マンション売却・査定

【ペットのいるマンションの売却価格が下がる理由】査定額を下げない対策も解説

【ペットのいるマンションの売却価格が下がる理由】査定額を下げない対策も解説

ペット飼育中のマンションの売却価格は下がるのか

「ペットを飼っていた」という理由だけで、マンションの価値が下がるわけではありません。マンションの価値が下がるのは、部屋に何かしらのダメージがあった場合です。

ペットが原因で部屋が汚れていた際は、修繕費などが売却金額から差し引かれることになり、査定額も安くなるでしょう。つまり、部屋の劣化状態によって査定額は左右されるのです。

ただし、修繕費といっても100万円を超えることは少なく、30〜50万円が相場です。そのため、ペットを飼っているからといって100万円単位で値下げされるようであれば、その業者には依頼すべきではないかもしれません。

明確な費用内訳を説明せずに「かなり安くなる」という部分だけを強調してくる不動産会社には十分注意しましょう。ペット飼育に関して理解と知識のある不動産会社を探し、仲介を依頼するよう心がけてください。

ペットの飼育が原因でマンションの査定額が下がる理由

マンションの価値が下がるといわれる一番の理由は、「部屋の劣化」です。ペットがいると部屋が劣化しやすく、ダメージが残りやすいため、価値が下がるといわれています。

ペットが原因でマンションの売却価格が下がる理由は、以下の通りです。

  • 部屋に染みついてしまったペットの臭い
  • ペットが付けた傷や汚れ
  • ペットによるノミやダニの発生
  • ペット可物件かペット共生物件なのか

物件自体の状態が悪い場合は、マンションを高く売るのは難しいでしょう。これは一般物件でも同じことなのですが、ペットを飼っていると余計「汚れやすい・劣化しやすい」というイメージがついてしまうため、評価が下がりやすいのです。

ここからは、上記4つの理由について詳しく解説していきます。

部屋に染みついたペットの臭い

査定価格を下げてしまう主な要因としては「臭い」が挙げられます。喫煙者の部屋にたばこ特有の臭いがするように、ペットを飼っている部屋も動物特有の臭いがするものです。

その部屋に長く住んでいると鼻が慣れてしまうので気にならなくなるものですが、普段嗅ぎ慣れていない人にとってはマイナス評価となってしまいます。

たとえ毎週こまめにペットをお風呂に入れていたとしても、臭いは気づかないうちに染み付いてしまうものです。特に、クロスなどの壁材は臭いを吸収しやすい特徴があり、一度ついてしまうと落ちにくい傾向があります。

ペットがつけた傷や汚れ

猫や犬などを飼っている場合に多いのが、「壁や床のひっかき傷」です。傷やダメージの多い部屋は、次の入居希望者が内覧に来たときに悪い印象を与えてしまうでしょう。

猫は爪とぎで日常的に壁・柱などをひっかく習性を持っています。また、噛み癖があったりやんちゃだったりする犬だと、家具だけでなく部屋自体もボロボロにしてしまうでしょう。フローリングを走り回った時の細かい傷なども、よくあるダメージのうちの1つです。

もちろん、ペットのしつけ次第ではダメージを最小限にできるでしょう。ただし、その部屋で長期間ペットを飼っている場合は、日々小さなダメージが蓄積されていくため、気づいたら部屋が傷だらけになっているかもしれません。

ペットによるノミやダニの発生

「ペットがいる部屋にはノミやダニが発生しやすい」といったイメージも、価値を下げる要因となっています。

近年では動物医療も発達してきているため、予防注射などでノミやダニなどの寄生虫の発生は抑えられています。しかし、人によってはどうしてもそのイメージが払拭できていないのが現状のようです。

また、ノミやダニだけでなく、猫アレルギーやハウスダストを心配する声もあります。特に、小さい子どもがいる家庭では敬遠されがちです。

「ペット可物件」か「ペット共生物件」の違い

ペットを飼っている物件が「ペット可」なのか、「ペット共生」なのかによっても売却価格は変動します。2つのマンションの違いは、以下の通りです。

ペット可のマンション ペット共生マンション
飼育が許可されているだけ(飼わない人も入居する) ペットと暮らすことが前提(原則飼っている人が入居する)

