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相続した家の売却で使える特例と手続きの期限|売却手順5ステップも解説

相続した家の売却は、通常の不動産売却と比べて手続きが多く、各ステップで準備すべき書類も異なります。全体の流れを把握しないまま進めると、書類の準備が間に合わなかったり、使えるはずの特例を見逃したりするリスクがあります。

特に以下の期限は、見落とすと税負担が大きくなるため注意が必要です。

  • 相続登記(3年以内)
  • 取得費加算の特例(相続開始から3年10ヶ月以内)
  • 空き家の3,000万円特別控除(相続開始から3年後の年末まで)

実際に「まだ売らなくていいか」と先送りしているうちに、税制上の特例の適用期限が過ぎてしまうケースは多いです。本記事では、相続した家の売却手順と必要書類を解説するとともに、使える特例の条件と期限、売却タイミングの見極め方を解説します。

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相続した家を売却する手順と必要書類

相続した家を売却するには、登記・査定・契約・引き渡し・確定申告という5つのステップを順番に進める必要があります。各ステップで準備すべき書類が異なるため、全体の流れを把握したうえで早めに着手しましょう。

STEP1. 相続登記(名義変更)を完了させる

登記が完了していない状態では売買契約を締結できないため、まずは名義変更が必要です。2024年4月1日より相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が求められています。

相続登記の方法は、遺産の分け方によって以下の3パターンに分かれます。

パターン 概要 主な必要書類
(1) 遺言どおりに分ける 遺言書の内容に従い登記。
遺言執行者が指定されている場合は、その者が手続きを担う。
・遺言書
・遺言執行者の資格証明書など
(2) 遺産分割協議によって分ける 相続人全員で協議し、合意内容を遺産分割協議書にまとめたうえで登記。 ・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書など
(3) 法定相続分どおりに分ける 協議せず法定相続分で共有名義登記が可能。
売却・活用時に相続人全員の同意が必要。
・相続関係説明図など

相続登記に必要な主な書類と取得先は、以下を参考にしてください。

住所地の市区町村役場
書類 取得先
被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡分) 本籍地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本 各本籍地の市区町村役場
遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印) 相続人間で作成
相続人全員の印鑑証明書
固定資産税評価証明書 不動産所在地の市区町村役場
登記申請書 法務局窓口または法務局公式サイトよりダウンロード

申請先は不動産所在地を管轄する法務局です。書類の収集に数週間かかるケースもあるため、早期に着手することをおすすめします

トラフィー

手続きが複雑な場合は、司法書士への依頼を検討しましょう

STEP2. 不動産査定で現在の売却価格を確認する

登記申請と並行して、不動産会社への査定依頼を進めると良いでしょう。査定はあくまで売却価格の目安を把握するためのものであり、依頼しても売却義務は生じません。

複数の相続人がいる場合、査定額は単なる売却予想価格にとどまりません。「誰がいくら受け取るか」を話し合ううえでの客観的な根拠となるため、遺産分割協議の前段階として取得しておくことが重要です。

不動産査定は、主に以下の2種類があります。

種類 内容 目安期間
机上査定 登記情報・地図・周辺事例をもとに算出 即日〜数日
訪問査定 現地確認のうえで詳細な査定額を提示 1〜2週間

訪問査定のほうが精度が高く売却戦略の相談もできるため、最終的には訪問査定を受けると良いでしょう。なお、不動産会社によって得意なエリアや物件タイプ、査定基準が異なり、同じ物件でも提示額に差が出ることがあります。

そのため、複数社(3社以上が目安)に依頼して比較することをおすすめします。査定時には固定資産税納税通知書・登記識別情報(権利証)を手元に準備しておくとスムーズです。

STEP3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ

売却を依頼する不動産会社を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

  • 相続不動産・古家・空き家の売却実績があるか
  • 相続人が複数いる場合の調整経験があるか
  • 相続した実家が遠方にある場合、オンライン契約・郵送対応など遠隔での手続きに対応しているか
  • 特例適用に関する税務面の知識があるか、または税理士との連携体制があるか

