権を正式に移転するためには、法務局で登記の申請が必要であり、その際に登録免許税が課されます。

登録免許税に関するポイント

  • 所有権移転登記:買主が負担(税率は評価額×2%)
  • 抵当権抹消登記:売主が負担(1件1,000円)
  • 登記は司法書士が代行するのが一般的

抵当権が残っていると売却できないため、事前の確認と抹消手続きが必要です。

土地を1000万円で売却したときの税額シミュレーション

譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で算出され、所有期間や特例の有無で大きく変わります。

ケース別:1,000万円売却時の税額シミュレーション

ケース 取得費 所有期間 譲渡所得 税率 税額目安
A. 600万円取得費 600万円 長期 350万円 20.315% 約71万円
B. 取得費不明 概算5% 長期 900万円 20.315% 約183万円
C. 短期譲渡 600万円 短期 350万円 39.63% 約139万円

取得費が600万円の場合

取得費が600万円と明確に証明できる場合、1,000万円で土地を売却して得られる譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算されます。譲渡費用として仲介手数料などを50万円と仮定すると、譲渡所得は350万円となり、そこに所有期間に応じた税率を適用して税額を算出します。取得費が正確に分かるケースは、税負担を抑えるうえで非常に有利です。

取得費600万円・長期譲渡時の税額計算例

項目 金額
売却価格 10,000,000円
取得費 6,000,000円
譲渡費用(仲介手数料等) 500,000円
譲渡所得 3,500,000円
税率(長期譲渡) 20.315%
税額 約711,000円

取得費600万円が証明できた場合、納税額は約71万円に抑えられます。これは同じ条件で取得費が不明だった場合の約183万円と比べて半分以下です。契約書や領収書など、購入時の書類を適切に保管しているかどうかが、そのまま納税額の差に直結します。可能な限り、客観的な取得費の証明資料を確保することが重要です。

取得費が不明な場合

購入時の売買契約書や領収書を紛失してしまい、取得費が証明できないケースも少なくありません。その場合、税法上は「概算取得費」として、売却価格の5%を取得費として計算するルールが適用されます。しかし、この方式では実際の取得費より大幅に低く見積もられることが多く、納税額が大きく膨らむ原因となるため注意が必要です。

概算取得費(5%ルール)での税額計算例

項目 金額
売却価格 10,000,000円
概算取得費(5%) 500,000円
譲渡費用 500,000円
譲渡所得 9,000,000円
税率(長期譲渡) 20.315%
税額 約1,828,000円

概算取得費で計算すると、税額は約183万円となり、取得費が600万円と証明できた場合(約71万円)と比較して、100万円以上の差が生じます。書類がないからといってすぐに5%ルールを使わず、通帳の履歴やローン記録などを探して取得費の裏付けとなる資料を見つける努力をすることが、節税につながります。証明が難しい場合は、税理士に相談するのも有効です。

所有期間が5年未満の場合

土地の所有期間が5年以下で売却した場合、「短期譲渡所得」として分類されます。短期譲渡には高い税率が適用され、長期譲渡と比べて約2倍の税負担になるのが特徴です。ここでいう「所有期間」とは、単純な経過年数ではなく、売却した年の1月1日時点での保有期間で判断されます。たとえば、2020年3月に取得して2025年3月に売却した場合でも、2025年1月1日時点で5年未満のため、短期譲渡に該当します。

短期譲渡所得にかかる税率(合計39.63%)

税目 税率
所得税 30%
住民税 9%
復興特別所得税(所得税×2.1%) 0.63%
合計 39.63%

このように、短期所有の場合は譲渡所得の約4割が税金として差し引かれることになります。取得費や譲渡費用を差し引いて利益が残っても、実際の手取り額は大幅に減ることになります。所有期間が5年の節目に近いときは、売却時期を1年遅らせるだけで税率が約半分に下がる可能性があります。売却を急ぐ前に、登記簿などで所有開始日の確認を行うことをおすすめします。

所有期間が5年以上の場合

土地の所有期間が5年を超えていると、「長期譲渡所得」に分類されます。長期譲渡では税率が低く設定されており、短期譲渡よりおよそ半分の税負担で済みます。所有期間の起算日は「取得日」、判定基準日は「売却年の1月1日」です。たとえば、2018年12月に取得し、2024年6月に売却した場合、2024年1月1日時点で5年を超えているため、長期譲渡として扱われます。

長期譲渡所得にかかる税率(合計20.315%)