簡単にいうと、ペット可の物件は「飼育が許可されているだけ」なので、ペットと暮らすための設備が工夫されているわけではありません。

さらに、入居者のすべてがペットを飼っているわけではなく、ペットを飼わない人も入居してくるのが特徴です。そのため、マンション内のほかの部屋と比べると、ペットを飼っている部屋は価格が下がりやすいでしょう。

一方、ペット共生型のマンションは、ペットと暮らすことを前提としているため、さまざまな設備が整っている傾向があります。以下はその一例です。
【ペット共生型マンションの設備】

  • 傷つきにくい床や壁
  • 張り替えしやすいクロス
  • 空気清浄機能などの防臭設備
  • ペット用の足洗い場

ペット共生型マンションに入居してくるのは、原則ペットを飼っている人です。多少のダメージならそこまで気にしないという入居者も多いため、価値が下がりにくい傾向があります。

ペットの飼育マンションの査定額を下げないようにするための対策

ペットを飼っているマンションの査定額を下げないためには、以下のような対策を取るのがおすすめです。

  1. 部屋に染みついた臭いの除去
  2. ペットがつけた壁や床の傷・汚れの修繕
  3. ハウスクリーニングを利用する
  4. 内覧の際はペットを別のところに預ける

不動産会社にマンションの査定を依頼する前には、上記のような修繕対策をおこないましょう。

状況によってはハウスクリーニングを依頼することをおすすめしますが、リフォームは余程の大きな問題がある場合を除いて基本的に不要です。

また、部屋を売れやすくするためには内覧時の配慮も重要になるため、ポイントを押さえておきましょう。

部屋に染みついた臭いの除去

マンションの部屋に染みついたペット特有の臭いを消すためには、以下のような対策が有効です。

  • 布製品を買い替える(カーペット・ソファ・カーテンなど)
  • 壁紙を消臭クロスに張り替える

長年使用している布製品には、さまざまな臭いや汚れが染みついています。特に、ソファやカーペットなどのファブリックは洗濯できないものも多いので、水拭き程度のメンテナンスしかできません。

新品に替えることで臭いが軽減される可能性は高いため、思い切って処分することをおすすめします。

また、壁のクロス素材を張り替えるのも効果的です。表面に防臭材を加工した「消臭クロス」は、臭いを分解してくれるため、部屋に臭いが残りにくくなります。

クロスの張り替えを業者に依頼した際の相場は、以下の通りです。

帖数(張替面積) 費用相場
~5帖/35㎡ 4万~5万円
6帖~7帖/40㎡~43㎡ 5万~6万円
8帖~9帖/48㎡~51㎡ 6万~7万円

消臭クロスは内覧時のアピールポイントにもなります。多少のお金はかかりますが、臭いが気になるならやっておいて損はないでしょう。

ペットがつけた壁や床の傷・汚れの修繕

爪とぎの跡・噛み跡などがついてしまった壁や床の傷は必ず修繕しておきましょう。多少のダメージなら、可能な限り自分で対応することをおすすめします。

ひどいダメージはもちろんプロに依頼するべきですが、自分で対応すればその分、経費は抑えられるでしょう。リフォーム業者へ依頼するのは最終手段と考えてください。

自分でできる修繕方法には、以下のようなものがあります。

クロスの修繕方法 床の修繕方法
クロスの剥がれ・破れを専用の瞬間接着剤(ジョイントコークAなど)で修繕する 傷かくしの修繕テープを貼る

床の凹みを補修パテで埋める

どれも1,000円以下の安価で買えるものが多く、ホームセンターやインターネットなどで簡単に購入できるため、少ないコスト・手間で修繕できるでしょう。

ハウスクリーニングを利用する

最終手段として、ハウスクリーニングに清掃を依頼する方法もあります。部屋全体の劣化・ダメージがひどい場合はプロに依頼するのがよいでしょう。

ハウスクリーニングの一般的な料金相場は、以下の通りです。

部屋の規模 料金相場
1K(ワンルーム) 1.5万~3万円
1DK・1LDK 3万~4万円
2DK・2LDK 3万~7万円
3DK・3LDK 5万~8.5万円

ハウスクリーニングに依頼すれば、ペットの汚れだけでなく、そのほかの汚れもあわせてきれいにしてくれるメリットがあります。部屋全体の印象アップにつながるため、マンション売却の利益を考えれば十分やる価値はあるでしょう。

