「新築マンションを少しでも安く買いたいので、値引き交渉したい」と考える人もいるでしょう。マンションの購入は人生で最大の買い物です。出来ることなら安く買いたいという気持ちはわかります。
しかし、基本的には「交渉して値引きに応じる」という事はほとんどありません。「この区画がほしい」と希望しても、他にも希望している世帯がいると抽選で購入者を決めることもあるため、購入が決まったあとに価格を値切りたいと申し出ても難しいのです。
とはいえ、安い価格で購入出来ることも稀にあります。それはどんなとき、どんな物件でありえるのでしょうか。ここでは、値引きの対象となる可能性のある物件の特徴を5つ紹介します。
【値引きしてもらえる可能性のある物件の特徴】
値引きをしてもらえるポイントを押さえて、購入物件を探しましょう。
新築マンションのなかでも、すでに建築が終了している完成済み物件は値引きをしてもらえる可能性があります。マンションが完成しているにも関わらず入居者がいない部屋は、在庫扱いとなります。また、完成後1年以上経つと、「新築」と呼べなくなり「未入居」と呼ばれる物件になってしまいます。
そのため、販売業者は早く売却したいと考えており、値引きをしてくれる可能性があるのです。現状の価格で販売をしていても、販売のための人件費がかかり、土地購入や物件の建設にかかった資金の金利もかさんでしまいます。 このまま売れ残り続けるよりは、早く売って次の販売物件にシフトしたいという販売業者の事情があり、値引きに応じてくれることがあるのです。
また、近隣で新しいマンションの建築が始まれば、物件はますます売れにくくなります。販売業者は極力在庫を持たないようにするため、値引きをしてでも販売しようとする可能性があります。
売れ残っている戸数が少なく、かつ1年以上売れなかった物件も、値引きしてもらえる可能性が高いです。特に、残りが3戸以下になっている物件は可能性があります。 販売業者としては、1戸でも売れ残っていたら販売体制を閉じることができません。販売活動を続けるしかなく、その分宣伝費が必要となります。
また、前述にもありますが完成後1年が経過すると、「新築」と呼べず「未入居」物件となります。そうなると資産価値としても築1年の中古と比較されてしまいます。まだ誰も住んでいないということで価値はありますが、耐用年数などはそれだけ古くなってしまうのです。
長期間売れず、かつ残り戸数が少ない物件は通常よりも大幅に値引きしてもらえる可能性があります。
棟内モデルルームとして利用されていた物件は、通常価格より安く販売されます。モデルルームには何人もの人が出入りしています。扉の開け閉めの回数も多く、フロアにも多数の人が出入りしていますので、他の新築の部屋と同じ価格で売り出す際にも、家具つきなどの特典がつくケースが多くなっています。
そのため、棟内モデルルームは新築マンションとして売られている他の部屋よりも、安い価格で売られることが多いです。
新築であっても人気がない物件はあります。人気がない物件は売りにくく、業者も値引きに応じてくれることが多いです。
なかなか買い手がつかず売れ残っている、あるいは今後も売れ残る可能性がある住戸は、値付けそのものも安くなっているケースが多く、売れ残り続けている期間が長くなると価格変更の可能性もあります。
新築マンションを取り扱っている不動産会社のなかには、最初から値引きに応じない方針の企業も存在します。値引きに応じてくれない姿勢の会社に交渉しても割引を受けることは難しいため、最初に確認しておきましょう。
特に、不動産会社のブランドマンションは会社の顔にもなるので、値引きをおこなわないことが多いです。過去の販売価格などを調査しましょう。逆に、販売会社を変更し、建設時の会社ではない会社が販売を担当するようになると、価格変更や値引き交渉に応じるといったケースもあります。
新築マンションの値引きには、タイミングも重要です。同じ物件でもタイミングが違うことで、値引き価格は大きく異なります。
ここでは、新築マンションの値引きが成功しやすい以下の2つのタイミングを紹介します。
不動産会社が値引きに応じてくれるタイミングを把握して、お得に新築マンションを購入しましょう。