税目 税率
所得税 15%
住民税 5%
復興特別所得税(所得税×2.1%) 0.315%
合計 20.315%

この税率により、譲渡所得が同じでも短期譲渡と比べて納税額が大きく軽減されるため、売却時期を調整できる場合は戦略的に活用すべきです。特に、売却予定年の1月1日時点で所有期間が4年11ヶ月など境界線にある場合は、登記簿謄本を用いて正確な取得日を確認し、必要に応じて売却時期を延期することで大きな節税効果を得られる可能性があります。

1000万円で土地や不動産を売却したときの節税方法

土地や不動産の売却にともなう税負担は大きくなりがちですが、一定の条件を満たすことで節税効果の高い特例制度を活用することが可能です。これらの特例は、「マイホーム」「相続した空き家」「相続税を支払った不動産」など特定の状況に該当する場合に適用できます。適用できる特例があるかどうかを事前に確認し、条件を満たすように売却のタイミングや書類の準備を行うことが、税負担を軽減するうえで非常に重要です。

主な節税特例の一覧

特例の種類 控除額 主な条件
マイホーム特例 最大3,000万円控除 自身が住んでいた住宅であること/特別な関係者への売却ではないこと
空き家特例 最大3,000万円控除 相続した空き家であること/昭和56年5月31日以前建築などの条件
取得費加算の特例 取得費に相続税の一部を加算 相続税を支払い、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すること

これらの特例は併用制限があるため、複数該当する場合はどれが最も有利かを見極めて選ぶ必要があります。また、制度の適用には細かな条件や証明書類の提出が求められるため、事前に税理士や不動産会社と相談しながら計画を立てることが重要です。特例が適用されれば、譲渡所得が大幅に減額され、税額がゼロになるケースも少なくありません。

マイホームを売却したときの3000万円控除

マイホームを売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例を適用できます。これにより、譲渡所得が3,000万円以下であれば所得税も住民税もゼロとなる可能性があります。長期・短期を問わず適用できる点もこの制度の強みです。ただし、売却相手が親族などの「特別な関係者」の場合には適用外となるなど、要件には注意が必要です。

3,000万円特別控除の主な適用要件

  • 売却した住宅が自分の「居住用財産」であること
  • 売却相手が親族など特別関係者でないこと
  • 過去に同じ特例を使っていない(過去2年以内)
  • 住まなくなった場合でも3年目の12月31日までの売却であれば可

この控除は非常に節税効果が大きく、たとえば取得費600万円・譲渡費用50万円で売却した場合、譲渡所得が3,500,000円でも全額控除の対象となり、納税額は0円になります。さらに、長期譲渡であれば軽減税率の特例と併用することも可能です。適用には住民票や戸籍の附票などの書類が必要になるため、売却計画の早い段階で準備を進めておくと安心です。

空き家の特例

相続した実家などの「空き家」を売却する場合、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が適用されます。これは、老朽化した空き家の流通を促進する目的で設けられた制度で、活用できれば税負担を大きく抑えることができます。ただし、建物の構造や売却方法に関して、他の特例よりも複雑な適用要件が設定されている点に注意が必要です。

空き家特例の主な適用条件(代表的なもの)

  • 被相続人が1人で住んでいた住宅であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 耐震改修済み、もしくは取り壊して更地で売却すること
  • 相続から3年を経過する年の12月31日までに売却
  • 売却額が1億円以下であること

この制度を活用すれば、たとえば相続で取得した空き家を800万円で売却し、取得費や費用を差し引いて譲渡所得が3,000万円以下であれば所得税・住民税ともに課税されません。令和6年の改正で、売却後に買主が取り壊しや耐震改修を行った場合でも適用可能になったため、制度の柔軟性は高まっています。ただし、対象となる空き家の確認書の取得や、自治体への提出書類などが必要になるため、早めの準備が重要です。

取得費加算の特例

相続した土地や不動産を売却する際、相続税を支払っていれば「取得費加算の特例」が適用できる可能性があります。これは、支払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮できる制度であり、結果として納税額を減らすことができます。とくに相続税の額が大きい場合、この特例の効果は非常に大きくなります。

取得費加算の特例の適用要件と加算方法

  • 相続税を納付していること(相続放棄者は対象外)
  • 売却が相続開始の翌日から「3年10ヶ月以内」に行われていること
  • 加算額 = 相続税納税額 ×(売却した不動産の評価額 ÷ 全体の課税価格)