内覧の際はペットを別のところに預ける

内覧当日には「ペットを家の外に出しておく」という配慮も必要になるでしょう。内覧の数時間前にはペットを外出させ、換気と掃除をしておくことをおすすめします。
【内覧時にペットを別の場所へ移動させるのがよい理由】

  • 臭い対策のため
  • ペットが興奮するのを防ぐ
  • 買主にアレルギーがある可能性
  • 買主が動物が苦手である可能性

内覧時は、購入希望者を住んでいる部屋に招く形がほとんどです。ペットにとってはテリトリーを侵害されたようなものなので、突然の来客に興奮してしまうケースも多いでしょう。

買主はペットが気になってしまい、内覧どころではなくなってしまうかもしれません。たとえ物件に魅力を感じていたとしても、印象が悪くなってしまうでしょう。

内覧時間だけでもペットを別の場所に連れて行く、または誰かに預けるなど、何かしらの対策や工夫が必要です。家族がいるなら、その時間散歩に連れて行ってもらうのもよいかもしれません。

ただし、ペットが飼える家を探している買主であれば、そこまで気にする必要はないでしょう。むしろ飼いやすい環境であることをアピールする機会になるかもしれません。その際は、散歩コースやいきつけの動物病院などもあわせて情報提供し、魅力をアピールしましょう。

ペットの飼育に関すること以外にマンション査定で見られるポイント

マンションの査定価格を左右するのはペットにかかわることだけではありません。ここからは、通常の不動産査定でチェックされている評価ポイントについて解説していきます。

一般的なマンションの査定で評価されるのは、主に以下の4つです。

  1. 立地
  2. 築年数
  3. 階数や間取り
  4. 管理状況(共用部の設備状況など)

物件の査定は、さまざまな要素を複合的に判断するものです。ペットを飼っているマンションが、上記のポイントにおいて優れていれば高く売れる可能性があり、買い手もつきやすくなります。

マンションの立地

マンションの査定では、「駅からの徒歩分数」や「商業施設までの距離」などの立地条件が重視されます。基本的には駅から徒歩10分圏内であれば需要が高くなり、売却も好条件になるようです。

ただし、駅から遠くても住みよい環境が整っていれば、金額が高くなる・売れやすくなる傾向があります。

【駅から遠くても評価が高くなるケース】

  • バス停までのアクセスが良い
  • 公共施設が近くにある
  • 商業施設が近くにある

病院・市役所などの公共施設や、スーパー・コンビニ・ドラッグストアなどの商業施設が近くにある場合は、利便性が高い立地だと判断されます。また、小学校・中学校が近いと治安の良い立地だと評価されるケースもあるようです。

マンションの築年数

マンションの査定額を大きく左右する要因の1つに、「築年数」があります。マンションの法的耐用年数は47年とされているため、築年数が古くなるほど売却価値も下がっていってしまうのです。

築年数ごとのマンションの特徴は、以下を参考にしてください。

築1年未満 「新築マンション」と呼ばれる
最も資産価値が高い
築10年前後 新築の70~80%相当の資産価値
築12年以上 35年ローンが組めないデメリットが発生
築42年以上
(旧耐震基準のマンション)
住宅ローンが組めないデメリットが発生

たとえば、築5年以内のマンションが6,000万円だったとします。築20年になると、同じ間取り・立地・階数であっても約4,000万円程度まで相場が落ちるのが一般的です。

マンションの階数や間取り

マンションの場合は、部屋の階数が上がるほど評価が高くなります。日当たりや眺望、防犯性の向上や騒音の軽減が期待されるためです。一般的に、3階以上であれば、高く評価される傾向があります。

また、部屋の間取りも査定に影響する要素です。2LDK・3LDKは需要が高いため、評価額も高くなるでしょう。1LDKでは面積が小さく、4LDKは広すぎると判断されるためです。

