毎年4〜6月になると、市区町村から「固定資産税納付書」が送られてきます。この書類の中身をしっかりご覧になったことはありますか?
固定資産税は国税でなく、地方税のひとつです。
この固定資産には、どのようなものが含まれているかといった詳細を知っておくことで、より納税額を計算する精度が高まります。
固定資産税とは、土地や家屋、または償却資産を所有している人に対してかかる税金です。土地、家屋、償却資産には、下記のようなものが該当します。
(参考:https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/)
納税義務者は、1月1日時点で土地、家屋および償却資産の所有者として、登記簿または固定資産課税台帳に登録されている人です。
例えば、売買などで実際の所有者が変更していても、1月1日時点で、登記簿などで所有権移転がなされていなければ、旧所有者が納税義務者となりますので注意が必要です。
固定資産税は国税でなく地方税であり、固定資産所有者は地方自治体に地方税として納税するしくみです。毎年4〜6月に、1月1日時点で固定資産を所有している人に対し、地方自治体から納税通知書が送られます。内容は、課税証明書(固定資産の価格およびそれに対する税額)および納付書です。
納付方法は2種類あり、納付書にはいつ支払うのかが記されています。
【地方自治体における固定資産税の支払い時期】
例えば、大阪市の分納では、 毎年4月・7月・12月・2月の月に支払うことになっています。
ただし、納期最終日が月末となっていないことがあるため、注意が必要です。実際に支払う際の窓口は、以下から選択ができます。
【固定資産税の支払い窓口の種類】
なお、納付期限を過ぎてしまうと延滞金が課されるため、期日を確認しておきましょう。
支払先は所有している固定資産がある地方自治体です。例えば、東京都に住んでいても、所有している不動産が札幌市であれば、札幌市に納税することを覚えておきましょう。
では、一戸建ての固定資産税はいくらくらいなのでしょうか。一般的に、2,000~4,000万円の一戸建ての固定資産税の平均額は、10〜15万円といわれています。つまり、毎月1万円前後が固定資産税としてかかっていると考えられます。当然、建物の状況によって違いはありますが、目安として考えておきましょう。
ちなみに、「建物の状況」とは、以下のような要素が挙げられます。
【固定資産税の金額を左右する建物の状況例】
平均的な固定資産税の額が参考にならないケースもあることを、考慮しておく必要があります。
一戸建ての固定資産税は、以下の4ステップで算出します。
それぞれのステップについて、解説していきます。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する上でベースとなる価格のことで、土地・家屋それぞれ分けて算出します。固定資産税評価額は3年に1度見直しがあるため、支払う年の額を必ず確認しましょう。
固定資産税評価額の調べ方は、状況に合わせて以下3つのパターンがあります。
ただし、固定資産税評価額を調べることが困難な場合には、取引事例から概算を算出する方法もあります。
状況に合わせて、適切な調べ方をしましょう。
ステップ1の方法で土地・建物の固定資産税評価額が計算できれば、次はそれぞれに税率を掛け合わせます。
通常、標準税率として定められているのは1.4%です。しかし、自治体によっては1.5%や1.6%などと異なる場合もあるので、気をつけなければいけません。
正しい固定資産税の税率は、各自治体のホームページで調べるか、直接問い合わせをしましょう。
新築以外の建物については、建物の固定資産税評価額に「経年減点補正率」を掛け合わせます。経年減点補正率とは、築年数によって建物の価値が減少するため、数値によって価値の減少を表すものです。
通常であれば、法務局で経年減点補正率が公表されています。
(参考:https://houmukyoku.moj.go.jp)
このように、経年劣化によって古くなっている建物であれば、構造などを考慮して固定資産税の金額を補正するのです。なお、土地に関しては、経年減点補正率による評価額の見直しは不要となっています。
固定資産税には、土地、建物それぞれに特例措置があります。それぞれ条件が合致すれば、固定資産税評価額に税率を掛け合わせた数値に適用させることが可能です。
固定資産税の軽減措置の具体例は、以下の通りです。
一戸建ての購入を考えている人にとって固定資産税は、毎年必ず納税しなければならない税金のひとつです。ここでは、具体的な事例を2つ挙げて、それぞれ固定資産税がいくらかかるのか、シミュレーションしていきます。
以降で、「新築」および「築10年の一戸建て」の固定資産税を計算していきます。
まずは、新築一戸建ての固定資産税シミュレーションをおこなってみましょう。今回は、以下の条件の物件を対象として、東京都の経年減点補正率を採用します。
(参照:東京法務局「東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」)
まずは、「固定資産税評価額の算出」をおこなっていきます。具体的には、以下の通りです。
ここでのポイントとしては、新築のため再建築価格の約60%は不要です。
次に、「補正前固定資産税額を算出」していきましょう。固定資産税額=固定資産税評価額×税率であるため、計算式は以下の通りとなります。
ここまでで判明した「建物部分の評価額=14万円」に、経年減点補正率を掛けて修正していきます。なお、事例での一戸建ては新築の木造住宅であるため、経年減点補正率も不要です。つまり、以下のような結果となります。
最後に、条件次第で「軽減措置」を適用させていきます。事例の土地は、100㎡の小規模住宅用地であるため、土地用地に対する軽減措置を適用することが可能です。
ここまでの計算でこの一戸建ての固定資産税は、「土地の固定資産税額4.9(万円)+建物の固定資産税額14(万円)=18.9(万円)」となります。
次に、築10年一戸建ての固定資産税シミュレーションをおこなってみましょう。
まず、先ほどと同様に「固定資産税評価額の算出」をおこないましょう。
続いて、「補正前固定資産税額を算出」していきます。計算式は「固定資産税額=固定資産税評価額×税率」なので、以下の通りとなります。
先ほどの計算で判明した「建物部分の評価額=8.4万円」に、経年減点補正率を掛けて修正していきます。事例での一戸建ては築10年の木造住宅であるため、再建築価格に経年減点補正率を掛けます。
これによると、今回の事例は木造で築年数が10年であるため、経年減点補正率は0.5です。つまり、以下のような結果となります。
最後に、条件次第で「軽減措置」を適用させましょう。事例の土地は100㎡の小規模住宅用地であるので、土地用地に対する軽減措置を適用することができます。
よって、この土地の固定資産税額は以下の通りとなります。
一戸建ての固定資産税がいくらになるのかについて解説しました。固定資産税とは、1月1日時点で、土地や家屋、償却資産を所有している人にかかる税金です。売買などで所有権が移転していても、登記簿などで変更されていないと納税義務者となるため、注意が必要となります。
通常、4〜6月に納税通知書が送付され、全納・分納により固定資産税を納付しますが、期限があるので遅れないよう納付する必要があります。通常、一戸建ての固定資産税は、10〜15万円が相場です。
どのように固定資産税を計算するのか知っていれば、購入の際に役立つので、ぜひ覚えておきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。