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「ペントハウス」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。ドラマや映画に出てくるような、タワーマンションの最上階にある豪華な部屋を想像する方が多いはずです。しかし、辞書で言葉の意味を調べると「屋上の小屋」や「塔屋」といった、少し意外な解説が出てきて戸惑ったことはありませんか?
実は、ペントハウスには「不動産用語」としての意味と「建築用語」としての意味の2つが存在します。この違いを知らずに物件を探すと、思わぬ誤解をしてしまうこともあります。
この記事では、ペントハウスが持つ2つの意味の違いや、なぜ屋上に作られるのかという建築的な理由、そして実際に住む場合のメリットや注意点について詳しく解説します。憧れのペントハウスで後悔しないために、正確な知識を身につけましょう。
不動産情報サイトやマンションの広告で見かける「ペントハウス(Penthouse)」は、単に「最上階にある部屋」という意味だけではありません。そのマンションの中で最もグレードが高く「フラッグシップ(旗艦)」として設計された別格の特別住戸を指します。
一般的な最上階の部屋とペントハウスの違いは、主に以下の3点です。
このように、標準的な住戸とは構造レベルで異なる豪華な仕様が施されているのが特徴です。そのためペントハウスに住むことは、単なる居住空間の確保を超えて「成功の象徴」としての側面も持っています。
一方で、もともとペントハウスという言葉は、建物の屋上に突き出した「小屋(付属構造物)」を指していました。かつてエレベーターがなかった時代、最上階は移動が大変で環境も悪かったため、使用人部屋や倉庫として使われていた歴史があります。
しかし現代においては、騒音や地上の煤煙から離れた高層階は最も静かで眺望が良い「快適な場所」へと価値が転換したのです。
こうして欧米を中心に、現在の「高級ペントハウス」という地位が確立されました。
一方で、建築の現場や図面で使われる「ペントハウス」は、全く異なるものを指します。建築実務においてペントハウスとは、日本語で「塔屋(とうや)」と呼ばれ、ビルの屋上に突出して作られた小さな建築物のことです。
建物の屋上を見上げると、四角い箱のような出っ張りが見えることがありますが、あれが建築用語におけるペントハウスです。図面では「PH階」と表記されることも多く、主に以下の設備が格納されています。
つまり、建築用語としてのペントハウスは、人が住むための部屋ではありません。建物の機能を維持するために欠かせない、いわば「心臓部」を守るための重要なスペースなのです。
なぜ、ペントハウス(塔屋)は屋上に作られるのでしょうか。その秘密は、建築基準法にある特例にあります。

建築基準法施行令第2条には、屋上の突出部に関する特例が定められています。主な条件は以下の2点です。
通常、建物を建てるときには厳しい「高さ制限」や「階数制限」が課せられます。しかし、この特例を利用してペントハウスの面積を一定以下(1/8以内)に抑えれば、その部分は「階数」や「建物の高さ」に算入されません。
これによりデベロッパー(事業主)は、法的な制限の外側に必要な設備スペースを逃がすことができます。
その結果、制限ギリギリまで収益を生む「居住フロア」を最大限に確保することが可能になるのです。
これが、屋上にペントハウスが作られる建築的な理由です。
ただし、この特例を受けるためには条件があります。あくまで設備や階段室としての利用が前提であり、この部分を継続的な「居室」や「倉庫」として使用することは原則として認められません。住居として使う場合は特例の対象外となり、通常の階数や高さとして計算されることになります。
法的な制限や歴史的背景を経て生まれたペントハウスですが、現代の「住まい」としてはどのような魅力があるのでしょうか。ペントハウスに住む主なメリットは、以下の3点です。
それぞれの魅力について、詳しく解説していきます。
ペントハウス最大の魅力は、何と言っても圧倒的な眺望です。最上階であるため、視界を遮る建物がほとんどありません。リビングの窓からはパノラマビューを独占でき、夜には宝石のような夜景を毎日楽しむことができます。心理学的にも、高所からの眺望は「支配欲求」や「達成感」を満たす効果があると言われています。
また、ペントハウスには「セットバック(斜線制限による建物の後退)」によって生じた余剰スペースを利用した、広大なルーフバルコニーが付帯していることが一般的です。
このスペースを活用すれば、ガーデニングやジャグジーの設置、友人を招いてのホームパーティーなど、都市部のマンションでは不可能な「空中のアウトドアリビング」が実現します。
周囲からの視線も届かないため、カーテンを開け放ったままでも過ごせる究極の開放感を味わえるでしょう。
集合住宅でありながら、戸建てのようなプライバシーが確保されている点も大きなメリットです。ペントハウスは、ワンフロアに1戸、あるいは数戸しか配置されない贅沢な作りになっています。
そのため、隣人の生活音や気配を感じることがほとんどありません。物件によっては、ペントハウス専用のエレベーターや、特定の鍵がないと入れない専用セキュリティゲートが設けられており、エントランスから自室まで誰とも顔を合わせずに移動できる動線が確保されています。
