土地売却の段階ごとに注意したい項目をチェックリストとしてまとめていますので、参考にしてみてください。
【土地売却のシーン別注意点チェックリスト】
特に、土地売却前の段階においては注意すべき項目が多いことからもわかるように、売却前の事前調査が成功のカギを握るといっても良いでしょう。
同時に、売却中の購入希望者への配慮はもちろん、その後の控える確定申告などやるべきことが多いことがわかります。
土地を売却する前に売主が注意すべき点を以下にまとめました。
前述でご紹介した「土地売却における注意点チェックリスト」からもわかるように、土地売却前の注意点は8つのポイントがあります。
注意点を前もって押さえておくことで、土地売却の成功率が上がるでしょう。詳しく見てみましょう。
土地の登記内容が現在どのようになっているかについて、実際の状況と併せて確認することが求められます。土地の登記内容は購入者と交わすことになる売買契約書にも関連するため、しっかり確認したいところです。
登記内容は法務省・法務局に届け出るための公式情報ですが、現状の土地状況と届出当時の登記情報との間に相違点があることも珍しくありません。
売ろうとしている土地の情報が現状と登記情報と合致していないと購入希望者とのトラブルに発展するだけでなく、最悪の場合、売却できない場合があります。
もちろん、登記情報と異なる内容だったからといって、購入希望者と口頭で条件交渉することもできないため注意しましょう。
田舎にある土地の場合、所有者の変更が少ないだけでなく登記申請の変更を行う慣習があることが多く、登記内容と実際の土地状況の差異がないことが一般的です。
しかし、以下の状況下にある場合、登記内容と実際の土地の状態に相違が生じている可能性があるため、注意することをおすすめします。
【土地の登記内容と現状をより把握すべき人】
土地の売却を検討する場合は、測量で隣接地との範囲を明確にすることも忘れてはいけません。
杭やフェンスがあれば土地の境界線を示すわかりやすい指標となりますが、土地の状況によっては登記上と実際の所有権が異なるケースもあります。隣接地との境界線をあいまいなままにしておくと売却時にご近所トラブルにつながるため、所有している土地の範囲を明確にすることを忘れてはいけません。
土地売却にあたり、隣接する土地と自身の所有地との境界線をはっきりさせる境界標と測量図が必要です。
境界標と測量図をもとに最低限隣接地を把握し、土地の範囲を明確にします。以下に当てはまる場合は、日本土地家屋調査士会や弁護士・測量士を通して必ず境界測量を行いましょう。
【土地の境界測量をおすすめする人】
売主が土地売却前に、可能な限り確認したい情報は以下の2点です。
土地の購入希望者に配慮するためにも、事前の地歴調査や土壌汚染調査をおすすめします。
見た目は土壌がきれいでも、自分が土地を所有する以前に例えば工場廃棄物などによって土壌汚染歴があるだけで、買い手がつかなくなる場合があることを考慮しなければなりません。
特に売却予定の土地面積が広く、売りたい相手が不動産デベロッパーなど企業の場合は必須項目です。
しかし、土壌汚染歴を調べることは、地主の義務ではありません。
土壌汚染歴を知らないまま土地を売却するよりは、地主としての信頼性を担保するという上で、土壌調査はおこなうべきでしょう。
一方の地歴とは、自身が土地を所有するまでの過去の利用履歴について以下の歴史的資料を参考にしながら調査することです。
自身の土地の歴史については前の地主や家族・親戚などから伝聞ベースで聞くこともあるかもしれませんが、伝聞の内容が事実かどうかはわかりません。
実は災害が起こりやすかったという歴史があるかもしれませんし、前述の土壌汚染歴についても地歴調査によって明らかになる場合があります。
地歴調査についても基本的に義務ではないものの、地歴調査の義務である自治体もあることから、自治体のルールを事前に確認することが大切です。
売却前に、自身で査定前の土地の価格相場についても事前に確認しましょう。土地の相場は以下の方法で調べられます。
各不動産会社が提供する査定も活用できますが、悪質な業者によって土地相場価格よりも査定価格を意図的に高く提示される場合もあるため、注意しなければなりません。
いきなり査定価格で比較するよりも、事前に売却相場価格を自身で把握することで、土地相場価格を逸脱した査定額を提示する悪質な営業をされずに済みます。
売ろうとしている土地の所有権も明確にしましょう。土地の売却を決めたら、登記上の所有者を確認する必要があります。
土地の境界は明確だったとしても、自身が売却予定地の正当な所有者でないと土地を売却できません。
もし、登記上自身が名義人でない場合は、以下のように対策する必要があります。
【所有権が自分以外の場合の対応方法】
