不動産査定書とは「売却予想価格」が記載された書類【無料ひな形有】費用や作り方を解説

住み替えや相続などで不動産の売却を考え始めたとき、「査定書ってどんな書類?」「費用はかかるの?」といった疑問や「安く買い叩かれたくない」という不安を感じる方は多いです。

不動産会社が作成する査定書は原則無料です。査定書は単なる価格表ではなく、売却を成功させるための「適正価格の根拠」と「販売戦略」が記載された重要な書類となります。

そこでこの記事では、不動産査定書の見方や無料の簡易査定と有料鑑定の違い、そして失敗しないためのチェックポイントを分かりやすく解説します。

不動産査定書とは?

不動産査定書とは、不動産会社が物件を調査し、算出した「売却予想価格(査定額)」と、なぜその金額になったのかという「算出根拠」を論理的にまとめた書類のことです。

不動産会社と媒介契約(売却活動を依頼する契約)を結ぶ際、宅地建物取引業法第34条の2において、価格について意見を述べる場合は根拠を明示することが義務付けられています。つまり、査定書は単なる価格表ではなく、プロが根拠を持って提示する重要な提案書と言えます。

決まった法定様式はないため、簡易なA4一枚のペライチのものから、数十ページに及ぶ製本されたレポート形式のものまで、作成する不動産会社によって内容やボリュームは様々です。どの形式であっても「いくらで売れるか」という結論と「なぜその価格なのか」という理由がセットになっている点は共通しています。

「査定価格」と「売り出し価格」の違い

査定書を見る上で混同しやすいのが「査定価格」と「売り出し価格」の違いです。この2つは似て非なるものであり、その違いを理解しておくことが売却成功のポイントです。

【2つの価格の違い】

項目 内容
査定価格 過去の成約事例や市場データなどの客観的な事実に基づいて算出された「市場で売れるであろう適正価格」あくまで「予想価格」
売り出し価格 査定価格を参考にしつつ、売主の希望やスケジュール(急ぎか、じっくりか)を加味して決定する「実際に市場に出す価格」

重要なのは「査定価格=売れる金額」ではないという点です。一方で少しでも高く売りたいからといって、査定価格とかけ離れた高い売り出し価格を設定するのは危険です。

相場より高すぎる売り出し価格は、長期間売れ残る原因になります。結果として「売れ残り物件」というイメージがつき、最終的に相場以下まで値下げせざるを得なくなるリスク要因となります。

不動産査定書(無料)と鑑定評価書(有料)の違い

不動産の価格を知るための書類には、不動産会社が作成する「査定書」と、不動産鑑定士が作成する「鑑定評価書」の2種類があります。名前は似ていますが、目的や費用、法的効力には大きな違いがあります。

【査定書と鑑定評価書の比較】

比較項目 不動産査定書 不動産鑑定評価書
作成者 不動産会社(宅建業者) 不動産鑑定士(国家資格者)
費用 原則無料 有料(数十万円〜)
目的 売却活動の価格決定 裁判、税務、公的な証明
法的効力 限定的(私的な意見) 高い(公的な証明力あり)

個人が自宅を売却する目的であれば、無料の「査定書」で十分です。実際の売買価格は、最終的に「買主との合意」で決まります。そのため、理論上の価格を出す鑑定評価よりも、日々市場の最前線で取引を行っている不動産会社が出す査定価格(実勢価格)の方が、実際の取引相場に近いからです。

1. 不動産会社が作成する「査定書」は原則無料

不動産会社が作成する査定書は、会社のWebサイトや一括査定サイトから依頼し、メールや郵送で受け取ることができます。不動産会社が作成する「査定書」の費用は、原則として無料です。

「なぜ無料でやってくれるの?」「後で高額な請求が来るのでは?」と不安に思うかもしれませんが、無料でできる理由は、以下のような不動産会社のビジネスモデルにあります。

  • 営業活動の一環:査定は、売却の依頼(媒介契約)を獲得するためのプレゼンテーションです。
  • 成功報酬型:費用は、将来物件が売れたときに受け取る「仲介手数料」を見込んだ先行投資(広告宣伝費)として考えられています。

あくまで宅建業者が行う「価格の意見」であり、公的な証明力は限定的ですが、売却活動においては市場動向を反映した最も重要な指針となります。

2. 不動産鑑定士が作成する「鑑定評価書」は有料

「不動産鑑定評価書」は、国家資格者である「不動産鑑定士」が、国の定めた「不動産鑑定評価基準」に基づいて作成する厳格な書類です。

作成には数十万円以上の費用がかかり、完成までに2週間〜1ヶ月程度の期間を要します。主に以下のような、第三者に対して価格の正当性を法的に証明する必要がある場面で使用されます。

