借地権付き建物を売却するための4つの方法と「売れない」理由を解説

相続した実家が借地権付き建物だった場合「地主の承諾が必要で面倒そう」「そもそも買い手がつかないのではないか」といった不安を感じる方は多いのではないでしょうか。借地権の仕組みと正しい手順さえ理解すれば、トラブルを避けてスムーズに売却することは十分に可能です。

この記事では、借地権付き建物が売れないと誤解される理由や、状況に合わせた4つの売却方法、そして具体的な手続きの流れを分かりやすく解説します。正しい知識を身につけ、大切な資産を適正価格で現金化するためのポイントをしっかり押さえましょう。

借地権付き建物とは?「売れない」と言われる理由も解説

借地権付き建物とは、他人の土地を借りて、その上に建てた建物を所有している状態の不動産を指します。土地は地主のものですが、建物は自分のものという権利関係です。

通常の不動産売却とは異なり、地主との関係性が大きく影響するため「売却が難しい」というイメージを持たれがちです。まずは借地権の基礎知識と、なぜ売れにくいと言われるのか、その理由を正しく理解しましょう。

1. 借地権とは

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を使用する権利のことです。この権利は大きく分けて「地上権」と「賃借権」の2種類がありますが、市場に出回っている物件の9割以上は「賃借権」です。

賃借権の場合、売却や増改築(大規模なリフォーム)をする際は地主の承諾が必要になります。また、借地権はその契約時期によって、以下の2つのタイプに分類されます。

  • 旧法借地権(1992年7月以前に契約)
  • 新法借地権(1992年8月以降に契約)

旧法借地権は、借地人(借りている側)の権利が非常に強く守られているのが特徴です。契約期間が満了しても、正当な事由がない限り更新が可能であり、半永久的に借り続けられます。

そのため、事実上の土地所有権に近い強力な権利として、市場でも高値で取引されやすい傾向にあります。

一方、新法借地権には「定期借地権」という種類が含まれます。これは契約期間が満了すると更新ができず、建物を解体して更地にして返還しなければなりません。そのため、残存期間が減るにつれて資産価値も減少していく、減価償却資産のような性質を持っています。

参照元:国土交通省|定期借地権の解説

2. 借地権付き建物が「売れない」と誤解される理由

借地権付き建物が「売れない」と敬遠されてしまう主な理由は、以下の3点です。

  • 地主の承諾という壁
  • 毎月のランニングコスト
  • 融資の利用しにくさ

まず最大のハードルとなるのが「地主の承諾」です。売却には地主の許可が必須であり、人間関係がこじれることを恐れて、売却を躊躇するケースが多く見られます。しかし、地主が正当な理由なく承諾を拒否した場合は、裁判所に申し立てて許可を得る「借地非訟手続」という法的な解決策も用意されています。

次にコスト面ですが、借地人は地代や契約更新時の更新料を支払う必要があります。一見デメリットに見えますが、土地を所有していないため、土地分の固定資産税や都市計画税がかからないというメリットもあります。

また、借地権は担保評価が低くなりがちで、住宅ローンが組みにくいと認識されることが多いです。

しかし、実際には「フラット35」や一部の銀行など、借地権物件に対応している金融機関は存在します。

特に都心部などの地価が高いエリアでは、土地購入費を抑えて好立地に住めるため、リノベーション前提の実需層や投資家からの需要は底堅く、決して「売れない」物件ではありません。

借地権付き建物を売却する4つの方法

借地権付き建物を手放すには、誰にどのような形で売るかによって、大きく分けて4つの方法があります。

4つの売却方法の違いを比較した図

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、自身の状況や地主との関係性を踏まえて最適な方法を選ぶことが重要です。

1. 第三者(個人・法人)への売却

建物と借地権をセットにして、一般の個人や不動産買取業者へ売却する方法です。この方法の特徴は、以下の3点です。

  • 市場価格での売却
  • 承諾料の支払い
  • 地主との交渉リスク

これは最も一般的な売却方法であり、市場価格に近い金額での売却が期待できるため、経済的なリターンが最も大きいのがメリットです。多くの利益を手元に残したい場合に適しています。

一方で、第三者に権利を譲渡するためには、地主の「譲渡承諾」が必須となります。その際、地主に対して「承諾料(名義書換料)」を支払わなければなりません。また、地主との関係が悪化していると交渉が難航し、最悪の場合は破談になるリスクがある点には注意が必要です。

2. 地主への売却(借地権の買取)

借地権を地主に買い戻してもらう方法です。地主にとっては、貸していた土地(底地)と借地権が合わさり、完全な所有権を取り戻せるというメリットがあります。この方法の特徴は、以下の3点です。