土地を売却すると決めたら、登記情報上の現状の名義人に注意し、その土地が現在誰に所有権があるかを今一度確かめましょう。
土地売却前に、底地権と借地権の状況も確認が必要です。
底地権と借地権の概要を以下にまとめましたので、参考にしてみてください。
【底地権と借地権の概要】
自身の土地の状況によっては所有者が売りたくても、土地の借主や建物の所有者(=借地権を持つ人)が売却に反対すると、土地を売却できない場合があります。
もし、自身の土地に借地権を所有する人がいる場合は、以下の方法を検討する余地があるでしょう。
【底地権、借地権のある土地を売却する場合】
土地売却を依頼する不動産会社がどのような契約形態なのかを事前に把握し、検討することも忘れてはいけません。土地の査定を依頼し、契約する不動産会社が決定すると、「媒介契約」を締結することが一般的です。
不動産会社と締結する媒介契約は、3種類あります。
どの契約がよいかは、自身の売却したい土地の形態や地主の状況などによって異なります。
上記3契約形態の特徴を以下にまとめましたので、不動産会社選びや契約形態選びの参考に活用ください。
【各種媒介契約の特徴】
土地売却をする際には、できる限り早く売るべきか、それとも一定の期間を経過してから売るべきかというタイミングも十分に検討しておく必要があります。
まず、節税の観点からは、取得して短期で転売する、いわゆる土地ころがしを制限するために、所有期間が5年以下で売却し売却益が出た場合は、6年以上の所有期間で売却するケースよりも、譲渡所得税があがってしまいます。
一方で、実際に自分が住んでいた土地建物においては、最大3,000万円までの特別控除もあります。また、相続してから3年以内に売却をおこなう等の要件を満たすことで、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算が可能です。
譲渡所得税は、土地を売却して売却益が出た場合にのみ発生します。土地売却で損失が出た場合には支払う必要はありません。
このように売却タイミングで税金が変わったり、特約を使うことで控除できたりするため、売却前にしっかり調べておきましよう。
その一方で、土地の相場も変化します。土地の価格が上昇局面であれば、売却が遅いほうが高く売れる可能性が高いですが、土地の価格が下降局面であれば、早く売らないとどんどん土地価格がさがってしまいます。
特に金利の変動には注意しましよう。金利が上がれば、売却した際に購入する側は、さらに投資総額があがります。逆に低金利であれば、土地価格が高くても、実際の支払い金額は抑えることが可能です。急いで売るべきか、そうでないかを事前に検討することは大切です。
土地売却を不動産会社に依頼している最中も、以下の通り注意すべき点が4つあります。
それぞれについて詳しく解説します。
媒介契約によって不動産会社に土地売却を委託して全て任せきりにしてしまう人も一定数存在しますが、自身が積極的に販促活動することも大切です。
改めて、不動産会社の媒介契約について、報告の面から再確認しましょう。
【各種媒介契約における販促活動の報告義務】
一般媒介契約の場合は不動産会社からの報告義務はなく、あくまで不動産会社からの任意連絡です。したがって、自分で販促活動をしないといけない場合もあるということを覚えておかなければなりません。
専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、不動産会社から売却に関する進捗状況の報告が入りますが、だからといって報告書のチェックを怠るのも避けたほうが無難です。
報告書の内容に疑問があれば不動産会社に相談することも、売却活動を任せきりにしないための秘訣だといえます。問合せが少ないという報告であれば、理由と改善策を一緒に考えることも売却するのであれば欠かせません。売主も自主的に動けば動くほど、任せきりよりも早く購入希望者が見つかるでしょう。
前述に関連して、販促活動中も希望する土地の状態を魅力的に見せる工夫が常に必要です。
土地などの不動産売却の場合、長期にわたって販売活動することも想定しなければなりません。販促活動初期の頃は手入れをしていたとしても、なかなか売れないままだと土地の手入れをうっかり忘れてしまい、初期の頃と現状とでは土地の状態が写真と異なっていた、という事態を招く恐れがあります。
売主は販促活動中においても、以下を常に気にすることをおすすめします。
購入希望者が現れたからといって、気を抜いてはいけません。売主は購入希望者がどのような要望をするのかについても、あらかじめ想定しておくことが大切です。想定されうる購入希望者の要望を一例として以下に列挙しました。