室内の設備も、標準住戸とは一線を画します。例えば天然石を使った床材、眺望を楽しめるビューバス(窓付き浴室)などが標準装備されているケースが多くあります。新築時であれば、間取りを自由に決められる「スケルトン・インフィル」に近い対応が認められることもあり、自分だけの理想の空間を作り上げることが可能です。
ペントハウスは、住み心地だけでなく「資産」としても非常に優秀です。どんなに巨大な大規模マンションであっても、屋上(最上階)の面積は限られています。そのため、ペントハウスの戸数は総戸数のわずか0.5%以下であることも珍しくありません。
物理的に「これ以上作れない」という絶対的な希少性があるため、市場価値が非常に高いのです。
景気が悪化しても、このような希少物件は値崩れしにくい傾向があります。
市場に情報が出る前に、富裕層の間で水面下取引されて売れてしまうことも多く、高いリセールバリューが期待できます。世界的な富裕層が資産ポートフォリオの一部として保有するケースも多く、実需だけでなく投資対象としても安定した需要があります。

多くのメリットがある一方で、屋上という特殊な環境ゆえのデメリットも存在します。購入してから後悔しないよう、事前に理解しておくべきリスクは以下の3点です。
それぞれ解説していきます。
ペントハウスは、マンションの中で最も外気の影響を受けやすい住戸です。上下左右を他の住戸に囲まれている中層階とは異なり、天井のすぐ上は屋上(コンクリートスラブ)であり、四方の壁も外気にさらされています。
そのため、夏場は屋上のコンクリートが太陽光で熱せられ、その強烈な輻射熱が室内に伝わってくることがあります。また、眺望を重視して窓を大きく取っているため、そこが断熱の弱点となりやすい側面もあります。
「夏は温室のように暑く、冬は冷えやすい」という環境になりがちで、快適な室温を保つためには空調をフル稼働させる必要があります。その結果、光熱費が一般的な住戸の数倍になるケースもあるため、ランニングコストには余裕を持っておく必要があります。
高層階ならではのリスクとして、エレベーターが停止した際の移動手段が挙げられます。地震や停電、あるいは定期点検などでエレベーターが止まってしまうと、地上までの移動は階段のみとなります。
数十階分の階段を昇り降りするのは、健常者であっても過酷です。特に高齢者や乳幼児連れの家庭の場合は、移動ができなくなるリスクも考慮する必要があります。また、ペントハウスは建物の中で最も高い場所に位置するため、揺れの影響も最大になります。
特に巨大地震の際には、実際の震度よりも揺れを大きく感じたり、長周期地震動によって船に乗っているような揺れが長く続いたりする傾向があります。台風や強風の際は風の影響も強く受けるため、ルーフバルコニーの家具や植栽が飛散しないよう、細心の注意と対策が必要です。
ペントハウスは物件価格そのものが高額ですが、購入後の維持費も割高になる傾向があります。管理費や修繕積立金は「専有面積」に応じて設定されるため、広いペントハウスでは毎月の支払額が高額になります。さらに、ルーフバルコニーの使用料が別途発生する場合もあります。
また、税金面でも注意が必要です。
2017年の税制改正により、高さ60mを超えるマンション(いわゆるタワーマンション)では、階数が上がるごとに固定資産税評価額が増額補正されるようになりました。
これにより、高層階にあるペントハウスの税負担は、低層階に比べて重くなっています。資金計画を立てる際は、こうした税金や維持費も含めてシミュレーションすることが重要です。
ここまで読んで「ペントハウスに住んでみたい」と思った方もいるかもしれません。しかし、真のペントハウスは、SUUMOやLIFULL HOME’Sといった一般の不動産ポータルサイトにはなかなか掲載されません。希少性が高すぎるため、一般公開される前に買い手がついてしまうからです。
効率よく探すための主なポイントは、以下の3点です。
最も確実な方法は、高級不動産を専門に扱うエージェントにコンタクトを取り「ウェイティング登録」をすることです。希望条件を伝えておけば、市場に出る前の「水面下物件」を紹介してもらえる可能性があります。
また、運良く物件が見つかり内覧する際は、晴天時の眺望だけでなく、悪天候時の状況も確認することが大切です。風が強い日の音や揺れ、夏場の熱気などは、実際に体感しないと分かりません。さらに、高層階特有の問題として「水圧不足」が起きることがあります。シャワーの勢いやトイレの流れ具合など、生活に直結する機能に問題がないか、しっかりとチェックしましょう。
不動産用語としてのペントハウスは「最高級住戸」を指し、建築用語では「屋上の塔屋」を指すという、全く異なる意味を持っています。居住用としてのペントハウスは、圧倒的な眺望や資産価値が得られる一方で、空調効率や移動リスクには注意が必要です。また、その希少性の高さから一般市場には出回りにくいため、購入を検討する際は専門的な探し方が求められます。
ペントハウスは、都市生活における究極の贅沢と言えます。購入には高いハードルがありますが、それに見合うだけの圧倒的な体験と資産価値が得られるでしょう。もし、現在の住まいからの住み替えでペントハウスを検討しているなら、まずは「今住んでいる家がいくらで売れるか」を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。ご自身の資産価値を正確に知ることで、憧れのペントハウスへの道のりがより具体的になるはずです。