【空き家を更地にして売る】売却手順や売る際の注意点を解説 - GMO不動産査定

【空き家を更地にして売る】売却手順や売る際の注意点を解説

古家付き土地を更地にしたほうが良いケース

古家付き土地を更地にしたほうが良いケース

更地は、建物を建てたり駐車場として活用したりできるため、不動産の中でも人気が高い物件です。古家付きの土地は、更地にしたほうが高く売れるのか、そのまま売ったほうがよいのか迷う方も多いでしょう。

【古家付き土地を更地にしたほうが良いケース】

  • 法定年数を超えると、建物の資産価値はなくなる
  • 立地が良い
  • 周辺環境と建物が合ってない

古い家でもこれまで人が住んでいたのであれば、「住宅としてまだ価値があるのでは」と迷うものです。ここでは、更地にして売却したほうがよいケースを解説します。

法定耐用年数を超えると、建物の資産価値はなくなる

実際、築20年~30年の住宅でも十分暮らせます。国土交通省の木造住宅期待耐用年数によると、目安は「フラット35基準程度で50年~60年、劣化対策等級3で75年~90年、長期優良住宅認定であれば100年超」です。

しかし、本来は長寿命である木造住宅の税務上の「法定耐用年数」は22年です。住むことができても、不動産としての資産価値は異なります。

この法定耐用年数とは、「減価償却資産が利用に耐えうる年数」のことです。住宅などの建物だけでなく、機械やパソコンなどさまざまなものにも定められており、この法定耐用年数が過ぎると税務上の資産価値はなくなります。

住宅用建物の構造による耐用年数の違いは、下記の通りです。

建物の構造 耐用年数
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下) 19年
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 27年
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) 34年
鉄筋コンクリート造 47年
木造 22年

築年数20年以上でも状態の良い住宅であれば、「お得感がある」と感じる買い手が現れることもあります。しかし、資産価値がなく、劣化が進んだ古家の場合、購入者は建物の取り壊しや建て替えのコスト負担を考え、買い手がつきにくくなります。そうした場合は更地にしたほうが売却しやすいでしょう。

また、40年以上の歴史を背負った木造家屋では、耐震基準を満たしていない可能性もあります。とくに、旧耐震基準(1981年6月より前)に基づいて設計された家は、安全面でも不安があるため更地にする目安と考えましょう。

立地が良い

駅近くや大型商業施設・繁華街・都心に近い場合は、更地にしたほうが価値が高まる傾向があります。マンション・アパートなどの賃貸物件や商業施設など、土地活用の選択肢が広がり、高い収益を得られる可能性があるためです。

査定価格が0円の古家が残っているよりも、使いやすい更地のほうが売買価格も高くなることが多く、こうした場合は更地にしたほうがよいケースといえます。

更地にするか、解体せずに売るかを迷う場合は、不動産会社へ相談して判断するとよいでしょう。

周辺環境と建物が合ってない

周囲がオフィス街や商業エリアの場合、古家付き土地よりも更地のほうが、その地域のニーズに合わせた土地活用がしやすくなります。そのため、更地にしたほうが価値が高くなるケースが多いでしょう。

また、土地によっては、市街化調整区域に指定されていることもあります。市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて市街化を抑制する目的で指定された地域のことで、原則として新しく建物を建てることができません。すでに建物がある場合でも、建て替えや改築にも行政の許可が必要です。

更地にして売る7ステップ

更地にして売る7ステップ

築年数・立地・周辺環境から「更地にしよう!」と決めたら、次は「更地化ってどこに依頼したらいいの?」「役所に申請や手続きって必要?」と迷うことも多いでしょう。

【更地にして売る7ステップ】

  1. 解体業者に見積もりを依頼
  2. 現地調査
  3. 工事の申請
  4. 解体作業
  5. 不動産会社の査定を受ける
  6. 価格を決めて売り出す
  7. 買主と契約を結ぶ

