まず理解しておくべきなのが、不動産評価額の仕組みです。そもそも不動産評価額とは何なのか、どのような仕組みとなっているのかを理解しておくことで、所有している土地の正しい評価額を知ることが可能です。
まずは、不動産評価額の仕組みについて、2つの重要なポイントをお伝えします。後にお伝えする不動産評価額の種類や調べ方なども、この仕組みを理解できていないとそれぞれの内容を正しく把握できません。
不動産評価額とは一体何なのか、その仕組みについての知識を得ておきましょう。
そもそも不動産評価額とは、「不動産の価値を把握するために必要なもの」です。土地は、エリアや周辺環境、土地のかたちや状態がさまざまで、広さが同じであったとしてもまったく一緒のものは存在しません。
そのため、売買するための基準となる定価がつけにくいのが特徴です。そこで必要となるのが、目的別で定められる評価額です。目的は5つにわけられており、「不動産としての価格を知りたい」「どれほどの税金がかかるのかを知りたい」などによりチェックするデータも異なります。
後ほどそれぞれに対しての詳しい情報をお伝えしますが、5つの目的は調べ方や参考とするデータも異なるため、調査する場合はなぜ評価額が知りたいのかということを明確にしておきましょう。
不動産評価額は、算出したとしてもその金額で実際に取引されるものではありません。たとえば「売却を目的に評価額を調べたら予想より高かったが、実際は評価額よりも低い価格での取引となった」ということもあります。
実際に取引される場合は、売却のタイミングにおける需要と供給の関係や市場などさまざまな影響により価格は変動します。また、相続税や固定資産税などの税金に関係する評価額は、基本的に市場価値の8割や7割程度になることが多いため、算出した金額はほぼ一致しません。
土地の取引を目的として評価額を調査する場合は、算出された金額はあくまでも1つの目安として考えておくようにしましょう。なかには算出された金額よりも高値がつくケースもありますが、一般的には算出額よりも低い金額となることもあります。
不動産評価額には、先ほどお伝えしたように5つの種類があり、それぞれ参考とするデータや計算方法が異なります。1つ1つの評価額を算出することで、所有している不動産がどのくらいの価値があるのかを把握しやすくなるのがポイントです。
それぞれどのような目的の評価額なのか、基準となる参考データは何かなど、詳しくみていきましょう。不動産評価額の種類は以下の5つが挙げられます。
評価額として最もポピュラーとなるのが、実勢価格です。「取引価格」「時価」ともいわれており、実際に売買取引された価格のことを指します。この実勢価格は、売却する側と購入側の交渉により最終的な価格が決まるため、常に変動するというのが特徴です。
実勢価格を参考にして評価額を出すためには、実際に取引された過去のデータを参考にしてください。しかし、これまでの取引データが少ないエリアの場合、参考にするデータが少なく信用度が低くなってしまうこともあります。
取引が多いエリアであれば問題ありませんが、場所によりデータ量に差が生じてしまうため、少ないエリアの場合は不動産会社の査定や現在売りに出されている不動産の価格なども併せて参考にしてみましょう。
実勢価格の調べ方をまとめると、以下の通りとなります。
土地総合システムは、これまでにおこなわれた過去の取引データを閲覧できます。希望エリアを絞り込んで、面積や駅からの距離など、類似している情報から目安を出してみてください。
レインズの運営元は、国土交通大臣から指名されている4つの不動産流通機構です。各会社がもっているデータを自由に調べられる不動産会社向けのサイトですが、一般の方でも利用できるサービスもあります。
地価公示価格とは、毎年国土交通省が3月の下旬ごろに発表する価格で、地価公示法に基づいて鑑定されています。地価公示価格は毎年1月1日に全国3万地点の標準値を鑑定し公表され、最新の状態が1年ごとに更新されるため、土地の価格変動の指標としても重要な値です。
地価公示価格の調べ方ですが、先ほどご紹介した「土地総合情報システム」から簡単に調べることができます。都道府県を選択し、市区町村や用途などの条件を入力し検索すると、これまでのデータが表示されます。
しかし、地価公示価格は国土交通省が公表する基準となっているため、実際の取引金額と大きく差が生じるケースは少なくありません。取引がおこなわれる際には、市況や需要と供給のバランスなど、さまざまな要点により価格が変わりますので、あくまでも目安として把握しておくようにしてください。
