自宅を売却しようと考えた際に、多くの方は自宅が本当に売却できるか不安に思うことでしょう。ほとんどの場合は売却できますが、中でも以下のような状況だと不安に感じる方が多いです。
結論から言うと、上記のような場合でも自宅の売却は可能です。 それぞれの状況について詳しく解説していきます。
ローンが残っていても自宅の売却は可能です。具体的には、自宅売却資金でローン残高を完済することができれば可能となります。
ローンは通常、保証会社が自宅(土地、建物)に抵当権を設定しています。 抵当権とは、ローンが支払えなくなった時に保証会社が自宅売却などをして支払えなくなったローン債務を返済するために設定されているものです。
また、ローン残高が0とならない限り抵当権は抹消できません。 つまり、自宅売却により得た資金をローン返済に充当して、抵当権を抹消し、買主に引き渡すことが可能です。
引越しをしていなくても売却は可能です。 そもそも自宅売却を検討する際、順序として2つのパターンがあります。
ほとんどが1.の引越をせずに自宅に住みながら買主を見つけ、その後新居へ転宅するケースです。
2.のように先に新居購入となると、以前の自宅にローンが残っていれば、住んでいなくても支払い続ける必要があります。また、ローンが残っていると新居では新たにローンを組めない仕組みとなっているため、経済的に余裕のある人しかできないのが現状です。
一方、以下のように、自宅を売却できないケースもあります。
これら2つのパターンについて説明します。
相続あるいは贈与により自宅を譲り受けた場合などには、自宅の名義人が自分以外複数名存在する場合があります。 この場合、売却前に他の所有者名義を自分の名義に変更しておくか、あるいは他の所有者の同意を得ないと売却ができません。
自分の名義に変更する場合、変更登記が必要となります。
司法書士に依頼して変更手続きをおこなうのが一般的です。 名義変更が完了するまでおよそ2週間近くかかりますので、時間的な余裕を見ておく必要があります。注意点として、所有権の異動理由が「贈与」となるため、贈与税についても考えておく必要があります。
隣の土地との境界線がはっきりとしていない場合も、売却は難しいでしょう。 これは、購入者が売却をしたあとのトラブルを恐れてしまう可能性があるためです。
売却を考えている物件の境界線が明確でない場合には、法務局に行き、地積測量図を取得することをおすすめします。 「地積測量図」とは、保有している土地の境界線を明確に示している公式のマップのようなものです。
通常は、土地の権利証に添付されているこの書類ですが、手元にない場合にはトラブルを避けるためにも入手しておきましょう。
自宅を売却するにあたって、その方法は以下の2通りがあります。
それぞれの特徴を説明します。
仲介とは、不動産会社が買主を探し紹介してもらう売却方法です。
特徴として、不動産市場の相場価格で売却することができるので買取に比べ高く売却でき、売主本人が買主を探す必要のないこともメリットとして考えられます。
一方で、買主が見つかり契約を交わした後も住宅ローンの申込や審査など売却手続きまで通常2~3ヵ月あまりかかるといったデメリットがあり、また、買主が申し込んだ住宅ローンが否決となったり、時間の経過により不動産価格が下がるといったリスクも考えておかねばなりません。
買取とは不動産会社に直接買い取ってもらう売却方法です。
特徴として、不動産会社へ直接売却するため、仲介よりも早期に売却が可能であり、今後の資金計画がはかどる利点があります。 また、不動産会社が買主であるため、仲介手数料がかからないことも売主にとってメリットでしょう。
一方で、不動産業者はその後リフォームなど付加価値をつけて販売することを前提としているため、建物に破損などがあるとその後の販売計画に支障をきたすことも考えられるので、仲介よりも低く売却されることがあります。
自宅を売却する流れは以下の通りです。
それぞれのステップを解説していきます。
自宅売却を検討する際、実際どれくらいの相場で売買されているのかを知っておく必要があります。
相場を調べる方法として、主に以下が挙げられます。
上記のような方法を用いて、まずは希望している売買価格と合っているかを調べましょう。
不動産会社に査定を依頼し、現状の自宅の価格を把握します。 相場を確認したら、不動産会社で正式な査定を受けましょう。
不動産査定には机上査定と訪問査定があります。 机上査定は現地を見ないので速やかに終わりますが、訪問査定は日程の調整が必要です。 訪問査定は半日程度で終わり、1週間くらいで結果を知ることができます。
一般的にはしっかりと金額が判明する訪問査定をおこなうことが多いです。 ただし、訪問査定を受けるための時間がないなどの場合は机上査定でも良いでしょう。
できる限り複数の不動産会社に査定依頼をするほうが、比較検討できるので確かです。また、あくまで「査定」ですので、高い査定をした会社に頼めば高く売れるというわけではありません。
自宅の不動産価格をおよそ掴むことができれば、仲介してもらう不動産会社を選びます。通常、査定を依頼した不動産会社と媒介契約をするのが一般的です。
媒介契約とは、売主と買主をつなぐ仲介活動を依頼する契約を指します。
媒介契約には3種類あり、それぞれの良さがあるので状況に合わせて媒介契約を結びましょう。
媒介契約をおこなった不動産会社は売却活動をおこないます。
その際、売主は現状の相場や取引事例、また、売却による住宅ローン完済を考えているのであれば、ローンの残高などを鑑み売却価格を決定し、不動産会社へ伝えておきましょう。
相場より安い設定であれば早く買主が見つかる可能性もあり、反対に高い設定であれば売却まで時間がかかる恐れがあります。