「古家付きの土地」を更地にして売却するための手順について、詳しく見ていきましょう。

1.解体業者に見積もりを依頼

更地にするには、まず解体業者を選び、見積もりを依頼しましょう。解体費用の見積もりは、解体を依頼する建物の大きさや構造(木造・鉄骨・鉄筋コンクリート)によって異なります。

目安として、延床面積30坪程度の木造住宅を想定した場合の、地域別の解体費用相場は以下のとおりです。
国土交通省が令和元年に公表したデータをもとに、近年の人件費や資材費の上昇(約24〜25%)を加味して算出しています。
あくまで概算ですが、実際の見積もりを取る際の参考にしてください。

エリア 解体費用
(令和元年度時点・約30坪木造)
上昇率(推計) 現在の想定費用
(弊社試算)
北海道・東北 約100万円 +25% 約125万円
関東 約130万円 +25% 約163万円
中部 約120万円 +24% 約149万円
近畿 約120万円 +24% 約149万円
中国・四国 約110万円 +24% 約136万円
九州・沖縄 約100万円 +24% 約124万円

※出典:「国土交通省 住宅宅地分科会『我が国の住宅ストックをめぐる状況について(令和元年11月)』」に記載の空き家の解体費用に、物価上昇分を加え弊社にて試算。
※上記は延床面積30坪前後の木造住宅を想定した目安であり、構造や敷地条件により実際の費用は異なります。

【見積もりのポイント】

  • 複数の業者に見積もりを取る
  • 解体工事業の登録または、建設業の許可のある業者を探す
  • 家具・不用品は事前に処分しておく
  • 1坪あたりではなく、項目ごとに細かく見積もりを出してもらう
  • 見積もりのわからない箇所は説明してもらう

インターネットでは、坪数・構造の種類を入力すると、簡単に見積もりを出してくれる業者もたくさんあります。また、残された家具や不用品の量によっても処分費用が大きく変わってきますので、少しでも費用を抑えたい場合は、あらかじめ自分で処分しておきましょう。処分の際は、それぞれの自治体のルールをよく確認してください。

自治体によっては、老朽化した空き家の解体に補助金を出す制度もあるため、該当するか確認しておくと安心です。

2.現地調査

インターネットで見積もりを取っていても、現地調査は必須です。正確な見積金額は、現地調査をおこなわなければ算出できません。

敷地の大きさや周辺の道路環境によっては、重機が入れない場所もあります。有害物質や産業廃棄物の有無・処分など、現地調査でしかわからない項目をチェックし、正確な金額を出してもらいましょう。

また、令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事をおこなう施工業者は、大気汚染防止法に基づき、当該工事における石綿(アスベスト)含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられれるようになりました。

報告は、厚生労働省が所管する石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署にもおこなう必要があります。

【報告対象となる工事】

  • 建築物の解体工事(解体部分の床面積の合計が80 ㎡以上))
  • 建築物の改修工事(請負金額が税込100万円以上)
  • 特定の工作物の解体・改修工事(請負金額が税込100万円以上)

アスベストの有無を確認するための調査費用や、解体時に出たアスベストを産業廃棄物処理するなどのコストも上昇傾向にあるため、見積もりに含まれているかを確認しておきましょう。

3.工事の申請

解体工事は、業者に依頼してすぐにスタートではありません。自治体への建築リサイクル法に基づく届出や、管轄警察署への道路使用許可申請も必要です。こうした届出類は、一般的には解体業者が対応してくれるので、依頼する側は委任状を用意するだけとなります。

また、工事が始まる前までに電気・ガスの停止やインターネット回線の撤去といった準備もおこなわなければなりません。

解体時には、騒音や粉じんによって、近所に迷惑をかけることも少なくありません。周辺環境や安全に配慮し、トラブル防止のためにも工事前に周辺への説明・挨拶は終わらせておきましょう。

4.解体作業

実際の解体・更地工事は、以下の流れでおこないます。

  • 養生作業
  • 廃棄物撤去
  • 整地
  • 残作業

養生作業とは、解体時の騒音や飛散する粉じん・廃材による被害を抑えるため、足場を組んで養生シートで覆うことです。養生作業後、内装・不要物・廃棄物などを運び出し、撤去します。