依頼する会社が決まったら「媒介契約」を締結します。以下のように契約の種類によって他社への同時依頼の可否や報告義務が異なるため、状況に合ったものを選びましょう。

種類 他社への同時依頼 自己発見取引 報告義務(頻度)
一般媒介契約 なし
専任媒介契約 不可 2週間に1回以上
専属専任媒介契約 不可 不可 1週間に1回以上

相続不動産の場合など売却活動の進捗を定期的に確認したい場合は、専任媒介契約が選ばれるケースが多いです。契約期間は、最長3ヶ月で更新も可能です。

STEP4. 売買契約・引き渡しを行う

買い手が見つかり条件交渉が整ったら、売買契約を締結します。契約時には手付金(売却価格の5〜10%が目安)を受領し、引き渡し日・残代金の支払い条件などを取り決めましょう。引き渡し前には、室内の遺品整理(残置物の撤去)を完了させる必要があります。残置物の量が多い場合は、専門業者への依頼も検討すると良いでしょう。

換価分割(代表者名義での売却後に現金を分配する方法)は、進め方によって課税上のリスクが生じます。代表者が売却代金を全額受領したうえで他の相続人へ分配する形をとると、贈与とみなされるためです。

トラフィー

換価分割を行う旨と各相続人の取得割合は、遺産分割協議書に事前に明記しておきましょう

引き渡し時には、残代金の受領と所有権移転登記を行い、売却が完了します。各手続きの流れと必要書類は以下のとおりです。

手続きの流れ 内容 売主の必要書類
売買契約 条件確認・署名・手付金受領 ・本人確認書類
・登記識別情報(権利証)
・印鑑証明書
・固定資産税納税通知書
決済・引き渡し 残代金受領・鍵の引き渡し ・登記識別情報(権利証)
・銀行口座情報
・実印
所有権移転登記 買主名義への変更 ・登記識別情報(権利証)
・印鑑証明書

契約から引き渡しまでは通常1〜2ヶ月程度です。特例の適用期限が迫っている場合は、引き渡し日が期限内に収まるように逆算してスケジュールを組むことをおすすめします。

STEP5. 確定申告で特例や控除を申請する

譲渡所得の申告は、売却完了の翌年2月16日から3月15日の確定申告期間中に行います。換価分割など複数の相続人が売却代金を受け取った場合、申告は代表者がまとめて行うのではなく、売却益を受け取った相続人全員がそれぞれ個別に確定申告を行う必要があります。

確定申告にあたっては、以下の点を事前に確認しておきましょう。

  • 相続人が複数いる場合でも、申告は各人が個別に行う
  • 特例を使う場合は、売却益が出ていなくても確定申告が必要
  • 「空き家の3,000万円特別控除」と「取得費加算の特例」は併用できない

特例を適用する場合、通常の売却で必要な書類に加えて、相続特有の書類の収集が必要になります。主な必要書類は以下のとおりです。

書類 取得・確認先
譲渡所得の内訳書 国税庁HPから書式をダウンロードし、必要事項を記入する
売買契約書(購入時・売却時) 手元の控えを使用
取得費・譲渡費用の領収書 仲介手数料・解体費用など
相続税申告書の控え(取得費加算の特例を使う場合) 申告時に提出した書類の控え
被相続人居住用家屋等確認書(空き家の3,000万円特別控除を使う場合) 家屋所在地を管轄する市区町村で取得
登記事項証明書 法務局の窓口またはオンライン請求にて取得

なお「被相続人居住用家屋等確認書」は、発行までに時間がかかる場合があるため、早めに取得手続きを進めましょう。申告はe-Taxによるオンライン申請も可能です。特例の適用要件や計算が複雑な場合は税理士へ依頼することで、申告漏れや誤りを防げます。

相続した家を売却する時は手続き・特例の期限に注意

相続した家を売却するにあたって、相続登記・取得費加算の特例・空き家の3,000万円特別控除の期限を確認しておきましょう。それぞれ起算日と期限が異なるため、売却を検討する前に全体像を把握しておくことが大切です。