決算月は値引きしてでも商品を売却したいと考える企業が、少なからず存在します。不動産会社では3月末を決算月としている場合が多いため、この時期を狙いましょう。
決算前は担当者もノルマに追われているなど焦っていることが多く、大幅値引きに応じてくれる可能性もあります。また、決算セールとして大々的に宣伝を行う企業もあるため、広告などをチェックすることも大切です。
ただし、3月になってから物件を探すと焦って購入してしまうので、おすすめできません。1~2月頃から物件を探し始め、2月末頃にそうしたキャンペーンがないか探してみると良いでしょう。
マンションは新築であっても時間が経過することで価値が下がります。さらに、マンションが完成してから1年が経つと新築として販売できないので、販売会社としては何としてでも1年以内に売却したいのが本音です。
そのため、完成から1年が経つ物件は、値引き交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。マンションの完成日を確認しましょう。
新築マンションの値引き相場は、元の価格の1割以下といわれています。ただし、物件の状況や取り扱っている会社によって異なるため、1割の値引きに応じてもらえないことも多いでしょう。
また、新築にも関わらず2~3割の値引きに応じてもらえる場合は、何かしら不人気の理由があるかもしれません。安いからとすぐに購入を決めてしまうのではなく、よく調べることが大切です。他の部屋の売却価格を調べておくなどしておきましょう。
仮に、値引き交渉に応じてくれそうな場合、なんの知識もなく、ただ値引きをして欲しいと伝えるだけでは希望額で購入することは難しいでしょう。値引き交渉にはコツがあります。 ここからは、新築マンションの値引きのコツを5つ紹介します。
【値引き交渉のコツ】
それぞれのポイントについて詳しく解説していくので、ぜひチェックしてください。
不動産会社の担当者は何人もの顧客を抱えているので、購入しそうな人・購入しなさそうな人を見極めています。そのため、担当者に「値引きをすれば購入するだろう」と思わせることが大切です。
担当者に購入の意思を伝えるには、マンション購入への本気度を示す必要があります。「絶対に購入するから」と言葉で表現するだけでは、本気度が伝わらないこともあるでしょう。住宅ローンの事前審査を通過しているなど、購入の意思を伝えられる強みを作っておくのがおすすめです。
不動産売買の値引きで多いのが、「端数切り」です。端数切りとは、下2桁の金額をカットしてもらうことをいいます。例えば、マンションの売却価格が2,990万円の場合、下2桁の90万円を引いてもらうことです。
販売開始からあまり時間が経過していなくても、値引きしてもらいたいことを伝えやすい手法です。
不動産にはエリアによる相場価格があり、同じクオリティの物件でも場所によって値段は異なります。相場よりも大幅に値引きしてもらうことは難しいです。そのため、購入を考えている新築マンションの周辺物件の相場を調べておくと良いでしょう。
相場よりも高い価格の物件は、それを理由に話をすることは有効かもしれません。相場を知っておくことで、いくら値引き交渉をするか判断しやすくなるため必ずチェックしておきましょう。
値引きをお願いする理由を詳しく伝えることで、交渉が成功する可能性は高くなります。例えば、物件の価格が3,100万円で予算が3,000万円の場合は、「予算が3,000万円だから100万円の値引きをして欲しい」と伝えると良いでしょう。
また、「値引きに応じてくれるなら◯月までに契約をする」と伝えるとより効果的です。理由を詳しく伝えることで購入する意思も担当者に伝わります。
資金に余裕がある場合は、現金で一括購入するという方法があります。
ただし、現金での一括購入では住宅ローン控除を受けることができません。長期的に見て損をすることもあるため、住宅ローンを組む場合と現金で購入する場合の両方のパターンで計算してみるのがおすすめです。
ここまで述べてきたように、新築マンションを値引きして販売する住戸は、不人気で売れ残ってしまった物件であるケースが多く、「不人気な理由」がそれなりにある物件がほとんどです。