特に3LDKは、ファミリー層や夫婦・カップルの2人暮らしに人気で、少々高くても売れやすいため、高く評価されやすいでしょう。

マンションの管理や共用部の設備

マンションの場合は、部屋だけでなくマンション全体の管理状況もチェックされます。住人が快適・安全に暮らせるよう、管理会社が正しく管理をおこなっているかも査定に影響するのです。

マンションの管理は、主に以下のポイントがチェックされています。

  • 定期的なメンテナンスがされているか(修繕・清掃)
  • セキュリティ管理・設備はどうか

特にマンションは、修繕積立金や管理費の支払いが必要です。そのため、買主は部屋の価格だけでなく、管理費などの費用の金額も気にしています。

24時間管理人が常駐している・インターネット回線が充実しているなどの付加価値があれば話は別ですが、修繕費・管理費が競合よりも高い場合は評価が低くなってしまうでしょう。

もちろん、管理会社が正しく機能しているかもチェックされます。長期修繕計画に基づき、定期メンテナンスや修繕工事がきちんとおこなわれているかどうかも、評価に大きく関わるでしょう。

不動産会社選びのポイント

ペットを飼っているマンションを売却する際は、仲介を依頼する不動産会社選びにもこだわりましょう。最後に、不動産会社選びのポイントを2つ紹介します。

【不動産会社選びのポイント】

  • ペット飼育マンションの売却の経験が豊富な不動産会社に依頼する
  • 複数の不動産会社に査定を依頼する

可能な限り好条件でマンションを売却するためには、経験豊富な不動産会社と媒介契約を結ばなければなりません。優良業者を見つけるための注意点もあわせて解説しますので、ぜひ役立ててください。

ペット飼育マンションの売却経験が豊富な不動産会社に依頼する

仲介を依頼する不動産会社を探す際は、「ペット飼育マンションの売却が得意かどうか」に着目することをおすすめします。

ペット飼育マンションを好条件で売却するには、それなりの対策や準備が必要になるでしょう。さらに「ペット飼育可のマンションを探している」という顧客を抱えている業者なら、取引もスムーズにおこなえるはずです。

そのため、依頼時には「ペットがいた物件の売却実績の有無」をヒアリングしておけるとよいでしょう。その際は、どのような戦略で売却したのかも合わせて質問しておけると安心です。

経験豊富な不動産会社が見つかれば、可能な限り好条件で売却できるよう動いてもらえるでしょう。

複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産会社の査定は、必ず複数社に依頼するよう心がけてください。査定を依頼する際は、以下のことに注目すると失敗しづらくなります。

【不動産会社を見極める時にチェックする項目】

  • 査定の根拠は明確か
  • 担当者の対応・接客はどうか
  • 相場と比較して安すぎる・高すぎることはないか
  • 親身に相談に乗ってくれるか

査定には、物件情報だけで概算価格を算出する「机上査定」と、実際に現地で物件を調査してデータと照らし合わせる「詳細査定」の2種類があります。

まずは「一括査定サイト」を利用して、複数社から見積もりをもらいましょう。一括査定サイトは、情報を入力するだけで簡単に複数社から見積もりがもらえるため、比較しやすく相場感も把握しやすいメリットがあります。

その中から気になる業者を2〜3社選び、詳細査定を依頼してください。相場からかけ離れた高い見積もりを提示している業者は、契約を取るためにわざと吊り上げている可能性があるため、依頼しないよう注意しましょう。

また、詳細査定では、実際に担当者の査定方法・査定額の根拠・対応をチェックして、信頼できる業者を見極めることが大切です。

まとめ

ペット飼育中のマンションを売却するためには、不動産会社選びがとても大切なポイントです。ただし、不動産会社に任せっきりにしてしまうのはよくありません。

依頼前にしっかり自分で対策をしたり、仲介時の対応に配慮したりするなど、売主側も的確な戦略を練る必要があるでしょう。

経験豊富な不動産会社なら、さまざまなパターンに対処してきたノウハウを持っているはずです。業者とよく相談・検討しながら売却活動を進めていってください。

矢野翔一(有限会社アローフィールド)
矢野翔一(有限会社アローフィールド)

関西学院大学法学部法律学科卒。

宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。
数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。

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