手続き・特例 期限 起算日 期限超過の影響
相続登記 3年以内 相続を知った日 10万円以下の過料(正当理由のない場合)
取得費加算の特例 3年以内(相続開始から約3年10ヶ月が目安) 相続税申告期限の翌日 納付済み相続税の取得費加算が受けられなくなる
空き家の3,000万円特別控除 3年を経過する日の属する年の12月31日まで 相続開始日 最大3,000万円の控除が受けられなくなる

1. 相続登記

相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きです。2024年4月より申請が義務化され、相続を知った日から3年以内に完了させなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記が未完了のままでは、不動産の売却手続きや所有権移転を円滑に進めることができません。売却を検討している場合には、他の手続きに先んじて対応しておくことをおすすめします。

2. 空き家の売却で使える「3,000万円特別控除」

被相続人(亡くなった方)が一人で居住していた家を相続し、その後空き家となった状態で売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。譲渡所得が3,000万円以下であれば、実質的に税額がゼロになるケースもあります。

主な適用要件は、以下のとおりです。

要件 内容
建築時期 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築(旧耐震基準の建物)
居住状況 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたこと
売却時の建物の状態 以下のいずれかを満たすこと
・売主が譲渡までに、建物を解体して更地にする
・売主が譲渡までに、耐震基準を満たすリフォームを行う
・買主が譲渡の翌年2月15日までに、建物を解体するまたは耐震リフォームを行う
売却価格 1億円以下
売却期限 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
相続人数による控除の上限 相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除上限は2,000万円

「3,000万円特別控除」は、売主(相続人)が申告することで適用されるため、確定申告が必須です。

3. 相続した家の売却で使える「取得費加算の特例」

取得費加算の特例とは、相続時に納めた相続税の一部を不動産の取得費に上乗せできる制度です。取得費が増えると課税対象となる譲渡所得が圧縮されるため、売却時の所得税・住民税の負担を軽減できます。

主な適用要件は、以下のとおりです。

要件 内容
相続税の納税 相続税を実際に納付していること
売却期限 相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡すること
対象財産 相続税の課税対象となった財産であること

相続開始を知った日の翌日から10ヶ月が相続税の申告期限となるため、そこから3年以内、おおよそ相続開始から3年10ヶ月が実質的な売却期限の目安です。

相続した家を売却する時に知っておくべき3つのポイント

相続した家の売却では、譲渡所得税の計算や特例の適用期限、複数の相続人がいる場合の合意形成など、通常の不動産売却とは異なる注意点があります。本章では、売却前に確認しておくべき3つのポイントを解説します。

1. 税金と計算方法

売却益(譲渡所得)には、所得税・住民税が課税され、以下の計算式で算出します。

譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

通常の売却では自分が購入した価格が取得費となりますが、相続不動産の場合は被相続人が購入した価格を引き継ぐため、取得費が低くなりやすく課税対象が膨らみやすいのが特徴です。

※当時の資料がない場合は売却価格の5%が取得費として適用されます。

仲介手数料・解体費用などは、譲渡費用として差し引くことができます。

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算出した譲渡所得に税率をかけた額が所得税となり、税率は所有期間によって大きく異なります

相続した家の売却では、所有期間は被相続人が取得した日から起算する点に注意してください。

  • 所有期間5年超の場合:長期譲渡所得として合計20.315%の税率を適用
  • 所有期間5年以下の場合:短期譲渡所得として合計39.63%の税率を適用

なお、税率そのものより「特例を適用できるか」が最終的な税負担を左右します。売却時期と各特例の適用期限を事前に照合しておくとよいでしょう。

2. 相続した家を放置するリスク

相続した家を放置すると、税負担の増加や維持コストの面で、以下のようなさまざまなリスクが生じます

リスク 内容
税負担の増加 空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例には適用期限があり、期限を超過すると税負担が増えるおそれがある
空家法上の指導・勧告の対象になる可能性 管理不全の状態が続くと、市区町村から「管理不全空き家」または「特定空き家」に指定される可能性がある
固定資産税負担の増加 「特定空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れ、税負担が大きく増える場合がある
近隣トラブルの可能性 不法投棄・景観悪化・害虫発生などにより、近隣トラブルや損害賠償リスクが生じるケースがある