  • 裁判資料(離婚調停や訴訟など)
  • 税務申告(相続税の算定など)
  • 親族間売買(適正価格の証明、贈与税回避)
  • 遺産分割協議

一般的な売却活動において、あえて鑑定評価書を取得するメリットはほとんどありません。特別な事情がない限り、不動産会社の無料査定を利用しましょう

不動産査定書に記載されている主要項目【ひな形付き】

不動産査定書には決まった法定様式はありませんが、売却の判断材料として一般的に以下の5つの重要項目が記載されています。

土地売買価格査定の内容と流れを示した図

項目 内容・見るべきポイント
① 物件概要 所在地、面積、築年数、構造などの基本スペック
※登記簿情報と相違がないか、自分の認識と合っているかを確認する。
② 査定価格 市場動向に基づき、売り出しから概ね3ヶ月以内に成約が見込めると予想される価格
※単一価格だけでなく、上限・下限の幅(レンジ)で提示されることもある。
③ 査定の根拠 なぜその価格になったのかを示す証拠
・取引事例比較法:近隣の類似物件がいくらで売れたか
・公的データ:公示地価や路線価からの補正
④ 担当者のコメント データでは測れない強み・弱み(SWOT分析)や、「どのような層をターゲットにするか」といった具体的な販売戦略
⑤ 諸費用・予想手取り額 売却価格から諸経費(仲介手数料、印紙税、登記費用、譲渡所得税など)を差し引いた、最終的に手元に残る金額の試算

これらを引いた金額が、次の資金計画を立てるために最も見るべき数字となります。

失敗しない不動産査定書の見方!5つのチェック項目

査定書を受け取ったら、単に金額を見るだけでなく、その内容を精査することが大切です。「高い査定額=良い不動産会社」とは限りません。ここでは、信頼できる査定書であるかを見極める5つのチェックポイントを紹介します。

1. 査定額の「根拠」は明確か

まず確認すべきは「なぜこの価格なのか?」という問いに対する答えです。「長年の勘です」や「頑張ってこの価格で売ります」といった精神論ではなく、近隣の成約事例(取引事例比較法)を用いた論理的な説明がなされているかを確認してください。

特に注意したいのが、比較対象として提示された事例の質です。

  • 類似性:築年数、広さ、駅からの距離、方位などが似ているか
  • 事例の選定:「都合の良い事例(たまたま高く売れた事例)」だけではないか

根拠となるデータが不透明な場合、その査定額の信頼性は低いと言わざるを得ません。

2. 物件の「強み(プラス要因)」が評価されているか

机上のデータだけでなく、現地訪問でしか分からないプラス要因が評価に加点されているかを見ます。

  • 日当たりの良さや通風
  • 窓からの眺望
  • 室内の丁寧な使用状況(壁紙や床の状態)
  • リフォーム履歴や設備のグレード

これらが適切に反映されているかどうかは、機械的な計算だけでなく、担当者がどれだけ「物件への理解度」を持っているかを測る重要な指標になります。もし、アピールポイントが反映されていないと感じたら、遠慮なく担当者に質問してみましょう

3. 提示された査定額が「高すぎないか」

他社と比較して、突出して高い査定額(異常値)が出ている場合は注意が必要です。契約を取りたいがために、相場を無視した高値を提示する営業戦略である可能性が高いからです。これを業界では「高預かり」と呼びます。高預かりのリスクは以下のとおりです。

  • 売れ残り:相場より高いと市場から無視され、競合物件に埋もれてしまう。
  • イメージダウン:「売れ残り物件」というレッテルが貼られる。
  • 機会損失:最終的には大幅な値下げを強いられ、適正価格以下でしか売れなくなる。

査定額の高さだけで不動産会社を選ばず、納得できるまでその根拠を確認する姿勢が重要です。

4. 担当者の「販売戦略」と「コメント」の具体性

査定書には、以下のような「誰に」「どうやって」売るかという具体的なアクションプランが記載されているはずです。

  • ターゲット層:ファミリー、DINKS、シニアなど、誰に向けた物件か。
  • 広告媒体:SUUMO、アットホーム、チラシなど、どこで宣伝するか。
  • 販売手法:オープンハウスを実施するか、既存顧客へ紹介するか。

また、物件の良い点だけでなく、悪い点(マイナス要因)も正直に記載し、それをどうカバーするかを提案している担当者は信頼できます。例えば「駅から遠い」というデメリットに対して「駐車場2台分を確保できる希少性をアピールする」といった具体的な対策があるかを見てください