細かい不要物まで撤去した後は、重機を使って表面を平らにする整地作業を行います。解体完了後は、建物滅失登記を法務局へ提出して終了です。手続きに手間がかかるため、解体業者や土地家屋調査士への委託をおすすめします。

解体業者によっては、次の売却のために除草剤散布をしてくれるところもあります。空き地にしておくと、不法侵入や遊び場に使われることもあるため、ロープを張ってもらえないかも相談してみましょう。

5.不動産会社の査定を受ける

建物滅失登記が終わり、更地化を証明できたら、不動産会社に査定を受けます。解体工事の見積もりと同様に、不動産査定も複数社に依頼してください。

また、査定を受ける前に、事前にその土地の相場を知っておくとよいでしょう。相場はインターネットで簡単にチェックすることができます。国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」や、不動産会社提供のポータルサイトなどで調べておきます。

6.価格を決めて売り出す

売買価格は、不動産会社と相談して決定します。最初の売り出し価格は、スムーズに売るために重要です。周辺の土地価格を参考にしながら、値下げ交渉にも対応できるように余裕をもって設定してください。

「どうせ値切られるなら高く設定しよう!」と強気でいくと、最初からチャンスを逃してしまう可能性もあります。不動産会社の意見を聞きながら、妥当な価格でスタートしましょう。

7.買主と契約を結ぶ

購入希望者が見つかった場合、土地の見学や説明などは不動産会社の対応となります。見学前には、念のため雑草やゴミが落ちてないかを確認しておくと、印象が良くなります。

買い手が決まれば、売買契約の締結です。不動産業者に確認し、必要な書類を準備しておきます。契約書で決められた日付に土地を引き渡し、代金の精算をして完了です。

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※国土交通省「不動産価格指数(住宅・全国住宅総合)2015年12月=100換算」

更地にして売るときの注意点

更地にして売るときの注意点

汎用性の高い更地にすると、資産価値も高く、査定金額も期待できます。しかし、良いことばかりではありません。注意点も知っておきましょう。

【更地にして売るときの注意点】

  • 更地にすると固定資産税が高くなる
  • 土地の査定価格が解体費用を下回る場合は解体しない
  • 解体は複数の業者から見積もりを取る
  • 隣地との境界線の確認は早めにおこなう
  • 特例や控除を活用する
  • 建築に制限のある土地がある

更地化を検討している方は、次のポイントを参考に、慎重に判断しましょう。

更地にすると固定資産税が高くなる

古家付きの土地を更地にすると、家があった状態よりも資産価値が上がる分、固定資産税も高くなります。仮に売却がスムーズに進まなければ、解体コストだけでなく、税負担まで増えてしまう可能性もあるため、「古家付き土地」のまま売却するほうが有利になることもあります。

更地で高く売るか、古家付き土地で固定資産税の負担を少なく売るか、迷う場合は不動産会社や税の専門家に相談し、トータルで損をしない選択をしましょう。

土地の査定価格が解体費用を下回る場合は解体しない

地域によっては地価が低く、更地にしても高く売れないケースもあります。もし解体費用が査定額を上回る場合は、更地にせず、「古家付き土地」として売却したほうが良いこともあります。

解体を依頼する前に、不動産会社で査定を取り、解体工事の見積もりと比較してから判断しましょう。

解体は複数の業者から見積もりを取る

不動産会社の査定と同様に、解体業者も必ず複数業者から見積もりを取り、費用や対応を比較することが大切です。

なかには広告だけを見て契約した結果、トラブルになってしまう例もあります。業者選びの際は、インターネットの口コミや実際の施工現場をチェックするのもおすすめです。

近所で解体作業中の現場があれば、養生シート(ほこりの飛散防止シート)を確認してみましょう。養生シートが破れておらず、社名ロゴが入っている業者は、施工管理が行き届いているという目安になります。