売主、買主が条件面で双方納得できれば、売買契約を結びます。売買契約は売主、買主、双方の仲介業者が、不動産会社でおこなうのが一般的です。
契約の際、買主に対して重要事項の説明をおこない、契約書に署名・捺印をおこない、その後手付金の受け渡しをおこないます。
契約書には収入印紙を貼って、重要事項の説明を受けたのち、手付金があれば入金を確認すれば契約は完了です。
2022年5月以降はオンラインでの契約も可能となり、その際には収入印紙は不要となります。こうしたことは不動産会社に相談してください。
自宅を売却しようと決心し、実際に売却に至るまでどれくらいの期間を要するのでしょうか。 一般的に目安として6ヵ月近くかかるといわれており、下記のような流れで進んでいきます。
売却希望価格が相場より安かったり、媒介契約をした不動産会社の営業によっては早く売買契約に至ることもあります。
自宅を売却する際に必要となる費用には主に以下があります。
「税金」と「税金以外」の費用に分けて解説していきます。
自宅を売却するとかかってくる税金には、次の3つがあります。
自宅売買により売却益が出た場合、つまり購入金額より高く売却できた場合に税金がかかります。譲渡所得といって、翌年に確定申告により納税しなければなりません。
また、所有期間によって税率が変わるので注意が必要です。
※所有期間:売却した年の1月1日現在の期間
また、自宅売却時、売却益より3,000万円を控除できる特例があります。
そのほかにも、以下のような税制を上手に活用することで税金を節約できるため、活用することがおすすめです。
税金以外にも以下のように自宅売却時に発生する費用があります。
特に仲介手数料の出費が一番大きいでしょう。
この仲介手数料とは不動産会社に支払う手数料で、物件売却価格の3%に6万円を加えた金額が必要です。(なお、売買価格が400万円以下の場合の仲介手数料の上限金額が、売主のみ一律18万円以内と変更されました)
事前に売却時の税金以外の費用も計算に入れておきましょう。
自宅売却を検討する際、買主が見つかればいいというわけではありません。
以下のようなポイントを注意しておく必要があります。
それぞれを解説していきます。
不動産査定は3社以上に依頼して有利なものを選択することをおすすめします。2社から見積もりを取って満足する方がいますが、その場合どちらが適性価格か判断しづらくなるためです。
一方で、3社以上から見積もりを取っていれば、大体の相場感が分かるでしょう。また、明らかに相場から離れている見積もりを見つけることにもつながるのです。
手間がかかりますが、土地を売る際には必ず3社以上から見積もりを取ることをお勧めします。
自宅の近隣不動産の相場を調べるにあたり、ウェブサイトでの検索もおすすめです。 不動産会社の査定額とどれくらいの乖離があるのか、また売却額を決めるときの参考となります。
安心して検索できるウェブサイトに、次の3つがあります。
また、売主も内覧を実施することで、売買契約につなげやすくなります。一般的に内覧が5〜10件ほど入ると成約に至るといわれています。
購入希望者が印象を良くするには、以下の点に注意すべきです。
購入希望者は室内の清潔感を重視する傾向があります。特に台所、トイレ、風呂といった水回りについては一層念入りに掃除を心がける必要があります。
通常、不動産会社の担当者が購入希望者を案内します。とはいえ、任せっきりにすることは好ましくありません。購入希望者の質問に丁寧に応えるなどといった対応を心がける必要があります。購入希望者が買主になった際、売買契約や引渡しなどで何度も顔を合わせる機会があるので、購入希望者の印象が良くなることは売主にとってメリットでしょう。
自宅の特徴は、実際に住んでいる売主が一番わかっているものです。特に日当たりや風通し、明るい時間帯の内覧ではわからない、夜になってからの環境などを伝えることは非常に有益でしょう。 また、設備関連の不具合など、印象を悪くする点も正直に伝えることが大切です。
なお、嘘をついたり、過剰に話を盛ってアピールしたりすることは、善管注意義務違反となり、売買契約の無効や損害賠償の対象となるので気をつけてください。「近くにこんなショッピングセンターが出来る計画がある」などは、本当にその計画書がなければうかつに言ってはいけません。
自宅売却をするなら少しでもきれいに、機能的に、と考える売主がいるでしょう。
実はその逆で、清掃などをして清潔にはしないといけませんが、必ずしもリフォームなどはする必要はありません。なぜなら、自分好みに自宅をリフォームしたいと考えている買主が多いからです。
また、リフォームに要した金額を売却金額に上乗せしても売れるとは限らないため、リフォームをして投資を上乗せすることは、時にはリスクにもなります。
当然のことながら、不動産会社は慎重に選ばなければなりません。どういった点に注意するべきでしょうか。
不動産会社を選ぶのに主に次の3点が重要です。
また、売主自身が不動産会社に赴き、実際会ってみて判断されることも重要です。地域での評判やライバル会社からの口コミなども参考にしましょう。
ここまで自宅売却について説明してきました。
自宅売却は引越ししていなくても可能であり、逆に買主が決まる前や新居入居前に間借りするのは、費用がかかるためあまりおすすめできません。
自宅売却の前には、所有者の確認、及び土地の境界線が明確であるかをチェックします。自宅売却には「仲介」「買取」の2通りあるので、それぞれのメリット、デメリットを把握したうえで選択するのをおすすめします。
自宅売却の流れ、売却までの期間、売却後に発生する税金や付随する費用を考慮しつつ、満足いく取引ができるように万全の準備をして進めていきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。