  • 承諾料が不要
  • 確実な早期現金化
  • 売却価格の低下

最大のメリットは、地主自身が買主となるため承諾料が発生しないことです。また、地主との直接取引であれば仲介手数料がかからないケースもあり、第三者を探す手間も省けるため、素早く確実に現金化できます。

ただし、売却価格は市場相場よりも低くなる傾向があります。一般的に、更地価格の30〜50%程度になることが多く、地主が「安く買えるなら買う」というスタンスの場合、足元を見られて価格交渉で不利になる可能性があります。

とにかく早く、トラブルなく手放したい方や、地主との関係があまり良くない方におすすめの方法です。

3. 底地との同時売却

借地人(売主)と地主が協力して借地権と底地をセットにし、完全な「所有権」として第三者に売却する方法です。この方法の特徴は、以下の3点です。

  • 高値での売却
  • 融資の付きやすさ
  • 配分比率の調整

買主からすれば完全な所有権を取得できるため、住宅ローンが利用しやすく人気が高まります。その結果、借地権と底地を別々に売るよりも高く売れ、双方の手取り額が増える可能性があります。

しかし、この方法は地主に売却の意思がなければ成立しません。

また、売却益を借地人と地主でどう分けるか(借地権割合と底地割合)の話し合いで揉めるリスクもあります。

地主も高齢で土地の処分に困っている場合や、地主との関係が良好で協力が得られる場合に検討すべき方法です。

4. 等価交換をしてから売却

広い敷地がある場合に有効なのが、土地を分筆して「地主の底地」と「借地人の借地権」を交換する方法です。これにより、お互いが狭くなるものの、完全な所有権を持つ土地を取得できます。この方法の特徴は、以下の3点です。

  • 完全所有権の取得
  • 借地関係の解消
  • 土地条件の制約

最大のメリットは、借地関係が完全に解消されることです。自分の所有地となった部分は、地主の承諾や承諾料を気にすることなく、自由に売却や建築が可能になります。

ただし、土地を分割しても十分な利用価値が残る広さが必要です。土地の形状によっては、不整形地になって資産価値が下がるリスクもあります。また、測量や分筆登記の費用もかかります。敷地面積が広く(例えば60坪以上)、権利関係をきれいに整理したい方におすすめです。

借地権付き建物を売却する手順5ステップ

借地権付き建物の売却は、通常の不動産売却よりも手続きが複雑で、地主との調整が不可欠です。

トラブルを避けてスムーズに進めるために、正しい手順を理解しておきましょう。ここでは、売却までの流れを5つの手順で解説します。

1. 借地権に強い不動産会社への相談・査定

まずは、借地権取引の実績が豊富な不動産会社を見つけることから始めます。会社選びで確認すべきポイントは、以下の2点です。

  • 専門知識の有無
  • 交渉代行の可否

大手不動産会社であっても、担当者に借地権の知識があるとは限りません。「借地非訟手続」や「旧法・新法」の違いを深く理解しているか、地主との交渉を代行してくれるかを確認しましょう。知識のない業者が不用意に地主に接触すると、関係が悪化し売却自体が不可能になるリスクがあります。

まずは無料一括査定などを利用して、信頼できるパートナーを探すことが成功への第一歩です。

2. 地主への売却交渉と「承諾」の取得

パートナーが決まったら、地主への交渉を開始します。交渉をスムーズに進めるコツは、以下の3点です。

  • 相談ベースでのアプローチ
  • 買取打診の優先
  • 条件の明確化

いきなり「売ります」と通告するのではなく「事情があり手放すことを検討している」と相談ベースで入るのが鉄則です。また、まずは地主に買取を打診し、断られたら第三者へ売却するという順序を踏むことで、地主の顔を立てることができ角が立ちにくくなります。

この段階で譲渡承諾の可否だけでなく、承諾料の金額や建替えの可否、地代の改定など具体的な条件を明確にしておくことが重要です。

3. 媒介契約の締結と売却活動の開始

地主と大枠の合意が取れたら、不動産会社と媒介契約を結び、本格的な売却活動を始めます。活動開始時のポイントは、以下の3点です。

  • 地主の内諾取得
  • メリットの訴求
  • 必要書類の準備

トラブルを防ぐために、地主の口頭承諾(内諾)を得てから媒介契約を結ぶことが重要です。販売図面では、借地権ならではの「土地固定資産税0円」や「更新による永住可能性」などのメリットを強調しましょう。また、借地契約書や地代の支払いが確認できる通帳などを用意しておくと、検討者への説明がスムーズになります。

