ひと言に相場価格といっても、築年数や家の広さ、物件のエリアなどでも相場は異なります。家の相場がどのような要素によって変わるのか、理解しておきましょう。
中古住宅を購入するなら、築年数が大きく影響します。
築10年で新築の半分、築20年になると建物部分の資産価値はほとんどないものと見なされるぐらい、価格は変動します。(ただし、土地の部分はそうした経年劣化や減価償却の概念はありません)
築年数が20年を超える家は建物としての価値が著しく減少しているため、お得に買えると感じるかもしれません。しかし、家の状態によっては居住に支障をきたし、住宅ローンの軽減措置対象外となるケースもあるなど、デメリットもあるので注意しましょう。
戸建住宅を買う場合、注文住宅か建売住宅かでも、相場は異なります。
注文住宅は設計事務所や工務店、ハウスメーカーなどに相談し、希望を取り入れた家を建てる方法です。一方、建売住宅はハウスメーカーが家を建てて、新築住宅と土地をセットにして販売しているものを指します。
土地と家を同時に購入するなら、注文住宅のほうが高額になります。
建売住宅では、まとまった規模の土地を区画ごとに分けて、同程度の大きさ・間取り・設備の家を造ります。同じ使用の家を計画的に建てて販売するので、資材の購入や建築工程を効率化でき、販売価格を抑えられます。
対して、注文住宅は1軒ごとに設計して家を造るため、使う資材も建築予定もまちまちであり、コストダウンができません。家へのこだわりが価格にも反映され、建築費用が大幅に増える可能性もあります。
首都圏か地方都市か、駅や生活に必要な施設が近くにあるかといった、物件のあるエリアの環境・利便性も、家の価格を左右します。
同じ面積や間取り、築年数でも、住みたい人が多い人気エリアならば相場価格は高くなるでしょう。
家の広さや使われる材質によっても、家の相場は変わります。専有する面積が増えれば土地代が加算されるのはもちろん、家を建てるために必要な資材の量や工数も増えます。
また、家の構造が木造か鉄骨かといった点も、価格を決める大事な要素です。
木造は日本の気候・風土にあった造りで、鉄骨よりも平米単価を抑えられます。しかし、耐久性は劣るため資産価値が下がりやすいのは欠点です。強度の問題から柱や壁を減らせないため、広々とした空間や吹き抜けを造るのには向きません。
鉄骨は強度があるため、柱や壁を少なくした自由度の高い間取りも可能です。ただし、木造よりも平米単価が上がる点には注意しましょう。
家の相場を調べるときは、年収や地域など、どの条件をベースにするかで方法が変わります。
家の新築や購入を考えるとき、年収から購入予算を考えるのが一般的です。
家は金額の大きな買い物であり、金融機関でお金を借り、住宅ローンを利用する人も多いでしょう。借りられる金額は年収を元に計算され、その後のライフプランにも影響します。 そのため、家の相場は無理なく購入できる金額で考える必要があるでしょう。
金利固定型の住宅ローン「フラット35」の利用者調査に年収倍率のデータがあります。年収倍率とは、家を取得するための所要資金を世帯年収で割った数値です。このデータを見ると、自宅購入資金に年収の何倍の額が必要であったかの参考になります。
【フラット35利用者調査(2020年度)による年収倍率】
こうした事例から、自身の年収に当てはめて、どのくらいの購入予算が一般的なのかを検証しましょう。
ただし、今後のご自身や配偶者の年収の変化も予測して考えるようにしましょう。今は共働きだけど、いずれは世帯主だけの収入で、といった将来計画も慎重に考えましょう。
地域ごとの相場を調べるには、次の方法があります。
不動産会社や不動産ポータルサイトでは、地域を指定して売却に出ている物件の価格を見ることができます。ただし、これは売主が提示している金額です。実際に購入するときの成約価格は、交渉によって変動するので参考程度にしておきましょう。
注文住宅の相場は、どこに建築を依頼するかによって大きく変わります。そのため、ハウスメーカーや工務店などに、平米単価・坪単価を聞いて相場を調べるのが一般的です。
注文住宅では、同じ面積でも家の構造や材質によっても単価が変動します。相場を調べるために問い合せるなら、ある程度家の仕様を想定して相手に伝えたほうが、正確な単価をつかみやすいです。
建売住宅なら、不動産情報サイトで新築分譲される戸建住宅の価格を見るとよいでしょう。エリアや間取り、面積などを指定して、条件に合う分譲住宅がいくらで販売されているのか確認できます。
年収から考えられるフラット35の借入可能額と、フラット35利用者調査による年収倍率(全国)から考えられる家の平均購入価格をまとめると、下表のようになります。
いずれも借入可能額内に相場価格は収まっており、自宅購入資金はロン限度額までとしている人が多い様子が伺えます。
家を購入するエリアによっても、価格の相場には違いが出ます。ここからは、全国5大都市の家の相場について解説します。
不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」に掲載されている戸建住宅情報から、各都市の家の相場を調べました。(2022年3月20日時点)
5大都市における新築戸建の販売価格は下表の通りです。
(1,975件)
~4,000万円まで 176件
~6,000万円まで 1,037件
~8,000万円まで 482件
8,000万円超 274件
(92件)
~4,000万円まで 64件
~6,000万円まで 26件
6,000万円超 1件
(1,449件)
~4,000万円まで 1,247件
~6,000万円まで 201件
(527件)
~6,000万円まで 197件