相続した家を「とりあえず放置する」という選択は、時間の経過とともにリスクが積み重なる可能性があるため、早めに売却や活用の方針を検討することが重要です。

3. 相続人が2人以上いる場合に揉めないポイント

通常の売却では所有者が単独で意思決定できますが、複数の相続人がいる場合は全員の合意なしに売却できません。共有名義のまま保持すると売却・活用のたびに全員の同意が必要となるため、早期に遺産分割の方針を決めることが重要です。

代表的な方法として、売却代金を相続人間で分ける「換価分割」があります。換価分割を選ぶ場合は、以下の点を事前に確認してください。

  • 遺産分割協議の確定が先決(協議前の売却は原則不可)
  • 売却益は各相続人の取得割合に応じて帰属し、個人ごとに確定申告が必要
  • 特例の適用要件も相続人ごとに個別判定が必要

手続きの漏れや想定外の税負担を防ぐためにも、売却前に税理士へ相談することをおすすめします。

相続した家の売却タイミングの見極め方

相続した家の売却タイミングは、特例の適用期限・維持コスト・建物の状態・不動産市況という4つの軸で判断します。

1. 期限が迫っている・維持コストが重い場合は早期売却を検討する

特例の適用期限や維持コストの負担が大きい場合は、早期売却が合理的な選択です。時間の経過とともに選択肢が狭まるリスクがあるため、以下の状況に該当する場合は優先的に検討を進めることを推奨します。

状況 理由
空き家の3,000万円特別控除の期限が2年以内に迫っている 期限超過で最大3,000万円の控除が失効する
取得費加算の特例の期限(相続開始から約3年10ヶ月)が近い 期限超過で納付済み相続税の加算が受けられなくなる
固定資産税・管理費・火災保険料などの年間維持費が重い 空き家状態での保有が長引くほど手取り額が目減りする
「特定空き家」などに指定されるリスクがある 指定後は固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れる可能性がある
遠方に居住しており、管理が実質的に困難 放置による資産価値の劣化・不法侵入リスクが高まる

特に特例の期限は一度過ぎると遡及適用ができないため、残り期間が2年を切っている場合は査定・売却活動の開始を急いだ方が良いでしょう。売買契約の締結から引き渡しまで通常1〜2ヶ月を要することも念頭に置いてください。

2. 共有名義・建物の状態・市況によっては準備期間を置く

状況によっては売り急がず、一定の準備期間を設けたほうが有利に進められるケースもあります。

状況 対応方針
複数の相続人による共有名義になっている 全員の同意なしに売却できないため、先に協議・持分整理を行う
建物が老朽化しており、解体か耐震改修か方針が未決定 解体費用と売却価格のバランスを査定で確認してから決定する
相続登記がまだ完了していない 登記完了前は売買契約を進めにくいため、先行して申請する
地域の不動産市況が短期的に低調である 売却価格への影響を複数社の査定で確認したうえで判断する
小規模宅地等の特例の適用を検討している 相続税の申告期限までその宅地を保有し続けることや居住を継続することが要件になる場合がある

共有名義の不動産は、相続人のうち一人でも売却に反対すれば手続きを進められないため、まず他の相続人との合意形成を優先することが重要です。

また、小規模宅地等の特例は相続税申告と連動しているため、申告内容が固まる前に売却を急ぐと、適用可否の判断が不十分なまま手続きが進んでしまうリスクがあります。売却のタイミングは、税理士とも連携しながら慎重に見極めるようにしましょう。

まとめ

相続した家の売却では、相続登記・特例の適用期限・譲渡所得税の計算など、通常の不動産売却にはない手続きが重なります。期限を過ぎると使えなくなる控除もあるため「いつか売ればいい」と先送りにするほど、手取り額が少なくなる可能性があります。

売却を検討している場合は、おおよその価格を把握しておくのがおすすめです。査定は無料で依頼でき、必ずしも売却する必要はありません。早めに相場を知っておくことで、売却すべきか保有を続けるべきかを冷静に判断しやすくなり、税負担や維持コストを踏まえたうえで納得のいく選択につなげやすくなります

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