人気のある物件ほど値引きは困難であり、抽選での購入の奪い合いとなります。良い物件を購入しようと考えると、値引きは難しいという事実は踏まえておきましょう。
新築マンションの値引きは、断られることも多いです。しかし、値引き以外にもお得に新築マンションを購入する方法はあります。
ここからは、新築マンションの値引きに失敗したときの代替案をご紹介します。
ひとつずつ確認して、少しでもお得な買い物をしましょう。
値引きができない新築マンションであっても、オプションをサービスでつけてくれることがあります。大幅な値引きはブランド力を下げることにつながるため、避けたいと考える業者が多いです。また、会社の方針によって値引きができないこともあるでしょう。
そういった場合でも、金額以外の部分であるオプションでのサービスは承諾してくれる会社が多いです。モデルルームの場合は家具をサービスでつけてもらえることもあるため、金額での交渉が難しい時はオプションサービスの交渉をしてみてください。
新築マンションの購入では、物件の購入費以外にもさまざまな手数料が必要です。物件価格の3~5%程度の初期費用が必要だともいわれています。初期費用を抑えることができれば、結果的に安くマンションを購入できるでしょう。
特に、住宅ローンの借り入れ手数料に注目してください。不動産会社から紹介された金融機関を選択する人は多いです。しかし、初期費用を抑えるなら手数料の安い金融機関を自分で探して利用しましょう。
新築マンションの購入が住み替えの場合は、購入価格ではなく売却価格にこだわるのもひとつの方法です。今住んでいる家をできるだけ高く売却することで、結果的に必要となるお金を抑えられます。
家を高く売却するためには、1社だけではなく複数社に不動産査定してもらうのがおすすめです。査定価格を比較することで、売却価格が適切であるかも判断できるでしょう。
新築マンションの値引きについて詳しく紹介してきました。希望の物件を予算内で購入するためにも、値引きのポイントは重要となるでしょう。しかし、初めてのことで不安な点もあると思います。
ここでは、できるだけ不安をなくして購入するために、新築マンションの値引きに関するよくある質問を2つご紹介します。ぜひチェックしてください。
【新築マンションの値引きに関するよくある質問】
新築マンションの値引きは、景気に左右されます。景気が良いときはマンションを購入しようとする人が多く、値引きをしなくても比較的早く売れるでしょう。しかし、景気が悪いときは購入したいと考える人が少なく、値引きをしても売れない場合があります。
そのため、景気が良い時は値引きされにくく、景気が悪いと大幅値引きが期待できます。また、景気によって価格相場も変動するので、そのときの相場を参考に値引き交渉をおこないましょう。
新築マンションでは500万円の値引きも可能です。ただし、ほとんどの物件で500万円の値引きを受けることは難しいでしょう。購入価格の1割の値引きに応じる不動産会社は多いですが、300万円を超える値引きをおこなう会社は少ないです。
また、元の値段が安い物件では500万円の値引きに応じてくれる可能性はかなり低くなります。500万円の値引きが実現するとすれば、物件価格が5,000万円以上で値引きの対象となるさまざまな条件に一致するときでしょう。
今回は、新築マンションの値引きについて紹介しました。新築マンションでも値引きを受けられる場合は多いので、まずは交渉してみるのがおすすめです。
しかし、物件についてよく調べずに値引き交渉をすると、購入意欲が伝わらなかったり相場を知らないと判断されたりと失敗につながることもあります。新築マンションの値引き交渉をするときは、ご紹介したポイントを把握して正しくおこないましょう。
また、値引きに失敗しても他の方法でお得に購入することができます。値引きだけにこだわらず、お得に新築マンションを手に入れられるように工夫してみてください。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。