5. 売却時の「予想手取り額」が記載されているか

売却計画において最も重要なのは、表面上の売却価格ではなく、以下のような諸経費を引いた「手取り額」です。

  • 仲介手数料
  • 印紙代
  • 登記費用
  • 譲渡所得税など

上記の費用を差し引いた「手取り額」の試算が記載されているかを確認してください。この金額は、次の家の購入資金計画や、住宅ローンの完済可否(アンダーローンかオーバーローンか)を判断するために不可欠な情報です。

手取り額の計算が含まれていない、あるいは概算すぎる場合は、必ず詳細なシミュレーションを依頼しましょう。後になって「思ったより手元にお金が残らなかった」という事態を防ぐためです。

不動産査定書はどこでもらえる?入手方法と期間

不動産査定書を入手するには、「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定」の2つの方法があります。現在の状況や目的に合わせて使い分けましょう。

売却状況に応じた机上査定と訪問査定の選び方を示した図

【査定方法の比較】

特徴 机上査定(簡易査定) 訪問査定
算出方法 データのみ(立地、築年数、平米数など) 現地調査(建物の状態、環境など)
精度 低い(概算) 高い(実勢価格に近い)
期間 当日〜翌日 1週間程度
おすすめ 「とりあえず相場を知りたい」「まだ売るか決めていない」 「具体的に売却を検討している」「正確な金額を知りたい」

まずは机上査定で概算を知り、対応が良く信頼できそうな会社に絞ってから訪問査定を依頼するのが、スムーズで失敗の少ない流れです。

まずは複数社を比較できる「一括査定」がおすすめ

不動産の価格には「定価」がありません。そのため、1社だけの査定では「その価格が適正か」「担当者が優秀か」を判断するのは困難です。

ある会社からは3,000万円と査定され、別の会社からは3,500万円と査定されることも珍しくありません。適正な価格を知り、良いパートナーを見つけるためには、最低3社程度比較して相場観を養うことをおすすめします。

無料の一括査定サイトを利用すれば、一度の入力で複数の不動産会社から査定書を取り寄せることができ、条件や査定額を横並びで比較検討できるため非常に効率的です。

各社の査定額や根拠、担当者の対応を見比べることで、より納得感のある売却活動をスタートできます

不動産査定を依頼する際に準備すべき書類

正確な査定書を作成してもらうためには、物件に関する正確な情報が必要です。査定依頼時に準備しておくとスムーズな書類を紹介します。手元になくても査定は可能ですが、より精度の高い結果を得るために可能な限り揃えておきましょう。

1. 必須となる書類

査定を依頼する上で、最低限必要となる書類です。特に権利関係や面積の確認に必要となります。

書類名 内容
本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードなど
登記済証(権利証)
または登記識別情報通知
物件の所有者であることの証明
固定資産税納税通知書 土地・建物の評価額や正確な面積の確認、諸費用計算に必須

登記済証は紛失してしまうと再発行できませんが、代替手段はあるので担当者に相談しましょう。

2. プラス査定につながる書類

必須ではありませんが、提出することで物件の信頼性を高めたり、プラスの評価につながったりする書類です。

書類名 内容
測量図面(確定測量図、地積測量図) 土地の境界や面積の証明
※紛失時は境界確定費用の発生や査定減額リスクあり
建築確認済証、検査済証 適法な建築物であることの証明、買い手の融資審査の円滑化
管理規約・長期修繕計画書(マンション) 管理規約や修繕積立金状況の確認、管理状態の良さによる資産価値証明
リフォーム契約書や仕様書 過去のリフォーム内容や時期の証明、設備グレード等によるプラス評価の根拠

上記の書類は物件購入時に不動産会社から渡される、資料ファイルなどに入っていることが多いので、査定を依頼する前に一度探してみましょう

まとめ

不動産査定書は、あなたの家が「いくらで売れるか」を予測するだけでなく、売却活動の戦略を立てるための重要な資料です。無料の簡易査定でも、プロの視点による詳細な分析が得られます。「まだ売るか分からないけれど、価値だけ知りたい」という場合でも、まずは現在の資産価値を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

複数の査定書を見比べることで、適正な価格と信頼できる不動産会社が必ず見えてきます。一括査定などのサービスを活用して、納得のいく売却活動の第一歩を踏み出しましょう。

西山雄介
西山雄介

肩書:不動産ライター / ディレクター

保有資格:宅地建物取引士 / マンション管理士 / 管理業務主任者 / 賃貸不動産経営管理士 / 日商簿記2級 ※多い場合は後ろから削ってください。

プロフィール:
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。

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