4. 売買契約と借地権譲渡承諾書の受領

買主が見つかり、条件がまとまったら売買契約を締結します。契約時の最重要事項は、以下の2点です。

  • 停止条件付契約の締結
  • 承諾書の受領

売買契約書には、必ず「地主の正式な承諾が得られなければ白紙解約する」という特約(停止条件)を入れます。そして契約後、地主から実印が押された「借地権譲渡承諾書」と「印鑑証明書」を受け取ります。これがなければ権利を移転できないため、最も重要な書類となります。

5. 決済・引き渡し

最後に、代金の決済と物件の引き渡しを行います。決済当日の流れは、以下の2点です。

  • 同時決済の実施
  • 権利の移転手続き

買主から売買代金を受け取ると同時に、地主へ承諾料を支払います。その際、決済の場で振込などを行うのが一般的です。その後は建物の所有権移転登記を行うとともに、地主との間で賃貸借契約の巻き直し(地位承継)を行い、すべての手続きが完了します。

借地権付き建物の売却相場

借地権の価格には「定価」がありませんが、ある程度の目安を計算することは可能です。理論的な価格の目安は、以下の計算式で求められます。

借地権価格 = 更地価格(実勢価格) × 借地権割合

借地権割合とは、土地の権利のうち借地権が占める割合のことです。国税庁の「路線価図」で確認でき、アルファベット(A〜G)で示されています。一般的な住宅地(D〜E)では、60〜70%に設定されていることが多いです。

借地権価格を借地権割合と底地権割合で示した図

ただし、これはあくまで理論値です。実際の取引では「融資のつきにくさ」「地代の高さ」「承諾料の負担」などが考慮され、理論価格から10〜30%程度ディスカウントされるケースが一般的です。

参照元:国税庁|No.4611 借地権の評価

借地権付き建物の売却にかかる承諾料・諸費用・税金

売却して手元に残るお金(手取り)を把握するためには、売却価格だけでなく、かかる費用や税金を知っておく必要があります。主な費用は以下の3つです。

  • 地主に支払う「譲渡承諾料(名義書換料)」
  • 仲介手数料や測量費用などの諸費用
  • 売却益にかかる譲渡所得税・印紙税など

それぞれ解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1. 地主に支払う「譲渡承諾料(名義書換料)」

借地権を第三者に譲渡するために地主に支払う費用です。費用の目安や注意点は、以下の3点です。

  • 借地権価格の10%
  • 追加費用の可能性
  • 交渉による決定

相場は借地権価格の10%程度とされており、過去の判例でも合理的対価として認められています。ただし、買主が建替えを希望する場合は「建替承諾料(更地価格の3〜5%)」が追加されることがあります。

木造から鉄筋コンクリート造にするなど条件を変える場合は「条件変更承諾料(同10%)」が相場です。これらは法律で決まった金額ではなく、あくまで地主との交渉で決まる点に注意が必要です。

2. 仲介手数料や測量費用などの諸費用

借地権付き建物の売却には、不動産会社や土地家屋調査士などに支払う実費がかかります。主な内訳は、以下の3点です。

  • 仲介手数料
  • 境界確定測量費
  • 解体費用

仲介手数料は、速算式で「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限です。また、土地の境界が不明確な場合は測量が必要となり、30万〜80万円程度かかります。測量には隣地だけでなく地主の立会いも必要です。古家付きで更地渡しが条件の場合は、木造で坪5〜8万円程度の解体費用も発生します。

3. 売却益にかかる譲渡所得税・印紙税など

譲渡所得税は、売却によって利益が出た場合にかかる税金です。税金のポイントは、以下の3点です。

  • 所有期間による税率
  • 概算取得費の適用
  • 特例の活用

売却益(譲渡所得)に対する税率は、所有期間が5年以下(短期)なら約39%、5年超(長期)なら約20%です。先祖代々の土地などで取得費が分からない場合、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」が適用されるため、税金が高くなりやすい傾向があります。

居住用財産(マイホーム)であれば、利益から最大3,000万円を控除できる「3,000万円特別控除」が使える可能性があるため、適用条件を必ず確認しましょう。

参照元:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

まとめ

借地権付き建物は、権利関係が複雑で「売れない」と誤解されがちですが、決して売却不可能な物件ではありません。地主の承諾が必要であること、承諾料などのコストがかかることを理解した上で、適切な手順を踏めば現金化は十分に可能です。

まずは借地権に強い不動産会社に相談し、自分に合った売却方法を見つけることから始めましょう。専門家の力を借りることで、地主との交渉や複雑な手続きもスムーズに進めることができます。諦めずに、大切な資産の有効活用への一歩を踏み出してください。

西山雄介
西山雄介

肩書:不動産ライター / ディレクター

保有資格:宅地建物取引士 / マンション管理士 / 管理業務主任者 / 賃貸不動産経営管理士 / 日商簿記2級 ※多い場合は後ろから削ってください。

プロフィール:
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。

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