~8,000万円まで 12件
8,000万円超 13件
(847件)
~6,000万円まで 342件
~8,000万円まで 7件
8,000万円超 1件
東京23区内の新築戸建は、情報サイトに掲載されている販売価格の開きが大きいのですが、ボリュームゾーンは4,000万円~6,000万円あたりのようです。その他の都市では、2,000万円~4,000万円あたりの物件情報が多くなっています。
つづいて、中古戸建の販売価格を見てみましょう。
(1,119件)
~4,000万円まで 233件
~6,000万円まで 308件
~8,000万円まで 195件
8,000万円超 304件
(138件)
~4,000万円まで 96件
~6,000万円まで 14件
~8,000万円まで 3件
8,000万円超 3件
(186件)
~4,000万円まで 101件
~6,000万円まで 34件
8,000万円超 4件
(1,009件)
~4,000万円まで 460件
~6,000万円まで 100件
~8,000万円まで 26件
8,000万円超 24件
(115件)
~4,000万円まで 59件
~6,000万円まで 28件
~8,000万円まで 10件
8,000万円超 7件
一部、特殊な付加価値による高額な中古物件もありますが、新築戸建と比較すると各都市ともに物件の価格帯は下がる傾向にあります。東京23区内でも、4,000万円以内で購入可能な物件もあることがうかがえるでしょう。
家の相場を調べるには、自身の年収から考えて用意できる金額と、エリアごとの相場価格を考えるのが重要です。
家を購入するときは、自己資金と住宅ローンを組み合わせる人が多いので、 ローンの限度額と自己資金を超えないように考えましょう。
しかし、ローン限度額に自己資金を加えた目一杯の金額で家を購入すると、突然の大きな出費に対応できません。引っ越し代や家具などの費用もかかります。また、将来、子どもが増えたり、仕事が変わって収入が減ったりという家計の変化もあり得ます。
また、家は定期的なメンテナンスが必要であり、購入後もお金がかかるものです。家の維持にかかる費用も考えると、ローン限度額までを自分の相場価格とするほうが、返済計画やその後のライフプランにも無理が出ないでしょう。
家の値段は、土地部分と建物部分(上物)の評価額で決まります。同程度の地価のところにある家でも、建物部分の価値によって、相場は大きく変化するのです。
建物の価値を判断するうえで参考になるのが、後述する「減価償却」や「耐用年数」といった指針です。
木造やRC造といった材質によって「何年価値を保てるか」が定められており、とくに中古物件を購入する際は「いくらの価値が残っているか」を算定する際に役立ちます。
売価が高いか安いかを判断するために、耐用年数を基準に残存価格(残っている価値)を算出して比較すると、上物の価値をより正しく把握できるでしょう。
実勢価格とは、土地の売買で実際に取引が確定した価格のことです。たとえば2,000万円で売り出されていた土地が、最終的に1,800万円で買われたなら、この土地売買での実勢価格は1,800円になります。
土地の相場を把握するには、実勢価格を確認しましょう。実勢価格を調べるには、国土交通省の「土地総合情報システム」が便利です。
サイトにアクセスし「不動産取引価格情報検索」のメニューから、調べたい地域や取引時期を選択すると、取引のあった土地が地図上に表示されます。このとき不動産の種類を「土地」に限定すると、土地相場が調べやすくなるので活用してみてください。
自分が購入しようと考えている地域周辺の実勢価格から、土地の相場を把握しましょう。
不動産情報サイトに掲載されている家の価格や、レインズ・マーケット・インフォメーションに登録されている成約価格も、家の相場を調べるにあたって参考になります。購入したいエリア周辺の相場を調べるときは、土地の値段を含めたものを参考にしましょう。
また、不動産の建物部分には、用途や構造ごとに耐用年数と償却率が決められており、中古物件の売買価格を決める際に反映されます。
耐用年数とは、その資産を使用できる期間のことで、建築物や車両、設備機器など、数年にわたって使用されるものに対して設定されています。
耐用年数を経過しているからといって、その家に住めなくなるわけではありません。しかし、建物の価値を判断するうえでの基準になっているため、耐用年数が近づくにつれて価値がなくなります。
そのため、不動産の売買において建物の価値を考えるとき、減価償却の計算が必要となります。償却率を用いての減価償却計算は複雑なので、相場の見当を付けたいならば耐用年数から逆算するとわかりやすいでしょう。
例えば、築10年の木造住宅なら建物の価値は新築時の半分程度、築20年を超えるとほぼ建物部分は価値がないものと考えられます。 このように計算すると、新築物件の価格から、同条件の中古物件の相場もおよその見当が付けられます。
家の相場は築年数やエリア、どのような家にしたいかによって変化します。 まずは自分の収入と家を持ちたいエリアから相場をつかみ、無理なく購入・建築できて、その後の返済と維持費が払える物件を考えましょう。
資金が潤沢にあるからといって、預貯金や親の援助に加えて、ローンの借入限度額すべてを家の購入に使ってしまうのはおすすめできません。突然の出費に対応できる資金がなくなったり、家の維持費を払えなかったりする恐れがあります。
自分の年収から考えられるローン限度額までの範囲に抑え、その他の借入金返済も含めた資金計画を立てて、購入予算を考えましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。