土地を購入するということは、高額の買い物です。多くの場合、慎重になるといってもよいでしょう。購入希望者も想定していた土地かどうかをきちんと把握したいものですし、できれば予算内に収めたいのかもしれません。購入希望者からよくある要望をあらかじめ押さえておけば、実際に交渉された際もスムーズに対応できるでしょう。もし、自身での対策が難しい場合は、不動産会社と相談することもできることのひとつです。
売買契約に移る前から、あらかじめ必要書類を整えておくことも慌てないための秘訣です。売主と買主が購入条件に合意すると売買契約締結のフローに移りますが、事前に書類の準備をしておくことで契約締結もスムーズに進みます。
売主が事前に準備すべき書類は以下の通りです。
特に、実印と印鑑証明書の発行には注意が必要です。実印を新規で作らなければならない場合、ハンコ屋に新規作成をお願いしなければならなりません。それだけでなく、印鑑証明書の発行においては、作成済みの実印を自治体の役所にも登録しなければなりません。
最近は、マイナンバーカードによって印鑑証明書の発行に時間を要さなくなりましたが、役所や証明サービスコーナーの窓口で発行しなければならない場合は、自治体規定によっては時間を要する可能性があります。
実印がない状態での土地売却はできないため、土地売却を検討している場合はすぐに作成し、印鑑証明書発行までできるようにしておくとスムーズです。
ただし、電子契約であれば、実印と収入印紙は不要です。
土地を無事に売却したからといって、全てが終わりではありません。売主は土地売却後も以下のポイントに注意しなければなりません。
それぞれについてご紹介します。
確定申告は土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日前後の年度末におこなわれます。取り揃えられるものは事前に取得しないと、後で慌てることになるため注意が必要です。
土地を売却した人が揃えるべき確定申告の書類は以下の通りです。
上記で挙げた書類の詳細を以下にまとめました。
【確定申告で必要な書類の詳細】
特に土地の売買契約書コピーは土地売却後に失くしてしまったということにならないよう、目のつく場所にファイルして保管したり、契約締結時点でコピーを取っておいたりするなどがおすすめです。
また、建物・土地の登記事項証明書は登記所又は法務局証明サービスセンターの窓口を利用して取得することから、早めに手続き準備をしておくと慌てずに済みます。
確定申告前に支払わなければならない税金をあらかじめ計算し、ある程度予測することも可能です。
土地の売却した人が確定申告時に支払わなければならない費用は、譲渡所得にかかわる以下の2点です。
譲渡所得が発生するのは土地を売却して利益が出た場合で、確定申告時に支払います。
譲渡所得については一般的に以下の方法であらかじめ算出できますので、事前に計算しておくと安心です。
【譲渡所得の利益算出方法】
不動産を取得・売るためにかかった費用は、以下のように内訳できます。
【不動産取得にかかった費用、売却時にかかった費用の詳細】
譲渡所得の金額をもとに、以下の割合で計算されることが一般的です。
【期間別譲渡所得による各種税率】
※2013年から2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付
例えば、Aさんが以下の状況で土地を購入した人が土地を売却したとしましょう。
【Aさんが土地を売却する場合】
上記の条件で確定申告をすると、以下のように計算できます。
【Aさんが支払うであろう譲渡所得税の計算例】 6500万円-(6150万円+200万円)=150万円
【Aさんが支払うであろう譲渡所得税の計算例】
6500万円-(6150万円+200万円)=150万円
この150万円をもとに、土地の所有期間を考慮して税額を計算することになります。
また、提示されている条件を満たすと利用できる以下のような特例制度もありますので、当てはまる場合は活用することで節税できるかもしれません。
【土地売却で利用できる特別控除一覧】
出典:nta.go.jp
なお、土地を売却して利益を得られなかった場合(譲渡損失)は、原則的に確定申告不要です。しかし、他にも申告すべき事項がある場合は、確定申告で一緒に申請してしまうことをおすすめします。
今回は、土地売却の注意点をシーンごとに13点ご紹介しました。事前にチェックするべき点や取りそろえる書類も異なるため、土地売却を検討する段階からの事前準備や、シーンに合わせた早めの行動が慌てないための秘訣です。
土地を売却することは一生のうち何度もあることではないため、不安に感じている方も多いでしょう。本記事のチェックリストを参考にしながら必要事項を確認し、滞りなく土地売却できるようきちんと準備しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。