境界線の確認は早めにおこなう

隣家との境界は見た目だけではわかりにくいものです。しかし、境界をあいまいにしたまま解体を進めると、トラブルの原因になりかねません。境界線は早めに確認してください。

敷地境界線は現地の境界標(杭)で確認できますが、目に見える線で存在するわけではないため、法務局で地積測量図を取得して確認しましょう。代々受け継がれた土地では、杭が失われていたり、登記や測量が古く、境界が不明確になっていることもあります。必要に応じて、登記や測量を専門家に依頼しましょう。

また、隣家の境界となるブロック塀やフェンスが自分の敷地側だけに設置されていることもあります。隣家の景観や生活に関わる可能性もあるため、解体工事の前に、必ず事情を伝えておきましょう。

特例や控除を活用する

不動産を売却すると、売れた利益に対して税金(譲渡所得税)が発生します。ただし、相続した不動産の売却では、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」を利用できる場合があります。

控除を受けるには確定申告が必要です。早めに税務署や不動産会社に要件を確認しておきましょう。

【特別控除を受ける条件】

  • 解体する空き家が昭和56年5月31日以前に建てられたものであること

被相続人(亡くなった人)が一人暮らしであったこと他にも細かい条件が多数ありますが、一定要件を満たす場合、最大3000万円(令和6年1月1日以降の売却で相続人が3人以上の場合は最大2000万円)の特別控除を受けることができます。

なお、この特例の適用期限は、令和9年12月31日までです。

解体工事前から準備する書類もあるため、必要な書類を事前に確認しておきましょう。

建築に制限のある土地がある

更地にすれば、どんな建物でも建てられるというわけではありません。更地にしたものの、「実は建築に制限がある土地で何も建てられない」というケースもあります。更地化する前に、以下のような要件に該当しないかを確認してください。

  • 市街化調整区域内の土地
  • 現行の建築基準法で再建築できない土地

市街化調整区域とは、都市計画法上、景観の維持や無秩序な市街化を防ぐ目的で指定された区域で、原則としてそれまで住んでいた人やその家族以外は新たに建物を建てることができません。

また、接道義務(幅員4m以上である建築基準法上の道路に、建物の敷地が2m以上接すること)を満たしていない土地は、「再建築不可物件」となります。建て替え時には、道路幅4mを確保するために敷地を後退(セットバック)するなどの必要があり、その分だけ土地の有効面積が減少し、価値が下がる可能性があります。

まとめ

更地化した土地は、資産価値が高くなることが多い一方で、場合によっては更地化しないほうが良いこともあります。相続した空き家を更地にするか、古家付き土地として売るかは、築年数や周囲の環境を踏まえて判断してください。

また、売却希望の古家付き土地が市街化調整区域や建築基準法の制限に該当しないかは、不動産会社に相談すれば調べてもらえます。更地化の是非や売却戦略については、不動産会社と十分に話し合い、慎重に進めましょう。

国土交通省が調査する不動産価格指数によると、全国のマンション価格は 2010年比で+110%(約2倍)!近年では、マンションの価格上昇が顕著です。

上昇トレンドが続くいま、あなたの物件の今の価値を把握しておくことが、売却・住み替えのタイミングを見極める確かな手がかりになります。

水島幸代
水島幸代

オフィスあくあ屋 くらしとお金のアドバイザー  
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/J-FLEC認定アドバイザー/CFP®

■プロフィール
男女雇用機会均等法・施行元年という節目の年に就職活動し社会に出るが、世の中は期待したほど均等ではなく、それならば好きなことを仕事にしてみようと日本を飛び出す。
海外生活を数年満喫するも、「一人っ子」と「高齢の親」というプレッシャーにより30歳で帰国。
外資スタートアップにてバックオフィスの立ち上げから運営までを数社経験したのち、親の介護を機に退職。
くらしとお金の身近な相談相手としてサービスを提供するためオフィスあくあ屋を開業。
現在は、個人向けFP相談のほか、地域・職域・学校現場でのマネーリテラシー講師としての活動のほか、着付師としても地域に関わっている。

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