主要道路に面した1平方メートルの土地評価額が、路線価です。その年の1月1日時点の価格を、7月から8月の期間に公表されます。先ほど紹介した地価公示価格は国土交通省が公表します。路線価は国税庁からの公表となり、調査地点数が地価公示はおよそ3万カ所に対し、路線価はおよそ33万カ所と大幅に多いのが特徴です。
また、路線価は税金に関係する金額ですが、本記事でもお伝えしているように、路線価の評価額は一般的に市場価値の8割程度になるように定められています。地価公示価格がわからない場合、路線価に1,25倍することで求められます。
路線価を調べる時は、下記のような方法でおこないます。
「固定資産税評価額×倍率」
倍率方式とは、路線価が定められていない場所など、公表データから調べられない場合に用いる計算です。主に地方は定められていない場所が多いため、倍率方式で路線価を算出する必要があります。倍率方式の計算式は、下記の通りです。
固定資産税評価額×倍率
倍率は、国税庁「路線価図・評価倍率表」で確認し、必ず基準年度のものを参考にしてください。
市町村が公表している固定資産税評価額は、その名の通り固定資産税を計算するときに用います。路線価は公示地価の8割ほどになるように定められているのに対し、固定資産税評価額は約7割を目安に設定されています。下記は、固定資産税を算出するための計算式です。
固定資産税評価額×1.4
固定資産税評価額の調べ方は、主に納税通知書から調べるのが一般的です。固定資産税の納税通知書は毎年送られ、そのなかに課税明細書という用紙も一緒に同封されています。その書類に記載がある「価格」を確認してください。
今後購入を検討している土地や建物などの場合、納税通知書を受け取ることはできません。その場合は、不動産会社などに問い合わせて、確認してください。ハウスメーカーから概算税率を教えてもらうほか、中古物件であれば固定資産税評価額を伝えてもらうことも可能です。
基準地価とは、毎年各都道府県から公表される価格で、「都道府県基準値標準価格」ともいわれています。1つの基準値に対して鑑定士1名以上が鑑定をおこない、毎年9月に発表されています。
先ほどお伝えした公示地価は、3月頃の好評ですが、基準地価は9月に発表されるため、1年の内で2回地価変動をチェックすることが可能です。また、公示価格は都市計画区域内のみが対象ですが、基準地価はその区域外も対象地域であるという違いも特徴です。
基準地価は、実勢価格や公示価格などのように、国土交通省「土地総合情報システム」から調べることができますが、実際の取引金額とは大きく異なるケースも少なくありません。ほかの価格帯と同じように、あくまで目安程度の参考と考えておきましょう。
今現在土地を所有している方はもちろん、今後新しく購入しようとしている方のなかには、不動産評価額に対するさまざまな疑問があるという方も少なくありません。不動産評価額に関する質問でとくに多くの方が悩まれているのは、以下の2つが挙げられます。
それぞれ詳しく内容を紹介しますので、ぜひご覧ください。
マンションの不動産評価額は、本記事でお伝えしている内容と同様で、目的によって調べる評価額が異なります。
とくに、「相続税や贈与税について知りたい」という場合、相続税評価額で土地部分を、固定資産税評価額で建物部分を算出し、それぞれを合わせることでマンションの不動産評価額の算出が可能です。
まだ所有していない不動産であれば、当然納税通知書を受け取ることができません。そのため、自分で固定資産税を調べる必要があります。新築で家を建てる場合、依頼するハウスメーカーに相談してください。中古物件ですでに建物がある場合、管理している不動産会社に相談することで固定資産税について説明してくれます。
しかし、ここで伝えてもらうのは、あくまで参考価格です。実際の正確な固定資産税とは異なることも珍しくないので、購入後に納税通知書がきてから必ず確認してください。
不動産評価額を把握するためには、まずはその仕組みについて正しく把握することが重要です。また、算出された不動産評価額はあくまでも目安の1つとして参考にし、実際の取引金額とは異なるということを理解しておくようにしましょう。
本記事では、目的に合わせたそれぞれの算出方法や、参考とすべきデータを紹介しました。
お伝えした内容をしっかりと理解し、所有している不動産や今後購入を検討している不動産に対する評価額を、正しく把握できるようにしておきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。