たとえば、相続税として600万円を納付し、そのうち200万円が該当不動産に対応する場合、この200万円を取得費として上乗せできます。取得費が増えることで、譲渡所得が減り、最終的な課税額も抑えられるという仕組みです。ただし、特例の適用には相続税申告書の写しや計算明細書の提出が必要なため、期限内に確実な準備を行う必要があります。相続後すぐに売却計画を立てることで、節税の選択肢が広がります。

1000万円で土地を売却したときの確定申告と納税の手続き

土地を売却して譲渡所得が発生した場合は、たとえ税金がゼロになる特例を使ったとしても、原則として確定申告が必要です。申告期間は売却した翌年の2月16日〜3月15日。期限内に正確な書類を揃え、納税を完了させることが求められます。なお、住民税は確定申告の内容をもとに自治体が自動的に計算・通知する仕組みです。

確定申告と納税の基本手続きの流れ

  1. 必要書類を準備する(売買契約書・取得費の証明・領収書など)
  2. 「譲渡所得の内訳書」を作成し、譲渡所得を計算する
  3. 確定申告書Bおよび第三表に必要事項を記入する
  4. 税務署に提出(持参・郵送・e-Taxいずれか)
  5. 所得税を納付する(金融機関、コンビニ、口座振替、クレカ等)

提出する書類には、売買契約書のコピーや仲介手数料の領収書など、譲渡所得の計算根拠となる証拠類が必要です。マイホーム特例や空き家特例を使う場合は、さらに市区町村から発行される確認書などが求められることもあります。電子申告(e-Tax)を利用すれば、自宅から申告でき、控除適用もスムーズに進みます。ミスを避けるためにも、売却の年が終わる前から準備に着手しておくと安心です。

土地を売却するときの相談先とサポート

土地や不動産の売却には、法律・税務・価格査定など専門的な知識が求められる場面が多く、適切な相談先にアクセスすることが成功のカギとなります。税金の軽減策を見逃さず、トラブルなく取引を終えるためにも、信頼できるサポート先を早期に見つけておくことが大切です。以下に、売却に関わる主な相談先と、それぞれの役割を整理しました。

主な相談先と役割の一覧表

相談先 主な役割
税理士 譲渡所得の計算、特例の適用判断、確定申告の代理
不動産会社 売却活動、査定価格の提示、買主との交渉
司法書士 登記手続き(抵当権抹消・名義変更など)
ファイナンシャルプランナー 資産計画の相談、売却後の資金管理の助言

たとえば、「取得費が不明」「空き家の売却」「相続税の加算特例」など、少しでも複雑な事情がある場合は税理士への早期相談が有効です。また、売却価格や市場動向に関する情報は不動産会社の得意分野です。どの専門家に何を相談すべきかを整理し、必要に応じて複数の専門家に相談することで、手取り額の最大化とトラブル回避の両立が可能になります。

まとめ

土地を1,000万円で売却する際、課税対象となるのはあくまで「譲渡所得」であり、取得費・譲渡費用・特例の有無などにより納税額は大きく変動します。税率の違いや特例の適用有無によって、税金が数十万円〜ゼロになるケースまで幅があります。重要なのは、売却前に自分の状況に合った節税策を把握し、準備を整えておくことです。

売却前にチェックすべき重要ポイント

  • 所有期間の起算日・判定日を登記簿などで確認して、所有期間が5年を超えているか確認する(短期譲渡か長期譲渡か)
  • 取得費を証明する書類を探す(契約書・通帳など)
  • マイホームや空き家などの特例に該当するか調べる
  • 相続税を納付している場合は「取得費加算の特例」も検討する
  • 確定申告や納税のスケジュールを前もって確認しておく

土地売却は単なる取引ではなく、正しい知識と事前準備によって手取り額が大きく変わる資産戦略の一環です。特に「取得費の証明」と「特例の適用可否」は、節税に直結する重要な要素です。少しでも不明点があれば、税理士や不動産会社などの専門家に早めに相談し、安心して取引を進めましょう。

斎藤和孝
斎藤和孝

1964生まれ、神奈川県出身。
早稲田大学卒業後、金融機関において商品ファンドなどの投資商品の開発、販売戦略の作成に従事。
1998年ファイナンシャル・プランナー(AFP)資格取得、資産運用のアドバイザーを務める一方で、生命保険のライフコンサルタント取得。主に個人の資産保全、運用に関わる幅広いコンサルティング業務に携わる。
2005年ベリーライフコンサルタント設立。CFP、一級ファイナンシャルプランニング技能士。
2006年法人登記。株式会社ベリーライフコンサルタントを設立し、現職。

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